宙が少女か、少女が宙か   作:銀ちゃんというもの

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どうしてもこの場面からロクアカ二次創作を書きたかった。


1.Regeneration

 それの与える印象は生命への冒涜。それ一択である。あらゆる異能者の力を首元より全身に注入した化け物。隆起する肉塊に、視界に余る巨躯。C級軍用攻性呪文を超える炎を右腕から放射し、如何なる攻撃を喰らおうと瞬時に再生する。異能という神秘を魔術という奇跡にまで落とし込んだそれが倒れる事など到底想像つかない。

 しかし、最後は一人の男の何の変哲もない唯のナイフに頸動脈を切られて、再生すること叶わず崩れ落ちる事となった。

 

「そんな……馬鹿……な……ッ!? 天に選ばれたるこの私が……ッ!? 世界の祝福を受けているはずの……この私が……こんな……こんな所で……ッ!?」

 

 何もナイフひとつで倒れたという訳では無い、沢山の無数のナイフで出血させた結果だ。薬物の血中濃度の低下。あまりに常識的かつ、複数の異能を扱う強大な相手に冷淡に迷わずその手を使う手練さ。それらに天の智慧研究会 参入志願者(プロベイショナー ) バークス=ブラウモンは敗れたのだ。

 

 天の智慧を掴むべき自分がこんな所で死ぬはずなどないのに、何故、どうしてこんなことに。

 バークスは辛苦して、ただ一つの光のない宵闇に立たされる様な絶望を味わう事に、目から雫を垂らし、その雫の数だけ自問する。

 ──答えは終ぞ出ることは無い、何故なら。

 

「地獄でやってろ」

 

 先程ナイフでバークスを瀕死に追いやった濃い青の長い髪をした男の、悪鬼も底冷える冷然とした声を最後に命の火が掻き消えたから。

 

 

 

「……」

 

 青髪長髪の男──アルベルト=フレイザーは魂の抜けた文字通りの肉塊、バークスの人の物とはいえない死体を冷酷な青目で一瞥すると、バークスの異能が残した炎が照らし凍りついた硝子の円筒の残骸が影を揺らす部屋の一角、そこに向け歩き始めた。

 

 次第に見えてくるソレの姿。

 薄い透き通った桃色の大量の糸……いや髪が揺れる。一目見てすぐにわかる幼い白肌。柔な細腕で隠す所は隠して座り込み真っ直ぐに黄緑の視線がアルベルトを貫く。

 

「……貴様は、何者だ」

 

 同僚の帝国宮廷魔導士団特務分室、執行官ナンバー7《戦車》のリィエル=レイフォードより幼くも見えるそれに怪訝な瞳をして、アルベルトは問う。

 普通は保護の対象になるような少女、だが今この戦跡に居るには余りにも不自然なほど傷がなく、そもそもこの争いが始まる前はこの場所にこんな少女はいなかった。

 

「相手に名前を聞く時は先に自分から名乗るものだぜぃ役人さん。というかさっきまでこわーい魔術師さんに捕まってた幼気な少女にその扱いは酷ってもんよ」

 

 少女は余りに似合わない口調で幼さの残る、否幼さ全開の声で屈託のない笑みを浮かべる。

 アルベルトは名前を問うた訳では無い、無論それが含まれなかった訳では無いが本質は違う。そう、アルベルトはバークスとの戦闘中、異能の力を使えなくなった再生能力者の脳髄が燃やされ冷やされ砕け散った後だと言うのに見事再生を果たしこの薄い桃髪の少女へとなったのを見たのだ。

 

「答えろ。そういう意味ではないのは分かっているだろう」

 

 故に前例を遥かに超えた再生を見せた少女(不審人物)に今度は冷徹とも言える声で再度問うた。

 

「そう、言われてもなぁ。生まれつきの異能が普通より強かったとしかいいようがないんだけど。あと名前は秘密な、なんでかとな? そっちのがおもしれーだろう? 教えて欲しかったら決闘でもして勝ったらいいぜぃ。勝てる気がしねーがねぇ、私が、あはは」

「……」

 

「おーい、アルベルト、無事かー?」

 

 誠奇妙な口調ですごい勢いで煽ってくる後半は置いておいて、前半に関してはそう言われてしまえば反論することはできない。珍しく言葉に詰まるアルベルトの耳に腐るほど聞いた嘗ての戦友の声が聞こえる。どうやら向こうは上手くやったようだと考えた後、その声の方向に目を向けた。

 

 その戦友は少し長めの髪を後ろで括り、この場にあまりに不釣り合いなワイシャツ姿で体をボロボロにして帰ってきた。彼の背後には青髪の少女リィエルと艶やかな金色の短い髪の少女、今回の護衛、いや救出すべき相手、ルミア=ティンジェルも衣服がボロボロながら無事な様だ。

 

「何見てんだ? …………は?」

「知り合いか? なら丁度いい、此奴の素性を教えてくれ」

 

 単純なる興味で近寄ってきた彼──グレン=レーダスは驚きの声をあげ固まる。その反応に疑問を持つアルベルトはこの桃髪の不審人物とグレンが知り合いかと推測し質問を重ねる。

 

「知り合いって……何も……リサ?」

「あれまあ、よく見たらグレンじゃねーかい。せっかく、面白そうだったのに名前ばらさないでくれい」

 

 どうやら本当に知り合いだったらしくリサと呼ばれた少女はお久ぁと軽くグレンに挨拶をする。

 リサはグレンの後ろ、青髪の少女リィエルのいる所を驚いたように見て答える。

 

「おーリィエルちゃんまでいるのか、なんだ知り合い2人に会うとは偶然もあるもんだ」

「え? リサ? 何故ここに?」

「ああ、お前なんでこんなとこ……」

 

 リィエルとまで知り合いだったとはと流れについていけなくなってきたアルベルトは思考する。

 

「なんでか知りたいか。そうさなぁ、グレンもリィエルちゃんも私が異能者だって知ってんよな? 前、野宿してたらさー、寝てる間に人攫いに捕まっちまってえな。そこでぶっ倒れてるこの天の智慧研究会の参入志願者(プロベイショナー)の外道魔術師に売られたんよ、半月前くらいに」

「はあ!? マジか、大丈夫か?」

「おう、マジマジ。てか捕まってなかったらこんなとこいねえ。ここにいっぱい缶と脳みそあったろ? その脳みそみたいにしようと私の脳を嫡出しようとして私の再生に面倒臭がってるあいつマジで傑作だったぜ」

 

 どうやら再生の異能でも飛んだ頭のネジ迄は直せないようだ。外道魔術師に捕まって研究材料にされていながらそれを直ぐに笑い事にしている。

 

「……先生、この人は?」

 

 今更だがアルベルトと同じく流れに置いていかれていたルミアは状況を確かめようと質問する。するとグレンが説明を始めた。

 

「ああ、こいつは俺が特務分室に入る前からの知り合いでな。正確にはセリカの友達なんだが……」

 

 グレンの言葉を遮ってリサが続ける。

 

「おう、私はリサ=カミハ。唯の天涯孤独の孤児さ」




第三者視点でかくの。描写とか頑張った。褒めて。
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