君、来てくれ、開庁130周年で、この世界の片隅な、艦これ聖地の、軍港都市に、巡礼へ(はぁと) ~美人巨乳レイヤー春菜とイクおねショタ呉聖地巡礼の本~ 作:鳥頭堂正太郎
君の手を引っ張りながら、春菜は呉駅から伸びる高架の歩道をずんずん進んでいく。
春菜は君の方を振り向くと、
「桜餅って知ってるよね。」
と聞いた。君は
「もちろん知ってますよ。
アンコを桜色の皮で巻いて、桜の葉で包んだ奴でしょ。食べる時に桜の葉を剥がして食べる奴。」
「あー、うん。知ってる?
それはね、東京を中心とした関東圏近隣だけで、他の地域ではそれは桜餅と言わないんだよ。」
「じゃあ、どんなのが桜餅って言うんですか?」
「道明寺餅って知ってる?」
「知ってますよ。ピンク色の粒々の奴でしょ。」
「あれが、関東圏以外では、桜餅って言われてます。」
「じゃあ、関東圏で桜餅って言ってる奴はなんて呼ばれてるんですか?」
「無いです。」
「はっ?」
「関東圏以外の土地では、関東式の桜餅と呼ばれる和菓子と同じ形式の物は存在しません、以上。」(注7)
「知らなかった、そんなの。」
「という風に、その土地の人からすれば、全国的に存在すると思っているけど、実はローカルな食べ物だった。
っていう食べ物が呉にもあります。
本当はお店行きたいんだけど、ちょっと遠いので売ってる店に行きま~す。」
春菜は、と言って、開いている右手で左前方にある青銅色屋根のドームのある、れんが調の外壁の建物を指差し、
「あそこ~」
と、言って、駆け込んでいった。(注8*)
その建物は真ん中が吹き抜けになっていて、下の階へのエスカレーターが動いている。
「下行くよ。」
と言って、春菜はエスカレーターへと移る。
待合室になっている二階を通り抜けて、一階へやって来ると、正面にあるセブンイレブンへと入っていった。
(また、セブンイレブン?)
と、思いきや、春菜は入ってすぐのパンが置かれているコーナーで足を止めて、棚を物色し、2つのパンを手に取り、
「あったー!」
と叫んだ。
一つは大きなアーモンドを半分にしたような紡錘型をしており、もう一つはドーム型の形をしている。
「ここのパンって、日曜日休みだから、タイミングが悪くてなかなか買えなかったんだよね~。」
と言うと、春菜はレジへ会計に向かった。
ちょっと店を覗くと、呉のお土産的な物が売っている。
興味を引かれた君だったが、すぐに春菜が戻ってきて、
「メロンパン買ってきたんだけど、私、少食だから、分けて一緒に食べよう。」
と言った
(後にこれが嘘であるとわかった、少食どころか…)
回りを見渡してみると、ここは江田島に渡る船などのターミナルの待合室になっているらしく、たくさん椅子が置かれているから、
「じゃあ、その辺に座って食べましょうか?」
と君が聞くと、
「うぅん、ちょっと待って。いいとこがあるから、来て。」
と、そう言って、春菜は君の手をとり、建物の反対側にあるエレベーターに乗り込み、五階のボタンを押した。
ちょっとして、エレベーターが五階に到着して、外に出てみると、全面ガラス張りの360度の展望台となっていた。
「わぁ~、すごい。」
ぐるりとガラス窓ぞいに展望台内を一周してみると、ゆめタウンから、灰ケ峰、呉の街、総監部、呉の港と、呉の全景の眺望を楽しむ事ができるようになっていた。
「あれ、大和ミュージアムとてつのくじら館は?」
君が春菜に問いかけると、春菜は笑って、
「それはすぐ隣にあるから、見えないよ。」
と言った。
「あれ、護衛艦は?」
と、君が再び問うと、
「護衛艦のとまってる桟橋は、あの大きな船を作ってるドックの奥だから、隠れて見えないかな。
それよりパン食べよ。」
と言った。
「そうなんですね…、残念だなぁ。」
と言いながら、君がふりかえると、春菜は内壁の所に置かれた椅子にすでに座って待っていて、膝の上にはパンが2つ乗っている。
君はそそくさと、春菜の隣の椅子に座った。
「写真撮る?」
そう言う春菜に、
「えっ、いいんですか?」
と、君が言うと、
「うん、どうぞ。」
と、春菜は笑って言った。
「じゃあ、撮らせてもらいます。」
と言って、すぐさまわし、君はスマホを取り出して、カメラアプリを起動し、春菜に向け、撮影ボタンを押していた。
「ちょ、ちょっと、私じゃないよ!」
慌てた春菜であったが、しっかり君のスマホに春菜の姿が写った。
「えっ、撮っていいって言ったじゃないですか?」
「言ったけど、それはパンであって、私じゃなくて。」
あー、そーゆーことでしたか。
君はそう思ったが、すでに止まれなくなっていた。
「撮ったらダメでした?」
「ダメ…じゃないけど、急だったし、そのつもりでいなかったから。」
「じゃあ、きちんとした形で撮らせてもらうのはOKなんですか?」
「綺麗に撮ってくれるなら。」
「じゃあ、ぜひ、撮らせてください。」
「う、うん。
でも、撮るのは後にして、先にパン食べようよ。」
「あ、あぁ、そうでしたね。
じゃあ、先にパン撮らせてもらいますね。」
君はそう言って、春菜のスカートの上に乗ったままのパンの写真を撮った。
紡錘型のパンには、緑色の文字で大きくメロンパンと書いてあり、メロンの絵が描かれており、もう一つのドーム型の形のパンには小さい字でメロンパンといくつも描かれている。
春菜は袋を破いて、中の紡錘型のパンを取り出した。
「これがね、メロンパンのメロンパン。」
「ちょっと、意味がわからないんですけど。」と言う君に、春菜はイタズラっぽい笑みを浮かべながら、
「これは、メロンパンというお店の、メロンパンという名前のパンなんです。」と言うと、そのパンを二つに割って君へ差し出した。
手に取ってみると、ふわっとしているのに、思ったよりずっしりしていて、中に空洞の部分があり、カスタードクリームがたっぷり詰められている。
メロンパン?
いや、普通、メロンパンってこーゆーのじゃなくて。
と君が混乱していると、春菜はもうひとつのパンを袋から取り出し、
「これがメロンパンのコッペパンです。」
と言って、これも半分に千切って君に渡した。
今までの流れから、これがメロンパンという店舗で売っているコッペパンという名前のパンであるのはわかる。
でも、それが普通はメロンパンって言われるパンだろ、どうなってんだ、呉。
「ちょっと待ってください。普通、メロンパンって、こっちの円いパンの方でしょ。
なんで、この紡錘型のがメロンパンなんですか!」
と、君が問うと、春菜は
「呉(の一部)ではそうなんだよ(注8)。
このメロンパンさんは昭和11年(1936年)創業の老舗パン屋さんで、洋食のランチに添えるライスを成型するための金具のメロン型を使ってパン生地を成型していたので、メロンパンと命名されたんじゃないか。
って言われてるの。
ちなみに普通のメロンパンは1930年代に、日の出の形を真似て円形にした上に、ビスケット生地を乗せたパン、サンライズが誕生したの。
神戸に本店のある金生堂の呉支店が軍艦旗の放射状の線を付けていたからサンライズと呼んだらしいんだけど、放射状の線より格子状の線が付けやすいらしくて、現在の形になったらしいの。
大正時代に入りマスクメロンが日本に輸入されてくるようになると、メロンという言葉で丸いマスクメロンが連想されるようになって、メロンパンと呼ばれるようになったらしいわね。」
「そうなんだ!
じゃあ、こっちのメロンパンの方が古いって事ですか?」
「そうみたいね、今でも関西ではサンライズっていうから、でも、メロンパンさんのコッペパンは格子状の模様がないから、サンライズでもないわね。」
「面白いですね。」
「そうね、それより早くパン食べましょ。」
「そうですね。」
「いただきまーす。」
そう言うと、榛名は大きく口をあけて、がぶっとパンにかぶりついた。
けっこう大きなパンだから、小口でチビチビという訳にはいかないのだろうが、
春菜さん、見かけによらず以外と豪快なんだな
と君は思いながら、自分もメロンパンにかぶりついた。
ふわふわと柔らかながらも生地はしっとりモチモチしていて、ほんのりと柑橘の爽やかさがあり、たっぷり詰まっているクリームは、舌触りや味わいは、どこか白あんのようで、重厚な甘みがあるにも関わらずスッキリしていて、うまい。
「どう?」
「美味しいです。メロンパンとしては、別物だと思いますけど、でも、こういうパンだというなら、これはとても美味しいと思います」
と、君が言うと、春菜はニッコリ笑って、
「そうでしょ、美味しいでしょう。」
と言った。
続いて、どう見てもメロンパンにしか見えないが、コッペパンだと言われているパンにかぶりつく。
(コッペパンって言われても、やっぱりこの味はメロンパンだよなぁ)
と君は思ったが、その違和感を除けば、どちらのパンも普通に美味しい。
もしゃもしゃ食べていると、気がついたら完食していた。
「さて、それじゃあ行きましょうか?」
と、春菜が言った。
見ると、春菜も食べ終わっていた。
「あっ、はい。
でも、1ついいですな?」
「なにかな?」
「写真撮らせてください。」
「えっ?」
「だってほら、後ろ、港でいい感じですし。」
「あぁ、そうだね。わかりました。」
そう言うと、春菜は窓際に立ってポーズをとった。
君はしばしの間、夢中で春菜を撮影していた。
(注7)関東式の桜餅を長命寺桜餅、関東以外の土地での桜餅を道明寺桜餅といいます。
長命寺桜餅は向島の山本やが元祖らしいです。
道明寺桜餅については、元祖は不明で、大阪府藤井寺市に材料の道明寺粉の由来にもなったという道明寺があるので、その辺かもしれない。
ちなみに私は道明寺派。
(注8)
そうではない地域もあるらしいです。
詳しくは知らんけど。