別世界の異邦者 作:みども
グランブルーのグレード3『氷獄の死霊術師 コキュートス』。
手札1枚、リアガードは4つが空白、相手は手札6枚と両サイド前列にインターセプトをもつユニットが配置されている高い防御力があり、ダメージは4。
攻めきらなければならないが攻めきれないというこの盤面に、まさにその戦況を一気にひっくり返してくる可能性を持つ強力なカードである。
それを引き当てたということは、勝ちの目がまだあるということだ。
……3年前の記憶がよみがえる。
あの時は敵のミラクルに負けたけど、今度は絶対しのいで見せる。
小宮山とあの時の対戦相手だった世界的に有名なディメンジョンポリス使いのファイターは違うけど、似たような展開となったこの盤面に私はあのとき味わった悔しい記憶を思い起こされた。
「絶対負けない……あの時とは違うんだから……!」
「ほほう、いい気迫だ……が、このカードを引いた時点で俺の勝ちは決定したのだ! イマジナリーギフト、プロテクト!」
まずはグランブルーから贈られるギフト、プロテクトのカードを手札に加える。
これで守護者のスキルを持つカードが2枚になった。
そして、小宮山のドロップゾーンは10枚。
Vサークルのコキュートスには、ドロップゾーンのカードが10枚以上の時パワーが+10000となる永続スキルがある。
ファイトが長引けば長引くほどドロップゾーンに置かれるカードの数は増えていく。後半に強いグランブルーらしいユニットだ。
だからこのクランとの戦いはダメージを受けてでも手札を温存して攻撃に備えつつ、十分な戦力を整えられる前に畳み掛ける短期戦を挑むのがいいのだけど、こうなると今更だ。
「コキュートスのスキル発動。ドロップゾーンに置かれたカードが10枚以上でパワー+10000だぜ!」
これでセンターラインは単独でパワー22000の高火力をだせるようになった。
そしてもう1つ。
コキュートスの代名詞と言えるスキルがある。
「そして……ここからが不死の海賊の真骨頂だ! コキュートスのスキルを発動! カウンターブラスト!」
コキュートスのもう1つの起動スキル。
カウンターブラスト1枚と、山札を上から4枚ドロップゾーンに送ることをコストとして発動する、死霊術師の名にふさわしいスキルだ。
コストでドロップゾーンに送られたのは『モータル・ミミック』、『伊達男 ロマリオ』、『突風のジン』、『大幹部 ブルーブラッド』の4枚。
これでドロップゾーンが14枚になったが、それよりも重要なことがある。
コキュートスのこのスキルを発動させる際に関係するのが、ソウルにあるカードの内容だ。
ソウルブラストにグレード3を必要とする『バイオレンス・フランガー』と違い、コキュートスの場合はスキル発動時のソウルにあるグレード3のカードの枚数が関係する。
そのスキルは、ドロップゾーンからのスペリオルコール。ソウルにあるグレード3のカードの枚数+2枚のカードをRサークルにスペリオルコールするというもの。
それはさながら海の底から蘇る不死の海賊、グランブルーにぴったりなスキルだ。
「暗闇と極寒の深海の底に落ちようとも、海賊は何度でも蘇る! 俺のソウルのグレード3は『バイオレンス・フランガー』と『キング・テンタクル』の2枚だ。よって4枚まで復活できるぜ! ドロップゾーンから『伊達男ロマリオ』を2枚、『洒落男 アルヴァーロ』と『ストームライド・ゴーストシップ』を1枚ずつスペリオルコール!」
4枚のユニットの復活。
手札を使うことなくガラ空きだった盤面はリアガードたちで埋められた。
これによりパワーだけでなくアタック回数まで十分なものを用意してきた。
だが、グランブルーの強みはこれで終わりではない。
「まだまだ行くぜ! 『洒落男 アルヴァーロ』のスキル、ドロップゾーンからスペリオルコールされたこのユニットはターン中パワー+10000だ!」
アルヴァーロが自らのスキルにより大幅にパワーアップする。
これがグランブルーの恐ろしさ。復活してこそその力の真価を発揮するユニットもいる。
そして、この盤面にはまだパワーアップをするユニットがいる。
「まだまだ! 『伊達男 ロマリオ』にもドロップゾーンのカードが10枚以上ならターン中パワー+4000となる永続スキルがあるぜ!」
コキュートスのスキルで複数のユニットが復活してきたが、それでもドロップゾーンには11枚のカードがある。
ロマリオも、コキュートスもパワーアップの条件は満たしている。
これにより、前列のみならず後列まで大幅にパワーアップしてきた。
「さすがグランブルー海賊団……多少盤面を片付けたくらいじゃすぐに復活してくる」
「ふはははは! これこそ、グランブルーの恐ろしさだぜ。このパワー、防げるかな?」
確かにこの一気に不利な戦況を覆してきた展開、並みのファイターなら予想外の事態に見舞われたと混乱するかもしれない。
でも私は違う。
ヴァンガードに絶対なんかない。運の1つでこうして盤面はひっくり返るし、返される。
……それで悔し涙を流したあの時の苦い記憶、ここで超えてやる!
「防いで見せるさ! こいよ!」
「アツくなってきたじゃねえか! 行くぜ!」
小宮山がアタックフェイズに移行する。
3度の攻撃は全てがパワー30000を超えてくる。先ほどまで手札もリアガードも枯渇していたとは思えない布陣だ。
多少の逆風が吹き荒れたくらいじゃ諦めないのが海賊。
なら、私の手にあるシーストライカーというクランが、それを相手にする海軍がこの程度の逆風で根を上げるわけにはいかない。
「『伊達男 ロマリオ』がブーストした『氷獄の死霊術師 コキュートス』で『星条海将 アメリカンイクシード』をアタック!」
スキルとブースト合わせて合計パワー34000に加えてツインドライブのあるコキュートスのアタックである。
私はそれに対し、守護者のスキルを持つカードを手札から繰り出した。
「『幻想戦艦 ヒラヌマ』でガード!」
「シールド0……守護者か!」
守護者のスキルを待つガーディアンは、手札1枚と引き換えにこのバトル中に限り相手のアタックのヒットを無効にする完全ガードと呼ばれるカードである。
手札から『鉄甲戦艦 鬼金剛』をドロップゾーンに送り、圧倒的なパワーを持つコキュートスの攻撃を無効化した。
「ええい、まだツインドライブがある! ファーストチェック……『モータル・ミミック』! きたぜ、クリティカルトリガー!」
しかし小宮山はここでクリティカルトリガーを引き当ててきた。
散々無駄落ちしていたが、肝心なところで引き当ててくるあたりついてる日とも言えるかもしれない。
……小宮山の運なんかどうでもいいか。
「クリティカルトリガーの効果は全て『ストームライド・ゴーストシップ』にやるぜ!」
トリガーの効果を受けた『ストームライド・ゴーストシップ』が大きくパワーをアップさせた上にクリティカルまで増やしてきた。
ゴーストシップはアタック時にノーコストでパワーを15000も上昇させるスキルを持つ。後方のサムライスピリットのブーストを加えればそのパワーは相当なものとなるだろう。
「セカンドチェック……『サムライスピリット』。2枚目はノートリガーだぜ」
2枚目にトリガーはでなかった。
だがこちらのダメージはすでに4。クリティカルトリガーによってゴーストシップのアタックも防がなければならなくなったこっちが追い詰められていることは変わらない。
「これで止めだ! クリティカルを加算した『ストームライド・ゴーストシップ』に『サムライスピリット』のブーストをつけて『星条海将 アメリカンイクシード』をアタックだぜ! さらにゴーストシップのスキルでパワーをさらに+15000! トリガー含め、合計パワー42000のアタックだ!」
「よ、40000オーバー……!?」
そのとてつもないパワーに、周囲の観衆もざわめきたつ。
けど、こんなのグランブルーは平気で叩き出すし、私がアジアサーキットで戦った相手にはさらに大きなパワーをやすやすと作り上げた相手も多くいた。
だからこんなのたいしたことない。
「『エンタープライズ』2体でガード!」
手札からシールド15000を持つクリティカルトリガーを2枚コールしてガードする。
これでこちらのパワーは合計43000。ギリギリとはいえシールドは足りた。
「嘘だろ……! まだそんなシールドがあったのかよ」
アルヴァーロのクリティカルは1。ゴーストシップの攻撃をしのがれた今、小宮山がこのターンで勝ちきることは不可能となった。
「防がれたものは仕方無えか……『ストームライド・ゴーストシップ』は退却。代わりに1枚ドロー」
ゴーストシップはアタック終了後、ドロップゾーンに1枚手札を増やすことを引き換えに沈む。
まるで、日が昇る前に宝を残して太陽の光届かぬ暗い海の底に帰っていく幽霊船のように。
そして残るアルヴァーロのアタックを仕掛けてきた。
このアタックがヒットしたとしても、私のダメージは5である。
「ロマリオでブースト、アルヴァーロでアメリカンイクシードにアタックだぜ!」
「『海将 ジパングイクシード』でインターセプト!」
「はっ! シールド5000のインターセプト一枚ぽっちで今のアルヴァーロを止められるものか!」
それを私は、ガードする選択をした。
ジパングイクシードのシールドは5000だが、このユニットにはスキルがあるため実質飾りみたいなものだ。
このユニットの本質は防御で活躍する切り札、インターセプトした際に発動する破格のスキルにある。
「『海将 ジパングイクシード』のスキルを発動! インターセプトでガードした際に選択したユニットのアタックは、クリティカルに関係なくヴァンガードに与えるダメージを0にする!」
「そんなのアリかよ!?」
ジパングイクシードのスキル。
インターセプトでガードした時、相手のユニット1体を指定することで、指定されたユニットのアタックがヒットしようともクリティカルに関係なく受けるダメージを0にするというものだ。
手札から出せば普通のシールド5000ガーディアンにしかならないし、リアガードの防御には役に立たないスキルだし、インターセプトでガードした時しか発動できないし、自身を指定させないスキルを持つカードのアタックにはスキルを発動できないし、あくまでダメージを受けずに済むだけなのでヒットした際のスキルの発動も防げないなど、ノーコストとはいえ使える場面が少なくスキルそのものは守護者より使い勝手が悪い面もある。
だが、単純にパワーやクリティカルを強化してヴァンガードを狙ってくるアタックを防ぐという点においては、ノーコストで発動できる上に、バトル中ではなくターン中なので再攻撃を仕掛けられても効果は続くなど、守護者のガードをも上回る面も持つ。
全てのアタックがパワー30000を超えるアタックをノーダメージで凌ぎ切った。
とはいえ、次のターンに攻めきれなければ厳しい。私もまた追い詰められていることに変わりはない。
ファイトが長引けば長引くほど、ドロップゾーンのカードが増えれば増えるほどに力を増すのがグランブルーだ。
「攻めきれなかったか……ターンエンドだぜ。だが! 次のターンをしのいで、今度こそ俺が勝つ!」
だから、このターンで攻めきらなければいけない。
相手の手札は5枚、その中には守護者が2枚ある。2度の攻撃は絶対に凌がれる。
そして勝利には2ダメージを叩き込む必要がある。なかなかに厳しい。
けど、勝てる可能性がゼロではない。
さすがにトリガーの運にかける必要があるけど、もっと分の悪い賭けだって何度も経験してきたし。
「スタンド&ドロー」
ドローフェイズで引いたのは『クラス WASP』。グレード2、シールドとスキルを持たない代わりに12000という高いパワーを持つユニットである。
手札のグレード3『特潜 ゼロ』のスキルはコストが不足しているから使えないし……贅沢は言えないかな。こいつで行こうか。
「『クラス WASP』をコール」
これで盤面は整えた。
というわけで、アタックフェイズに移行。
1番槍はもちろん、無鉄砲……もとい、勇敢なるVサークルの『星条海将 アメリカンイクシード』だ。
「『星条海将 アメリカンイクシード』でアタック! 単騎でアタックを仕掛けたアメリカンイクシードはパワーを+10000し、前列のユニット全てとバトルする!」
これでアルヴァーロのインターセプトを先に潰せる。
洒落男は沈めてもどうせ海の底から蘇るだろうが、その前にコキュートスを倒してしまえば復活も何もない。
「通さんぞ! 『突風のジン』でコキュートスを完全ガードだ!」
手札を1枚破棄する代わりにアタックをヒットさせない守護者のスキルを持つ完全ガードのカードだ。
やはり最初の攻撃は防いでくるか。
……まあ、クリティカルトリガーを引かれたら終わりだし。
さてと、ここでクリティカルトリガーが出なければこのターンは攻めきれない。
勝負の分かれ道となるツインドライブだ。
「ツインドライブファーストチェック……『ヴァリアント・エアシップ』」
1枚めはクリティカルトリガーだ。
「クリティカルトリガー発動。ジパングイクシードにパワー+10000、クリティカル+1」
「ふはははは! その程度どうということはないわ!」
2ダメージを通せる可能性を引いたとはいえ、小宮山にはプロテクトもある。ジパングイクシードの攻撃も防がれれば、6ダメージを与えることはできない。
デッキに残っているクリティカルトリガーは残り3枚。さて、次のドライブチェック次第となったわけだけど、結果はどうだろうか。
「セカンドチェック……『海将 ルーシイクシード』」
結果は、ドロートリガーだった。
完全ガードを可能とするプロテクトがある限り、クリティカルを加算したジパングイクシードの攻撃は通らない。
2枚目もクリティカルトリガーだったら勝機はあった。滅多におきないことだけど。
……厄日なのはやっぱり私の方みたい。
「ドロートリガー発動。パワーはWASPへ、1枚ドロー」
WASPはパワーをいくら重ねてもクリティカル1。ジパングイクシードの攻撃をプロテクトで凌がれれば、WASPのアタックをヒットさせてもダメージ5止まりだ。
クリティカルに恵まれないけど仕方ない、次のターンを凌ぐ準備を進めよう。
とはいえ、ドロートリガーも悪くはない。
先のターンで消費させられたシールドを補充できるし、ジパングイクシードが1枚前列に残っている。この盤面と手札ならパワーに勝るグランブルーが相手でも守り切れる可能性は十分にある。
一方、防ぎきれる自信を得た小宮山の表情に余裕が戻ってきた。めちゃくちゃわかりやすい。
「一瞬ひやっとしたが、どうということはない! ふはははは! この勝負、俺がもらった!」
「けどその洒落男には消えてもらうから! くらいやがれ!」
アメリカンイクシードのアタック。
コキュートスへの攻撃は『突風のジン』が防いだが、洒落男への攻撃を阻むガーディアンはいない。
アメリカンイクシードの放ったバズーカがアルヴァーロに直撃し、インターセプトを持つリアガードを退却させた。
しかし、コキュートスは一切動揺がない。
死霊術を扱う彼にとって、仲間というものは死んだら蘇らせて復帰させる駒に過ぎないからだ。
2丁バズーカを担ぐアメリカンイクシードが、ならばと隣の相方に攻撃を命じる。
次のアタック。
トリガーによりクリティカル2を獲得しているジパングイクシードでコキュートスを狙い縦列の2枚のユニットをレストした。
「タイホウのブースト、クリティカル2のジパングイクシードでコキュートスをアタック!」
「通さねえぜ! ここでプロテクト発動!」
しかし、小宮山のプロテクトに防がれる。
手札を1枚ドロップゾーンに置く代わりに、ジパングイクシードのアタックはパワーに関係なく完全に防がれる。
守護者のスキルを持つカードは本来デッキに4枚までしか入れられないが、プロテクトをもつユニットにライドを続ければ完全ガードを4回以上使うことも可能となる。
その上グランブルーはグリード・シェイドや伊達男ロマリオのようなドロップゾーンに置かれたカードを手札に戻すスキルを持つユニットもいるため、守護者のカードを何度も繰り出すことが可能だ。
コキュートスのスキルをアルヴァーロやゴーストシップと合わせて使えば、コストの手札を温存しつつ高い攻撃力を持つユニットを展開し攻撃と防御の両方を底上げすることができる。
カウンターブラストやソウルブラストに使うコストの確保や山札の消費のしすぎなど注意するべき点は多くある素人には扱いにくいクランではあるが、その分グランブルーは使いこなせば非常に強力な効果を発揮するクランだ。今は休止中だけど、私もグランブルー使いなのでこのクランの強みは知っている。
手札を消費させ守護者とプロテクトを使わせたけど、小宮山にはまだ1ダメージ分の余力がある。
そして私のアタックできるのはもはやWASPの1列のみ。
シールドもスキルも持たない代わりに高いパワーを持つバニラユニットで構成される1列ということに加えトリガーの効果も受けているので、パワーは申し分ない。だが、クリティカルは1。
このターンで6ダメージを与えたかったけど、無理だった。
防がれたならば仕方がない。
私の方もすぐに次の小宮山の攻撃を凌ぐことを考えることにした。
けどその前にこのアタックを通して5ダメージを与える。
私の記憶が確かなら、小宮山の残る1枚の手札は『モータル・ミミック』。シールド15000のクリティカルトリガーであり、単体では今のWASPのアタックを防げないカードのはずである。
つまりこの攻撃に関してはコキュートスに通せる。
鬼金剛とWASPをレストして3度目のアタックを仕掛ける。
「鬼金剛のブーストしたWASPでコキュートスをアタック!」
「ノーガードだぜ」
最後のアタック。
ヒットしてもコキュートスは倒れない。
巨大な空母から放たれた魚雷が死霊術師を直撃したが、コキュートスはギリギリのところで踏ん張り抜いた。
「ダメージチェック……『バイオレンス・フランガー』、ノートリガーだぜ」
5枚目のダメージが置かれる。
だが、ここで私のアタックフェイズは終了となる。
「……ターンエンド」
相方のしかけた攻撃で倒しきれず、悔しさから忌々しいと歯ぎしりをする、星条旗の描かれた帽子をかぶり2丁のバズーカを背負った海将。
それを冷酷無慈悲な瞳で睥睨しながら海に佇む命を弄ぶネクロマンサー。
攻守が逆転し、不死の海賊団がその猛威を再び振るう時が来た。
「ふはははは! このファイトもらったぜ、ファイナルターンだ!」
小宮山がファイナルターンを宣言した。
このターンで勝負を仕掛けるつもりのようだ。
「スタンド&ドロー!」
小宮山の手札はドローフェイズを合わせても2枚。前衛のリアガードが2つも空いている状況では攻撃する側も厳しい。
だが、手札という名の手駒が足りないなら、墓場であるドロップゾーンからユニットを呼び覚ましてリアガードを集めてくるのが不死の海賊団たるグランブルーのやり方である。
「暗き冷たき海の底に沈められようとも、奈落の底から蘇るのが海賊! 手駒が足りねえなら墓場から持ってくるのが俺たちのやり方だ! 行くぜ、コキュートスのカウンターブラストを発動!」
カウンターブラスト1枚と、山札を上から4枚ドロップゾーンに送ることで発動させるコキュートスのスキル。
ドロップゾーンに置かれたのは『イービル・シェイド』、『おばけのリック』、『スケルトンの抜刀兵』、『モータル・ミミック』の4枚。
そして、ドロップゾーンからソウルのグレード3のカードの枚数プラス2枚までのユニットをリアガードにスペリオルコールするスキルである。
「ドロップゾーンから『ストームライド・ゴーストシップ』と『洒落男 アルヴァーロ』を前列のリアガードにスペリオルコールだ!」
小宮山は先ほどのターン同様にゴーストシップとアルヴァーロをスペリオルコールしてきた。
ゴーストシップは1回限りのアタックで宝箱1つを残し墓場に逆戻りする幽霊船だが、ノーコストで15000ものパワーアップを可能とするユニットである。
アルヴァーロは言わずもがな、墓場から帰って来れば真価を発揮する。ドロップゾーンからのスペリオルコールでパワーを上げるスキルを持つ。
小宮山のドロップゾーンのカードは15枚。コキュートスのパワーがさらに+10000、2体のロマリオはパワー+4000。
再度コキュートスのスキルから攻撃力の増強をつなげてきた。これだけの盤面を整えてきたというのに、手札の消費は0枚だ。
3列全てのラインが合計パワー30000を超える布陣。
こちらのダメージは4枚。ジパングイクシードがいるとはいえ、クリティカルトリガーを引かれるようなことがあれば守りきるのが困難になる。
「行くぜ! ロマリオのブーストでコキュートスがアメリカンイクシードにアタックするぜ!」
1度目の攻撃はコキュートスからである。
コキュートスのパワー22000にロマリオのブーストを加算した、合計パワー34000のヴァンガードのアタックである。
クリティカルトリガーを引かれれば6ダメージを受ける局面、私は迷わず切り札を投入した。
「ジパングイクシードでインターセプト! 同時にスキルを発動! 指定するのはコキュートスだ!」
「マジで厄介なインターセプトだな……!」
ジパングイクシードのインターセプトを利用し、コキュートスのアタックで受けるダメージをこのターンに限りゼロにする。
舌打ちしながら、小宮山がドライブチェックを行う。
「だがな、まだツインドライブがあるぜ! ファーストチェック……『逆心の呪術師 ネグロブリーチ』、ノートリガーかよ! ええい、2枚目があるぜ!」
1枚目は外れた。
だが、コキュートスのドライブチェックはもう一度ある。
「セカンドチェック! ……『モータル・ミミック』! 来た来た来たぁ、クリティカルトリガーだ! 効果は全て『ストームライド・ゴーストシップ』だ!」
結果はここにきてクリティカルトリガーだった。
終盤にきて無駄落ちばかり続いていた小宮山に運が回ってきたようである。
「トリガーでクリティカルとパワーを加算した『ストームライド・ゴーストシップ』にロマリオのブーストをつけてアメリカンイクシードをアタック! 合計パワー44000だぜ!」
コキュートスの攻撃はダメージゼロに抑えたが、次だと言わんばかりに6ダメージに大手をかけてくるクリティカル2のストームライド・ゴーストシップを伊達男ロマリオのブーストを合わせて仕掛け来た。
ブースト、トリガー、そして己のスキルにより、ストームライド・ゴーストシップは44000のパワーを持つ強力なユニットとなっている。この攻撃も防ぎ切らなければならない。
先のターンにヒラヌマは使ったため手札に守護者はすでに無く、ジパングイクシードも2枚とも使ってしまった。
だけど、ドロートリガーのおかげでこの5枚の手札にゴーストシップの攻撃も防げるシールドが集まっている。
「『駆逐艦 はれかぜ』、『ヴァリアント・エアシップ』、『海将 ルーシイクシード』でガード!」
たとえゴーストシップの攻撃でも、対応できる。
15000のシールドを持つカードを2枚とドロートリガーのルーシイクシード手札から繰り出してガードした。
これでシールドは合計35000。アメリカンイクシードのパワーと合わせて、48000。ゴーストシップの攻撃は防ぎきれる。
手札を3枚つぎ込んだが、ファイナルターン宣言を阻止した。
「嘘だろ……!?」
ファイナルターン失敗。
小宮山の攻撃はあと1回あるが、アルヴァーロのクリティカルでは6ダメージを与えられない。
前のターンを4ダメージの状態で凌いだのがここにきて功を奏した。
「ストームライド・ゴーストシップは退却、代わりに1枚ドローするぜ」
一時の間存在できる幽霊船が宝箱をコキュートスに残して消えていく。
残された死霊術師は、わざわざ蘇らせてやったのに海軍1つ撃退できなかった幽霊船を無感情な冷たい目で見てから残された宝箱を手にする。
残る攻撃は洒落男のみ。パワーは十分だが、こいつでは一撃しか与えられない。
「……こうなったらこうするまでだ! アルヴァーロ、サムライスピリットのブーストでWASPをアタック!」
攻めきれなかった小宮山は、5ダメージを狙わずこちらの攻撃力を削るベくアルヴァーロのアタックをリアガードのWASPに仕掛けてきた。
WASPの攻撃力は捨てがたいけど、手札を使いすぎた私にはリアガードまで守る余裕がない。
「ノーガード」
WASP撃沈。
こいつはまあ、沈む空母だし。
WASPが退却したことで、私も盤面が一気に薄くなった。
手札も消費したし、あと1ダメージとはいえ5枚の手札の守りを突破するのは容易じゃない。
「スタンド&ドロー」
手札は『特潜 ゼロ』、『海将 アメリカンイクシード』、『星条海将 アメリカンイクシード』の3枚。
3度のアタックのうち1撃倒せれば、ヒールトリガーを引かれなければ私が勝つ。
この手札で、なんとか攻めきる。
……強面店主の名誉のためとか変態の敵討ちのためとかじゃなくて、私が負けたくないだけだから! 特にこんな馬鹿には!
「『星条海将 アメリカンイクシード』にライド!」
アメリカンイクシードにさらにライドをする。
これでフォースをもう1つ獲得できる。
「イマジナリーギフト フォースを右のRサークルに展開。左のRサークルに『海将 アメリカンイクシード』をコール!」
アメリカンイクシードには相方を呼ぶスキルがあるけど、今回は使わない。
カウンターブラストはVの『星条海将 アメリカンイクシード』に使うし、このターンは攻めに出るつもりだ。
右のRサークルには、最後の手札を投入する。
「『特潜 ゼロ』をコール、同時にスキルを発動!」
先ほどのターンでようやく特潜ゼロのスキルに必要なコストが確保できた。
持久戦に強いシーストライカーの特徴の1つは、デッキアウトを防ぐ山札の補充を行えるスキルがあるということ。
山札との入れ替えでユニットを展開していくシーストライカーは、スペリオルコールするためのカードを手札やソウル、さらにはドロップゾーンから山札へ送り込む。
山札なのでドロップゾーンを駆使するグランブルーよりは、はるかに使いやすい。
そしてこの『特潜 ゼロ』のスキルは、ドロップゾーンからノーマルカード3枚を山札の下に置くことで前列のユニット3体のパワーをアップさせるというもの。
山札の下に置くからトリガーの引きやすさに対する影響はそれほど多くなく、コストの確保もそれほど難しくはない。
その割に効果はシンプルに強い。
「ドロップゾーンのノーマルカードを3枚山札の下に置き、前列3枚のユニットのパワーを+5000!」
これで攻撃力が大きく上がった。
小宮山の表情は、苦々しい。
……ヴァンガードファイターたるもの、表情の制御はできなきゃいけないものだろ。やっぱ、こいつ馬鹿だ。
アタックフェイズに移行する。
「『星条海将 アメリカンイクシード』のアタック、ブーストを受けていないのでスキルを発動!」
アメリカンイクシードのカウンターブラスト。
ブーストを受けなければパワー+10000に加えて敵前衛のユニット全てとバトルするスキルだ。
「『突風のジン』でコキュートスを完全ガードだ!」
小宮山がガーディアンをコールする。
まだ守護者があったのか。相変わらずしぶとい。
手札からネグロブリーチをドロップすることで、アメリカンイクシードの攻撃はコキュートスに届かなくなった。
風の力を味方につけた死霊術師。アメリカンイクシードのバズーカも風に押し返され、コキュートスには届かなかった。
「ツインドライブファーストチェック……『鉄甲戦艦 鬼金剛』」
1枚目はノートリガーだ。
相手の残る手札3枚はクリティカルトリガーとグレード1のサムライスピリットのはず。
ゴーストシップの残した宝箱の中身が気になるけど、残る2回の攻撃が通るかはトリガー次第といったところだろう。
……厄日だし期待できねえ。
「セカンドチェック……『救護艦 ひかわ』」
幸運の女神は今度はこっちに微笑んでくれたらしい。
ヒールトリガーである。
お互いトリガーのタイミング、都合がいいんだか悪いんだか……。
まあいいや。ゴーストシップの宝箱がヒールトリガーだとしても、これならダメージを通せる。
「ヒールトリガー発動! アメリカンイクシードにパワーを追加!」
アメリカンイクシードのアタックは防がれたが、アルヴァーロは退却しインターセプトは消えた。
相手の手札は残り3枚。
あとはトリガーの効果でパワーアップしたこちらの攻撃を小宮山が残る手札で凌ぎ切れるかというところ。
まずはゼロで攻撃を仕掛ける。
「鬼金剛でブースト、特潜ゼロでコキュートスをアタック!」
「……ダメだ、もう防げねえ! ノーガード!」
小宮山の選択はノーガード。
残る3枚の手札ではアメリカンイクシードの攻撃まで防ぎきれなかったということか。ならばとヒールトリガーの恩恵を狙う賭けに出たということなのだろう。
「ヒールトリガーさえ引けば! ダメージトリガーチェック……『モータル・ミミック』! おっしゃ、クリティカルトリガー! ……クリティカルトリガー!? 最後までこのパターンかよ!?」
トリガーはダメージを回復させてくれるものではなく、自分の急所に直撃するという出て来てほしくないクリティカルトリガーだった。
本当に最後の最後まで無駄落ちトリガーが出てきた。
厄日なのか幸運なのかわからなくなってきた。
……クレイの戦場のイメージでは、コキュートスが普段の氷のように冷たい命をもてあそぶ姿からはかけ離れたてんやわんやな間抜け姿になって負けている情景が浮かんできた。
使い手がバカだと、契約しているユニットたちもこうなるってこと?
……やっぱり、小宮山ってバカじゃん。
「負けた、だと……この俺が!? くっそ、運が悪かっただけだ!」
実際ついてなかったしね。
けど、運だけじゃない。ポーカーフェイスができないなど、こいつどこか抜けてるというか、結構なバカだ。
「もう一戦だ!」
「いや、私帰るし。それじゃ店長、預かっておいて」
「あ、ああ」
「待てコラー!」
「それじゃ」
「帰るなー!」
コキュートスを土壇場で引いてあれだけ使いこなした腕は認めるけど、よくよく考えたら初めて触るデッキを扱う相手に負けるあたり、やっぱり弱いだろ絶対。
まあ、もう2度と関わることないだろうし。
いろいろあってファイトさせられたけど、無事にデッキを店長に預けて店を後にした。
なんか喚いている奴いたけど無視。
あんなバカが相手だし、あの時のリベンジを果たしたなんて気分じゃないけど。
相手が相手なだけに、ストレス発散くらいでファイトしたい欲求が湧き上がってくるまでは行かずに済んだ。
さて、帰って受験勉強に今度こそ集中しよう。
……この日の出会いが後の大騒動に関わることになる発端だったことを、この時の私は知るよしもなかった。