機動戦士ガンダムーBullet in the desertー   作:五河陽太

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月下の出会い(1)

 キャンプ地の端にアキハとマリアが駆けて行くと、そこは血の海だった。

 

 フタバの姿はなく、代わりに連邦軍兵士の死体が一人、転がっていた。

 

 遺体は死んでから時間が経過していた。

 

 血は渇いており、遺体も死後硬直が解け、俯せに倒れた状態で力なく横たわっていた。

 

 マリアは死体を見て、腹立たしい感情を露わにした。

 

「エイミーの阿呆が……。色香に惑わされたね。こんな死にかた、アンタだって望んでいなかっただろ? 本当に馬鹿なんだからさ!」

 

 アキハはマリアの吐いた言葉で二人が旧知の間柄であるのを察した。

 

 エイミーと呼ばれた連邦軍兵士の死を弔うと同時に、アキハはフタバの行き先を案じた。

 

「どこに行ったのだろう?」、「本当に、お前が殺人犯なのか?」

 

 そんな感情がアキハの心を支配して焦らせた。

 

 マリアがエイミーの死体を弔うと、提案してきた。

 

「アタシは狐のところに行って捕虜が逃げた件と、殺人犯が同一の可能性が高いと伝えてくる。アンタは宿舎に戻って鍵をかけて寝ていな。決して外に出るんじゃないよ」

 

「隊長は大丈夫なのですか?」

 

 マリアはニカッと昼の太陽の様に笑って力こぶを作って見せた。

 

「アタシは、ここの男どもの中で誰よりも腕っぷしが強いんだ。心配するな!」

 

 マリアはそう語るとアキハの背中をバシバシと叩いた。

 

 かなり痛い。

 

「この調子なら大丈夫そうだ」とアキハは考え、マリアと別れた。

 

 そのまま、宿舎に向かって戻るアキハだが、頬を撫でる風は酷く冷たかった。

 

 その風が死を運んでくる風に感じて激しく怖かった。

 

 アキハはマリアに言われた通り、宿舎に帰ろうとしていた。

 

 だが、ハルを起動させたままだと思い出した。

 

 ハルはアキハにとって大切な相棒で半身だった。

 

 だから、他人に弄られるのは嫌だった。それに、まだ調整も済んでいなかった。

 

 アキハは「少し格納庫に行くだけだ」と考えて、宿舎に向かう足を格納庫に向けた。

 

 その行動が裏目に出た。

 

 格納庫に向かう途中、アキハは「何者かに視られている」と感じた。

 

 周囲を見回せば廃墟とテントが立ち並ぶ集団ミーティング用の場所に来ていた。

 

 隠れる場所ならいくらでもある。

 

 アキハは少しの希望を託して恐る恐る声を出した。

 

「フタバ……、なのか?」

 

 アキハの声だけが静寂の中、響く。

 

 声をかけた相手、フタバの愛らしい返事はない。

 

 だが、アキハには確信があった。

 

「フタバだろ? お前、隠れてないで出て来いよ。逃げるとか良くないって俺がいうと変だけど……。俺だから、話を聞いてやる。だから、怖がらないで出て来い」

 

 アキハが周囲を見回しながら喋る。

 

 すると、廃墟の影で動く者がいた。

 

 アキハは安堵した。

 

 やはり、フタバなんだと――。

 

 だが、現実は予想を裏切る。

 

 月光に照らし出された人影はフタバとは違った。

 

 姿はフタバに良くにた美少女だ。

 

 だが、幼さの残る顔は15歳だと解った。フタバはショートヘアだったが、目の前にいる娘はサイド・ポニーテール。髪の色はフタバと同じ濡羽色。フタバと共通していえるのは激しくいい女だという点だ。発育も良く微笑んだ表情からは、艶やかな色香を感じた。グラマラスな身体は蠱惑的だった。

 

 その娘が着ている服は見紛うことないジオン軍の制服だった。

 

 アキハは身構えた。この娘から異様な雰囲気を感じたからだ。

 

 可愛らしい声で美少女はアキハに向かって問うた。

 

「あなた、フタバお姉様を知っているのですね。どこにおられますか? わたくしは迎えに上がった者です」

 

 表情は笑顔。

 

 だが、張り付いた笑顔からは喜の感情は全く感じない。

 

 感じるのは殺意のみだ。

 

「コイツは不味い……」とアキハは内心焦った。

 

 相手はフタバと同じ、いや、以上の手練れだと戦った経験の少ないアキハでも解った。

 

 圧倒的な武力の差。

 

 逃げても無駄だと解る。

 

 だが、ここは、生き延びないと本当に無駄死になる。

 

 アキハは言葉を選んで話した。

 

「俺はアキハ・アンドー。フタバと話した経験がある。だが、今は俺もフタバを探している最中なんだ。だから他を当たってくれ」

 

 美少女は目を大きく見開くと驚嘆した声を漏らした。

 

「あのフタバお姉様とお話をされた? 連邦軍兵士如きが? あり得ませんわ。あなた、何か特別な薬でもお姉様に使ったのではなくて?」

 

「馬鹿をいうな。俺は連邦軍技術士官だ。薬なんかを使ってたまるか。普通に話をしただけだ」

 

 美少女はアキハの言葉を聞いて両腕を組んで思案し始めた。

 

 彼女にとって、両腕を組む姿は思案し易い姿だと解った。

 

 美少女は数秒考えた後、言葉を紡いだ。

 

「アンドーの名で気付かなかったわたくしが無知でしたわ。そう、あなたが――。なら、尚の事、ここで死んで頂きますわ」

 

「待てよ! どういう理屈なんだ!?」

 

 アキハが叫ぶと同時に美少女は右手にサバイバルナイフを素早く持ち出した。

 

 そのまま、身を屈めて、一足飛びにアキハの懐に飛び込んで来た。

 

 アキハは気が動転して後ろに尻餅を搗いた。

 

 それが良い方向に回った。

 

 アキハが立っていた場所の喉元を鋭い剣閃が横一閃に走る。

 

 尻餅を搗いていなかったら、動脈を綺麗に切り裂かれていた。

 

(続)

「機動戦士ガンダム」の二次作品として時代考察、話の内容は成り立っていますか?

  • 大丈夫!心配するな!
  • もっと、勉強しなさい!
  • 実は、良く解りません!
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