別世界の異邦者 作:みども
入学手続きなどを無事に済ませ、帰宅した。
そのあとすぐに私は封印していたデッキを手にして、クラウンへ向けて出発した。
……母親が般若みたいな目で睨みつけてきたけど。父さんがなだめてくれるのを期待しよう。
というわけでクラウンに到着。
まずシーストライカーのデッキを返してもらい、手始めに店長をぶっ倒すとしよう。
自動ドアが開く。
店内にはレジにいつも通りの893フェイス店長が座っており、店内には数人の客が各々ブースターパックを選んだりファイトをしたりしながら過ごしていた。
いつも通りのクラウンの光景である。
まずは店長のいるレジに向かう。
「店長」
「おう、ルイリちゃんじゃねえか。聞いたぞ、雪凪に受かったそうじゃねえか」
「兄貴に聞いたの?」
帰ってからすぐにこっちに来たけど、店長はもう知っていた。
私の他には家族と……どこぞのバカくらいしか知らないはずだけど。店長は兄貴と仲がいいので、兄貴は結構情報を流す。そしてその流れた情報が別のやつに、大抵はあの変態に流れる。
大抵この流れでいろんな情報が店に行くので、店長が私以外からこういうことを聞くのは大抵兄貴が情報源だと想像つく。
「まあな。俺も気が気でなかったぞ、おまえさんみたいなクソガキがあの雪凪を目指すっていうんだからな」
「……私これでも成績なら優等生なんだけど」
「成績優秀でもお前は人間的に色々アウトだろ」
「店長なんか顔がアウトじゃん」
「このクソガキ……!」
口喧嘩で店長が勝ったことなんかないし(嘘です)。
額に怒りのシワを浮かべる店長。
普通の人ならビビるけど、私は慣れているので別に怖くない。
口喧嘩では勝てないことを承知している(※嘘です※)店長は額に青筋を立てながらも、ため息で怒りを抑えた。
大人の対応もできるようになってきたね(※元からです※)。もともと強面なだけで実際には怒りやすい人じゃなかったけど、以前は結構な頻度で手をあげることも多かったから(※原因は大抵このクソガキです※)。
さて、私は自分の本来の目的を果たすとしよう。シーストライカーのデッキもあるけど、まずは店長が馬鹿者ファイトを条件におごる約束だった、ブースターパックから。
「さて、店長。私が預けていたデッキがあったはずだけど、その時……」
「おう、あれな。ほれ」
シーストライカーのデッキをカウンターに出す店長。
……いや、待て待て待て。それもあるけど、むしろ私にとってはそれが1番の目的だけど、明らかに私がその先を言おうとしたところをこれ見よがしにわざと話題をそらしたよね。
「……店長、このデッキ預けた日に約束したよね?」
「……何の話だ」
「店長の代わりにあのバカとファイトする条件に、ブースターパック
「何で覚えているんだよ!」
「なかったことにするな!」
前言撤回、どこが大人だ! このケチ!
「ケチ! ハゲ! そのまま下の毛も全部抜けちまえ!」
「下品な言葉使うな、クソガキ! ハゲなのは頭だけだ!」
下の毛はあるんだ。
……どうでもいいわ、そんなこと!
「約束したよね?」
「……このクソガキ! なら、実力でもぎ取ってみせろ!」
ドン! と店長がレジのカウンターにデッキを叩きつけるように置いた。
さりげなくこっちが一方的にリスクを負う勝負に持ち込むあたり、流石である。その顔に似合う詐欺師ぶりだな!
だが、ファイターたるもの勝負は受けて立つ。
そしてただでその土俵に乗るつもりはない。
「わかった。つまり、私が勝ったら奢りは2個、負けたら0個ということだね」
「え゛!?」
店長の顔色が変わった。
私が勝ったらただ売りが2つになる勝負。このくらいのリスクは背負ってもらわないと。
店長はしてやったりというのが隠しきれてなかった顔から、やられたという顔になり、そしてこのクソガキ! と言わんばかりの顔に変わった。
すごい表情コロコロ変わる。面白いかも。
「良いだろう……勝てば問題ないからな! ブランクだという言い訳なんぞやらんからな!」
久しぶりにファイトするから、私の腕は多少錆び付いていると思っているらしい。
確かにかなり長い間ヴァンガードはやってないけど、それでも店長に負けるほど錆び付いているわけじゃないから。
今回はシーストライカーじゃなくて、手持ちのデッキを久しぶりに使うことにする。
店長とテーブルを挟んで向かい合い、デッキをセットする。
「お、店長とクソガキちゃんがやるみたいだぞ」
「ルイリちゃんのファイト久しぶりに見るな」
「頑張れよクソガキちゃん!」
なんかわらわら集まってきた。野次馬うるさい。それとクソガキ言うな!
「準備は良いか?」
「いつでも」
引き直したけど、手札がよろしくない。
でもこういうこともあるのがヴァンガードだ。仕方が無い。
初期の手札があまり良くないことをバレないようにしながら、準備できたことを伝える。
「「スタンドアップ、ヴァンガード!」」
クレイを舞台に、新たな戦いが幕を開けた。