最初のOLがチートだったら   作:Friday

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初投稿です。設定めちゃくちゃかもしれませんが、温かい目で見守ってください。


最初のOLがチートだったら

 

 Hello,everyone.

 

 私の名前は御布施(おふせ)(れい)。25歳のしがない会社員だ。所謂オフィス・レディ、略してOL。ちなみにイニシャルもOL(違う)。

 社会人3年目で仕事にも慣れてきた。毎日そこそこに働いて、そこそこにのんびりして、そこそこに上司に怒られる、そんな日々を送っている。最近ようやく日本酒を美味しく感じられるようになった。自己プロフィールとしてはこんなものだろう。まとめれば、どこにでもいる独身女性と言ったところ。

 ちなみに挨拶が英語だったことに意味はない。なんとなく、そっちの方がキャッチーかなと思っただけだ。

 

 さて、私の紹介をするにあたってはもう一つ話すべき事項がある。

 私、実は人生2回目なのである。もっとも、前世の記憶がぼんやりあるといった程度で、自分的にはそこまで実感が湧かないのだけど。

 まあでも人生2回目の恩恵は大きく、幼少期からずっと勉強で困ったことはない。親が教育に力を入れていたことも大きな要因だが、たとえ覚えていないとしても一度習ったことがあるというのは大きな差だ。子供の頃に覚えたことは、そう簡単には忘れないらしい。

 

 そんな昔話があるおかげで私は少しばかり捻くれた人間に育った。その証拠に、今世の私は就職も決まらない内から家出同然に実家を飛び出している。

 今となってはちょっと申し訳ない気持ちもあるが、戻る気は今のところ無い。

 これ、捻くれてるというより薄情なだけ……?

 前世の記憶は鮮明にあるわけじゃないから何とも言えないけど、私はここまでアグレッシブな人間だったのだろうか。あまりそんなイメージは湧かない。

 

 まあ私の親に関してはどうでもいい。

 とにかく、そんな捻くれた私だからだろう。こんなことになったのは。

 

「みなさん、どなたか席を譲って貰えないでしょうか!」

 

 色々諦めた私の目の前で、推定女子高生がそう声を上げていた。

 

 話は数分前に遡る。

 私は現在、東京都高度育成高等学校という学校の敷地内で働いている。あ、教師ではない。

 この学校、かなり特殊な学校で敷地内に様々な施設が揃っているのだ。コンビニにスーパーマーケット、ショッピングモールや映画館まである。生活に必要な施設が娯楽も含めて揃っていて、学生が外部に出ることなく生活可能なようになっている。私はその施設に勤めているわけだ。

 どうにもこの学校の生徒は3年間、卒業するまで学校を出ることなく青春を過ごすらしい。外と連絡をとることもできないんだとか。電子マネーでいくらか生活費は支給されるようだけど、私ならそんな高校生活は絶対ごめんです。

 しかも、まだ勤め始めて1週間も経ってない私にもわかるほど膨大な監視カメラの数。こんなのどうやって管理してるのだろう。やはり思春期の高校生を1つの場所に集まるわけだから、見張りが必要ってことか。なんにせよ、こんな息が詰まるところでは働きたくないのが本音だ。

 今日の事件にはそんなストレスも関わっているのかもしれない。

 

 私は職場までバス通勤をしている。通勤ラッシュが存在しないバスで、何時に乗っても空いているのだが、この日はいざバスに乗ったら学生が一杯いて驚いたものだ。今日は入学式があり、この学生達は皆1年生ということになる。

 まあでも、都会の通勤ラッシュよりは全然空いてるし得だよね、なんて考えながら吊り革を握っていると、途中のバス停で杖をついたおばあちゃんが乗ってきた。

 うわぁ、大変そうだなー、このバスもノンステップじゃないしー、とか思ってたんだけど、そのとき目の前の優先席に金髪のガッチリした学生がドッカリ座り込んでるのを見つけてしまった。……高校生が金髪オールバックって普通ある?

 閑話休題、当の学生さん、おばあちゃんに気付いて席を譲るつもりは無さそうである。こういうとき、私は申し訳ないながらスルーするのが普段の対応だ。

 しかし前述した通りにストレスでも溜まってたのか、慣れないことをしてしまったのが運の尽きである。

 

「そこの君、お婆さんが困ってるのが見えないの?」

 

 車内はそこそこ混んでいたけど、私の声はよく通った。視線が集まって少し恥ずかしい。

 そんな私の声は目的の人物にも届いたらしく、金髪オールバックはこちらを見上げた。そして席を立ってくれるのかと思いきや、ビックリするお答えが返ってきた。

 

「実にクレイジーな質問だね、レディ」

 

 どっちがクレイジーだ。こいつ、とんだキチガイ野郎である。

 彼は堂々とそう宣い、足を組み換えながら続けた。

 

「何故この私が、老婆に席を譲らなければならないんだい? どこにも理由はないが」

 

 それにしてもここまでハッキリとノーを言うやつがいるとは、驚いた。

 ……こいつ、やっぱり高校生のコスプレか? 今時の高校生ってこんな捻くれてるのね。正直もうこの時点で、私は自分の軽率な行動を後悔していた。

 もっと考えろよ、私。金髪オールバックで優先席に足を組んで座るような奴が素直に席譲ってくれるワケ無いでしょうに。

 それでもここで「それもそうね、失礼したわ」って言って引き下がるのはおばあさんに申し訳ないし、良心が痛む。あとはささやかな年上の意地というやつである。仕方がなく、なんとか言葉を返した。

 

「……君が座っている席は優先席よ。お年寄りに譲るのは当然でしょう?」

 

「理解できないね。優先席はあくまで優先席であって法的な義務は存在しない。これを譲るか否か、それは今現在この席を有している私が判断することなのだよ。若者だから席を譲る? 実にナンセンスな考え方だ」

 

 ああ、これ面倒臭いやつだ、間違いない。しかもちょっと納得しちゃったよ、続けなきゃダメかな…………ダメか。

 視界の端におばあさんが写った。やはり立ってるのは辛そうである。

 何か反撃の糸口はないものかと頭を回していると、件の金髪オールバックから追撃が来た。

 

「私は健全な若者だ。確かに立つことに何の不自由も感じない。しかし、座っているときよりも体力を消耗することは明らかだ。意味もなく無益なことをするつもりにはなれないねぇ……。それとも、チップを恵んでくれるとでも言うのかな?」

 

 あー、めんどくさー。こいつ絶対モテない。でもちょっと納得もしてしまった。そう言われると弱いが、はてさてどうしたもの…………お、チップ、それだ。労働には報酬をってね、これでも食らえい!

 

「ん、ならチップ出すよ。10円でいい? たしかさっき自販機でお茶買ったお釣りがズボンのポケットに…………あった、はい」

 

 私はそう言って、パンツスーツのボトムスの右ポケットに手を入れた。手触り的に10円玉が2枚入ってる、流石に片方でいいよね。

 10円玉を1枚取り出して金髪の前に差し出す。(もうオールバックはいらないよね? だって車内の金髪こいつしかいないし)

 

「……ほう」

 

 彼は器用にも、片目は瞑った状態でもう片方の目を見開いた。

 ふはは、まさか本当に出すとは思うまい。社会人の資金力舐めんなよ? 見栄のためなら10円くらい惜しくない!

 

「じゃ、おばあさんに席譲って。……あ、10円じゃ少ない? もう一枚なら10円玉あるけど」

 

 固まっているのか動かない金髪にそう言って、ポケットからもう一つ10円を取り出した。

 

「……たしかにチップを出すことを提案したのは私だが──」

 

「ああ、足りないなら仕方ないけど、チップの額に文句をつけるほど器の小さい行為もないと思うわよ?」

 

 反論を言われる前に、なるべく失望したような態度を出して答えを返した。安い挑発だが、この手の唯我独尊系はすぐ乗ってくるだろう。

 

「……」

 

 その証拠に自分の意見を取り下げた。これはあともう一押しか?

 と、そのとき、

 

「あ、あの、お金なんてもったいないです。もういいですから、私は立っていても大丈夫ですので……」

 

 おばあさんからストップが掛かった、まさかの裏切りである。……まじ? ここまで来て?

 流石に金はやり過ぎたか……。

 

「え、えぇっと……本当に?」

 

「は、はい」

 

 意志は堅そうである。……当人がこう言ってるなら、遺憾だが私の動く理由もない。

 はぁ、仕方ないか。

 

「……了解です」

 

 なんか凄く居た堪れない。どうしてくれよう、この10円玉と車内の空気。

 宙ぶらりんにされている気分である。とりあえず10円玉をポケットに戻し、おばあさんに小声で「すいません」と謝っておいた。

 そこまでを見てだろうか、何が面白かったのか今度は金髪が笑い出した。

 

「ははははは!」

 

 私は思わず金髪に目をやる。彼は愉快愉快、とばかりに額を手で押さえて高笑いをしていた。

 じとっとした目を意識して向けると、彼は笑うのを止めて話し出した。

 

「いや、失礼。レディ、最初はナンセンスな人間かと思ったが、どうやら勘違いのようだ。もしこのまま話が進んでいたらどうなったか」

 

 パチパチパチ、と金髪の手が音を立てる。ここまで嬉しくない拍手もそうないな。

 

「しかし、その話は終わったということでいいようだね」

 

 呆気にとられて私が何も返せないでいると、金髪はそう勝手に自己完結してイヤホンを耳に入れた。

 きっとこの金髪はさっきのやり取りなど忘れて音楽の世界に浸っていることだろう。ちっ、逃げられた。

 全く何をやってるんだ私は。こんなのの相手するなんてやっぱりロクなことにならなかったじゃないか。見ろ、この戸惑いで溢れた車内の空気を。

 さっきまでこっちをガン見してたであろう他の乗客達は一斉に目を逸らした。火の粉はごめんよ、と顔に書いてある。

 

「あの……方法はともかく、私もお姉さんの言う通りだと思うな」

 

 そんな空気の中だった。金髪に声をかける勇気ある女の子が登場した。金髪や他の学生と同じ制服を着た彼女は恐らく件の高校の生徒だろう。ここで手をあげられるとは中々の胆力の持ち主である。加えてかなり可愛い。(私調べ)

 

「今度はプリティガールか。どうやら今日の私は思いの外女性運があるらしい」

 

 彼女は金髪に目を合わせ、話を続けた。っていうか、イヤホン入れてる癖にバッチリ反応しちゃってるし。

 

「おばあさん、さっきからずっと辛そうにしてるみたいなの、席を譲ってあげてもらえないかな? その、余計なお世話かもしれないけど、社会貢献にもなると思うの」

 

「社会貢献、か。中々面白い意見だ。確かにお年寄りに席を譲ることは、社会貢献の一環かもしれない。しかし、残念だが私は社会貢献に全く興味がない。私はただ私が満足であるならばそれでいい」

 

 可愛い女の子の真っ当な意見も金髪には暖簾に腕押しであった。こやつ、手強過ぎないか。この議論に頭を回すよりも学園前までの残り少ない時間を立つ方が余程消費体力少ないんじゃない?

 と、金の力で解決しようとして失敗した敗北者たる私が心の中でグチグチ言ってると、金髪はこの場で一番周りがやって欲しくないであろう爆弾を落とした。

 

「──それともう一つ。このように混雑した車内で優先席に座っている私を槍玉に上げているが、他にも我関せずと座り込み沈黙を貫いているものは放っておいていいのかい? お年寄りを慮る心があるなのら、そこには優先席か否かは瑣末な問題でしかないと思うのだがね」

 

 金髪の言い草には腹が立つが、たしかにその通りである。おい、未来ある学生諸君。この捻くれた金髪に一杯食わせたくはないか? 今ばかりは空気なぞ読まずに名乗り出てくれていいのだぜ。

 勇気ある制服女子も金髪相手に何を言っても無駄と悟ったのか、周りにその矛先をシフトした。

 

「みなさん、少しでいいので聞いてください。どなたかこのおばあさんにお席を譲って頂けないでしょうか。お願いします」

 

 とまあ、ここまでがだいたいのあらましである。一応善意の行動のつもりだったのだが、どうにも空回りした感が否めない。

 この制服女子の声掛けには、金髪の向かいの席に座っている男子学生が手を挙げた。

 

「ありがとうございます!」

 

 制服少女は嬉しそうに頭を下げた。

 ここでお礼をしっかり言える辺り、とてもできた子である。どこかのエセイニシャルOLとは大違いだ。

 

「ありがとうねぇ」

 

 おばあさんも続いてお礼を言い、無事に席に収まることができた。

 私的にも場の空気が無事に落ち着いてめでたしめでたしと言ったところだ。…………そうだ、良いこと思いついた。

 

「ねね、勇気ある制服少女ちゃん」

 

 私の意味不明な呼称に、制服少女はしっかりと反応をしてくれた。

 

「はい……あ、さっきのお姉さん。えっと私ですか?」

 

「うん、助太刀ありがとうね。助かったよ」

 

「いえいえそんな。お姉さんこそ一番に声を掛けて、凄いです」

 

 彼女はそう言ってにっこりと微笑んだ。本当にできた子である。

 

「うんうん、良い子だ。じゃあ君にお礼というか、感謝の意としてこれをプレゼントするよ」

 

 私はそう言って、鞄の中から飴を一つ取り出して渡した。一応、しっかりした喉飴なので値段的には10円よりよっぽど高い。

 こっちを出せばあの金髪も席を譲っただろうか。

 

「え、いいんですか? ありがとうございます! 後でおやつにいただきますね」

 

 彼女は嬉しそうに飴を受け取ってくれた。大事にブレザーのポケットにしまう姿にはこの子の優しさが滲み出ている。

 そんな彼女に私も微笑みを返した。

 

 

 

 

 

 そこからしばらく、何事もなくバスに揺られると、私や生徒たちが降りるバス停に着いた。このバス停を降りたらそこが、東京都高度育成高等学校である。

 生徒たちがゾロゾロとバスから降りていった。私もその流れに乗る。

 

「ん……?」

 

 と、そのとき生徒の中に見覚えのある顔を見つけた。会ったことがあるのはもう随分昔で幼いころだけど、多分間違いない。少し大人びていてたから驚いた。今年からこの学校に通うのか、まさか同じバスに乗っていたとは……。ま、声をかけるのは今度でいいかな。向こうは覚えてないかもしれないし。3年もあるのだ、どこかで縁もできるだろう。

 校門をくぐり、校舎の方を目指す生徒たちを見送った。若人たちよ、頑張りなさい。ここ、本当に変人の巣窟だけど。この入学式で、さっきの勇気ある制服少女のような人格者が増えることを祈る。

 

 私の職場は校門からそう遠くない。学校の設備にはショッピングモールがあるのだが、その一角に事務員室という名の休憩室みたいな場所がある。そこが私の職場だ。

 中に入ると、まだ誰も居なかった。もっとも同じ場所に通勤してくる人はもう1人しかいないのだけど。今日は私の方が早かったらしい。部屋の備品はデスクが2つとそれぞれにノートPC、それに長めのソファが1つ。それだけである。人数も少なければ、与えられたオフィス(と言っていいのか怪しいタダの部屋)も物置をリフォームしただけみたいな場所。私も同僚もここに来たばかりなので私物もあまりない殺風景な部屋だ。しかも一歩外に出ればキラキラした学生に囲まれるというオプション付き。全然嬉しくない。

 そんな泣き言も程々に、私は自分のデスクに荷物を置いて腰を下ろした。PCを起動し、パスワードを入力する。同僚は未だ現れないが、私だけでも仕事を始めるとしよう。

 

 私の仕事は学校敷地内のセキュリティや管理システムのメンテナンスと改善だ。要するにプログラマーというやつ。名前がカッコいいからこの職を選んだ。

 まあ、改善点なぞそう見つかることもなく、メンテナンスも定期的なものはソフトウェアがほぼ自動で検査を行ってくれる。学校側から何かしらの依頼が来なければやる事は殆どない。今日やることと言えば、とりあえず新入生のデータ登録に不備がないかのチェックくらいだろうか。あとは……うん、大丈夫。

 いつ新しい仕事が入ってくるかもわからない、今やれることはとっとと終わらせてしまおう。

 

 その後、パソコンを叩いていると同僚が始業時間に10分遅れてやって来た。叱る人間もいないから始業時間といっても形骸化しているものだけど。

 結局1日、何の事件も起こらずに過ぎ去った。半分くらいはお茶を飲んでるだけだった気がする。実際、聞いたところによると忙しくなるのは試験期間周辺らしい。これにはこの学校のシステム、通称「Sシステム」というものが関わってくる。このSシステムとは、生徒の評価をする点数制度だ。点数計算には色々な要因が絡まってくるらしく、下手したらシステムの書き換えが必要になるパターンもあるとのこと。技術屋泣かせの教育制度である。その代わり普段は暇なわけだが……。

 

 17時を過ぎた。広げた荷物を片付けて、帰ることにする。同僚にその旨を告げて部屋を出た。

 外に出ると、ショッピングモールのガラス窓に夕陽が差していた。

 

「もう夕方かぁ、朝から賑やかだった割には早い1日だった」

 

 独り言を思わず漏らす。日中の会話が少ないとどうしても溢れてしまうのだ。バスでやらかしたときはなんて厄日だと思ったものだが、蓋を開けてみればあれが最低底だったらしい。

 学校の生徒は学内に寮があり、そこで生活ができるが教師以外の従業員はそうはいかない。態々毎日バスで往復しなくてはならなく、これが中々長い道のりだ。

 バス停までの帰り道をトボトボと歩いていると、途中でコンビニを見つけた。小腹が空いてくるがしかし、私はこのコンビニで何も買うことができない。この学校の敷地内では現金は一切使用できず、全ての決済がSシステムによるポイントで行われる。このポイントは生徒の間でしか流通しておらず、従業員は手に入れられないのだ。代わりに従業員は経費としてポイントを手に入れられるため、何か必要なものがある場合は経費として落とす必要がある。もちろん、私の小腹が空いた、というのは経費で落とせる領分を超えてるため、私はコンビニでは何も買うことはできない。

 

 恨めしい念を込めてコンビニの前を通ったとき、驚きの事態に遭遇。今朝校門前で見た懐かしい顔がいた。

 

「もう結ばれたか、私の縁」

 

 ……想像以上に早い縁結びだった。

 ()は少しどんよりした目で、コンビニの前でゴミを拾っていた。……ボランティア?

 

「ねぇ、君。何してるの?」

 

 とりあえず声を掛けてみることにした。向こうが私を覚えているかの確認も併せてするつもりで。

 

「……はい?」

 

 最初、声を掛けられたのが自分だとは分からなかったようで、彼は一拍遅れてからこちらを見上げた。

 

「いえ、別に大したことではないのだけれど。なにかあったのかと……良ければ手伝いましょうか? ゴミ拾い」

 

「……ああいえ、大丈夫です。すぐ済むので」

 

「そう?」

 

 にべもなく断られてしまった、ちょっとショック。彼は言葉通りにテキパキとゴミを拾い、コンビニの入り口付近に設置されたゴミ箱に纏めて放り込んだ。

 そしてすぐに地面に置いていたビニール袋とスクールバッグを拾うと、こちらに会釈だけして歩き出してしまった。

 

「あれはどっちだろう。知らないフリをしたのか、それとも本当に覚えてないのか」

 

 難しいところである。もっとも、ここでいくら考えたところで分かるわけはない。方法としては今から彼を追いかけて呼び止めることだが、それをしてまで聞くようなことでもないしね。今日はとっとと帰ろう。

 

 でも、いつか()とはゆっくりと話がしたい。いや、しなければならない。

 だって彼は、()()()()()()()()()()()()()()()()なのだから。

 

 

 

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