別世界の異邦者 作:みども
ヴァンガード。
地球によく似た惑星クレイを舞台とする、カードゲーム。
クレイの地に無力な霊体として降り立ったファイターが持つ能力は2つ。
自身に力を貸してくれるユニットたちを自身に憑依させるライド、そして仲間を召喚するコール。
ヴァンガードに攻撃を通し、契約の途切れたユニットが6体に達した時、ファイターは契約を結んだユニットたちとのつながりを切れさせられ霊体は消失する。
要するに、Vに攻撃を通して6ダメージ与えれば勝ち。それがヴァンガードだ。
このゲームには、50枚からなる一式のデッキを使用する。
デッキの内容はカードのテキストの部分が黒地となっているノーマルユニットが34枚、黄色になっているトリガーユニットが16枚。
この中から最初のヴァンガードとなるグレード0のカード、ファーストヴァンガードをヴァンガードサークルに伏せておき、残りのカードをシャッフルしてデッキゾーンに置く。
デッキゾーンに置かれたカードの山は、山札となる。この山札のカードがなくなった時は、デッキアウトで即座にそのファイターの負けが決定する。
デッキゾーンの他には、その上にあるトリガーゾーン、退却したカードが送られるドロップゾーン、ヴァンガードがアタックを受けた際にカードが置かれるダメージゾーン、ヴァンガードが置かれるVサークル、リアガードが置かれるRサークル、ガーディアンが置かれるGサークルがある。
その説明は後ほど。
デッキゾーンに山札を置き、山札の上から5枚の手札となるカードを引けば準備完了。
この際、手札は一度だけ引き直しが可能だ。
グレード1から3を各1枚以上揃えるのが手札の基本。ヴァンガードのライドはグレード0から1、1から2、2から3、3から4と、同等か1つ上のグレードにしかライドできないからだ。
引き直しは不要なカードを山札の下に置き、山札の下に置いた枚数と同じ数山札の上から引く。引き直しは一度しかできないが、各ターンのライドフェイズにはGアシストという機能を使えばライドが可能なので、全てのグレードが揃わなくても諦めることはない。
さて、このファーストヴァンガードがクレイに立つ霊体が最初にライドできるユニットだ。これを表にしたらゲーム開始である。
その際の掛け声は……
「「スタンドアップ、ヴァンガード!」」
「出航だ、『案内するゾンビ』!」
「『始源の海将ヴァイキング』!」
……たまに間に『マイ』を入れる人がいるけど。まあ、ファイトスタイルは人それぞれだし、それは置いておいて。
こうしてクレイの地にて、霊体からユニットにライドすることができた。
ヴァンガードには先攻と後攻があり、先攻のターンからそれぞれのターンを繰り返していくターン制のゲームだ。
ターンには流れがあり、ユニットをスタンドさせるスタンドフェイズ、山札から1枚引いて手札を増やすドローフェイズ、ヴァンガードのライドを行うライドフェイズ、ユニットのコールやスキルを駆使するメインフェイズ、相手のユニットにアタックをするアタックフェイズ、ターンを終了するエンドフェイズで構成される。
ライドは今のヴァンガードの現在のグレード〜+1のグレードのユニットまで手札から選びライドすることができる。リアガードにコールできるのは現在のヴァンガードのグレードと同じかそれ以下のユニットのみだ。
アタックは前列のリアガードとヴァンガードが行い、縦向き(スタンド)状態を横向き(レスト)状態にすることでアタックする。後列のユニットはブーストを持っていれば、同じくレストすることで前列のユニットにパワーを貸すことができる。
そのパワーが相手のアタック先のユニットのパワー以上ならば、アタック成功。リアガードにアタックがヒットすればそのリアガードを退却させ、ヴァンガードにアタックがヒットしたら相手に1ダメージを与えることができる。
ちなみにアタックできる対象は基本的に相手の前列のユニットのみだ。
ヴァンガードがダメージを受けた際、山札の1番上のカードをトリガーゾーンに公開し、公開した後にそのカードはダメージゾーンに置かれる。
このダメージゾーンのカードが6枚になった時、勝敗が決するというわけだ。
しかし、アタックを受けた側はアタックされた際にガーディアンと呼ばれるユニットをコールすることができる。
そのユニットの持つシールド値はアタックされたユニットのパワーに加算され、相手の攻撃を防ぐことが可能だ。
ガーディアンはバトル終了後に退却する。たとえアタックがヒットしたとしても、一度コールされたガーディアンはバトル終了後に全てドロップゾーン行きだ。
ガーディアンに関してはリアガードのコールとは違いヴァンガードのグレードと関係なくコールできるのでヴァンガードのグレードが1でもグレード2のカードをコールすることも可能である。さらにイマジナリーギフトには……
「『シーストライカー』? 何だ、そのクラン、聞いたことねえぞ」
小宮山は私のファーストヴァンガードを見て、シーストライカーというクランを初めて見ると言った。
どうやら、本当に出て間もないクランのようである。もしかしたらスターターデッキだけなのかも。
もしくはなんかの大会の記念品……? それは流石にないか。
まあ、相手がこのクランを知らなくても私はどうでも良い。
「さっさと始めろよ」
「可愛い顔して口悪いな……まあ良いや。俺の先攻、ドロー!」
ドローフェイズで1枚引き、手札から1枚をヴァンガードにライドさせる。
「まずはこいつだ!『伊達男 ロマリオ』にライドだぜ!」
伊達男ロマリオ。グレード1。
相手は不死の海賊をモチーフとするグランブルーのデッキのようだ。
ファイターが使えるのは基本的にライドとコールである。
しかし、それで呼ばれるユニットたちには独自の能力、スキルが存在する。
ヴァンガードでは、そのスキルを駆使して相手の守りを崩していき6ダメージを叩き込むのである。
スキルは大まかに効果が指定範囲内の間ならば永遠に発動し続ける永続スキル、メインフェイズ中にファイターの自由に発動させる起動スキル、条件が揃ったタイミングで発動する自動スキルの3種類がある。
「『案内するゾンビ』のスキルを発動! ライドされた時、1枚ドロー!」
ファーストヴァンガードの多くが持つスキルである。
他のカードにライドされた時、山札から1枚引いて手札を増やすスキルである。
メインフェイズは何もせず、アタックフェイズへ移行。
ただし、ヴァンガードにおいては先攻のファイターは最初のターンに限りアタックができない。
なので必然的にアタックフェイズも何もせず終わる。
「ターンエンドだぜ。そら、お前のターンだ」
やけに自信満々な態度だ。
実力はあるだろう。けど……小宮山の使っているグランブルーはかつて私が使っていた、というか今でも休止中とはいえ現役で使っているクランである。
このクランの特性は知り尽くしている。新しいカードが出ている可能性もあるけど、私にとっては勝手知ったる相手だ。
さて、私のターンである。
後攻のファイターからアタックが可能となる。
アタックする側のユニットは基本的にパワーに関係なくダメージを受けたりすることはない。だから、思いっきりアタックすれば良い。
「ドロー。『海将 トルキスイクシード』にライド」
私がライドしたのは『海将 トルキスイクシード』。グレード1、パワー8000、シールド10000、そしてVにおいて発動するスキルを持つユニットだ。
グレード1のヴァンガードにちょうど良い。
「『始源の海将ヴァイキング』のスキルで1枚ドロー」
そして私のファーストヴァンガードである始源の海将ヴァイキングも、案内するゾンビと同じライドされたときに1枚ドローするスキルを持つ。
これで私の手札は6枚。
リアガードを揃えてアタックするのも良いが、ここは何もコールせずメインフェイズを終えてアタックフェイズに移行した。
「『海将 トルキスイクシード』で『伊達男ロマリオ』にアタック!」
トルキスイクシードをレストして、アタックする。
パワーは同じ8000。このままガーディアンをコールしなければアタックは通る。
小宮山は、ガーディアンのコールをしなかった。
「ノーガードだぜ!」
ノーガード宣言。
ガーディアンをコールせず、アタックを受ける宣告だ。
さて、このままアタックしても攻撃は通りダメージを与えられるのだが、その前に1つ。
Vサークルのユニットに限り、アタック時にドライブチェックというアクションをすることができる。
何をするのかというと、山札の1番上のカードをトリガーゾーンに公開するのだ。
……別にダメージにカードを置くわけじゃない。アタック受けたわけじゃないから。むしろ逆だから。
このドライブチェックで公開されたカードは手札に加えられるのだ。
そしてもう1つ、このドライブチェックで公開されたカードがトリガーユニットだった場合、そのユニットの持つトリガーの効果を発動できる。
さて、私のトリガーはというと……
「『海将 ルーシイクシード』」
「いきなりかよ!?」
ドロートリガーの効果を持つ『海将 ルーシイクシード』である。
ドロートリガーの効果は、山札から1枚ドローして手札を増やし、好きなユニットにパワーを+10000するというものである。
「トリガー発動、1枚ドローしてトルキスイクシードにパワー+10000」
パワー18000に上昇した海将トルキスイクシード。
言うまでもなくアタックはヒットする。
アタックがヒットした時、受けるダメージはヒットさせたユニットの持つクリティカルの数と同じとなる。
ちなみにトルキスイクシードのクリティカルは1。よって、ロマリオの受けるダメージは1となる。
ダメージを受けたとき、山札の1番上のカードがトリガーゾーンに公開され、その後そのカードは手札ではなくダメージゾーンに置かれる。
この時、同じようにトリガーゾーンに公開されたカードがトリガーを持っていれば、そのトリガーが発動する。
「ダメージチェック……『ナイトスピリット』! おっしゃ、クリティカルトリガー発動だぜ!」
小宮山もトリガーを引き当てた。
そのカードは『ナイトスピリット』。クリティカルトリガーを待つユニットであり、その効果は好きなユニットにパワー+10000とクリティカル+1を与えるというもの。
この2つの効果は別のユニットにそれぞれ振ることができる。
……ただし、私の攻撃できるユニットはもういないので意味のないトリガーだけど。
ちなみにトリガーの効果は発動したターン中のみ。
このターンが終わればお互いパワーもクリティカルも元に戻る。
「……って、トリガーの無駄落ちかよ!」
「……今更気づいたわけ?」
こいつやっぱりバカだ。
……それはともかく、ここでトルキスイクシードのスキルが発動する。
「『海将 トルキスイクシード』のスキル。Vサークルにいるトルキスイクシードのアタックがヒットしたので、1枚ドロー」
このユニット、『海将 トルキスイクシード』のスキルはVサークルで行ったアタックがヒットした時、1枚ドローできるというものだ。
序盤に手札を補充してくれる便利なスキルである。
「ターンエンド」
「初見のクランだと戦い方が見えねえな……まあ、良い! 行くぜ、俺のスタンド&ドロー!」
相手にターンが移る。
まだまだファイトは序の口である。
「行くぜ、『大幹部 ブルーブラッド』にライドだぜ!」
続いて小宮山はグレード2の『大幹部 ブルーブラッド』にライドした。
そして、ロマリオにもライドされた時に発動するスキルがある。
「ロマリオのスキル発動! カウンターブラスト、手札の1枚をソウルへ送ることで、山札の上から3枚をドロップゾーンへ送り、そのドロップゾーンから1枚を手札に加えるぜ!」
カウウターブラスト。
ユニットのスキルには様々なスキル発動のための条件がある。
カウンターブラストはダメージゾーンに置かれた表のカードを要求された枚数裏返すこと。ダメージが多ければ多いほどカウンターブラストで支払えるコストは増え、より強力なスキルが使えるようになる。
今回のスキルはカウンターブラスト1枚である。
小宮山のダメージゾーンに置かれたカードは表の『ナイトスピリット』が1枚。コストは十分に払えるから、スキルが発動する。
グランブルーデッキは、ドロップゾーンが重要な役割を果たす。
ドロップゾーンの枚数に応じてスキルを発動するユニットや、ユニットの墓場であるドロップゾーンからのスキルによるコール、まさにユニットの復活する姿を見せてくれる不死の海賊団にふさわしいスキルが多い。
今ドロップゾーンに置かれたカードは、『ストームライドゴーストシップ』、『ナイトスピリット』、『スケルトンの抜刀兵』の3枚。
その中から15000という高いシールド値を持つ『スケルトンの抜刀兵』を小宮山は手札へ戻した。
「『グリード・シェイド』、『サムライスピリット』、『洒落男 アルヴァーロ』をコール!」
さらに盤面を整えてくる。
両サイドの前列に加え、左の後列にもリアガードをコールしてきた。
グレード2のカードが盤面に出てきたところから、各ユニットのスキルも次々に出てきてファイトは本格的な局面を迎えてくる。
グレードに応じ、ユニットが持つスキルもある。
それが後列のユニットが前列のユニットにアタック時にパワーを貸すグレード0と1のユニットが持つ『ブースト』、前列のリアガードから相手のアタックに合わせてGサークルへ移動できるグレード2のユニットが持つ『インターセプト』、そしてドライブチェックを2回行えるグレード3と4のユニットが持つ『ツインドライブ』だ。
インターセプトは防御に、ツインドライブは攻撃にその真価を発揮する。ガーディアンは手札からコールするのが基本だが、インターセプトを持つグレード2のユニットは場に出してアタックに参加した後からでもガーディアンにも使えるので前列にコールしてアタックを増やすのが基本戦術だ。
グレード1やグレード0のユニットはシールド値に優れているがインターセプトを持たないので、手札に温存して相手の攻撃を凌ぎやすくするかコールしてブーストを増やすか、ファイターの選択が試される。
さて、今しがた小宮山がコールしたユニットの中にはスキルを持つユニットもいる。
「『グリード・シェイド』のスキル発動。手札1枚をドロップゾーンに送り、さらに山札を上から2枚ドロップゾーンに送ることで、ドロップゾーンのカード1枚を手札に加える」
グレード2のユニット、『グリード・シェイド』。
このユニットのスキルはリアガードにコールされた時、手札1枚と山札を上から2枚ドロップゾーンに送り、そのドロップゾーンからカード1枚を手札に加えるというもの。
これによりドロップゾーンに置かれた方が便利なカードや不要なカードを手札から外し、ドロップゾーンに置かれている中で手札に欲しいカードを得られる、ドロップゾーンを使った手札の入れ替えスキルだ。
新たにドロップゾーンに置かれたのは手札から『逆心の呪術師 ネグロブリーチ』が1枚、山札からは『おばけのリック』と『突風のジン』の2枚。そして小宮山はドロップゾーンの中から『突風のジン』を手札に戻した。
攻撃の布陣は整った様子。
次は小宮山のアタックフェイズである。
前列は軒並みパワー9000、左のリアガードの『洒落男 アルヴァーロ』の後ろにはブーストを持つ『サムライスピリット』がいる。
「行くぜ! 『グリード・シェイド』で『海将 トルキスイクシード』にアタック!」
「ノーガード」
この攻撃は受ける。
もしこのタイミングでダメージトリガーを引ければ、残る2度の攻撃を一度は確実にノーガードでも乗り切れる。
「ダメージチェック……『クラス WASP』」
ノーマルユニット。トリガーアイコンは持っていない。
これでダメージが並んだ。小宮山の攻撃はあと2回である。
「次行くぜ! 『大幹部 ブルーブラッド』でアタック!」
次はヴァンガードによる攻撃。つまり、ドライブチェックがある。
この攻撃は、受けることにした。
「ノーガード」
「ドライブチェック……『大幹部 ブルーブラッド』」
小宮山もノートリガーである。
しかし大幹部 ブルーブラッドのパワーは9000。トリガーがなくともこの攻撃は通る。
「ダメージチェック……『海将 トルキスイクシード』」
再びノートリガー。
これでダメージ2。まだ序盤だが、早くも逆転されたわけだ。
そして小宮山には3度目のアタックがある。
「『サムライスピリット』でブーストした『洒落男 アルヴァーロ』でアタック!」
「ノーガード」
3度目の攻撃も受ける。
手札は9枚あるが、グランブルーは後半に強いクランだ。序盤からシールドを消費したくない。
「ダメージチェック……『ヴァリアント・エアシップ』」
クリティカルトリガー。
ただし、さっきの小宮山のナイトスピリットと同じで、今更なトリガーである。
「ふはははは! トリガーの無駄落ちとはついてない奴だな、おい!」
「盛大なブーメランじゃん」
「グサッ!? マジで口が悪いな……他の客がクソガキ呼ばわりする理由がわかった気がするぜ」
「クソガキ言うな。スタンド&ドロー」
さてと。
こっちもグレード2を繰り出していこうかな。
「『海将 アメリカンイクシード』にライド!」