別世界の異邦者 作:みども
「『海将 アメリカンイクシード』にライド!」
シーストライカーというクランは、山札からのスペリオルコールを得意とする。
盤面に出揃っていないユニットのスペリオルコールはグランブルーに比べ望んだカードを選びにくく、似たスキルを持つゴールドパラディンに比べると連続アタックには不向きだ。
そもそも特定のユニットを山札からスペリオルコールするスキルは、他のクランでも決して珍しくないスキルである。展開力を速攻に活かすゴールドパラディンと比べると、時間をかけがちになるシーストライカーは短期戦に向いていない。
しかもスターターデッキということもあり、素人向けのスキルが多いルイリのシーストライカーのデッキは特徴を捉えられれば経験のある相手には簡単に手を読まれてしまうクランだ。
けど、それが何か?
デッキはさらっと見ただけで扱うのに至っては初めて。
だが、ルイリにはこのクランのスキルが、このクランの戦い方がどういうものか、手に取るように理解できた。
単調な戦い方、扱いやすくシンプルなスキルが多く派手なスキルは少ない。華やかさやスキルの面白さという面で言えば、相手のグランブルーには劣るクランだ。
だが、このクランは単調で扱いやすい。故に、わかりやすくシンプルに強いスキルが多い。
ルイリは魅せるスキルというもの好きだが、どちらかというとそういう単調なスキルを備えるユニットの方が好みである。
ルイリがライドしたユニットはシーストライカーのグレード2『海将 アメリカンイクシード』。
フォースのユニットらしくパワー10000という高火力と、2つのスキルを持つユニットである。
その1つ目のスキルは相手のヴァンガードにアタックしたバトル中、パワーが+3000される永続スキル。Vサークルの限定があるとはいえ、ノーコストで発動するパワーアップするこのスキルはグレード3のヴァンガードにもブーストなしでアタックを届かせるシンプルに強いスキルだ。
そしてもう1つが、登場時に発動する自動スキル。
コストとしてカウンターブラストとソウルブラストが1枚ずつ必要だが、発動させれば山札から『海将 ジパングイクシード』をスペリオルコールできる。
ソウルブラストはソウルを指定枚数ドロップゾーンへ送ることであり、ソウルというのはヴァンガードの下にライドやソウルチャージというアクションで増えていくカードのことである。
ルイリのダメージは表が3枚、ソウルは『始源の海将ヴァイキング』と『海将 トルキスイクシード』の2枚。コストは十分に払える範囲である。
そこで、ルイリはスキルを発動させた。
「『海将 アメリカンイクシード』のスキルを発動。コストとしてカウンターブラスト、ソウルブラストを各1枚発動し、山札から『海将 ジパングイクシード』をスペリオルコール!」
今コールしたユニットは、私が初めて見たシーストライカーのカード『海将 ジパングイクシード』である。
このユニットはアメリカンイクシードと同じグレード2のユニットだが、そのパワーは半分の5000しか持たない攻撃には不向きなユニットだ。
だが、それを補ってあまりある破格の防御用のスキルを有する。
そして、シーストライカーにはこのジパングイクシードを支援するのにぴったりなユニットがある。
「ジパングイクシードの後ろに『煉獄大空母 タイホウ』をコール」
新たにコールしたユニットは『煉獄大空母 タイホウ』。
シーストライカーの種族『マリンシップ』に該当するカードであり、ブーストではなくインターセプトを持つグレード2のユニットである。
本来ならば前列に配することでその力を発揮し、後列に配してもブーストを持たないため役に立たない。
だが、このユニットには本来役に立たない後列に配してこそその真価を発揮するスキルがある。
「『煉獄大空母 タイホウ』のスキル。自身の前列のユニットが『イクシード』の名を持つならば、こいつは私のターン中パワーが+3000され、かつブーストを獲得できる」
「そんなスキルありかよ!?」
タイホウのスキルは、Rサークルで発動する永続スキルである。
自身の前列のユニットが『イクシード』の名前を持つユニットの時、3000のパワーアップに加えてグレード2でありながらブーストスキルを得るというものだ。
つまり、13000ものパワーを持つ破格のブーストユニットとなる。
前列に特定のユニットを配置する必要があるスキルだが、その条件を満たすジパングイクシードにとって攻撃力の不足を解消してくれる相性抜群のブースト要員である。
アメリカンイクシードは攻撃を、ジパングイクシードは防御を、そしてタイホウは支援を。
スキルごとにユニットの役目がシンプルにわかりやすく構築されているから、盤面も安定した強さを発揮しやすいものを整えやすい。
やはり、シンプルに強くて扱いやすい方が好みだ。
まあ、派手なのも好きだけど。
シーストライカーは長期戦向きのクランみたいだけど、グランブルーもまた後半に強くなっていくクランだ。というより、ドロップゾーンに送られるカードに応じて力を増すグランブルーの方が多分シーストライカーより後半戦に強い。
手札の数はある。この段階から前列の布陣を増やしてダメージを稼いだ方がいい。
そう判断し、空いている方の前列のRにもユニットをコールした。
「『鉄甲戦艦 鬼金剛』をコール」
グレード1のカード『鉄甲戦艦 鬼金剛』。
シールドもスキルも持っていないが、代わりにパワー9000をもつユニットである。
シールドがないので手札に持っていてもしょうがないし、せっかくブルーブラッド含めた相手の前列のグレード2のユニット全てにアタックを通せるパワーを持っているのだから、攻撃要員として使うことにする。
それでもインターセプト1枚で防がれてしまうパワーでしかないけど。
この場合はリアガードの排除に回した方がいい。ドロップゾーン送りにしたところでむしろ復活後が厄介なアルヴァーロよりも、ここはドロップゾーンが増えると力を増してくる厄介なグリード・シェイドの方を狙うのが妥当かなと。
コールはここまで。
アタックフェイズに移行し、鬼金剛から攻撃を開始する。
「『鉄甲戦艦 鬼金剛』、『グリード・シェイド』にアタック」
「アルヴァーロでインターセプトだぜ!」
鬼金剛のアタックはアルヴァーロのインターセプトによりグリード・シェイドに届かなかった。
まあ、私が同じ立場でもそれを選択する。むしろドロップゾーンにある方が都合のいいアルヴァーロよりも、後半の攻撃要員として活躍できるグリード・シェイドの方が盤面に残すには向いているユニットだ。
グランブルーはドロップゾーンに置かれる枚数だけでなく、送られるカードの中身も考慮しなければ使いこなせない玄人向きのクランだ。だからこそ奥が深いとも言えるけど。
まあ、これは予想通りだからいい。
さっさと次のアタックに移ろう。
次は攻撃担当、Vサークルのアメリカンイクシードをレストする。
「『海将 アメリカンイクシード』でアタック。スキルでパワー+3000」
「おっと、そいつも通さねえぜ! 『スケルトンの抜刀兵』でガードだぜ!」
先ほどロマリオのスキルで手札に加えていた『スケルトンの抜刀兵』を使ってきた。
スキルのないグレード1ながら、15000の高いシールド値を持つ防御向きのユニットである。
アメリカンイクシードのパワーは13000。トリガーを引いてもこの守りをアメリカンイクシードで突破することはできない。
「ドライブチェック……『幻想戦艦 ヒラヌマ』」
ノートリガーだ。
攻撃担当のアメリカンイクシードはアタックを通せず。残るアタックは1回である。
とはいえこちらの列もブーストにより十分なパワーを持つ。
「『煉獄大空母 タイホウ』でブースト、『海将 ジパングイクシード』でアタック」
「ノーガードだ」
さすがにこれ以上のシールドの消費は控えたのか、小宮山は最後のブーストアタックにノーガードを選択した。
2ダメージ目となるカードがトリガーゾーンにめくられる。
「ダメージチェック……おっしゃ『ナイトスピリット』! クリティカルトリガーゲットだぜ……って、またかよ!?」
まさかの2度目のクリティカルトリガー無駄落ち。
私にアタックできるユニットは残っていないため、パワーアップさえ意味をなさない。
……お互いこの来てほしくないタイミングでよく来るね、クリティカルトリガー。
「ターンエンド」
とはいえダメージは私が3で小宮山は2。ダメージでは遅れをとっている現状だ。
そして次のターン以降はグレード3のユニットが盤面に出てくる中盤戦となる。ファイトはここからである。
「トリガーの無駄落ちくらい、どうということはない! 行くぜ、俺のスタンド&ドロー!」
先のターンでドロップゾーンに送られているネグロブリーチはドロップゾーンからのスペリオルライドができるが、コストとなるダメージゾーンの表のカードが不足している。
スペリオルライドを狙っているとすればこのターンはグレード3にライドできないが、わざわざアメリカンイクシードの攻撃を防いだということは手札にもノーマルライド用のカードを残しているのだろう。
そして、予想通り小宮山は手札にグレード3を持っていた。
「血もなき怪人の破壊を前に、全ては海の藻屑と化す! 『バイオレンス・フランガー』にライドだぜ!」
グランブルーのグレード3『バイオレンス・フランガー』。
強力な攻撃のスキルとイマジナリーギフトを有するユニットである。
イマジナリーギフトとは、グレード3と4のユニットの多くが持つライドされた時に受け取る仲間たちからの祝福のようなものだ。
ギフトには『フォース』、『アクセル』、『プロテクト』があり、各イマジナリーギフトはIとIIの効果から選択する。イマジナリーギフトの種類はクランごと決まっている。
グランブルーのイマジナリーギフトはプロテクト。手札1枚と引き換えにどれほどのパワーをもつユニットのアタックでも防いでくれる守護者のスキルを持つ手札として獲得できるプロテクトIと、常時パワーを+5000しインターセプトした時にはシールドを+10000できる攻防ともにリアガードを強化できるプロテクトIIがある。
「イマジナリーギフト、プロテクト! プロテクトはIを選択させてもらうぜ」
小宮山は守護者のスキルを持つ手札を獲得できる『プロテクトI』を選択した。グリード・シェイドのスキルで前のターンにも守護者のスキルを持つ『突風のジン』を手札に加えているので、これで守護者を2度は確実に発動可能な状態にしてきた。
やはりグランブルーらしく長期戦に持ち込むつもりらしい。
そして小宮山が繰り出したグレード3『バイオレンス・フランガー』。このユニットは単体で12000のパワーを有し、さらにソウルのグレード3のカードをソウルブラストし自身の手札を好きなだけ捨てることで、パワー+5000とバイオレンス・フランガーのアタックにはこの効果で捨てたカードと同じグレードのカードと守護者のスキルを持つカードをガーディアンとしてコールできなくするというスキルを持つ。
グレード0から2のカードを1枚ずつ捨てれば確実に攻撃を通すことができる、後半のあと1ダメージという局面でその力を発揮するユニットだ。
小宮山のソウルにはコストとなるグレード3のユニットがすでに『伊達男ロマリオ』のスキルで送られている。
攻撃準備は整いつつあるのだから、次のターンにおけるこっちの攻撃を防ぐための手札を整えこのターンでフランガーのスキルを活かせるようにダメージを稼いでくるつもりだろう。
バイオレンス・フランガーに対抗できるユニットはいるけど、ダメージ5に追い込まれる状況は回避したい。
そのために手札も温存してきたわけだし。
小宮山の手札はプロテクト含めて3枚。とはいえバイオレンス・フランガーはすでにグレード3、ツインドライブが可能。ダメージを稼ぎたければ、やはりリアガードをコールして3度のアタックをできる状態を整えてくるだろう。
「『大幹部 ブルーブラッド』をコールするぜ」
予想通り空だった前列にもリアガードをコールして、アタックフェイズへと移行してきた。
とはいえグリード・シェイドの方はパワー9000。ドロップゾーンのカードが10枚以上あればパワーアップするスキルがあるが、小宮山のドロップゾーンのカードはまだ7枚。ブーストなしの単騎のアタックでは、アメリカンイクシードに攻撃を通すことができない。
ならばと言わんばかりに小宮山はグリード・シェイドの攻撃をインターセプト潰しに使ってきた。
「グリード・シェイドでジパングイクシードをアタックだ!」
予想通りである。
しかしジパングイクシードは防御の切り札、簡単に消させるわけにはいかない。ここは手札を使ってでも防がせてもらう。
「『海将 ルーシイクシード』でガード」
グリード・シェイドのパワーは9000。ジパングイクシードはシールド含めて合計で10000。これはガード成功だ。
しかし小宮山にはまだ2度のアタックが残っている。
「ならば怪人の破壊の腕で全てを壊し尽くすまでだ! バイオレンス・フランガー、アメリカンイクシードにアタック!」
トリガーの確率が上がるツインドライブを持つヴァンガードのアタック。
今の所お互いクリティカルトリガーの無駄落ちが目立つけど、だからと言ってここでも来ないという保証はどこにもない。
ここはトリガーを警戒したガードを行うことにする。
「『救護艦 ひかわ』でガード!」
シールド20000の『救護艦 ひかわ』をガーディアンに使用した。
バイオレンス・フランガーはブーストを受けておらず単騎のアタックのため、パワーは12000。トリガーが出たとしても1枚までならばアメリカンイクシードのパワーと合わせてガードできる。
小宮山がどういう選択を取るかは分からないが、1枚目がトリガーだったとしても長期戦向きのクランを使っているならばここにトリガー2発を期待してフランガーに振る選択はしないだろうと思う。
小宮山が山札の上から1枚目をトリガーゾーンに公開する。
「ツインドライブファーストチェック! ……『伊達男 ロマリオ』、ノートリガー」
1枚目はノートリガー、これで確実にアメリカンイクシードに攻撃は通らなくなった。
でも2枚目のドライブチェックが残っているし、スタンドしているブルーブラッドがいる。油断はできない。
小宮山が2枚目をめくる。
「セカンドチェック! ……おっしゃ、『お化けのりっく』! ヒールトリガーいただきだ!」
2枚目に出てきたのはトリガーだった。
ヒールトリガー。選んだユニットのパワー+10000し、さらに相手と比べダメージが同数以上受けていた時にそのダメージを1枚回復する効果を持つ。
さらに私がフランガーの攻撃を防いだ時に使ったひかわもそうだけど、このヒールトリガーを持つグレード0のカードは他のグレード0のカードと比べても一線を画す20000という高いシールド値を持つ。
デッキに4枚しか入れられない制限があるが、ピンチの局面でもチャンスの局面でも活躍してくれるトリガーだ。
「トリガー発動! ダメージを回復できねえのは残念だが、トリガーのパワーアップがあるからな。ブルーブラッドにパワー+10000!」
今回の場合、小宮山のダメージは2で私はすでに3。
小宮山にとっては残念ながらダメージの回復ができないとはいえ、パワーアップの効果は問題なく発動する。
これでブルーブラッドは大きくパワーを増してきた。
「3度目のこの攻撃受けてもらうぜ! 『サムライスピリット』のブースト、『大幹部 ブルーブラッド』でアメリカンイクシードをアタックだ!」
ヒールトリガーとサムライスピリットのブーストを受けたブルーブラッドは、自身の元々持つパワーも合わせて27000まで上昇している。
……さすがにこれは受けるしかないかな。
「ノーガード」
ブルーブラッドの銃から放たれた鉛弾が、アメリカンイクシードに直撃した。
ブルーブラッドのクリティカルは1。これで4つめのダメージとなる。
「ダメージチェック……『エンタープライズ』」
まさかのここでクリティカルトリガー。
変態や目の前のバカと会うなど、この店来てから感じていたけど……今日って厄日なの?
「おいおい、大丈夫か? 人のこと言えねえけど、なんか心配になってきたぞ」
自分のこと棚に……は上げてないけど、小宮山が「ふははは!」の余裕も忘れて本当に心配してきた。
対戦相手にまで心配されるとは、やっぱり厄日なのかな?
まあ確かに、こんな連続でホイホイクリティカルトリガーの無駄落ちが起こると不安にもなる。
「ターンエンドだ。お前の番だぞ」
なんか小宮山のテンションも下がってきた。
これはこれで調子狂うな。テンション高いとウザいけど。
「スタンド&ドロー」
……気を取り直して、こっちもグレード3を繰り出す。
フランガーのスキルでトドメを刺される前に、引き離されたダメージ差をひっくり返す!
「『星条海将 アメリカンイクシード』にライド!」
「グレード3か……面白え」
シーストライカーのグレード3『星条海将 アメリカンイクシード』。
13000のパワーとフォースのギフトを得られるユニットだ。
シーストライカーのイマジナリーギフトは『フォース』。VかRサークルに置かれ、そのサークルに入るユニットのパワーを+10000するフォースIと、クリティカルを+1するフォースIIがある。
フォースIIはヒットすれば2ダメージを叩き込める強力な効果を持つが、同じサークルに重ね掛けしても恩恵は1つ分しか受けられないしリアガードを相手にするバトルには意味をなさない。それにクリティカルが多くてもアタックがヒットしなけばその真価は発揮できないし、相手はそれを防ぐ守護者のスキルを持つ手札を揃えている。
なので、今回はパワー重視のフォースIを選択する。
「イマジナリーギフト、フォース。Iを選択し、左のRサークルに展開」
フォースはジパングイクシードのいる方のRに設置する。
これにより私のターン中、ジパングイクシードは常にパワーが+10000となり、タイホウのブースト合わせれば攻撃面が大幅に強化される。
Vのアメリカンイクシードは単体でもそのスキルにより強力な攻撃力を持つからブーストは必要ない。
だが、鬼金剛のいるラインがフランガーを相手にするにはパワー不足となっている。
アメリカンイクシードのスキルもあるし、インターセプト潰しに利用するよりもグレード2を出して戦列を整えた方が賢明だろう。
鬼金剛を後列のRに移動して、その前列に手札からユニットをコールした。
「鬼金剛、後退。前列に『海将 ジパングイクシード』をコール」
鬼金剛のブーストを合わせれば、こちらのジパングイクシードもフランガーへ攻撃を届かせることができるパワーとなる。
これで3つの攻撃ラインが整った。
アタックフェイズへと移行する。
まずはVの『星条海将 アメリカンイクシード』をレストする。
「『星条海将 アメリカンイクシード』、『バイオレンス・フランガー』をアタック! 同時にスキルを発動!」
Vサークルにて相手Vにブーストを受けていない単騎のアタックをしかけた時、『星条海将 アメリカンイクシード』はそのスキルを発動する。
コストはカウンターブラスト1枚。
ダメージゾーンの表のカードは3枚あるので、スキルは問題なく発動できる。
「カウンターブラストでアメリカンイクシードのパワーを+10000。そして、このバトルを相手の前列全てのユニットと同時に行う!」
「前列全て!? しかもパワー+10000!?」
これが『星条海将 アメリカンイクシード』のスキル。
若き光り輝く勇気を持って、多数の敵に1人で立ち向かうヒーロー。
……自由奔放とか、若気の至りとか、血気盛んとか、2門バズーカの暴れん坊とかとも言えるけど。
とはいえスキルは強力だ。
ブーストを受けないことが条件とはいえ、パワー+10000するのでその分は賄えるし、なにより副次効果としてこのバトルは相手のインターセプトもできなくする。
相手はこのバトルを受けると必ずと言っていいほど手札かRを多く削られることになる。
「リアガードは守りきれねえか……バイオレンス・フランガーにプロテクトを発動させるぜ! 手札のロマリオをドロップし、完全ガードだ!」
守護者のスキル。手札1枚と引き換えに、相手のアタックを完全にガードする。
しかしそれでも守れるのはフランガーだけ。ブルーブラッドとグリードシェイドには、アメリカンイクシードのぶっ放すバズーカ砲が直撃する。
それに加え、こっちはまだツインドライブがある。
「ツインドライブ、ファーストチェック……『特潜 ゼロ』」
1枚目はノートリガー。
だが、セカンドチェックがある。
無駄落ちばかりしてないで、このタイミングで来てくれないかなクリティカル……なんて思いながら2枚目をトリガーゾーンに公開する。
「セカンドチェック……『エンタープライズ』」
「げっ!?」
その2枚目は、今度こそナイスなタイミングで出てきてくれたクリティカルトリガーだった。
わかりやすく顔色が変わる小宮山。
ファイターならもう少し表情制御しろよと思いつつも、トリガーを発動させる。
「クリティカルトリガー発動、効果は全部左のジパングイクシードへ」
クリティカル+1、パワー+10000。さらにフォースとタイホウのブーストを合わせ、素のパワーが低い防御専門のはずのユニットが一気に攻撃力を高めてきた。
トリガーが出てもアタックを通すに十分なパワーを持つこっちのジパングイクシードよりも、パワーの低い右列のジパングイクシードを先に仕掛ける。
「『鉄甲戦艦 鬼金剛』のブースト、右のジパングイクシードでフランガーにアタック!」
「こっちを防ぐ方が賢明か……『お化けのりっく』でガードだぜ!」
アタックは防がれたが、これで小宮山の手札は1枚のみ。私の記憶が正しければ、あれは守護者のスキルを持つ『突風のジン』、手札1枚の時にはスキルを使えないのでガーディアンにはできないカードとなる。
つまり、次のクリティカル2点アタックは確実に通せる。
通せばダメージ4、五分に追いつける。
「タイホウのブーストした左のジパングイクシードでアタック!」
「ダメだ防げねえ……ノーガードだぜ!」
ジパングイクシードの刀が煌めき、巨体の改造人間を2度切り裂いた。
クリティカルトリガーの効果でジパングイクシードはクリティカルが上昇している。ヒールトリガーを引き当ててもダメージ数により回復はできない。
よってこのアタックは確実に2ダメージを与えることができる。
小宮山が山札をトリガーゾーンへ公開する。
1枚目は『イービル・シェイド』。
そして2枚目は……
「『ナイトスピリット』! おっしゃあ、クリティカル……ってまた無駄落ちかよ!」
なんと3度目のクリティカルトリガーの無駄落ちである。
私も人のこと言えないけど、向こうも厄日ではないだろうか。
それとも、私と戦う前の連勝でトリガー運使い果たしたとか?
……どっちにしろどうでもいいけど。
「ターンエンド」
ともかく、これでダメージはお互い4点。次のターンが正念場となる。
だが、アメリカンイクシードの活躍で小宮山の盤面はガラ空きな上に手札は1枚。あの手札では攻撃の要であるバイオレンス・フランガーのスキルも活かせないだろう。
対してこちらはインターセプトを持つ前衛が2体に加え、守護者のスキルを持つカードを含めた手札が6枚ある。
似たような状況から逆転されたこともあるし油断はできないけど、攻める側はかなりきつい戦況である。
「まさかこの俺をここまで追い詰めるとはな……ふはははは! 褒めてやるぜ!」
空元気かそれとも本気で自信があるのか、この状況でも小宮山は笑っている。
次のドローフェイズでほぼ勝負が決まると言ってもいい。
バカに見える大仰な仕草で、小宮山はその運命のドローをした。
「行くぜ! スタンド&……ドロー!」
何を引いたのか。
小宮山がそのカードを見て、一瞬で表情が固まる。
望みのカードは引けなかったのかと思ったが、次の瞬間表情がわかりやすく変化した。
「お……おお……おっしゃあ、来たアアアァァァ!」
もう、いいカードがきましたよ宣言するくらいの破顔振りである。
一瞬こっちも表情が固まりかける中、小宮山はそのここ一番で引いたカードにライドした。
「ふはははは! 俺をこれほど追い詰めた礼だ、受け取るがいい!」
「いや、別にいらないし」
「そこは熨斗つけてもくれてやるぜ! では……不死なる海賊の真骨頂、教えてやろうか! 『氷獄の死霊術師コキュートス』にライドだぜ!」
こっちの淡白な反応を受けてもさらに熨斗つけてきやがった。
それはともかく、ここにきて本当に小宮山は幸運でこの戦況を覆せる可能性を持つカードを引いてみせた。
どうやら真の厄日はこっちだったみたい。
グランブルーのグレード3『氷獄の死霊術師 コキュートス』。
察するに、小宮山の切り札だろう。
実際、このユニットはグランブルーの中でも最強クラスの強さを持つカードだ。
何だろう。此処一番の圧倒的優勢な戦況で、こういう逆転の可能性を齎すカードを相手が幸運で引き当ててくるの。3年前のあの、人生で1番悔しかったファイトの記憶を呼び起こしてくる。
「行くぜ!」
「……来やがれ海賊!」
いつの間にか、嫌々始めたファイトにめちゃくちゃ燃えている私がいた。