【完結】調の軌跡   作:ウルハーツ

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終-3

 イシュメルガ=ローゲの本体は左右の肩に存在するローゲ=オウガとローゲ=アウラに守られていた。故に本体へ攻撃を通す為に、左右に分かれた者達が守りを無力化する必要がある。

 

 アウラと対峙する事になった特務支援課の面々と鉄騎隊、ティアとアリアンロードは鳥の様にも見えるその風貌と神聖にも見える存在感を前に攻撃を開始する。

 

「ティオ助! ティアらん、援護は任せたぜ!」

 

「了解しました! ティア、行きますよ!」

 

「うん!」

 

 飛び出すランディやロイド達の姿にティオとティアは魔法を使用する。まず最初に足元に時計が浮かび上がって全員の行動速度は早くなると、追い風の様に全員を包み込む優しい風が更に身体能力を向上させる。

 

「強行突破だ! レイジングハンマー!」

 

 ロイドのオーダーの元、破壊力を増した攻撃がローゲ=アウラへ襲い掛かる。すると相手も負けじと魔法や攻撃を繰り出すが、誰よりも前に出たアイネスがハルバードを縦に構えた。そして彼女の目前に広がるのは、彼女の数倍はある大きな不可視な盾。それが相手の攻撃を全て防ぎ止める。

 

「行け、デュバリィ!」

 

「はあぁぁ! プリズム、キャリバー!」

 

 そんな彼女を超えて、3人に分かれたデュバリィが目にも留まらぬ速さで斬り掛かる。そして最後に刃を光らせて横に振り払えば、悲鳴にも聞こえる鳴き声を上げたローゲ=アウラは……強力な魔法を放った。浮かび上がる魔法陣と、そこから出現する巨大な塔。

 

「皆、気を付けて!」

 

「ティアちゃん、手を貸して!」

 

「うん! エンネア……お願い……!」

 

 その塔に備え付けられた砲台からは途轍もない威力の砲撃が放たれる。故にエリィが危険を知らせて構える中、エンネアが空へ飛んで弓に矢を番えた。砲台が彼女を狙う様に向けられる中、声を掛けられたティアは魔法を3重に使用。エンネアの矢は3段階に渡って赤く光り、やがて真っ赤になったその矢を放った。

 

「ピアス、アロー!」

 

 真っ赤に燃えた鋭い矢は塔の砲身の中へ。その瞬間、大爆発を起こして砲撃が放たれる前に塔は木っ端微塵に大破した。

 

「やるな! なら、こっちもだ! 行くぞ、ランディ!」

 

「合点承知だ!」

 

≪バーニングレイジ!≫

 

 魔法の脅威が去り、ロイドはランディと共にローゲ=アウラへ急接近する。そして2人は左右でその身体を挟む様に移動し、高速で猛攻を仕掛ける。やがて最後に2人はすれ違う様に交差した。

 

「ティオちゃん、私達も!」

 

「お任せ下さい……!」

 

≪コールドゲヘナ!≫

 

 彼らの協力技を見たエリィとティオは背中合わせに立ち、同時に魔法を使用する。足元に浮かぶ巨大な魔法陣と、彼女達の元から空へと放たれた青い光がローゲ=アウラの身体へぶつかった時、一瞬にしてその巨体は凍り付いた。

 

「流石ね」

 

「私たちも、行きますわよっ!」

 

「承知!」

 

 彼らの戦う姿にデュバリィ達も集い、星洸陣を発動する。飛躍的に身体能力の向上した3人の連携攻撃は凍結したその身体を崩し、到頭ローゲ=アウラは羽を失う。……そんな3組の戦いを前に、ティアはアリアンロードと共に並んで立っていた。

 

「ママ!」

 

「行きますよ」

 

 ティアの呼び声に答えたアリアンロード。2人の間に互いを繋げる光の線が見える様になり、彼女達は同時に飛び出した。そしてティアは徐に手を上へ。背中に控えるグラーシーザがそれに答える様に変形を始め、出来上がるのは……赤い槍。

 

≪はあぁぁぁ!≫

 

 ローゲ=アウラの元へ辿り着いた2人は交差し、すれ違い、何度も繰り返し攻撃を繰り返す。そしてそれを幾度となく繰り返した後、2人は共に空へと飛び上がった。

 

「最後も、一緒……!」

 

「ふふっ、良いでしょう」

 

≪トゥルーブレイブ!≫

 

 2人同時に槍を投降する。渦を描く様に回転しながら接近した2本の槍はその巨体を貫き……イシュメルガ=ローゲの身体とローゲ=アウラを物理的に切り離した。肩を失い、悲鳴を上げるイシュメルガ=ローゲ。無事に着地した2人の姿に、見ていた者達は呆気に取られていた。

 

「す、凄まじい力ね……」

 

「あぁ。力は失ったと聞いてたんだが」

 

「これがあれか? 蛙の子は蛙、って奴か?」

 

「ティア……頑張りましたね」

 

 鉄騎隊の面々はすぐに『マスターだから』で納得出来た。だが特務支援課の面々は違う。2人の放った技の威力に4人は驚愕していた。すると、ゆっくり倒れ始めるティア。急いで全員が駆け寄る中、イシュメルガ=ローゲを守るもう1つの存在が悲鳴を上げながらその機能を停止する。

 

「リィン……皆……」

 

「……俺達に出来る事はした。後は、彼らを信じよう」

 

 傍に居たアリアンロードに受け止められ、力を使い切って弱々しく本体と戦うリィン達を見るティア。そんな彼女の姿を見て、他の者達も彼らの戦いを見守り続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イシュメルガ=ローゲを撃破したリィン達。後に別の空間へ逃げた核とも呼べる部分を追って剣となったミリアムを手に飛んだリィン。その先で彼は無事にイシュメルガを討ち、帰還した。

 

 呪いが消えた事でリィンの中に宿る呪いも消え、それに伴って髪の色も元の黒髪に。目の色も元通りになる。だが相克が終わって呪いが消えた事で、呪いに生かされていたクロウと呪いを広げる為に剣となったミリアムは消える運命にあった。……アリサの父、フランツ・ラインフォルトの技術力と騎神達の奇跡が無ければ。元々、その存在自体が常人には理解し難いのだ。彼らの力は世界の理や概念に干渉し、ミリアムとクロウの消滅すらも防いで見せた。

 

 不死者だったフランツや、相克の為に存在した騎神達は消える。そして残されたリィン達は全てが終わった事と、クロウとミリアムの生存に歓喜し涙を流した。

 

「ようやく、終わったんですね」

 

「あぁ、そうじゃ。……妾に相談しなかったのは友として納得出来んかったが……リアンヌ、よく頑張ったの。無事にドライケルスの魂は逝ったのじゃ」

 

「……えぇ。本来であれば、このまま私も……ですが少し、待たせてしまう事になりそうですね」

 

 全てが終わった事で、本懐を遂げたアリアンロードも僅かに涙を流した。それを隣に立ったローゼリアが気付きながらも見ずに答え、アリアンロードは自分の腕に眠るティアへ視線を落とす。最初は疲労から苦しそうだったティアの表情も、今は穏やかで何処か幸せそうに見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界の情勢が揺れに揺れた後、リィン達は消える間際にフランツが告げた言葉を頼りに黒の工房の本拠地へ赴いていた。そしてそこで見つけたのは、消える前のミリアムの身体……その予備であった。剣に宿っていた彼女の意思を身体へ移し、また人間として動ける様になった彼女の姿にⅦ組の全員を始めアルティナも泣きながらその身体へ抱き着く。そして黒の工房を離れた時、ミリアムは周囲を見回して首を傾げた。

 

「さっきから思ってたけど、ティアはいないの?」

 

「あぁ、そうだったな。ティアへ連絡しないと」

 

 ミリアムの質問にリィンが取り出したのは、ARCUSⅡ。ティアが持っていた導力器、ARCUSの後継機であり、何とそれには今までの通信機能に合わせて画面に互いの顔が映る様になっていた。リィンが連絡を掛ければ、彼の傍へワクワクした様子でミリアムが。同じ様にアルティナとアリサも近づき始める。……そして少しの間を置いて、画面にティアの姿が映った。彼女もあの戦いの後、ARCUSⅡを通信の為に貰ったのだ。

 

「あ、ティア! やっほー!」

 

『ミリ、アム……? 戻れたんだ……良かった……!』

 

「あっはは、泣かないでよ……でも、僕の為に泣いてくれてるんだよね。ありがとう」

 

『ううん。御免ね……行けなく、て』

 

 通信でティアが見えれば、当然彼女からもミリアムの姿は見えていた。元々リィン達が彼女を元に戻せるかも知れないと話していた為に、それが成功した事実に喜び涙を流すティア。そんな姿にミリアムが少し照れた様子で頬を掻きながらも、お礼を言う。すると謝るティアに、彼女は今何をしているのか質問した。

 

『今は……ティオ、達と……一緒』

 

「今ティアは特務支援課と一緒にクロスベルに居るんだ。本来なら一緒に来る予定だったんだが……どうやらかなり大変な状況みたいだな」

 

「ティアちゃん! 怪我はない? ちゃんと食べてる?」

 

「オリヴァルト皇子からの招待状は無事に届きましたか?」

 

『うん。怪我、してないよ。ご飯も、食べてる。最近、少し作れる様に、なったの。招待状も、貰ったよ』

 

『ティア、そろそろ行きますわよ』

 

『あ、うん。またね……ばいばい』

 

 アリサとアルティナの質問にティアが答えた時、顔は見えずとも聞こえるデュバリィの声にティアは振り返る。そして画面で見える様に手を振って、通信を切られた事で少し残念そうにするアリサとアルティナ。リィンはARCUSⅡをしまい、ミリアムは一枚の封筒を差し出した。……それはオリヴァルトとシェラザード・ハーヴェイと言う名の女性の結婚式の招待状だった。シェラザードはあの戦いで協力してくれた遊撃士の1人であり、どうやら戦いが終わったら結婚する事を約束していた2人。思念体としてその話を既に聞いていたミリアムは正式にその招待状を受け取り、満面の笑みを浮かべるのだった。

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