『射命丸文』が現在に至るまで   作:parui

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前回は二話だったのに、間違えてすみません。
今回が三話です。


第三話【人間と妖怪の夫婦の終わり】

三話【人と妖怪の夫婦の終わり】

 

私の名前が言葉と夫婦になり『射命丸文』になってから52年。

私が『天狗』だとわかってから50年。

鬼に襲われ私の能力が『風を操る程度の能力』だとわかってから49年。

言葉の顔に皺が目立ち初めてから26年。

言葉が「体のあちこちが痛い」と嘆き出してから15年。

言葉が「少し動くのも億劫だ」と言い初めてから9年。

言葉が病気で倒れてから11ヶ月。

 

言葉がこの世を去ってから

 

-4分。

 

私はひたすら泣きながらまだ暖かい言葉の手を触っていた。

私を優しく撫でた手を。私と手を繋いだ手を。

ひたすら泣きながら触れていた。

何も変わらない私は、変わらない綺麗な手で触れていた。

 

言葉は五分前に逝ってしまった。

最後に色んな事を言って、私に色んな事を教えて逝ってしまった。

私はそのすべてを覚えている。一言一句漏らさず言える。

だけどそんなことは今は考えられなかった。

ひたすら悲しくて、哀しくて。ただただ泣いていた。

ひたすら泣いていた。

__________________________________________________________

 

言葉が逝ってしまってから2日。

もう涙も枯れてしまった。

言葉の遺体は火葬した。

言葉の体はあっという間に燃え、灰になった。

骨も箱に入れて置いてある。

本来、愛したものが死んで哀しくても動くものだろう。未来のために。

しかし、それから私はなにもしなかった。

鬼が壁を壊した部屋。いつもご飯を食べた部屋。

そんな思い出深い部屋の隅に座り、なにもしなかった。

何も考えず、動かず、泣いていた。

そして今、その涙も枯れてしまった。

その時、私はふと思い出した。

言葉の遺した言葉を。

 

「俺が死んだら、この部屋の入り口から見て左奥の畳を開けろ」

 

私は言葉の遺した言葉の通りに動いた。

2日前まで言葉が寝ていた、いつも私達が寝ていた、

私達が交わった部屋に入った。

その部屋もまた思い出深い部屋だった。

私は悲しみながらもそして、左奥の畳を開いた。

すると、下には木の箱が入っていた。

私はその箱を開けた。

中には芭蕉扇と書いた扇のような物が入っていた。

私がそれを手に取ると、その下に紙があった。

何だ?と思い、それに書いてあった文字を私は読んだ。

それは言葉によって書かれたものだった。

内容は、

 

「文お前がこれを読んでいるってことはもう俺はこの世にいないんだろう

きっとお前は悲しむと思う恐らくお前は泣き続けるだろう

俺が死んだことを悲しむなとは言わないだが前に進んでほしい

俺のことを忘れほしくはないが

俺に縛られお前がてなにもしないでいるのはもっと嫌だ

これと一緒に入ってるものはお前にとって役に立つものだ

芭蕉扇と言って振れば風が吹く仙人の道具だ

お前の能力と相性がいいだろう

それを持って自由になってほしい天狗として生きてほしい

頑張って生きてくれ俺はお前が何千何万年たってから死ぬのを気長に待ってるから

自由に空を飛ぶ鴉のように楽しく生きてくれ

-言葉」

 

といったものだった。

それを読み終えた私は、枯れたと思っていた涙がまた溢れ出した。

悲しみもあった。

しかし、前とは違う気持ちが混ざった涙だった。

_________________________________________________________

 

「よし··············」

 

私は天狗として生きることにした。

家は今のままで、妖怪として生きることにした。

悲しみが消えたわけではない。

だが、もう大丈夫。

私は生きていける。

 

私はまず妖怪の山に行くことにした。

天狗として認められるために。

妖怪として生きていくために。

 

言葉の遺した芭蕉扇を片手に、私は出発した。

 

 




射命丸言葉は幼少の頃仙人に素質があると思われ、
仙人になりなさいと言われ、芭蕉扇を貰ったが仙人にならなかった。

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