機動戦士ガンダムーBullet in the desertー 作:五河陽太
アキハは赴任してきた最初の内、捕虜等は監獄に入れられると考えていた。
だが、ここオマーンのキャンプ地では岩場がほとんどない。
雨もほとんど降らない気候で、昔は閑静な住宅街だった街並みも戦場と化し、瓦礫の山と化していた。
そんな中、捕虜は裸で両手を縛って外に放置が連邦軍の捕虜の扱いだった。
捕虜の扱いについても協定がある。
だが、完全に人権を無視したこの光景こそが現地の実態で、ジオン軍に対する連邦軍の兵士の声だった。
アキハは唖然とした。
監視役もいない。
拷問をするわけでもない。
唯、来ていたノーマルスーツを剥いで、下着も全部千切り、あられもない姿で両腕を拘束され、砂の大地に放り出されていた美少女の扱いに心を痛めた。
確か、アキハも亡命の際、亡命者にあらざる行為を受けた挙句、このオマーンの地へと飛ばされた。
だが、これは酷い――。
人間に対する扱いとは考えられない。
アキハは目の前で力なく横たわる美少女の四肢を見て怒りを覚えた。
同時に、「自分は見てはいけない光景を見ている」とも感じた。
オマーンの地は昼、暑いが夜は冷える。
裸のままだと確実に体調を崩す。
アキハは自分の上着を脱いで、美少女にかけようとした。
刹那――。
美少女の目がカッと見開いた。
褐色に焼けた健康的な足が「一瞬、見えなくなった」と感じた時、アキハの首に鉛玉が投げつけられたような感覚に襲われた。
アキハは俯せに倒れる。
そのアキハに対して、頭を踏みつける行為をする美少女。
アキハは砂の大地にキスをしながら必死に叫んだ。
「止めろ! 俺は君の敵とは違う!」
だが、アキハの現実は厳しかった。
美少女は体温を感じない冷徹な声で話した。
「あなた、連邦軍。わたしはジオン公国に忠誠を誓っているの。だから、敵同士。あなたの言っている内容が解らない」
アキハは感じた。
「この美少女はまるで機械人形だ」と――。
抑揚のない平坦な声。
意志を感じない瞳。
「連邦軍人なら容赦なく殺せます」と語る行為。
全てがアキハの考えていた美少女像とは違っていた。
でも、アキハの胸を締め付ける縄は全く緩みはしなかった。
美少女が完全にジオン軍人だったから――。
「だからどうした!」とアキハは叫んだ。
胸の縄から解放されるため、全ての熱い感情を吐き出した。
「お前はジオン軍人だからとか言っているけど、その前に一人の女の子なんだぞ! そんな姿をしていたら良くない! それに俺はお前と話がしたいんだ! 理由なんて解らない! でも、気になって仕方がないだよ! だから、足を退けてくれ! 俺はお前を傷つけない、絶対にだ!」
アキハの絶叫に美少女はキョトンとして首を傾げた。
まるで、「アキハみたいな人間を初めて見た」と言いたそうな無垢な仕草だった。
アキハは美少女に頭を馬鹿みたいな力で踏みつけられた状態で、右手に持った上着を差し出した。
「上着を着ろ。そんなエロい姿をずっと見ていたら、俺の理性が持たない。頼む……」
美少女はアキハの渾身の願いを聞いて、おどおどと上着を受け取った。
アキハは美少女が上着を着てくれて助かったと感じた。
だが、美少女はアキハを信用していなかった。
理由は簡単だ。
アキハの後頭部を踏みつけている足の怪力を抜いていない。
アキハは依然、地面にへばりついたままだった。
「頼む、俺を信じてくれ! この感情が何か解らない! だが、お前に対して危害を加える感情とは違う! だから――」
「そう言って連邦軍は街を焼いた」
「違う――!」
「わたしのお姉さんも帰って来なかった。連邦軍は嘘を平気で吐く。その上、大切な人を沢山奪う」
「――ッ! 俺は連邦軍とは違う!」
「でも、この上着は連邦軍士官の物」
「俺は亡命者だ! 元ジオンだ! この場所でも良い扱いはされていない!」
「あなたが、ジオンの人? スペースノイド?」
怪力が弱まった。
アキハは腕立て伏せの要領で、一気に顔を砂の大地から離す。
そのまま、真っ直ぐ射抜くように美少女の眼を視て言葉を紡いだ。
「俺はこの戦争の意味が解らない! ジオンにいて、連邦に来て見た風景は悲しみと保身だけだった! 俺はどうしたらいいんだ! お前みたいに盲目的に軍を信じれない! 正義が解らないんだ! 教えてくれ! 何でお前はそこまで戦える! 何がお前を突き動かす!」
アキハが吐いたのは心を縛っていた縄だった。
亡命して、不当な扱いを受けてからの死地への矯正転勤。
そこで受ける、亡命者だからという不憫な眼差し。
アキハは無意識に想いを募らせていた。
ジオン本土にいた頃は何も考えず技術士ができた。
だが、テツハの意向で亡命を命じられた時から、アキハの正義への疑念は始まっていた。
そんなアキハが出会ったのは、命を賭してでもジオン軍に殉ずる兵士だった。
だから、アキハは美少女にその根底にある想いを是非、聞いて自分と比べたかった。
アキハの縄を真正面からぶつけられた美少女は無垢に首を傾げて答えた。
「初めての質問。わたし、解らない」
「お前は解らないモノに命を懸けるのか?」
「でも、わたしはその術しか解らないし、教えてもらっていない」
「お前、馬鹿だったんだな。凄い信念や理想を掲げているかと思ったけど……、馬鹿だったか」
「む、馬鹿馬鹿いうな。わたしだって戦う以外にできる内容が沢山あるんだぞ」
「なんだよ? どうせロクでもない話だろ。とりあえず聞いてやるよ」
「わたし、お絵かきが上手い」
「乳児のできるできないの話とは違うぞ! そんなの誰だってできる! ゴリラみたいな力している癖に頭はチンパンジー以下かよ。失望した――」
アキハは本当にうな垂れた。
(続)
「機動戦士ガンダム」の二次作品として時代考察、話の内容は成り立っていますか?
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もっと、勉強しなさい!
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実は、良く解りません!