それから数日。剣心は単身『京』を訪れた。
(不思議な気分でござる。たびたび京には来ているはずなのに。凄く懐かしい)
銀世界の広がる京をゆっくりとした足取りで進む。
(それにしても斎藤のやつ。依頼しておきながら自分は用事があるから先に行くと言って置いていくのはいかがなものか)
ぶつぶつと小言を言っていると女性とぶつかってしまった。
「おろおろー」
「すみません。大丈夫ですか」
「いやー。拙者が余所見をしていたのがいけないのでござる。」
「すみません…。昔はお侍だったんですか」
「いやー、なかなか刀がないと落ち着かなくてつい持ち歩いてしまうでござる」
「そうなんですね…。あっごめんなさい急いでるんでした。失礼します」
「雪道は滑りやすいから気をつけたほうがよいでござるよ」
「ありがとうございます」
(一瞬頬の傷に反応したように見えたのは気のせいだろうか…しかしあの女どこかで…)
「何を油を売っている。抜刀斎」
「斎藤か、すまん遅れた」
「ちょうどこちらも準備を終えたところだ。まずは事件が起きた場所を再度調べるつもりだ。手伝え」
二人は殺しのあった現場を辿った。冷えきった夜空の下を
「斎藤。現場調査なら明るい時間にやった方がいいのではないか」
「忘れたか、羅刹は光に弱く日中は活動出来ん。遭遇するとすれば夜が一番可能性がある。まぁ、【俺達が研究した羅刹】が犯人だった場合はだがな」
「…」
「そう殺気立つな。別にお前と殺り合うつもりはないし過去は過去だ」
「斎藤。お前は羅刹の研究についてどう考えていた」
「俺は近藤さんや土方さんが信じた道を共に歩みたかった。それだけだ」
「…お前の本心はどうかと聞いている」
「…新撰組はこんな野蛮な力に頼らなくとも十分強かった。まぁ使いたがっていたのは上の偉い方々で俺達はその研究所としてこき使われただけだがな」
「きゃー」
突如響き渡る悲鳴。二人は急ぎかけつける。
悲鳴の元に着くと女性が不気味な人の成りをした怪物と遭遇していた。
「あれは…間違いなく」
(あの阿呆)
(斎藤…)
「抜刀斎。俺が牙突で先陣を斬る。お前は俺の討ち漏らしを頼む」
「了解した」
「…我らが新撰組が誇る突きの最終奥義その身で味わうがいい。『牙突・壱式』」
斎藤は刀を突き立て目にも止まらぬ速さで怪物の胸を突き刺した。
「残りを頼む」
剣心は素早い身のこなしから空高く飛び上がる。
「飛天御剣流・龍槌閃」
刀を振り下ろされた怪物は地面に叩きつけられた。鞘に刀を戻す剣心。
「しっかりとどめを刺さんか阿呆」
斎藤が胸に刀を突き刺し、怪物は動きを止めた。
「貴様の『殺さずの誓い』とやら、今回の件では命取りになるぞ」
「すまん」
「あの…ありがとうございました」
「お嬢さん。今、夜道は危険だ、なるべく出歩かない方がいい」
「ありがとうございます。お巡りさん、そちらのお侍さんも」
「気をつけて帰るでござるよ」
「はい。失礼します」
女は何度もお辞儀をして立ち去った。
「…羅刹は存在する。それをこの目で確認出来ただけ良しとするか」
「斎藤」
「貴様も長旅のところ連れ回してすまなかったな、宿を手配してある。暫くはそこを根城にするといい」
「かたじけない」
明日は日中から行動することを確認しその場で別れた。
斎藤に案内された宿舎『太鼓楼』に着いた剣心
「いらっしゃいませ…あっお侍さん」
そこで三度目の邂逅を果たした。
「今宵はよく御会いするでござるな」
「私、今ここで働かせてもらってるんです。あのお名前は」
「緋村でこちらに宿を取っているはずなのでござるが」
「緋村…はい。確かにどうぞこちらへ」
「立派な造りでござるな、どの部屋もこのような」
「はい。どの部屋も他の宿の最上級の部屋に負けぬ造りになっております」
「特にこの部屋は…人々の想い出を感じる」
「そう…ですか、この宿は幕末から続く老舗だと女将さんから聞いているのでもしかしたらそれでかもしれませんね」
「そうでござったか…ところでそなた名は」
「はっ…申し遅れました。私は千鶴。雪村千鶴にございます」
こうして二人は出会い。この一連の事件に関わっていくこととなる…。