別世界の異邦者   作:みども

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12話 アジアサーキットに向けて

 アジアサーキット。

 ヴァンガードの世界チャンピオンを決めると言われる世界最大規模の国際大会だ。

 決勝リーグへと切符を手にするためアジア各地で開催される予選ステージを勝ち上がり、そして決勝リーグで最後まで勝ち抜いた1人だけが栄冠を手にできる。

 毎年開催されるこの大会は、数万人の名のあるファイターたちが世界中から集いチャンピオンの座をかけてファイトを繰り広げる。私も何度も参加しているけど、残念ながら1度も栄冠を手にしたことはない。

 

 そのアジアサーキットに今年も参加するのだが、私はサーキットの最年少チャンピオンであり最多チャンピオンである優勝候補、蒼龍レオンが出る香港ステージに挑戦することにした。

 

 理由はただ1つ。

 決勝リーグに進出した選手同士、顔をあわせることもあたったし話もしたし気があったので友人にもなった。

 それでも未だにこの国際大会で一度も対戦していない。

 最年少でサーキットチャンピオンになった世界最強のアクアフォース使い、その世界最強のファイターと1度でいいから本気で戦いたい。

 レオン1強と言われる香港ステージなら、私が勝ち上がれば必ずレオンと戦える。

 チャンピオンに挑みたい、それが香港に挑戦する理由だ。

 強い相手を避けて手にするような栄冠には、何の価値も感じない。

 

 そうと決まれば、サーキットまでに少しでも実力をつけたい。

 他の予選ステージにいると思わせておいて、香港ステージの会場で驚かせてやろう。

 

 ……というわけで、無事雪凪の合格を報告した私は帰ってきた兄貴を誘ってファイトをしようとしたけどその前にと割り込んできた変態野郎と対峙していた。

 

 

「「スタンドアップ、ヴァンガード!」」

 

 

「『始源の海将 ヴァイキング』!」

 

 

「『忍竜 マガツウィンド』!」

 

 

「……なんで変態なんだよ!?」

 

 

「ご安心ください。僕もファイト中は真剣に相手をします、ファイト中は」

 

 

 つまりファイトが終わればその限りではないということだ。

 ……いや、まあこの変態は腕前だけならサーキットの決勝リーグ進出すら果たす世界に通用する一流のファイターだし、ファイトにならば真剣に取り組むから練習相手としては申し分ない。

 終わったら飛びついてくる可能性高いけど、その時は蹴り飛ばして仕舞えばいい。

 人の家に平然に上がってくる変態だ。蹴っても誰も文句は言わないだろう。

 

 

「先攻貰う。ドロー、『鉄甲戦艦 鬼金剛』にライド。『始源の海将 ヴァイキング』のスキルで1枚ドローしターンエンド」

 

 

 私は今回『シーストライカー』を使う。

 このクランが世界で活躍するファイターにも通用するかどうか、変態が相手なら指標には丁度いい。

 ちなみにこの変態が使うのは帝国の陰で活躍する隠密部隊『ぬばたま』だ。相手や自身のユニットを手札に戻すことでインターセプトを封じたり攻撃力を削いだりする他、『なるかみ』や『かげろう』が得意とするRの除去を防ぐなど、どちらかというとドラゴンエンパイアでは珍しい相手の攻撃を妨害する防御向きのスキルが多いクランである。

 でも、この変態が使うのはぬばたまでありながら一風変わった方法で相手の戦力を破壊するやや攻撃よりなスキルが多いデッキ構成となっている。それはファイトを進めていけば嫌というほど思い知らされる。ここで紹介するのは野暮だろう。

 

 変態だからといって、舐めてかければ痛い目を見る。なにしろ、こう見えてこの変態は私に黒星をつけたあの藍千ソウマにも勝ったことがあるほどの実力者だ。

 クラウンではあのバカ宮に負けたみたいだけど、きっと手札が回らないとかトリガーに恵まれなかったとか、なんらかのアクシデントとかに見舞われたのだろう。変態だけどファイトの腕に関しては、認めている相手だ。実力でやり合えば、あのバカ宮に負けることはないと思う。

 ……だって小宮山(あいつ)は弱いだろ絶対。

 

 

「姫は『シーストライカー』ですか。私も姫のこの新たなクランと対戦できることを光栄に思います。ふ、ふふ、フフフフ……」

 

 

「気持ち悪い笑してないでさっさとやれボケ」

 

 

「はい! では、スタンド&ドロー。変わり身の術、『忍獣 アラクレギツネ』! マガツウィンドのスキルで1枚ドローし、『忍妖 オボロカート』をコール!」

 

 

 変態のFV(ファーストヴァンガード)の『忍竜 マガツウィンド』は、一般的なライドされた際に1枚ドローするスキルを持つぬばたまの先鋒専用のグレード0のユニットである。

 そして変態がライドしたグレード1は『忍獣 アラクレギツネ』。スキルはなく、シールドも他のグレード1に劣る5000しかなく、パワーですらたったの3000というマガツウィンドの半分しかない一見頼りないユニットだ。

 ただしこのユニット、シールドもパワーもスキルの枠も犠牲にしている代わりにクリティカルを2つ持っているというまるで急所を静かに狙い撃ちするかのようなダメージを与えることに特化したユニットだ。

 実はこの手のユニットは他のクランにもあるけどその少なすぎるパワーがブースト要員としても使えないし、前列においてもパワーが低く少ないシールドでガードはされるしインターセプトを持つわけでもないしと、使い物にならないと思われがちなのでほとんどのファイターに使われていない。

 実際、このユニットって活躍する場面があまりにも限られるから。スキルを持つグレード2や3のユニットに比べクリティカル以外取り柄がないから、前列におく価値なしと思われている。

 Vにおいても素のパワーが低いから次のターンの攻撃をもろに食らってしまう。

 そんな欠陥だらけと思われがちなユニットなんだけど、特にカウンターブラストを使いたいとか、後半戦にスキルを駆使して相手にダメージを叩き込みたいというファイターにとっては序盤にVに置かれるとすごく面倒くさい相手となる。

 特にグレード3のスキルをぶつけ合いせめぎ合いをすることを常識としグレード2を出す盤面ですらRを少なめに手札を温存するような連中にとっては、ダメージの稼ぎ時を見落としたり展開の想定を狂わせたりする、結構意表を突いてくるユニットだ。

 変態はこの『忍獣 アラクレギツネ』をデッキに採用しており、たまに出してくる。

 

 

「『忍妖 オボロカート』が支援した『忍獣 アラクレギツネ』で、姫のライドしている『鉄甲戦艦 鬼金剛』にアタックです!」

 

 

 クリティカルが2のユニットのアタック。

 Vなのでドライブチェックもあり、下手をすればいきなり3ダメージを食らいかねない。

 でも、私はノーガードを選択した。

 

 

「ノーガード」

 

 

「ああ……姫が僕のアタックを受け入れてくれた。その艦橋の窓の先に、可愛い姫の顔がイメージできます。どうせなら更衣室の中で––––ぶぼっ!?」

 

 

「いいからさっさとドライブチェックしてアタックしろクソボケ変態野郎!」

 

 

 ふざけたイメージを持ち出そうとした変態の顔面を殴りつける。

 アタックしかけている側なら物理的なアタックを誘導してくる言動は止めろ。アタックする側は本来ダメージ受けないはずだというのに……。

 しかし、マジで今のは寒気がした。ダメだ、日に日にこいつの変態具合が高くなっている。なんか、最近気持ち悪いを通り越して怖いと思うことがたまに起きるのだけど。

 

 顔を赤くし鼻を押さえながら、変態は改めてと山札をトリガーゾーンに公開する。

 

 

「ほらいぶへっぷ……『ひんにゅう ふろまね』!」

 

 

 誰が貧乳だこの野郎! 

 いや、まあ鼻抑えたせいでそう聞こえただけだから変態に『貧乳』と言ったつもりはないだろうけど。

 ちなみにトリガーは『忍竜 クロガネ』、ぬばたまのクリティカルトリガーアイコンを持つカードだ。

 つまり、トリガー発動ということ。いきなり3ダメージ叩き込めるということ。

 

 

「クリティカルトリガーです! 『忍獣 アラクレギツネ』にクリティカルとパワーを、合計で3ダメージを頂戴します!」

 

 

 油断しむやみにその攻撃を受ければ命取りとなる。

 クリティカル2を持つアラクレギツネにクロガネがさらなる一撃を与えられるよう支援を施し、いつもは取るに足らない矮小なシノビが一点必殺の攻撃を鬼金剛のウィークポイントに叩き込んだ。

 

 

「ダメージトリガーファーストチェック……『特潜 ゼロ』、ノートリガー」

 

 

 1枚目はノーマルカード。

 アラクレギツネのようなユニットをVにおけば次のターンにその低いパワーが足かせとなり反撃を喰らいやすいが、序盤ならばイマジナリーギフトを出すには早すぎるためフォースIIで大きなダメージを受けたりアクセルサークルを展開されるようなこともほとんどない。受けてせいぜい3ダメージ。早い段階で手札をあまり消耗せずにダメージを稼ぐ手段として有効であり、倦厭されがちなユニットを使う分相手の意表をつくのに適している。

 割とこの手のユニットを駆使してくるから、変態は初見だと一流ファイターでも対応に苦慮することになる。

 

 

「セカンドチェック……『ヴァリアント・エアシップ』」

 

 

 2枚目はクリティカルトリガー。

 しかしパワーアップしても相手の攻撃はもうないので、トリガーの無駄落ちである。

 

 

「くそ……効果は鬼金剛に」

 

 

「その悔しがる顔も可愛い……フォト撮ってもよろし––––ぶべっ!?」

 

 

「よろしくねえよ、変態!」

 

 

 さりげなくスマホ構えようとした変態の顔面にストレートを打ち込む。

 ファイトは真面目にやっているけど、少し気が抜けるともう変態行為始めるからこっちが疲れるわ。

 それより、アラクレギツネのクリティカルはトリガーも相成り3。もう1ダメージある。

 

 

「サードチェック……『鉄甲戦艦 鬼金剛』、ノートリガー」

 

 

 これでダメージ3。

 序盤からかなりやられてしまった。

 

 

「ぼくのはーんはほれまれへふ」

 

 

 変態がターンエンドを宣言する。

 鼻抑えられると聞き取りづらいんだけど(※貴女の所為です※)。

 ……まあ、いい。次はこっちのターンだ、アラクレギツネのパワー不足を逆手にとって一気に攻めさせてもらう。

 

 

「スタンド&ドロー。『クラスWASP』にライド」

 

 

 ライドしたのはシーストライカーのグレード2、『クラスWASP』。シールドが無いためインターセプトが実質無意味、それにスキルもないバニラであるが、代わりに12000というグレード2の中で最高のパワーを持つユニットである。

 同じグレード2のユニット相手にはそのパワーにより攻撃を通しにくいという特徴があり、『鉄甲戦艦 鬼金剛』同様に先攻ならばVに置くことで攻防両面においてそのパワーを発揮する。

 

 アラクレギツネはパワー3000。あのVならばパワーの低いユニットのアタックも通せる。

 アタック回数を増やすべくこちらも手札からユニットを展開した。

 

 

「『海将 トルキスイクシード』と『海将 アメリカンイクシード』をコール。アメリカンイクシードのスキルにより、さらに山札から『海将 ジパングイクシード』をスペリオルコール!」

 

 

 右の列に『海将 トルキスイクシード』と『海将 アメリカンイクシード』を、そしてアメリカンイクシードのスキルを用いて左の列に『海将 ジパングイクシード』をそれぞれ配置した。

 ジパングイクシードは防御に特化したユニットであり、グレード2でありながらパワー5000というひときわ低い攻撃力しか持たない。そのためブースト要員が必要となるが、今の変態のVはそれよりさらに低いのでジパングイクシードでも攻撃を通せる。

 

 

「展開してきましたね」

 

 

 なんか変態の方は真剣になってくれているけど、すでに立ち直っている。

 私のストレート、あんまし効いてないのか? 体の方も鍛えなおすか(※変態が異常なのです※)。

 アタックフェイズに移行する。

 

 

「『クラスWASP』でアタック」

 

 

「ノーガードです」

 

 

「ドライブチェック……『幻想戦艦 ヒラヌマ』、ノートリガー」

 

 

 ヒールトリガーかクリティカルトリガーがくれば逆転できたのだが、ノーマルカードだった。

 トリガーは運次第、都合よく来るものじゃ無いけど……バカ宮に会う日はなんかデッキのめぐりが悪いというか、クリティカルの無駄落ちとかが特に多い気がする。

 

 

「ダメージチェック……『忍妖 クロバネテング』、こちらもノートリガーです」

 

 

 変態もトリガーは無い。

 常道としては次のアタックをパワーの低いジパングイクシードで行えば、トリガーを引かれたとしてもアメリカンイクシードのアタックが通せる。

 けど、ここは『海将 トルキスイクシード』のスキルを活かすためにあえてアメリカンイクシードを使うことにした。

 

 

「『海将 トルキスイクシード』でブースト、『海将 アメリカンイクシード』で『忍獣 アラクレギツネ』にアタック!」

 

 

「ノーガードです」

 

 

 トルキスイクシードのブーストを合わせたアメリカンイクシードのパワーは18000。アラクレギツネのパワーを考慮すると、かなりのシールドを要求されることになる。

 しかしクリティカルが上がっているというわけでも無いため、余計な手札を消費するくらいならと変態はこれもノーガードを選択した。

 アラクレギツネにライドした以上、このターンで猛攻を食らうことになることも当然覚悟の上なのだろう。

 

 

「ダメージトリガーチェック……『忍妖 ザシキヒメ』!」

 

 

 ここでヒールトリガーが出てきた。

 ダメージは私の方が多いので回復はできないが、Vのアラクレギツネのパワーアップは可能。ジパングイクシードは単独ではアタックを通せなくなる。

 

 

「ヒールトリガー発動です! 効果はアラクレギツネに、パワー+10000!」

 

 

 アラクレギツネのパワーはこれで13000。

 ジパングイクシードのパワーは5000。

 ……ただし、『海将 トルキスイクシード』にはシーストライカーが得意とするスキルがある。

 

 

「姫の求愛アタック、僕は全部受け止めたいのですが……」

 

 

「求愛は取り消せ変態野郎! あと、悪いがジパングイクシードのアタックも受けてもらうぞ」

 

 

「え?」

 

 

 目を丸くする変態。

 まあ、トルキスイクシードのこのスキルはバカ宮とのファイトでは発動していなかったからな。

 トルキスイクシードのスキルに必要なコストはRに自身と、そしてカウンターブラストが1枚。先のターンでいきなり3ダメージも食らったおかげでアメリカンイクシードのスキルを使ったあとでもコストはまだ十分にある。

 

 

「『海将 トルキスイクシード』のスキル発動! ブーストしたバトル終了時、こいつを山札の下に置いてカウンターブラストする事で、山札からトルキスイクシード以外のユニットを空いている後列のRにスペリオルコールする。来い、『煉獄大空母 タイホウ』!」

 

 

「おお! さすがはマイプリンセス!」

 

 

 シーストライカーのユニットに多く見られた、山札のユニットと入れ替えるスペリオルコール。

 山札にRや手札、ドロップゾーンからさえもカードを送り、そこからスペリオルコールをする。どの場所よりもカードが多く積まれている山札からのスペリオルコールは、多くの盤面において望みのカードを呼べる可能性が最も高い場所であり、取り扱いが非常にやりやすい。

 

 そして私がスペリオルコールしたのは『煉獄大空母 タイホウ』。パワー不足により攻撃面がどうしても弱くなってしまうジパングイクシードと相性抜群の強力なブースト要員である。

 本来こいつはブーストを持たないグレード2だが、前列のユニットに『イクシード』の名が入っていればパワーを+3000したうえでブーストを獲得できるスキルを持つ。

 13000のブーストはジパングイクシードのパワー不足を解消してくれる頼れる支援担当のユニットだ。

 

 これで3度目のアタックもトリガーのパワーアップを果たしたアラクレギツネに通せるようになった。

 3度目のアタックを行うべく、ジパングイクシードとタイホウをレストする。

 

 

「『海将 ジパングイクシード』にスキルでブーストを得た『煉獄大空母 タイホウ』のブーストをつけて『忍獣 アラクレギツネ』にアタック! タイホウのスキルと合わせ、ジパングイクシードはパワー18000だ!」

 

 

「ふふふ……ですが、さすがにトリガーの恩恵を無駄にしたくはありませんので。空蝉の術、『忍竜 クロガネ』!」

 

 

「チッ……ターンエンド」

 

 

 3度目のアタックは、しかし15000のシールドを持つクリティカルトリガーで防がれた。

 ダメージはこちらが3で変態が2。アラクレギツネがVであるうちにダメージを並べるところまでは行きたかったが、届かなかった。やや劣勢というところだろうか。

 

 次は変態のターンである。

 そして、ここからこいつのぬばたまの強さが発揮される。

 

 

「スタンド&ドロー。変わり身の術、『修羅忍竜 カブキコンゴウ』!」

 

 

 ぬばたまのグレード2、『修羅忍竜 カブキコンゴウ』。

 パワー9000。スキルはあるが、Rの登場時に発動するものなのでVでは特に何か起こすようなユニットでは無い。

 

 しかしこれで終わらず、さらに変態はユニットを展開してきた。

 

 

「口寄せの術、『忍獣 タマハガネ』!」

 

 

 左のRの前列に、ユニットをコールする。

 ぬばたまのグレード2『忍獣 タマハガネ』。こいつはRに登場した際に発動するスキルがある。

 そしてそれが、この変態のぬばたま忍軍が得意とするスキル。

 

 

「ソウルブラスト! 『忍獣 タマハガネ』のスキルにより、『煉獄大空母 タイホウ』を手札に戻した上で手持ちの手札から1枚を破棄してもらいます!」

 

 

「やっぱり始まったか……!」

 

 

 タマハガネのスキル。

 R登場時にソウルブラストをすることにより相手のRを手札に戻した上で、その手札から1枚をドロップさせるというもの。

 序盤は積極的に攻撃し多くのダメージを与え、そこから手札を破棄させて攻撃と防御の両方の面において相手の戦力をそぎ落としていく。それが変態の扱うぬばたまの戦い方である。

 

 カウンターブラストのコストを確保するために序盤の攻撃をむやみに受けて仕舞えば、温存していた手札をこの得意のスキルで破棄させられ、いずれジリ貧に追い込まれてしまう。

 ぬばたまのイマジナリーギフトはプロテクト。防御面で優れているため、削られていく手札から焦って繰り出すような半端な攻撃では突破できない。

 変態の駆使するぬばたまは、手札を削り相手の戦略を掻き乱してくる非常に厄介なデッキである。

 

 

「『煉獄大空母 タイホウ』を破棄する」

 

 

 手札に戻されたタイホウをドロップゾーンに置く。

 一応タイホウは手札にももう1枚あるので、次のターンのジパングイクシードのブースト要員は確保できているが、手札1枚の破棄はドロップゾーンに送られようとも復活することを得意とするグランブルーでもなければ戦力をそぎ落とされているということなどで後から影響してくる。

 この変態の強さは分かってはいたけど、毎回対峙するたびに改めて思い知らされるものだ。

 

 WASPのパワーを突破するため、さらに変態はタマハガネの後ろにもユニットをコールしてきた。

 

 

「口寄せの術、『忍獣 トガジュウジ』!」

 

 

 これで攻撃の布陣は整ったというところだろう。

 アタックは2回。手札を確認する。

 

 

「では、アタックフェイズを行かせていただきます。『忍妖 オボロカート』の支援した『修羅忍竜 カブキコンゴウ』で、姫のライドしている『クラス WASP』にアタックです!」

 

 

「……ノーガード」

 

 

「またも僕のアタックを姫が受け入れてくれた……ああ、その艦橋の中から嫌悪感を隠しもせずに睨みつける姫の姿がイメージできます。ここはやはり艦橋ではなく更衣室にいる姫をイメージ––––ヒデブッ!?」

 

 

「するなって言ってんだろうが!」

 

 

 毎回のことだけど、Vでアタックする時のその気持ち悪いイメージをやめろ! 

 ぶん殴って黙らせる。

 おかげでこいつはドライブチェックの時、大抵鼻抑えているんだよな。いい加減懲りろよと思うけど、こいつド突いても蹴りつけても喜ぶ変態なので、どうしようもない。

 

 

「ほらいぶへっぷ……『ひんにゅう ほれっぽまふらー』、ほーほいまーへふ」

 

 

 変態が引いたのは『忍竜 ドレッドマスター』、ノーマルカードだ。

 トリガーではないのだけど、今のカードも厄介なユニットである。

 

 

「ダメージチェック……『海将 ジパングイクシード』、ノートリガー」

 

 

 聞き取りづらいし、『忍竜』が『貧乳』に聞こえるのどうにかならねえか? 

 殴らなきゃいいとか言われても無理だ。変態のイメージが気持ち悪すぎて、力ずくで止めないとファイトにとてもじゃないけど集中できない。

 

 

「『忍獣 タマハガネ』、『忍獣 トガジュウジ』の支援のもとWASPにアタックを! マイプリンセスに僕の愛を届けてください! 姫、このバラが僕の愛です!」

 

 

 イメージ上でタマハガネがその凶悪そうな見た目に似合わないバラの花束抱えて突撃してきた。

 ……って、クマなんだから爪で攻撃しろよ! こんなの受けたくない、絶対嫌だ! 

 

 

「誰が受け取るか! 『エンタープライズ』、その変態忍者の手下をシャットアウトしろ!」

 

 

 手札からクリティカルトリガーの『エンタープライズ』をコールしてガードする。

 鳥肌が立つ。まさかのリアガードのアタックまで変態アタックになった。もう、こいつどこまでおかしくなるのだろうか? 

 

 

「ターンエンドです。さあ、マイプリンセスどうぞド突いて下さい!」

 

 

「お前マジで嫌いだ……スタンド&ドロー」

 

 

 強いからファイト相手にはもってこいなんだけど、この変態具合だけはどうにかならないものか。

 気を取り直してファイトに集中する。

 ここからはグレード3が登場する中盤戦だ。ダメージはすでに4、変態は2。なんとかこのターンで盛り返す! 

 

 

「『星条海将 アメリカンイクシード』にライド!」

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