るろうに剣心~密命・羅刹討伐~   作:naomi

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13巻

「お久しぶりですね。斎藤君」

 

「山南さん。本当に生きていたんだな」

 

「そんなに雪村君の話しが信じられませんでしたか。…無理もありませんね。死んだはずの人間がこの世をさ迷っているのですから」

 

「話して貰えるのか、山南さん」

 

「まだ、皆さんが揃って…揃いましたね」

 

4人が遅れてやってきた。

 

「不知火…大丈夫か」

 

「こんくらいじゃあ、俺は死なねーよ」

 

「千鶴。なんかあったのか」

 

「そうですね。色々とありました」

 

「…そうか」

 

「この男が、山南敬助」

 

「はじめましてですね抜刀斎。私が元新撰組総長の山南敬助です。役者は、揃いましたしさぁ聞きたいことがあるようでしたらどうぞ」

 

「聞きたいことは山程あるが、黒幕は誰だ山南さん。あんたの協力者は誰なんだ」

 

「そうですね…『新政府に恨みを持つ者』とだけ言っておきますか。その方は新政府に復讐する手立てを探す過程で、羅刹の資料を手にし独自に研究したと言っておりました」

 

「新政府は羅刹に関する資料は全て処分したのでは無かったのか」

 

「いくら新政府とはいえ、全ての抹消は無理だったのでしょう」

 

「まぁ、そいつを探すのは俺の仕事か。だがどうやってあんたや沖田くん。原田くんに藤堂まで現れた。それぞれ最期を看取られているはずだが」

 

「羅刹の資料を手にしたその方は、独自に研究したそうです。そしてある仮説にたどり着きました」

 

「仮説…」

 

「『寿命で消滅した羅刹が鬼の血で蘇る可能性です』」

 

「なんだと」

 

「その方はもともと薩長の方だったのでしょう。居所は羅刹の資料を手にするより簡単だったと仰っていました」

 

「…まさか」

 

「えぇ、西国の鬼の集落を襲い。鬼を…皆殺しにしたそうです」

 

「なんてことを」

 

「しかし、実験をしているうちに生きた鬼でないと不可能だとわかりました。いくら鬼でも死んだ鬼の血は、ただの血のようです」

 

「そいつ。ぶち殺してやる」

 

「落ち着け不知火」

 

「それで千鶴殿は狙われた」

 

「…おそらくそうでしょう。その方は生け捕りにした鬼から血を抜き。全国各地で集めた羅刹の灰に垂らしたり、血を混ぜ混んだりしたそうです。そして初めて成功した実験体が…私でした」

 

「原因はその方も未だ明確な答えを導き出してはいないようですが、私はある一つの仮説にたどり着きました。それは、『後悔の念が強い者が蘇る』という仮説です」

 

「『後悔の念』…」

 

「私の成功以降は暫く成功体は生まれませんでした。何故か、それは恐らく『己が意志』の強さです。吸血衝動にかられる羅刹は大半が落若水の力に負けた者達。しかし我々のように自我を保ちながら羅刹化した者もなかにはいます。その仮説を立証するため、私は各地を周りました。そして次に藤堂くんが復活したことで、私はこの仮説を確信し、以降的を絞りました。『新撰組で羅刹化した者達』に」

 

「なぜ『新撰組』に拘った」

 

「私の人脈で思い当たる人々が『新撰組』しかいなかったからです。羅刹化した隊士は何かしらの『後悔』をしているという確信もありました。例えば藤堂くん。彼は、ある人に自分の気持ちを伝えれずに生涯を終えました。それは復活した本人に聞いているので間違いないでしょう」

 

「…」

 

「原田のヤツは【永倉に会うために新選組の元へ戻る】って言ってやがった。それはただ戦友に会いってだけじゃなくて新撰組から離れたことを後悔してたってことか」

 

「私の推論にその発言を当てはめると原田くんはもしかしたら、新撰組を離れたことが気がかりだったのかもしれません」

 

「沖田殿は、彼の『後悔』とは」

 

「沖田さん。病のせいで自分が新撰組の役に立てないことをすごく悔しがってました。もしかして」

 

「それもあるだろうが、沖田君の場合は、『武士』として強者と真剣勝負が出来なかった悔しさもあるだろう」

 

(拙者は沖田殿の期待に応えられたであろうか…)

 

「…仲間を冒涜したという自覚はあるか山南さん」

 

「どうですかね…自分でもよくわかりません」

 

「そうか」

 

刀を抜く斎藤。

 

「どうする山南さんやるか…それとも」

 

「いえ、皆さんがここに揃ったことで私の計画は達成されました」

 

その場で正座をする山南。

 

「仲間である隊士を冒涜した罪。如何なる処分も謹んで受けるつもりです」

 

「…永倉くん。小太刀はあるか」

 

「斎藤さん…。おうあるぜ」

 

「四人は見届け人になってもらう」

 

小太刀を山南の目の前に置き、後ろに回る斎藤。

 

「タイミングはあんたの好きにすればいい」

 

「皆さん…ありがとうございます」

 

上着をはだけ小太刀を持つ山南。

 

「…いきます、ウグッ…」

 

その刹那。山南の首は綺麗に地面に転がり落ちた。

 

「山南さん…」

 

「武士の本望じゃな」

 

「そうだな…」

 

 

洞窟から出ると、夜が明けていた。

 

「じゃあ、俺は行く。ありがとうな」

 

不知火は身軽に木々を駆け去っていった。

 

「山南さんの「後悔」はなんだったのでしょう」

 

「多分叶えてやれたと思うぜ、なあ」

 

「…そうじゃな」

 

「…」

 

一筋の煙が天に昇った。

 

 

「斎藤。東京には戻らんのか」

 

「あぁ、俺にはまだやるべきことがこの町にあるからな。今回は助かった。礼を言う抜刀斎」

 

「お二人は」

 

「俺は蝦夷にこっから船で帰るつもりだ」

 

「私は、また旅を続けます。他にも新撰組の皆さんがどこかで生きていると信じて」

 

「そうであるか…では暫しの別れじゃな」

 

「おう、また会おうぜ」

 

「剣心さん。今回は本当にありがとうございました。お元気で」

 

「千鶴殿も達者でな」

 

こうして各々が別の帰路で古都を離れた。

 

(今回の件で今までは討つべき敵としてしか見てこなかった新撰組を別の視点で見れたそんな気がするで御座る…)

 

この一連の事件を振り返りながら歩く剣心。

 

「あー剣心、薫。剣心帰ってきたぞ」

 

「お帰り。剣心」

 

「ただいま。薫殿」

 

「さぁ、ご飯出来ているわ早く食べましょ」

 

(永倉殿、千鶴殿…また会う日までお元気で)

 

長旅を終えかけがえのない人達と暖をとる剣心。こうして剣心に穏やかな日々が戻った。

 

 

~完~


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