機動戦士ガンダムーBullet in the desertー   作:五河陽太

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少し長めです。ゆっくり読んで下さいね。


序章 遭遇

 同日の午後――。

 

 アキハは技術士官として、配備されていたMSの点検作業とメンテナンスを整備士と一緒にしていた。

 

 だが、整備士も不愛想なものだった。

 

 必要な会話以外はアキハに近づきもしない。

 

 アキハはこのオマーンの地で孤独になっていた。

 

 でも、アキハには熱中するものがあった。それが連邦軍のMSだった。

 

 ジオンの作ったMSとは系統が全く異なる構造をしている。その上で砂漠、防塵仕様に変更されている連邦軍のMSは非常に魅力的な存在だった。

 

 名前を「先行量産陸戦型ジム」と銘うたれていた。

 

 メンテナンス性はザクと同様に優秀。

だが、防御面、武装面ではザクを一回り強化した性能を誇るこのMSをアキハは熱中して整備していた。

 

 そんな中、警報が鳴り響く。

 

 これは、第一種戦闘配備の命令が下された意味を指す。

 

 オマーンの地にジオン軍が接近しているとアキハは瞬時に悟った。

 

 戦車や戦闘機、MSが格納されている格納庫にパイロットたちが駆けこんできた。

 

 その中にはマリアの姿があった。

 

 マリアは先行量産陸戦型ジムに搭乗後、外部拡声器を使用して各部隊に命令を下した。

 

『前線はアタシとコフィンのジムで張る! 全員が出撃する必要はないんだよ! アタシが命令する奴だけついて来い! ウィルとコムは六一式戦車で後方援護! アキハの坊やはホバートラックで索敵! 行けるな?』

 

 アキハは自分の名前が呼ばれた現実を受け入れられないでいた。

 

「技術士官の自分が戦場に出るなんてあり得ない」

 

 アキハはそう考えていた。

 

 だが、現実は全力でアキハの予想を叩き壊してくる。

 

『ボサッとするな! 坊や、動け!』

 

 アキハはマリアの一喝で現実を受け止めた。

 

 ホバートラックに駆け込み、エンジンを始動させる。日々、整備員が整備を欠かさず行ってきたので機器の調子は良好だ。

 

 運転と索敵を1人で行うのは難しい。

 

 だから、アキハは即座の自身の胸ポケットに挿入してあった、スティック型メモリーを取り出した。

 

 接続端子に接続して内容をロードする。

 

 ホバートラックのOSとアキハが普段プログラミングに使用するOSの相性に問題はない。

 

 上手くインストールが成功した。

 

「ハル、起きてくれ! 今から索敵任務に出る! 索敵補助を頼む!」

 

 アキハが声をかけると二十歳の男性が返答した。

 

「音声認証完了。アキハと一致。セキュリティ解除。ハロー、ハロー。アキハ、任されました。1日と32分振りの再会ですね」

 

「細かい挨拶は抜きだ。出撃するぞ!」

 

「ミッション・スタート。索敵補助は任せて下さい」

 

 ハルと呼ばれたAIはアキハが連邦軍に手土産として持ってきた人工知能だ。アキハは

念のためにデータバックアップを採っており、暇な時間を見つけては再構築を進めていた。

 

 結果、元通りとまでは行かないが、再構築に成功していた。

 

 アキハは先行量産陸戦型ジムの後を追随するようにホバートラックを進めた。

 

 全てが全く新しい、死地へとアキハは進んで行った。

                              〇

 オマーンから北上して30キロ地点。

 

 陽は傾き、廃墟を真っ赤に照らし出していた。かつては人々が生活を営み、夜を越えるために肌を寄せ合った煉瓦造りの家は戦闘によって蹂躙され、跡を残すだけだった。そこには、焼け放たれた哀愁が残っていた。

 

 そこへ第32技術試験隊の混戦メンバーは到達していた。

 

 アキハはハルに声をかける。

 

「ハル、現地点で味方偵察機がジオン軍勢力を視認した。ミノフスキー粒子が濃く正確な数は不明だ。だが、1機な訳がない。相手は複数機いる可能性が非常に高い。索敵はエコーを使用。周囲に敵勢力があれば即、友軍に通達しろ」

 

 ハルはアキハの言葉を受けて「イエス・サー」と話した。

 

 アキハは違和感を覚えていた。

 

 技術士官として培われた計算力が、ここまで来る際、敵機に出会わない意味を考えさせた。

 

 自分がジオン軍技術士官なら、連邦軍の懐、目前でデータを採らない。何かしらの理由があって、わざと自機を晒したと考えるのが妥当と考えた。

 

 アキハはその考えから導き出される回答に行きつき、即座に部隊長のマリアに回線を繋いだ。

 

「隊長、これは罠だ! 進行と見せかけた、誘き出し作戦! 敵はここで俺たちとの戦闘データ回収が目的だ!」

 

 アキハの焦った声を聞いてもマリアは動じなかった。

 

「陽動作戦かい。このアタシを騙そうなんざ、千年はやいのさ。坊やは索敵を継続。コフィン、周囲の警戒を怠るな。アタシとアンタが虎の子の二機だ。ウィルとコムは廃墟を盾に後退。坊やの考えが正しければ……。夕暮れ時が最良の時間だね」

 

 先行量産陸戦型ジムの主兵装は180ミリ・マシンガン。連射性に優れ堅牢なため故障し難い。

 

 当たれば並のMSなら蜂の巣になる。

 

「これは先に姿を見つけたほうが勝ちだ」とアキハは悟った。

 

 耳を澄ませてエコー探知を行っても、引っかかる機体は友軍だけ――。

 

 18メートルもの巨人を浮かせて隠す場所なぞ、この砂の大地にはない。

 

 アキハはそう考えていた。

 

 だが、アキハは一つ見落としていた。

 

 ウィルが六一式戦車を廃墟まで後退させる。

 

 その瞬間、エコーが駆動音を捉えた。

 

「下だ! ウィルさん、危ない!」

 

 アキハが叫んだ時には遅かった。

 

 砂漠の下から六一式戦車を貫通する真っ赤に燃える炎の剣が姿を見せていた。

 

 剣は六一式戦車をバターのように真っ二つに切り裂く。

 

 大爆発と同時に砂漠の中から1機の巨人が姿を現した。

 

 ザクツーだ(以降IIに統一)。だが、機体の色がオレンジ色に塗られていた。砂漠でも活動し易いようにと配慮された上だ。頭部にはアンテナがあり隊長機なのが解った。軽装で右手にヒートソード。左手にザク・マシンガンだけの装備だった。パイロットは余程自身の腕前に自信があるのだ。

 

「後続は見えない。射撃で制圧する! コフィン、良いな!」

 

 マリア機とコフィン機のマシンガンが咆哮する。

 

 黄昏時の廃墟に金色色の薬莢がはじけ飛ぶ。

 

 だが、ザクIIの動きは通常のMSの動きとは考えられない軌道を描いた。

 

 バーニアを吹かせてのジグザグ運動回避。

 

 同時に、遠距離からの砲撃を恐れて、まずはコムが乗る六一式戦車を串刺しにした。

 

 ヒートソードで串刺しにされた六一式戦車はキュリキュリとキャタピラを鳴らしなが

ら、無機質な物体に姿を変えた。

 

 ザクIIは無力化した六一式戦車を先行量産陸戦型ジム二機側に投げつける。

 

 爆散して視界が封じられた瞬間を狙っての突貫をザクIIは行った。

 

「マーク五に敵機! 射撃開始!」

 

 唯一、エコーで目を塞いでいたアキハだけが爆発の光に動揺しなかった。

 

 1人冷静な人間がいると、部隊は問題なく機能する。

 

 マリア機とコフィン機は後退しながらも、180ミリマシンガンの掃射を止めなかった。

 

 判断が良かった。

 

 ヒートソードで一撃必殺を狙っていたザクIIがマシンガンの弾丸による雨で突貫を断念した。

 

 アキハは冷静に、戦況を確認しながらホバートラックを運転する。

 

 同時に、ハルにザクIIの動きを外部カメラで録画しろと命令していた。

 

 技術士官だから解る内容がある。

 

 相手のザクIIはリミッターが解除してある。

 

 幼い時からテツハにザクIIの整備方法や操縦法は教わっていた。だから、アキハは機体スペックや人体への負荷も体感していた。

 

 明らかに目の前にいるザクIIは人体への負荷を考慮していない。ジオン公国にはエースパイロットが多くいる。その中には機体スペックを三倍に引き出す者もいた。

 

 だが、その比ではない。

 

 並の人間だと即死する急旋回に、急加速。眼球運動では絶対に無理なロックオン行動等、ザクIIの機体を「人間以外の者」が乗るように調整してあるとしかアキハは考えられなかった。

 

『何だい、あの動きは! 化け物か!』

 

 マリアすら戦慄を覚えるザクIIの動きに一人冷静に対応する者がいた。

 

 コフィンだ。

 

 この男は射撃が威嚇にしかならないと考えるとアキハに通信を入れて来た。

 

『ジオン崩れ。君ならザクのスペックを熟知しているよね? 今直ぐ、こちらに奴の動きをトレースするナビを入れろ。そうしないと、ここで狩られる』

 

「言動は気に喰わない。でも、やりますよ。あぁ、やってみせます」

 

 アキハは素早く先程まで録画していたザクIIの動きと癖を確認する。すると、操縦しているのはハルのようなAIとは違う、癖が見受けられた。つまり、中身は人間が操縦している答えになった。

 

 だが、機体スペックは人間が耐えられない数値を叩き出している。

 

 どうやって?

 

 何がそうさせている?

 

 疑問と謎は尽きない。

 

 だが、答えを導き出すより、生き延びるのが先だ。

 

 コフィン機にザクIIの解析したデータを転送する。

 

 すると、コフィン機は一八〇ミリマシンガンを捨てて、ビームサーベルを引き抜い

た。

 

 アキハはコフィンの判断に戦慄した。

 

 人間以上の存在に人間が挑む。

 

 ある意味神殺しをコフィンは成そうとしていた。

 

「コフィンさん、死ぬ気か!」

 

『死ぬ気はない。唯、ジオン軍がのうのうと戦場を駆けている姿が気に喰わないのさ』

 

 先行量産陸戦型ジムがブーストを最大にして突っ込む。

 

 ザクIIが「その粋やよし」と語らんが如く、ヒートソードを振りかぶり突貫して来た。

 

 幾度も交差する二機の剣戟。

 

 廃墟を崩しながら、大立回りをするザクIIとコフィン機。

 

 機体の動きとしてはザクIIが先行量産陸戦型ジムを圧倒的に凌駕していた。

 

 だが、パイロットの差だ。

 

 コフィンは天才だ。

 

 反応速度で劣る点を第六感で補っている。

 

 ザクIIが右下から振り上げられる斜めの斬撃を放つ。

 

 コフィン機は寸差で後方に回避しては縦の斬撃で報復する。

 

 ザクIIの卓越した動きに対して、戦闘を肌身で感じて対応するコフィン機はスペック以上の性能を叩き出していた。

 

 だが、光景を見ていた、アキハは気付く。

 

「このままだとコフィンさんが殺される!」という未来が待っている。

 

 アキハは無謀と解りながらも動かずにはいられなかった。

 

 ホバートラックを前進させて、唯一の武装、マシンガンを放つ。

 

 コフィンは確かに善戦していた。

 

 だが、先行量産陸戦型ジムは試作機だ。

 

 ザクIIみたいにチューニングされた異常機とは違う。

 

 あと1分もしない内に各関節のサーボ―モーターやアクチェーターがイカれ、可動域から炎が上がる。

 

 そうすれば搭乗者のコフィンは焼け死ぬか最悪、鉄の棺桶で潰され圧死だ。

 

「ここで死んではいけない!! 生き残ってこその命だろ!!」

 

 ホバートラックの急襲をザクIIはコフィンとの戦いに夢中で反応が遅れた。

 

 右足側面からの体当たりでホバートラックは爆散した。

 

 アキハは当たるのを予測してハルのデータを回収して危機一髪のところで脱出していた。

 

 右足に損傷を負ったザクIIは本来の異常な動きが出来なくなっていた。

 

『ジオン崩れにジオン軍がやられたら様がないね』

 

 コフィン機がトドメの横一閃のビームサーベルの斬撃を放つ。

 

 だが、コフィン機が急に動きを止めた。

 

『どうした? クソ、各部位に負荷をかけ過ぎたか』

 

 コフィンのモニターにはアクチュエーター破損、サーボモーター軸ズレ等の様々な警告表示が現れていた。

 

 コフィンは緊急脱出装置を躊躇なく引いた。

 

 パイロットがいなくなった先行量産陸戦型ジムはザクIIに胴体から真っ二つにされた。かろうじて核融合炉を叩き切られることはなかった。

 

 残ったのはマリア機と右足を破損したザクIIだけだった。

 

 茜空が2機を真っ赤に染める。

 

 場所は中東だが、立派な決闘の場に相応しい状況となっていた。

 

『残ったのはアタシ1人……。相手は坊やの機転で手負い。コイツは負けていられないね』

 

 2機が向き合って動かない。

 

 流石の異常機もマリアの腕を感じ取っていた。

 

 歴戦のMSパイロットに生半可な覚悟で挑むのは自殺行為だ。

 

 だから、2機とも相応に歴戦の者だと証明していた。

 

 最初に動いたのはザクIIだった。

 

 バーニアを全力で吹かして威嚇しながら、左手に持ったザク・マシンガンを掃射し始めた。

 

 マリア機も軽快な動きで弾丸の雨を回避しながら、盾を使って直撃をかわしていた。

 

 唯、やられるだけがマリアという女性の性格を現していない。

 

 マガジンを交換して、180ミリマシンガンを正確に叩きこむ。

 

 マシンガンの打ち合いで不利なのはザクIIだ。

 

 異常に速いといってもマシンガンの弾幕から逃げるのは難しい。

 

 また、ザクIIの操縦者の気質だ。

 

「退く」概念がない。

 

「死ぬのが全く怖くない」と言いたげな行動でマシンガンを連射しながらマリア機との距離を詰める。

 

 だが、人間は危機感があってこそ強い生物だ。

 

 マリアはその点、人間臭い女性だった。

 

 唯、マシンガンを連射するだけではなかった。

 

 自機とザクIIが半径五百メートルを切ると、腰に装着していたハンド・グレネードを放り投げ、マシンガンを掃射した。

 

 マシンガンの掃射を受けたハンド・グレネードは大爆発を起こす。

 

 ザクIIとマリア機の間の空間を黒煙が漂い視界を封じる。

 

 それこそがマリアの狙いだった。

 

『アタシは臆病者でね! 確実に相手を倒せると考えるまで動かない質なのさ!』

 

 黒煙を割ってマリア機がビームサーベルを振り上げてザクIIに襲い掛かる。

 

 この行動にはザクIIも驚いた。

 

 ヒートソードを構える前に左肩を叩き切られた。

 

 ザクIIは左肩を斬り落とされ、ザク・マシンガンを失った。

 

『ちょいさ!』

 

 返し刀でマリア機が横一閃を放つ。

 

 普通なら、機体を破棄して脱出装置を起動させる。

 

 だが、ザクIIのパイロットは機体と同じく異常なのだ。

 

 ヒートソードを構えて、横一閃のビームサーベルを受け止めた。

 

 まだ、戦うつもりだ。

 

 マリアはザクIIのパイロットに向かって光信号で警告を促す。

 

『脱出しろ。勝負はついた』

 

 だが、ザクIIのパイロットは反応すらしない。

 

 まだ、戦意を失っていない。

 

「本当に異常だ」とマリアは感じた。

 

『それじゃあ、アンタの生きる道はここまでだね!』

 

 マリア機の頭部めがけてザクIIはヒートソードを突き出す。

 

 だが、マリア機は動きを読んでいた。

 

 低くしゃがみ。左側からの横一閃を放つ。

 

 コックピットの中まで鼻を突く鉄の焼ける臭いがした。

 

 マリア機はザクIIの胸を切断した。

 

 そこで決着はついた。

 

 たった一機。

 

 ジオン軍はザクII一機で連邦軍に六一式戦車を2両。ホバートラック1両。MS1機を失う痛手を被った。

 

 優秀な人材も2名失った。

 

 地上で動きが止まったザクIIを見上げていたアキハはどうしてこんなことになったのかを考えていた。

 

 その時、コックピットハッチがビームサーベルの熱によって変形し剥がれ落ちた。

 

 中からパイロットがズルリッと崩れ落ちて来た。

 

 どうやら気を失っているみたいだ。

 

 アキハが人間クッションになり受け止めたパイロットは、アキハと歳が同じ18歳の美少女だった。

 

「この子があのザクを動かしていた……? 嘘だろ?」

 

 失意のアキハと謎の美少女の出会い。

 

 これが1つの争乱の始まりだった。

(続)




読破ありがとうございます。
これにて序章は終了です。

次回から第1章が始まります!

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「機動戦士ガンダム」の二次作品として時代考察、話の内容は成り立っていますか?

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