宙が少女か、少女が宙か   作:銀ちゃんというもの

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裏話

 これはほんの少し、本当に少し前のお話

 

 

「なぁ……」

「なんだい?」

 

 薄暗く不気味な石造りの地下室で、怪しい雰囲気を醸しながら楽しく茶を飲む二人の女がいた。

 

 片方は、夕暮れに輝く稲穂にも似た艶やかな金の髪と、美しくも紅い月が水に反射する様に揺らめく澄んだ赤眼。優しく微笑む麗しく整った貞淑な雰囲気を持ちながら、黒い衣装から覗かせる艶美な肢体は妖しく艶かしい色を仄かに漂わせる。

 ──セリカ=アルフォネア、灰燼の魔女とも呼ばれ畏怖される大陸に名高き最高峰の魔術師。

 

 片方は、咲き誇る撫子が如く、光に透いた髪を後ろの下で二つに束ねる。まだ土から顔を出したばかりの植物の様な若々しい嫉妬(黄緑)の瞳。大人しくしていれば将来は美しいより可愛いと呼ばれそうな丸っこく守りたくなる容姿だが、常に浮かべる悪戯を楽しむ悪ガキの笑みは髪が男ほど短ければ性別を見間違える程、男勝りな強さを感じる。

 ──リサ=カミハ、これでも年齢は見た目よりも五つ以上違う魔術師

 

「いや……グレンがな……」

「……グレンが、どうしたんだい?」

 

 そう始めた途端、今まで浮かべていた笑みを消して真剣な眼差しを向けるセリカにリサも真面目な顔を作る。

 二人の間に流れる空気は張り詰める。

 緊迫した沈黙に、リサがごくりと唾を飲み込んだ。

 

「グレンが……暫く生徒たち数人と遺跡に出かけるんだ。1週間程らしいが、1週間もだぞ? そしたら私はグレン分が足りなくて死んでしまうかもしれん」

「いやそんなことかい! ……無駄に緊張して損したぞい」

 

 さも、重大案件とばかりに打ち明けたセリカに、国の危機とかそういうとんでもないことが打ち明けられるのではと覚悟したリサは懇親のツッコミを入れた。

 

「いや何言ってんだ! グレンに……グレンに1週間会えないんだぞ!?」

「ばーか! 今どき、兎でも寂かろうと死なねーわい!!」

 

 必死の形相のセリカをどうしてくれようと溜息をつくリサの言葉を無かったことにしてテンションアゲアゲでセリカが続きを紡ぐ。

 

「まあ……と言うわけで、グレンにこっそり着いていこうと思うんだ。楽しみだよな! リサ、お前も少しでもいいから準備しとけよ?」

「おい待ちいな。先に、なして私がセリカと共に、グレンに着いてく前提なのか答えてもらおうかい?」

「え、来ないのか……? お前も、そろそろあの学院に編入という形で入るんだから……そこの生徒と、しかも同じクラスになるかもしれん子達と知り合っておいた方がいいだろうと思ったんだが……」

「先にそいつを話すべきだったと思うぜぃ。まあ、面白そうだし……着いてくが……。で? 結局、グレンに着いてく理由はなんなんだい?」

「はぁ? それはさっき、グレン分が足りないからと……」

「そうかい? 他に理由がありそうな気もしたんだがなぁ……まあ本人がそうだと言うなら言及はしないさねぇ」

「……」

 

 一瞬押し黙ったセリカは少し深刻そうな色を顔に浮かべたあと。

 

「……おっしゃ決定だな。早速準備するぞー……グレンのやつ驚くかなー」

 

 すぐに無邪気そうに笑うセリカを尻目に、何を持って行ってやるか……昔みたいに私を見て驚いてくれるだろうかと準備するものを頭に浮かべていくリサは茶の入ったコップを一口かたむけた。

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