【完結】調の軌跡   作:ウルハーツ

6 / 49
間章+α

『済まない。君の妹は……もう』

 

「……ぁ」

 

 その少女は夢から覚める。出来る事なら忘れたい夢。何度も否定し続けて来た現実を見せつける様な、夢。開いた瞳から流れてしまう涙を拭い、少女はベッドから起き上がると部屋に飾ってあった写真建てを手に取る。そこに映るのは大人2人と幼い自分。そして自分に似た髪色の少女だった。

 

「……ティア……」

 

 幼い少女の名前はティア。彼女にとっては大事な妹であり、悪夢の様な場所へ連れて行かれてからも心の支えの様な存在であった。妹を守りたい。その一心でどんなに辛い事も耐え抜いて来た彼女に待っていたのは……最愛の妹との別れだった。

 

『あれはもう駄目だ。殆ど目的は成功しているが、餓鬼が幼過ぎて制御し切れない』

 

『……頃合いを見て、処分しよう。必ず、足の付かない方法でな。次は少し大きい餓鬼で試そう』

 

 今でも鮮明に覚えている大人たちの会話。突然妹と会えなくなり、それでもまだ何処かに居る妹を守る為に耐え続けた少女は……ある組織によってその辛い日々から解放された。病院へ連れて行かれ、検査を受け、そこで教えられたのは妹の行方が分からないと言う事。既に生きて居るのかも分からない。それを聞いた時、少女は嫌でも彼らの会話を思い出してしまった。

 

 守りたかった存在が既に失われていた。その事実に少女の精神は壊れかけてしまった。何とか自分を救った大人達のお蔭で完璧な崩壊は免れたものの、少女が大事なものを失った事実は変わらない。やがて両親の元へ帰された彼女は暖かく迎えられ、だが居るべき存在が居ない事と今までの様な生活が出来なくなってしまった事で徐々に両親との関係に亀裂が生じる。やがて、彼女は家を飛び出すに至った。

 

 妹が消えて数年。未だに死体も何も見つかっていない現状に、少女は僅かな期待を抱いていた。『まだ何処かで生きて居るかも知れない』と。当然、それは彼女の根拠の無い思い込みである。だが僅かに可能性があるのなら、彼女はそれに賭ける覚悟があった。……だから彼女は居なくなってしまった妹を探す為に、今日までを過ごして来た。そしてこれからも、それは変わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レミフェリア公国

 

「……ようやく、だな」

 

 1人の男性がとある家から出て来ると、徐に1枚の写真を取り出した。それは現在トールズ士官学院に通っているティアの写真。彼はそれを眺めてから懐にしまい込むと背後に立つ家を眺める。

 

「さて、どう伝えたもんか……まずは姉と会ってみた方が良いか。……クロスベル、ね」





ティア

言語Lv.4(最大Lv.10)

人慣れLv.3(最大Lv.10)


好感度『ティア→キャラ』

★★★★★

★★★★☆

★★★☆☆
フィー・サラ
★★☆☆☆
アリサ
★☆☆☆☆
リィン・エリオット・ガイウス・マキアス・ユーシス
ラウラ・エマ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。