機動戦士ガンダムーBullet in the desertー   作:五河陽太

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密会(2)

 何だか解らないけど、目の前の美少女に心底、失望した。

 

 その場に胡坐を掻いて、落ち込んでいると、申し訳ないと感じた美少女から話しかけてきた。

 

「あなた、名前はなに?」

 

「馬鹿に名乗る名前はない。どうせ三歩歩いたら忘れる癖に――」

 

「わたし、物覚えは家族の中で良いほう! 九九が言える!」

 

「だから、そんなお前が嫌なの! 俺は九九ができるって自慢してくる奴に命を賭して突貫したと考えるだけで涙が溢れてくるんだよ! この気持ち解らないだろ! いや、お前には一生解って欲しくない!」

 

「うぅ……、怒られた……。名前も教えてくれないケチンボに怒られた……」

 

「何も泣くまで落ち込まなくても良いだろ……。悪かった。俺の名前はアキハだ。アキハ・アンドーだ」

 

「アキハ! わたしの名前もお礼に教えてあげる。お父さんが『名前を簡単に教えたら駄目だ』っていつも煩いけど、アキハはなんだか変わっているからいいよ。わたしの名前はフタバ! フタバ・バーキア」

 

 アキハはフタバが自分の名前を教えてくれた時に見せた、あどけない笑顔が最高に素敵だと感じた。

 

 アキハはフタバが少し、ほんの少し心を開いただけなのに、自分の立場が揺らいでいるのに気付いた。

 

 アキハは元ジオン軍側の人間とはいえ、亡命して連邦軍に受け入れてもらった身だ。

 

 ここまでフタバと仲良くなって、心に「フタバを救ってあげなければ!」などと考える使命感を抱いたら、連邦軍内での立場が危うくなる。

 

 アキハは自分自身に言い聞かせた。

 

『なぜ、連邦軍にジオンを捨てて亡命した?』

 

『自身の安全を確保してもらい、アンドー家を断絶させないため』

 

 アキハは中東最前線に飛ばされた時点で、連邦軍は信用ならないと感じていた。

 

 だが、このキャンプ場で信頼をなくすのは絶対に駄目だと理解していた。

 

 アキハは「心の縄は解けた」と自身に言い聞かせて、立ち上がった。

 

 そんなアキハをフタバは不思議そうに眼を大きく見開いて興味深そうに見ていた。

 

「俺の用は済んだ。後は他の奴に任せる」

 

「アキハがわたしとお話をしてくれる訳ではないの? 何で遠くに離れていくの? 名前を教えてあげたでしょ?」

 

「名前の件は感謝しているよ。でも、俺にも立場がある。お前と一緒にいるとまた『ジオン崩れ』と言われるからな――」

 

「わたし、解るよ! アキハ、本当は誰か側にいて欲しいのでしょ? でも、いないから寂しいからわたしのところに来た? 違う?」

 

「違う。俺はお前の正義のありかたを知りたかったんだ。馬鹿だったお前に用はない。じゃあな――」

 

 アキハは吐き捨てると断腸の想いでフタバの前から立ち去ろうとした。

 

 フタバはずっとアキハの名前を雛鳥みたいに呼び続ける。

 

 その声が愛らしくて――。

 

 その声が痛くて――。

 

 その声が憎らしくて――。

 

 アキハは下唇を強く、強く噛んで「なぜ、こんなモヤモヤした気分になるのか解らない」と考えた。

 

 その時、後ろで最低な声が聞こえた。

 

「おい、捕虜が技術士官様を呼んでるぜ? あの士官様、なんだ、ジオン崩れだからって捕虜を手駒にとって良いことしたのかよ?」

 

「ジオン崩れにはジオンの女がお似合いだよ。まぁ、ここまで可愛かったら別の話だけどな。この女が本当にコフィンのジムを撃破したのか?」

 

「違う違う! どうせザクのコックピットの中で尻を振って誘惑したんだよ! コフィンは堅物だからな。一発で操縦ミスしたんだぜ! だから、こんな可愛い子でも撃破すんだよ」

 

 連邦兵士2人が折合いが悪い時にフタバの声になびいて寄って来た。どうやら二人共酒を飲んでる。しかも、泥酔状態だ。

 

 アキハは必死に我慢した。

 

「何が起こっても自分には関係ない」と自分自身に言い聞かせ、アキハはその場から立ち去ろうとした。

 

 その時、事は起きた。

 

「おい、捕虜なら俺たち連邦軍人の慰めも役割だぞ。しっかり役割果たさねぇと、頭、拳銃でぶち抜くからな」

 

「お前は本当に正直者だな。だが、女はジオンから取って来いって話だしな。一発やってやれよ」

 

 連邦軍人の声を聞いて、アキハは踵を返していた。

 

 自分は何をしようとしているんだ?

 

 どうして仲間に対して殺意を覚えているんだ?

 

 そんな考えをする前に身体が動く!

 

 

「止めろっ!! ソイツに手を出すな!!」

 

 

 アキハは勢いがついて叫んだので、危機迫った絶叫を発してしまった。

 

 連邦軍人2人は明らかに機嫌が悪い。

 

 体格も筋肉のつきかたも明らかにアキハより2人が良い。

 

 喧嘩をしても一方的に殴られるだけだ。

 

 だが、アキハにはガッツがあった。

 

「技術士官殿? あなた1人だけ良い思いして他の人間にはさせない気ですか? それは余りにも……、目に余る行為だと感じますが?」

 

 積極的だった兵士が切れ目を更に吊り上げて迫る。

 

 だが、アキハは譲らなかった。

 

「その子の尋問担当は俺だ。マリア隊長からも一任されている。それにお前たちだといかがわしい内容しか頭にないだろ? そんなの尋問でもなんでもない! 唯の犯罪だ!」

 

「このジオン崩れ! 仲間を庇う気だな! 亡命してまた掌返す前に俺たちが動けなくしてやる!」

 

「技術士官だからっていい気になるなよ! 機械に詳しい奴が偉いなんて現場じゃ通用しないのさ!」

 

「俺はジオン崩れとは違う! でも、連邦に魂を売る気は一切ない!」

 

「生意気な!」

 

「典型的な敵前逃亡者の考えかただ。俺が叩き直してやる!」

 

 アキハと連邦兵士2人は取っ組み合いになった。

 

 だが、騒動自体は広がらずに終わった。

 

 理由はアキハが喧嘩に激しく弱かったからだ。

 

 散々掌底を叩きこまれ、膝打ち、蹴り、肘打ちと一方的な展開でアキハは叩き伏せられた。

 

 だが、アキハの抵抗は成功した。

 

 フタバの純潔を守れたからだ。

 

 フタバの前で完全に意識がなくなっているアキハを見てフタバの胸に少しの変化が現れた。

 

 それは、感情が消えかかっていた少女の大きな一歩だった。

(続)

「機動戦士ガンダム」の二次作品として時代考察、話の内容は成り立っていますか?

  • 大丈夫!心配するな!
  • もっと、勉強しなさい!
  • 実は、良く解りません!
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