アリアンロードとオーレリアの激闘を傍らに、戦いを続けるリィン達と鉄騎隊+ティア。今まで通り補助に専念するティアを前に、まずは彼女を無力化するべきだと思うも、彼女へ攻撃しようとすれば3人の誰かが庇う様に現れる。故にティアは必然的に最後とするしか無かった。
「ここまで戦えるとはな。こんな状況で無ければ、褒めるべきだが」
「全く。敵に回ると七面倒ね!」
ユーシスがアイネスと剣を合わせ、エンネアの放つ矢をサラが導力銃から放つ弾丸で無効化しながら思った事を告げる。視界にはリィンとガイウスとミリアムが猛スピードで動き回る3人に分かれたデュバリィと交戦しており、各々が1人ずつを相手にしている状況だった。
「もう! こうなったら……オーダー! ホワイトデコレーション!」
ミリアムが我慢の限界を迎えた様に告げた途端、リィン達5人の身体をデュバリィ達と同じ様な白い靄が包む。すると彼らはデュバリィ達の攻撃を物ともせずに反撃を開始。今度は鉄騎隊が押され始める。
「くっ、やりますわね! ですがオーダーは貴方達だけが使える技じゃありません事よ!」
「あぁ。我らは星洸陣。そして」
「ティアちゃん、練習の成果を見せる時よ!」
「うん!……すぅ……皆に、勇気を……シャイニング、カーレッジ……!」
エンネアの言葉に頷き、息を大きく吸ってから祈る様に両手を組んでミリアムの様に発したティア。途端にデュバリィ達の身体を星洸陣とは違う薄水色の光が纏う。それは成功した証であり、鉄騎隊の3人はティアを見ずとも満足そうに笑みを浮かべた。
「さぁ、行きますわよ!」
「くっ!」
再び迫る刃は先程よりも鋭く、破壊力もあった。加えて明らかに士気が上がる3人の姿にリィン達は応戦する。人数だけで見ればデュバリィが3人に分かれている事で鉄騎隊+ティアに分があった。だが、分けられたデュバリィは彼女本人程の実力を有してはいない。1人、また1人と消され、人数の差は逆転されてしまう。すると突然、リィン達の真上に巨大な火球が生まれる。嘗てティアとの戦いで見た火球とは違う、更に大きな火球。言うなれば、
「これは……失われし魔法……!」
「ティアが使ってるの!?」
「ちっ、洒落にならないわよ……!」
ロストアーツ。自らの全精神力を持ってして発動する非常に強力な魔法であり、嘗てはそれを使った事もあったリィン達。だが大きな問題は、それをティアが今使っている事だった。彼女は大きく空へ手を上げており、やがてそれを一気に振り下ろす。
「っ! そ、れっ!」
「皆であれを止めて! そしたら僕に考えがあるから!」
「何をするつもりだ、ミリアム!?」
「説明を聞いてる時間は無い! 来るぞ。構えろ!」
巨大な太陽の衝突。ミリアムに言われ、リィンは彼女を信じてガイウス、ユーシス、サラと共に武器でそれを受け止める。するとミリアムは傀儡に乗って空に上がり、傀儡を大きなハンマーに変化させてフルスイング。長い押し合いの末、何と迫った太陽を空へ打ち返した。
「あれを防ぐとはな」
「……前もそうでしたが、旧Ⅶ組。中々に化物揃いですわね」
「平気? ティアちゃん」
「う、ん……あう……」
リィン達の行動とその結果に驚かずにはいられなかったデュバリィ達。息も絶え絶えに無事な事を安堵するリィン達を前に、エンネアがティアを心配するも、ティアは強力な魔法を使用した事ですぐには動けそうに無かった。
「ティア、決着するまで気を抜くんじゃありませんわよ」
「う、ん……」
「呼吸を整える時間程度、容易く稼げる。動ける様になったら、参加しろ。エンネア」
「えぇ。私が守るわ」
少しの間動けないティア。そんな彼女を庇いながら、再び戦闘は再開される。ティアの補助を受けられなかった時間、デュバリィ達は純粋な実力で5人を相手にし続けた。しかし徐々に押され始める中、彼女達の身体を再び光が包む。
「もう、大丈夫……」
「ティア、まだ動けるのか……!?」
それはティアが扱う補助魔法の光。戦線へ復帰した彼女の姿に、リィン達は驚きを隠せなかった。……ロストアーツを使えば、普通はもう魔法をしばらく発動出来なくなってしまう。だが、今現在自分達の前に立つティアは当たり前の様に魔法を扱っていた。それが示す答えは1つ。
「先程のロストアーツは
「えぇ! じゃああんなのがまた来るかも知れないの!」
「そうなる前に、倒し切るしかあるまい」
「あぁ。……一気に仕掛けるぞ! 突撃陣・烈火!」
リィンの号令と共に発動するオーダーは彼らの身を赤く纏い、力を高める。デュバリィの分身は倒し切り、数は勝っている現状。実力的にも届かない訳では無く、リィン達の猛攻が始まった。
やがてデュバリィとリィンが互いの刃を弾き合い、距離を取ると同時に地へ膝を突いた。アイネス、エンネアも同じ様に膝を突いており、ティアに至っては両膝を曲げたままその間に座り込んでしまっていた。
「はぁ……はぁ……」
「我ら鉄騎隊と互角……か」
「くっ、認めませんわよ……! マスター!?」
「ママっ!」
全員が息を切らして立ち上がれない中、デュバリィは衝撃的な光景を目の当たりにする。……それは敬愛するアリアンロードが自分達と同じ様に膝を突く光景であった。『そんな筈はない、ありえない』。そう頭の中で何度も考えるが、見える現実は変わらない。武の頂点は今、オーレリア・ルグィンと言う女性に押されていた。
「見事です」
アリアンロードはオーレリアを称賛する。そして彼女の実力が遥か昔、武の頂点となった頃の自分を超えていると。敵対する関係でありながら、オーレリアは彼女の言葉に武人として敬意を払った返事をする。すると、ここで別行動だった新Ⅶ組とアンゼリカも合流。アリアンロードは6人の姿を見た後、立ち上がった。
「場は整いました」
「っ!」
その言葉と同時に今まで止まっていた巨大な神機が動き始める。リィンは素早くヴァリマールを呼び、同時に2体の同じ様な人形兵器……機甲兵が天守閣へ舞い降りた。
今から始まるは人の身では到底敵わない、人形兵器同士の戦い。疲労を感じて動かしにくい自分の身体を無理矢理立たせ、デュバリィ達は巻き込まれない様に距離を取る。その際、動けなかったティアはアイネスに横抱きで抱えられる事になった。
ヴァリマールに搭乗したリィン。傍にあった機甲兵に新Ⅶ組の中からユウナとクルトが代表して乗り込み、壮絶な戦いが始まる。リィンの持つゼムリアストーンと呼ばれる鉱石で作られた太刀をその戦闘で折られながらも、戦術リンクが繋ぐ不可視の刃で戦いが決した時。アリアンロードは目を閉じ、やがてそれを呼んだ。
「ぇ……」
「これは」
「騎神……」
「マ、マ……?」
鉄騎隊とティア。アリアンロードの傍に居続ける彼女達は全員、その光景に絶句してしまった。……アリアンロードが呼んだそれは正しく騎神。リィンのヴァリマールと同じ様な存在であり、それを呼び寄せた彼女はリィンと同じ
デュバリィは知っている。アリアンロードとは違う彼女の本当の名前を。ティアは知っている。自分を救ってくれた『ママ』を。……彼女の事で知らない事は無い、筈だった。だが、目の前に存在する騎神は。それに乗り込んだ
先に帰還してしまったアリアンロードを追う様に、帰路を走る鉄騎隊。ティアはアイネスの背中にしがみついて居り、彼女達の話題はアリアンロードが呼び寄せた騎神について。
「ティアは知っていたか?」
「ううん……初めて、見た……」
「ティアちゃんも知らなかったのね」
「本当の名前すら教えてくださりましたのに、何故……マスター」
不安と疑問。そして自分達には話してくれなかった悲しみの込められた言葉だった。だが鉄騎隊はマスターである彼女に忠誠を誓っており、ショックを受けようともそれが揺らぐ事は無かった。……何か理由があると。何か考えがあるのだと信じ、彼女達は帰路を急ぐのだった。
原作プレイ時に思った事
『何で転移出来るのに、デュバリィ達は走っているのだろう?』
……多分、気にしてはいけない。