機動戦士ガンダムーBullet in the desertー   作:五河陽太

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月下の出会い(3)

 背中に乗り、最後の力をかけようとしたミツハの背後から強烈な右蹴りが叩きこまれた。

 

「ジオン崩れがジオンに殺されそうになる滑稽な姿が見られて、僕は満足だよ。特別に僕が助けてあげよう」

 

 嘲弄も含めて、余裕の声を漏らしたのはコフィンだった。

 

 コフィンはマリアに次ぐ実力者だ。

 

 特に近接戦ならマリアも超える可能性を秘めた青年だ。

 

 コフィンの蹴りを背中に受けたミツハは、コフィンを「忌々しい」という目で睨むと吐き捨てた。

 

「連邦軍の雑兵の癖に! わたくしに一撃を加える等、愚かしいですわ! その可愛らしい顔を叩き潰して差し上げましょう!」

 

「ジオンの女兵士……か。ねぇ、ジオン崩れ。しっかり見ておくといい。これが僕の態度だ」

 

 コフィンはゆっくり息を吸い込むと右半身を開いて構えた。

 

 ミツハはコフィンめがけて今までで一番の速さで突貫する。

 

 アキハからしたら速すぎて目で追えない。

 

 一瞬の行動が命取りになる。

 

 そんな刹那の時間でのやり取りで、コフィンは圧倒的な才能を見せつけた。

 

 それは、ミツハの速さ以上の身のこなしで彼女の鳩尾に掌底を叩きこむことだ。

 

 刹那の攻撃。

 

 一撃必殺の重み。

 

 全てが凝縮されミツハに叩きこまれていた。

 

 ミツハはコフィンの強烈な一撃をもらい、後ろに大きく飛び、砂の大地に転がって止まった。

 

 動かない、ミツハを見てコフィンは丹精な顔を左手でひと撫でして喋った。

 

「これが僕のジオンに対する答えだ。ジオン崩れ、君もこんな姿になりたくなかったら、大人しくしているのだね」

 

 コフィンは冷徹に言い放つとミツハを捕らえようと近づいた。

 

 だが、ミツハはまだ気を失っていなかった。

 

 コフィンが近づくと、右手に持った砂を顔面に叩きつけた。

 

 コフィンが怯んだ隙を見て、ミツハは素早くアキハに近づいた。

 

 唇と唇が触れ合う距離でミツハはアキハに小声で喋った。

 

「わたくしと一緒に来て頂きますわ――」

 

「なんだって……?」

 

 アキハはミツハが何を考えているのかさっぱり解らなかった。

 

 だが、ミツハの起こした行動で全てを察した。

 

 ミツハはアキハの右腕を捻り上げると、宣言した。

 

「そこまでですわ! わたくしを今以上に追い込むとこの男の身体を一か所ずつ破壊していきますわ。黙ってわたくしを見逃しなさい」

 

 コフィンはミツハを鋭い目つきで睨みつけると吐き捨てた。

 

「ジオンらしい行動だね。僕としてはその男がどうなろうがしったことはない。だが、一応、大切な士官様だ。君の言葉を受けるとしよう」

 

 コフィンはその場で万歳をした。

 

 ミツハは細く微笑むと、アキハを捕らえたまま、格納庫の中に入った。

 

 そのまま、起動状態にあった陸戦型ガンダムのコックピットに滑り込むと拡声器をオンにして叫んだ。

 

『お姉様! お迎えに上がりましたわ! ポイント三で落ち合いましょう!』

 

 そのまま、ミツハはスタン・バイ状態にあった陸戦型ガンダムを動かそうとする。

 

 だが、複座式に改修されていた陸戦型ガンダムの前側でコンソール・パネルを弄っていたミツハを見て、アキハは叫んだ。

 

「止めておけ! 今、この機体は上手く動かない! まだ、調整中なんだ!」

 

 ミツハはアキハの腕を捻り上げて、喜々とした声で喋った。

 

「なら、あなたが操縦なさい。あなたは技術者でアンドーの性を持つ者。この機体についてよくご存じだと見込みましたわ。わたくしとお姉様が無事に合流するまで、味方と殺し合いをして頂きましょう」

 

「そんな真似ができるか! 俺は連邦軍人だ! ジオンの言う通りに行動したら銃殺刑になってしまう!」

 

 アキハが懸命にできないと語る。

 

 だが、ミツハは聞く耳を持たなかった。

 

 ミツハは後部座席に移動すると、アキハの首にサバイバルナイフをあてがった。

 

「わたくしの命令に逆らうなら、容赦なく動脈を切り裂きますわ。さぁ、動かして見せて下さいな」

 

 冷徹なミツハの声にアキハは震え上がった。

 

 コンソールパネルを操作してハルを立ち上げる。

 

「ハル、スリープ・モード解除。実践だ。全サーボモーターの規定値をゼロに戻せ。アクチュエーターを確認。電気信号を送信後、一気に立ち上げろ。音声認証、開始。メイン・パイロット、アキハ・アンドーで登録」

 

 上側に開いていたハッチを閉じる。

 

 そのまま、真っ暗だったコックピットの中に光が灯って行く。

 

 ガンダムの頭部が検知した周囲の風景を画像処理してコックピット内に配置されたに前側・右側・左側のモニターに投影した。

 

 収音機が上手く作動していない。外の音を拾えていなかった。

 

 外には騒ぎを聞きつけたフォックスやマリアを先頭に連邦軍兵士たちが集まっていた。

 

 アキハは必死に思案した。

 

 アキハ側から言葉、要求を語るのは可能だ。

 

 だが、機体調整が上手くいっていないので、あちこちでエラー表示が確認されていた。

 

 何より一番の痛手は外の声が聞こえない点だ。

 

 何度、収音機の回路を再作成しても「エラー」の表示が出る。

 

 ここは後部座席にいるミツハの担当分野だ。

 

 だが、ジオン軍の女兵士に機密の塊、ガンダムを触らせるのは気が引けた。

 

 アキハは「外で大騒ぎになっているだろう」と仮定して叫んだ。

 

「全員、下れ! 今からガンダムが動くぞ!」

 

 アキハはペダルを踏みこむと同時に右側のレバーを巧みに操作した。

 

 コックピット内にも振動が伝わってきた。

 

 陸戦型ガンダムの装備するランドセルに火が入った瞬間だった。

 

 ガンダムは格納庫の天井を突き破ると闇夜の空へと飛び出した。

 

 重力に抗う行為。

 

 人間が作り出した、最も力強き存在。

 

 その中でも至高の存在が今、産声を上げた。

(続)

「機動戦士ガンダム」の二次作品として時代考察、話の内容は成り立っていますか?

  • 大丈夫!心配するな!
  • もっと、勉強しなさい!
  • 実は、良く解りません!
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