別世界の異邦者   作:みども

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8話 進撃のたちかぜ

 無事、志望校であった雪凪に合格した日。

 解禁されたヴァンガード。その復帰となる第1戦の相手は、クラウンの強面店主である。

 

 

「「スタンドアップ、ヴァンガード!」」

 

 

「ドラゴンエッグ!」

 

 

「キャプテン・ナイトキッド!」

 

 

 店長のファーストヴァンガードは『ドラゴンエッグ』、私のファーストヴァンガードは『キャプテン・ナイトキッド』だ。

 

 店長のクランは帝国が誇るドラゴンエンパイアの地上強襲部隊『たちかぜ』。

 自身のRやRの持つ武装ゲージというたちかぜ特有のカードをコストにすることでスキルを発動するクランだ。しかし主軸に据えるユニットによってその効果がパワーアップ、効果による相手へのダメージ、相手のRの除去、手札の獲得、攻撃回数の増加など、多彩な幅を持つ。

 デッキアウトや戦列の不足などのリスクと戦いながら相手の防御を突破するためのスキルの取捨選択を行い続けなければならないため、使いこなすのはとても大変だけど、扱えれば攻防の面において強力というガチガチの玄人向けのクランだと思う。

 でも店長は昔からこのクランを使いこなしているので、その点は問題ない。

 

 一方、私のクランは昔から愛用している不死の海賊団グランブルーである。同じグランブルーでも『コキュートス』をメインに使う小宮山のデッキとは違いがあるけど、同じクランなので基本的な戦術は大差ない。

 その効果は言わずもがな、ドロップゾーンを利用した攻撃と、プロテクトを利用した防御によって攻防ともに力を発揮するクランだ。

 もちろんこっちも強い反面扱うのは難しい玄人向けのクラン。低コストでシンプルに強いスキルが多いので誰でも扱えるシーストライカーと違い、使いこなせなければ宝の持ち腐れとなる。

 でも私はむしろこっちが付き合いの長いクランなので、シンプルに強いシーストライカーも好きだけど、使いこなすという面においては馴染んでいるのはこの海賊の方である。

 

 店長は私がシーストライカーではなくグランブルーを出したことに一瞬驚いた様子だったけど、すぐに気を取り直す。

 

 

「何だ、今回はグランブルーか」

 

 

「……ま、シーストライカーよりは馴染んでいるし」

 

 

「確かにな。では、俺の先攻だ。ドロー、『アシストプテリクス』にライド! 『ドラゴンエッグ』のスキルにより1枚ドロー。ターンエンドだ」

 

 

 店長がライドしたのは『アシストプテリクス』。たちかぜのグレード1で、スキルとシールドを持たない代わりにグレード1においては最大のパワー9000を持つ、ブースト要員やVで力を発揮するユニットである。

 特に先攻の最初のライドに用いれば、先に攻撃できる後攻の攻撃をそのパワーで凌ぎやすくするし、上手くいけば手札を消費せず1ダメージも受けずに自分のターンに回すこともできる。

 最初にダメージを稼がせないというのは、結構後から響いてくるものがある。特にグランブルーのような『アシストプテリクス』と同じパワー9000のグレード1のカードがないクランにとっては、早い段階でブースト要員が必要となり手札の消費を多くさせやすい。

 

 この手のユニットは他のクランの多くにもあるので、これがたちかぜと店長のデッキの強みということではないけど。

 さて、次は私のターンだ。

 

 

「ドロー。『細波のバンシー』にライド、『キャプテン・ナイトキッド』のスキルで1枚ドロー」

 

 

 私がライドしたのはグランブルーのグレード1、『細波のバンシー』。ドロップゾーンからスペリオルコールした時に1枚ドローできるスキルをもつユニットである。ただし、パワーは多くのグレード1で見られる8000と、アシストプテリクスに及ばない。Vならトリガーを引けばパワーを上げられるが、単独のアタックではダメージを与えられないユニットである。

 

 ただし、今の私にはそれより深刻な問題がある。

 今のナイトキッドのスキルで手札に来たのは、グランブルーのグレード3『剣豪 ナイトストーム』。

 マリガンでも最初のドローでもグレード2のカードが来なかったため、このままだと次のライドができない可能性が高い。

 

 グレード1を並べて攻撃回数を増やし先にダメージを与えておくというのもあるが、パワー9000のグレード1のカードはないので並べたところで攻撃が届かない。ここは順調なライドができない可能性を考慮して手札は温存して進めることにした。

 バンシーのブースト要員となるRはコールせず、メインフェイズを終えてアタックフェイズへ移行する。

 このアタックとドライブチェックでグレード2かドロートリガーが出ることを期待しながら、Vの『細波のバンシー』をレストした。

 

 

「『細波のバンシー』で『アシストプテリクス』にアタック!」

 

 

 バンシーのパワーは8000。

 トリガーを引けなければアタックは届かない。

 ならば無駄になるかもしれないガーディアンをコールして手札の消費を増やすよりもと、店長はノーガードを選択した。

 

 

「ノーガードだ」

 

 

「ドライブチェック……『荒海のバンシー』」

 

 

 ドライブトリガーは『荒海のバンシー』。クリティカルトリガーである。

 有効ではあるけど、ダメージを与えられずにターンを終えることになろうとも、グレード2のカードが欲しかった。

 しかし出なかったものは仕方がない。手の内を見透かされないように、表情を変えずにトリガーを発動させる。

 

 

「クリティカルトリガー発動。バンシーのパワー+10000、クリティカル+1」

 

 

 トリガーの効果でパワーアップしたことにより、細波のバンシーのパワーは18000まで上昇。アタックがアシストプテリクスに届いた。

 そしてトリガーはクリティカル。バンシーはクリティカルも増やしており、一気に2ダメージを与えることとなる。

 

 船乗りたちの正気を奪う美しくも悲痛なバンシーの歌声がアシストプテリクスに襲いかかる。

 その歌声は空に上がっていたアシストプテリクスの平衡感覚を狂わせ、その身を地上に落とした。

 歌声と自身の落下。2つのダメージがアシストプテリクスに刺さる。

 

 アタックがヒット。

 店長が山札を上から1枚めくり、トリガーゾーンに出す。

 

 

「ダメージトリガーファーストチェック……『餓竜 メガレックス』、ノートリガー」

 

 

 1枚目はノートリガー。

 続けて2枚目を公開。

 

 

「セカンドチェック……『ソニックノア』、ノートリガー」

 

 

 2枚ともトリガーはなかった。

 私の方はRはいないのでこれ以上のアタックはできない。

 

 

「ターンエンド」

 

 

 ターンエンドを宣言する。

 すると、店長がふっと口元を緩めた。

 893フェイスの店長がそんな風に笑うと、何か企んでいそうで怖い。笑う時は強面の自覚を持って、もっと無害な笑い方をしてくれないだろうか。

 

 それはともかく。

 店長は私の方に声をかけてきた。

 

 

「1発目でクリティカルが出た割には、随分と大人しいな。ルイリちゃんはこういう時、口角くらいは上がっていたぜ」

 

 

「……だから何?」

 

 

 できるだけ手の内を探られないようにポーカーフェイスを心がけたつもりなのだが、逆にそれが店長にとっては不審に見えたらしい。

 手札事故がバレそうである。

 細かいところ見過ぎだろと内心で驚きつつも、平静を装い返すが……

 

 

「1発目のクリティカルトリガーにも表情が変わらないのは、それよりここで出てきて欲しいカードあるのにって時だ。さては、グレード2か3が手札にないだろ?」

 

 

「……っ」

 

 

 看破されていた。

 ポーカーフェイスを心がけたら逆に見破られるという事態に、思わず言葉がつまり唇を噛む。

 店長はその一瞬の反応を見逃さなかった。

 

 

「ビンゴだな。ポーカーフェイスも使いすぎれば手の内が読まれやすい、まだまだだな」

 

 

「チッ……この強面め」

 

 

 これが経験の差というやつなのだろうか。

 今更どう取り繕っても看破されてしまっている。得意げな顔をしている店長に言い返せない悔しさから舌打ちが出た。

 しかし店長にはさして響かず、余裕で受け流される。

 

 

「まだまだ未熟だな、クソガキ。では俺のターンだ、スタンド&ドロー」

 

 

 次は店長のターンである。

 店長の方は、手札事故は起きてなさそうだ。

 

 

「『餓竜 メガレックス』にライド!」

 

 

 店長がライドしたのはたちかぜのグレード2『餓竜 メガレックス』。

 パワーはアシストプテリクスと同様に9000。しかしメガレックスはプテリクスと違いスキルをもつユニットである。

 そして店長はさらに手札から2枚をRに縦に並べてコールした。

 

 

「『サベイジ・トルーパー』、『ターボスミロドン』をコール!」

 

 

 後列には武装ゲージの枚数だけパワーが上がっていく化ければ恐ろしいブースト要員となるたちかぜのグレード1『サベイジ・トルーパー』を、前列には登場時とアタック時に武装ゲージを溜めるたちかぜのグレード2『ターボスミロドン』を配置してきた。

 早速ターボスミロドンのスキルが発動される。

 

 

「『ターボスミロドン』のスキル、登場時にR1体に武装ゲージを1枚追加する。対象は『サベイジ・トルーパー』だ」

 

 

 ターボスミロドンは放置すればするだけ武装ゲージを増やすユニットである。

 そして1枚目の武装ゲージが置かれたのは『サベイジ・トルーパー』。

 そのスキルは自身のターン中に武装ゲージの枚数×5000のパワーアップを得るのいうもの。

 ターボスミロドンの効果で追加された武装ゲージにより、サベイジ・トルーパーがパワーを増した。

 

 

「『サベイジ・トルーパー』の永続スキルを発動。自身に置かれた武装ゲージ1枚につきパワーを+5000する」

 

 

 登場時だけでなく、ターボスミロドンのスキルはアタックするたびにも武装ゲージを追加していく。

 ターンを重ねれば重ねるほど、ターボスミロドンのスキルによりサベイジ・トルーパーのパワーは上がっていく。後列なのでアタックによる除去もできない、なかなか厄介なブースト要員を用いた戦い方だ。

 

 攻防ともに力を発揮するグランブルー海賊団だが、自分たちは不死身なので退却させられるスキルにはつよいのだが、逆にかげろうやなるかみのような相手ユニットをスキルによって除去するスキルには恵まれていない。

 いくら防御面も優れるクランとはいえ、ターン毎にパワーを上げられれば得意の持久戦でも苦しくなる。

 

 グレード2がない現状、ライドできない可能性が高いためGアシストを使うことも考慮しなければならず最初から防御に手札を使いたくはないのだが、防げる序盤の攻撃を防いでおかなければパワーアップを繰り返す攻撃を後半で防ぐことは難しくなる。

 アタック回数に優れるアクセルのイマジナリーギフトを持つたちかぜならばなおのこと。ダメージの数を押さえておけばパワーが高いアタックにも対応する余裕ができる。

 手札を使いダメージを抑えるか、手札を温存し自分のターンの展開を有利に進めるか。ファイターの選択を迫る状況だ。

 

 しかし対戦相手は待ったなし。

 店長は私に悠長に考える時間をくれるほど甘っちょろい人ではない。むしろ苦い。そして顔が厳つい。

 

 

「では行くぞ、アタックフェイズだ。『餓竜 メガレックス』で『細波のバンシー』をアタック!」

 

 

 店長がVのメガレックスをレストする。

 メガレックスはアタック時にR1体を退却させる代わりに1枚ドローするスキルを持っているのだが、今回は使わないようだ。

 用途としては攻撃に使用したRの代わりに次の相手のアタックを防ぐカードを手に入れるためのスキルである。

 でも、攻撃重視のこの布陣では未確定の手札よりもアタック要員を残す方が良い。

 ターボスミロドンの武装ゲージを溜めるスキルを使えば相手がダメージトリガーを得てもターボスミロドンのアタックを通せるので、私でも同じ選択をするだろう。

 

 ここは手札の消費を抑える。

 私は後半戦に備えるよりも手札を残して次のターンをつないでいく準備をすることを選択した。

 

 

「ノーガード!」

 

 

「なるほど……では、ドライブチェックだ」

 

 

 店長の方も私がライドしやすい手札の温存を選択したことを見抜いた様子。

 そうと決まれば、ダメージ早い段階から遠慮なく稼ぐ速攻を仕掛ける布陣を次に展開してきそうである。

 さて、メガレックスはVだ。さっき私が『細波のバンシー』のアタックでクリティカルを引いたように、『餓竜 メガレックス』のアタックではドライブチェックがある。

 

 

「……『群竜 タイニィレックス』!」

 

 

 出たのは『群竜 タイニィレックス』。トリガーアイコンを持つカードである。

 トリガーは、フロントトリガー。アクセルのイマジナリーギフトを持つクランだけに与えられた4つ目のトリガーアイコンである。

 グランブルーなどのプロテクト、シーストライカーなどのフォースをイマジナリーギフトにするクランには無い。

 フロントトリガーの効果はVを含め前列全てのユニットのパワーを+10000するというものである。全体のパワーを底上げし他のユニットのアタックを通しやすくすることであと1ダメージの局面には特に大きな効果を生み出す他、ダメージトリガーで出た場合にはRの防御にも活躍する強力なトリガーだ。

 このフロントトリガーはパワーアップするユニットを選ばないため、ツインドライブを持つグレード3のVがでてくるとダブルトリガーという可能性に大きな影響を及ぼす。ドロートリガーに比べるとやっぱり無駄落ちになる可能性もあるが、場合によってはクリティカルトリガー、ヒールトリガーよりも攻防ともに強力な効果を生み出すトリガーだ。

 

 

「フロントトリガー発動! メガレックスとターボスミロドンのパワーを+10000!」

 

 

 前衛2体のユニットのパワーが上がる。

 武装ゲージや仲間であるRを用いたスキルにより強力な見返りを得ることができるたちかぜは、ダメージを大きくするクリティカルトリガーとの相性もいいため、アタック回数と引き換えにパワー不足に悩む他のアクセルクランに比べるとフロントトリガーにそこまでこだわる必要は無い。

 だが、逆に自力で大きなパワーを得ることが可能なたちかぜにとって前列全てをパワーアップするフロントトリガーは鬼に金棒のような存在であるとも言える。

 

 空腹からくる怒りを力に変え、メガレックスの怒りの一撃がバンシーに叩きつけられる。

 その一撃に、バンシーの口から出たのは船乗りたちを惑わせる美しくも悲痛な歌声ではなく、傷を受け痛みを受けてあげるか弱い悲鳴だった。

 

 

「ダメージトリガーチェック……『魔の海域の王 バスカーク』、ノートリガー」

 

 

 ダメージ1枚目はノーマルカードであった。

 トリガーはない。出たところで、サベイジ・トルーパーのブーストを受けるターボスミロドンのパワーの前には焼け石に水のようなものだが。

 店長が続いて2体のRをレストして、2度目の攻撃を繰り出した。

 

 

「『ターボスミロドン』に『サベイジ・トルーパー』のブーストをつけて『細波のバンシー』をアタック! 同時に『ターボスミロドン』のスキルを発動!」

 

 

 ターボスミロドンのスキル。アタックする毎に武装ゲージをRに追加する。

 追加する対象はもちろん、武装を貯めるだけ強くなっていく『サベイジ・トルーパー』である。

 そして『サベイジ・トルーパー』のパワーアップは、ブーストを受けることで『ターボスミロドン』にそのまま恩恵となって返ってくる。

 

 

「『サベイジ・トルーパー』に武装ゲージを追加。そしてこれにより『サベイジ・トルーパー』はさらにパワー+5000となり、フロントトリガーの効果を合わせ『ターボスミロドン』は合計でパワー37000となる!」

 

 

「……ノーガード」

 

 

 この序盤の盤面でこれほどパワーを強化されては防ぎようが無い。

 ノーガードを選択し、山札の1番上のカードをトリガーゾーンに公開する。

 

 

「ダメージチェック……『突風のジン』!」

 

 

 ターボスミロドンの爪が立ち上がったばかりのバンシーの体を切り裂く。

 バンシーの口から溢れたのは、またも悲鳴。彼女の歌声は相手を狂わせる歌声だが、その口から紡がれる自身の悲鳴は何ら力のないものだ。

 だが、その悲鳴は聞いていられないと新たな仲間を呼び寄せた。

 

 2枚目のダメージは『突風のジン』。ドロートリガーだ。

 これなら次のライドに繋げられる可能性が出てくる。

 

 

「ドロートリガー発動! 『細波のバンシー』にパワー+10000、そしてドロー!」

 

 

 ドロートリガーの効果により1枚山札の上から引き、手札を増やす。

 店長のアタックはこれで終了なのでパワーアップの効果はあまり意味がないが、ドロートリガーは手札を増やせるため無駄落ちがない安定したトリガーだ。

 特にグレード2を必要としているので手札を増やす機会は1つでも多くあってほしい今の私には、望むところなカードである。

 

 だが、ドロートリガーの効果で引いたカードは『細波のバンシー』。グレード1のカードだった。

 ……おかしい。このデッキはグレード2が少ないみたいなアンバランスな構築はしていないはずなのに。もしかしてあのバカに再会した厄日だからなのだろうか? 

 ……バカ宮め、許さねえ! 

 

 

「…………」

 

 

「ターンエンドだ。望んだカードじゃなかったみたいだな、わかりやすい表情の消失だったぞ」

 

 

「チッ……うるせえハゲ!」

 

 

「いい加減その生意気な態度を改めろ、クソガキ!」

 

 

「クソガキ言うな! ……私のターン、スタンド&ドロー!」

 

 

 グレード2が引けない、店長に見透かされているのがさらにムカつく。トリガーの出は悪くないのに手札の回りが上手くいかず、気分が荒れてくる。

 おかげでもう平静を装う仮面が剥がれてきた。

 というか、バカ宮が1番ムカつく! あのヤロウ、いなくなっても邪魔するのかよ! あとでぶん殴ってやる! 

 

 荒れた気分で迎えたドローフェイズ。

 しかしここでもグレード2が出てこない。

 ……ダメだ、Gアシストを使おう。ライドできないよりは手札2枚を除外したほうがマシだ。

 

 Gアシスト。

 これは手札にVの次のグレードにライドするためのカードがない時に使用できる救済システムで、手札2枚と引き換えにライドできるチャンスを得るというものである。

 手順はライドフェイズ開始時に今持っている手札を全て相手に公開し、その後山札の上から5枚を確認してその中に現在のVのグレード+1となるカードがあれば、それを選んで相手に公開した上で手札に加え代わりに手札から2枚をゲームより除外する。これにより、ライド用のカードを手札に加えることができるというシステムだ。

 グレード2がない今、このままではライドできないためGアシストを使うことにした。

 

 

「Gアシストで手札を公開」

 

 

「グレード2がなかったということか。ドロートリガーもハズレだったみたいだしな」

 

 

 茶々を入れつつ、店長が私の公開した手札を確認する。

 ドロートリガーなどもあり、現在の手札は9枚。グレード3が2枚、グレード1が4枚、グレード0が3枚。グレード2はない。

 それぞれ1枚ずつで、内容は『不死竜 スカルドラゴン』、『剣豪 ナイトストーム』、『ドラゴンスピリット』、『細波のバンシー』、『サムライスピリット』、『悲痛なる銃弾 ナイトゲベール』、『お化けのりっく』、『荒海のバンシー』、『突風のジン』。

 グレード2があれば順当なライドを行い防御にも手札を使用してサムライスピリットなどのスキルを次のターンに活かせる構成だが、基点となるグレード2がない現状では上手い回し方がやりにくい。

 

 けど、来なかったのは仕方がない。

 山札を上から5枚確認する。

 すると、ここで何故か5枚ともグレード2のカードという事態が起きた。

 

 

「……ここでかよ」

 

 

 思わず言葉が溢れる。

 気を取り直して、5枚のグレード2から1枚を選択して手札に加えた。

 今回使うのは『ルイン・シェイド』だ。Rはもちろん、Vとしても十分にその力を発揮できるユニットである。

 

 

「『ルイン・シェイド』を手札に。『荒海のバンシー』と『ドラゴンスピリット』を除外」

 

 

 最悪の展開はGアシストを使っても目当てのグレードのカードを手に入れられない時だ。実際、稀にだがある。

 でも、どれだけバランスのとれたデッキでもライド事故のリスクというのは常についてまわるもの。誰しも1度はGアシストを使うことになるだろう。

 

 だが、Gアシストは単純に手札が減ってしまうというのと、1度手札を公開しなければならないので相手に手の内を晒してしまうという大きなデメリットがある。

 だから、できればマリガンまでに全部のグレード、ライドする時まで猶予がある3は最悪なくても後からどうにかなるけど最低でも1と2は入れておきたいところ。

 

 

「『ルイン・シェイド』にライド!」

 

 

 手札を晒してしまった以上、グレード2のVにまともな攻撃を通せるユニットがいないこともばれてしまったはずだ。

 ここはやはり手札を温存してRはコールせずに、Vだけで攻めることにした。

 

 

「『ルイン・シェイド』で『餓竜 メガレックス』にアタック! そして『ルイン・シェイド』のスキルを発動!」

 

 

 Vのユニット、ルイン・シェイドはアタック時山札を上から2枚ドロップゾーンに置くことでバトル中にパワーを+4000することができる。

 これにより、ルイン・シェイドのパワーは13000となった。パワー9000のメガレックスに対して攻撃は届く。

 店長はノーガードを選択した。

 

 

「ノーガードだ」

 

 

「ドライブチェック……『ストームライド・ゴーストシップ』、ノートリガー」

 

 

 トリガーは無し。

 だけどノーガードを店長は宣言した。ダメージは通る。

 

 ルイン・シェイドの剣がメガレックスを切り裂く。

 アタックはヒット。ダメージトリガー次第だが、果たしてどうか。

 

 

「ダメージチェック……『翼竜 スカイプテラ』。こっちもノートリガーだ」

 

 

 ノーマルカードだった。

 とはいえ私のアタックで成功したのはルイン・シェイド1回のみ。トリガーが出たところで、フロントトリガーやクリティカルトリガーだった場合は無駄落ちする。

 

 

「……ターンエンド」

 

 

「手札がうまく回らない中、ダメージでは優勢で手札も温存しているか。さすが、やるな」

 

 

 これで店長のダメージは3、対して私は2。

 Rは店長が2枚並べているのに対して私の方はVのみ。だけど店長の言う通り、店長の手札は5枚なのに対して私は8枚。Gアシストを使ったとはいえ、ダメージで優勢に立ちかつ手札も多いので防御も確保している。一見、この盤面をみれば私の方が優勢だろう。

 

 しかし次のターンからはグレード3がでてくる。ツインドライブとイマジナリーギフトを駆使するユニットの登場により、いよいよお互い強力なスキルを発揮し相手のシールドを大きく削っていく中盤戦へと向かっていく。ここからが本当の戦いだ。

 特にアクセルのイマジナリーギフトを持つクランであるたちかぜは、ここからたかだか1ダメージの差などとるに足らない怒涛の攻撃を仕掛けてくる。

 

 

「スタンド&ドロー。いくぞクソガキ!」

 

 

「クソガキ言うな!」

 

 

 言い返しつつも、警戒する。

 あの余裕、店長がグレード3を手札に持っていないわけがない。

 私の予想だとおそらく、店長が長年愛用しているあのカード。

 

 

「鎮まぬ怒りに身を任せ、相対する敵全てを滅ぼせ! 『餓竜 ギガレックス』にライド!」

 

 

 クレイの大地に、怒りくるう強大な餓竜が降り立った。

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