BloodBorne考察手記   作:宇佐木時麻

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一番書きたかった考察


第二章:月の魔物

 ローレンスたちの月の魔物。

 青ざめた血。

 

 作中のラスボスとして登場する上位者ですが、その行動と目的は謎に包まれています。

 登場した時は唐突で、唖然としている間にエンディングへ突入した人は数多いと思います。

 そんな月の魔物について今回は考察していきます。

 

 先に結論を言います。月の魔物の目的は、プレイヤーの狩人を上位者狩りの上位者とする事でした。

 

 

 

1.獣狩りの夜の真実

 

  そもそも、獣狩りの夜は何故発生するのか。

 

 

 

 ・旧市街

  赤い月は近く、この街は獣ばかりだ。きりがない

  もう何もかも手遅れ、すべてを焼くしかないのか

 

 ・ビルゲンワース

  赤い月が近づくとき、人の境は曖昧となり

  偉大なる上位者が現れる。そして我ら赤子を抱かん

 

 ・隠し街ヤハグル

  メンシスの儀式を止めろ。さもなくば、やがて皆獣となる

 

  狂人ども、奴らの儀式が月を呼び、そしてそれは隠されている

  秘匿を破るしかない

 

 

 

 各地のメモによると、赤い月が近づくと人の境が曖昧となって獣と成る者が大量発生するらしい。それを引き起こしているのがメンシス学派のようだ。

 ならメンシス学派が毎回儀式を行い狩人達がそれを止めていたのか。答えは否だろう。

 今までの獣狩りの夜は家に閉じ籠っているだけで夜が明けていた。しかし今回の獣狩りの夜は上位者の赤子メルゴーを倒すまで終わる様子を見せなかった。

 そもそもの話、エンディング2「遺志を継ぐ者」では儀式のために必要な上位者の赤子を殺し、メンシス学派のリーダー格のミコラーシュさえも倒してメンシス学派を壊滅させたのにも関わらず、獣狩りの夜がまた始まっている。

 

 即ち、今回の異例の獣狩りの夜の原因はメンシス学派だったが、今までの獣狩りの夜の原因は別にあったのだ。

 ならば、誰が獣狩りの夜を引き起こしているのか。赤い月を近づけていたのか。答えは単純明快である。赤い月である月の魔物自身が近づいてきていたのだ。

 自らの目的のために。

 

 

 

2.使者

 

 作中において、使者と呼ばれる悪夢から滲み出した小さな亡者たちがいる。

 彼らが狩人であるプレイヤーを見つけた事で、物語は始まるのだ。

 彼らの行動は一貫して狩人の援助だ。アイテムを交換してくれたり、書き置きを託すこともできる。

 だが、そもそもの話。彼らは「誰の」使者なのだろうか。

 狩人の夢に囚われたのは使者が狩人を見つけたから。つまり使者は誰かの指示で狩人を探していたことになる。

 狩人の夢に出てくる登場人物で、そのような指示を出す者。助言者であるゲールマンではなく、狩人を世話する人形でもない。

 

 即ち、使者は「月の魔物」の使者――狩人を援助するのは月の魔物の意志となる。

 

 月の魔物は、狩人に強くなって欲しいのだ。

 

 

 

3.教室棟のメモ

 

 月の魔物に関する情報は作中ではほとんど出てこない。その中でも数少ない情報として上げられるのが、教室棟のメモである。

 

 

 

 ・教室棟

  上位者狩り。上位者狩り

 

  ローレンスたちの月の魔物。「青ざめた血」

 

  3本の3本目

 

 

 

 このメモを読んで、何処か違和感を覚えた人がいるのではないだろうか。

 今まで各地にあったメモはメッセージのように書かれていたのにも関わらず、この月の魔物に関するメモだけ単語しか書かれていない。

 まるで、無理矢理言葉にしたように。

 

 そもそもの話、このメモを書いたのは誰なのか。教室棟は在りし日のビルゲンワースなので、ビルゲンワース関係者が残した物だろうか。

 だが、このメモを残せる人物に検討が付かない。このメモを残せるのはゲールマンと月の魔物の邂逅を知り、へその緒を知り、ビルゲンワース関係者という事になる。

 ローレンス本人のメモならば、自分の名前ではなく一人称で書くだろう。

 ゲールマンは狩人の夢の主となったため、あの悪夢の外には出られない。

 人形関係でもしミコラーシュが月の魔物との邂逅場面にいたとしても、へその緒を知っていれば脳に瞳を得るために迷わず使っていただろう。狩人の夢の元となった捨てられた古工房にへその緒が置いたままである事から、恐らくへその緒については知らないのだろう。

 

 ならば、このメモを書き残したのは誰か。月の魔物の事を知り、且つへその緒という上位者に関する事も詳しく、ローレンスたちの事も知っている存在。

 そんなものは、もはや一人しかいない。

 

 即ち――月の魔物本人である。

 

 このメモは、月の魔物が狩人に向けたメッセージ。

 月の魔物の目的は、狩人を上位者にすることだった。

 

 

 

4.Moon Presence翻訳

 

 月の魔物戦で流れるbgm「Moon Presence」ですが、ラテン語翻訳すると以下のような歌詞になるようです。

 

 

 

 月の魔物よ お前が現れる時 悪夢が生じる

 支配者よ お前が私に見える時 お前は再誕する

 支配者が来る日 支配者の悪夢は生まれる

 

 

 

 ここで大切なのは、「再誕」と「生まれる」という言葉です。

 1行目の歌詞はゲールマンと月の魔物との邂逅、即ち狩人の夢が出来たことでしょう。

 2行目の歌詞は月の魔物の事を言い換えているので、支配者とは上位者のことでしょう。

 3行目の歌詞は生まれると書かれているので、1行目のように悪夢ではなく、悪夢のような存在が生まれると示しています。

 つまり、分かりやすく直すと、

 

 

 

 月の魔物よ 月の魔物が現れる時 悪夢が生じる

 上位者(月の魔物)よ 月の魔物が狩人に見える時 月の魔物は再誕する

 上位者が来る日 上位者を狩る者は生まれる

 

 

 

 月の魔物は再誕する――上位者狩りとして。狩人として。

 

 それが月の魔物の目的。彼がエンディング2「遺志を継ぐ者」で狩人を上位者の赤子として自らの赤子を手に入れたにも関わらず、獣狩りの夜を止めなかった理由。

 全ての上位者は赤子を欲する。赤子とは継ぐモノ。月の魔物が欲したのは、自分と同一の存在。自身の生まれ変わり。

 

 月の魔物は、上位者狩りの上位者に自分の存在を継がせるのが目的だった。

 

 

 

5.エンディング3「幼年期のはじまり」

 

 月の魔物戦にて、何処か不自然さを覚えた事はないだろうか。

 ラスボスというには少し弱く、所々で様子見をしたり、狩人に自身の血を吸わせているようにすら見える場面が幾つもある。

 そして、エンディングで見える上位者となった狩人の姿。その色と姿を見て、つい先ほどまで戦っていた上位者を連想した者は多いはずだ。

 

 即ち、月の魔物の事を。

 

 何故、こうも姿が似ているのか。恐らくその原因は、月の魔物の血を吸った事だろう。

 狩人はへその緒を3本使い、上位者となった。だがこの時の狩人はまだ人の形のままで、何の変化も訪れていなかった。言うなれば「無色」の上位者。

 そして、それこそが月の魔物が求めていたモノだった。

 上位者となれば、各々異なる力を持つ。空間を司るモノ、認識を操るモノ、夢と現実の境を曖昧にするモノ。

 そうなれば、上位者といえど別の存在だ。だがもし、上位者という器だけを持ちながら何にも染まっていないモノがいるとしたら。もしその存在を己と同じに染め上げられたとしたら。

 それはもはや、「再誕」と言うのではないだろうか。

 

 

 

6.人形

 

 狩人が月の魔物になったという考察を補完するのに、人形が挙げられる。

 そもそもの話、人形を作ったのは誰だろうか。ゲールマンか、人形師関連でミコラーシュか。

 だがその結論を出す前に、悪夢の特性について聞いてほしい。

 

 作中において、悪夢は3種類出てくる。

 1つ、メンシスの悪夢。メルゴーが作り出した悪夢。

 2つ、狩人の悪夢。ゴスムが作り出した悪夢。

 3つ、狩人の夢。月の魔物が作り出した悪夢。

 

 この3種類は、それぞれ曖昧にしている境界線が異なっている。

 メルゴーはまだ産まれ(目覚め)ていないため、精神しか悪夢に呼べない。

 ゴスムは死して尚存在しているため、生と死が曖昧となり、死者でも悪夢に呼ぶことができる。

 月の魔物は夢と現実の境を曖昧にするため、精神と肉体の境が曖昧となっている。

 

 だからこそ、メルゴーの悪夢の主となったミコラーシュの肉体はミイラと化し。

 ゴスムの悪夢の主となった時計塔のマリアは死んだ後で悪夢に囚われ。

 月の魔物の悪夢の主となったゲールマンはもはや現実に肉体を持たない。

 

 さて、ここまで踏まえた上でもう一度考えて欲しい。狩人の夢に入る場合、肉体ごと悪夢の中に入る事となる。

 ならば、捨てられた古工房に置いてある人形は何なのか。

 もしこの仮説が正しい場合、狩人の夢に人形も入る事が出来たのならば、捨てられた古工房に人形が在ってはいけない。

 即ち、古工房の人形と狩人の夢の人形は別の存在となる。

 

 ならば、あの人形は何なのか。そもそも精神のない無機物の人形が何故精神があるのか。彼女の行動は一貫して狩人を強くすること。そのような存在が狩人の夢に他にもいたはずだ。

 

 

 

 つまり、人形は使者と同じ月の魔物のメッセンジャー。捨てられた古工房にあった人形を元に作られた月の魔物の被造物である。

 

 

 

 だからこそ、ゲールマンはあの人形に対し何の感情も抱いておらず、人形もまた、造物主に対して第三者のように語るのだろう。

 

 

 

 人形の台詞抜粋

「幾人かの狩人様から、教会の話を聞きました。

 神と、神の愛のお話。

 でも…造物主は、被造物を愛するものでしょうか?

 私は、あなた方、人に作られた人形です。

 でも、あなた方は、私を愛しはしないでしょう?

 逆であれば分かります。

 私は、あなたを愛しています。

 造物主は、被造物をそう作るものでしょう…」

 

 

 

 この時、造物主は被造物をそう作るものでしょうと述べていますが、これは誰の思想だろうか。

 ゲールマンが人形を作ったのは自らの狂熱によって後悔で自殺したマリアの子ゴスムに対する償いのため、冥婚のために用意した説が自分の中では一番濃厚だ。

 子のために用意した人形に、果たして造物主であるゲールマンを愛するように作るだろうか?

 

 だからこそ、この思想はゲールマンのモノではなく。

 月の魔物の思想だったのだろう。

 

 では、人形が月の魔物の被造物という前提でエンディング3「幼年期のはじまり」を見ると、見方が変わって来る。

 上位者となった狩人を人形が抱き上げ、今まで見せたことのない微笑みを浮かべる。

 もし、この時狩人が月の魔物として再誕したならば、その笑みに説明が付く。

 

 人と上位者が作り出した存在では、造物主と被造物の関係ではない。だからこそ人形は人に対して第三者のような反応しか出来なかった。

 

 だが狩人が月の魔物として再誕した瞬間、狩人と人形は真の意味で造物主と被造物の関係となったのだ。

 だからこそ、人形は愛していると実感して笑みを浮かべたのだろう。

 

 

 

結論

 

 月の魔物が獣狩りの夜を引き起こしていたのは、上位者を狩れる程の優秀な狩人を見つけるため。

 そしてその狩人を上位者とし、上位者狩りの上位者に月の魔物を引き継がせること。

 

 

 

 以上で、月の魔物の考察となります。




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