宙が少女か、少女が宙か   作:銀ちゃんというもの

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がっこお休みだから物書く時間いっぱいあるのに自己満足用の主従百合しか書いてなかった私は現在ネムネムなのです……っ!
そして今日になって自分がシリアスを書けないことに気付いたのですよ……はい、Twitterにも投稿しましたがやっすい台詞を吐かせることすら出来ない想像力皆無の趣味人はここです。


10.眷属秘呪

 馬車にゆらりゆらりと揺られて琥珀色の空の下。

 ここら一体で最も空に近い崖の上に神殿は待ち人を待つかのように静かに佇む。

 崖からの情景はとても一口に言い表すことの出来ない絶景。

 遥か遠くは緋色に染まった黄昏の連峰が麓の湖に反射して映される。

 崖下は金色の麦穂を連想させる一面の緑だった草原。

 それらに劣ること無く神殿は存在を誇示する。

 

 周囲に並び立つ柱の中心に半球体の奇妙な建築方式で建てられた姿はなんとも神聖さを感じさせた。

 

「あれが……『タウムの天文神殿』か……」

 

 壁面には謎の幾何学模様がびっしりと刻み込まれている光景を前に、生徒の誰もが感慨深そうに圧倒されて静かな風が流れる。

 

「……おいおい、お前ら。ぼぉーっとしてる場合じゃないぜ?」

 

 だがあくまで、生徒は。

 グレンは空気を破るようにパンパンと手を叩いて野営の指示を出し始めた。

 

 リィエルと共に哨戒の任を任されたリサは風に紙を撒いて周囲の安全を確認しつつリィエルについて歩き始める。

 

 後ろでグレンの悲鳴が聞こえたがまあ気の所為気の所為と鼻歌交じりに哨戒(おさんぽ)を始めた。

 

 

 

 翌日、昨夜(ゆうべ)寝袋ごしにリィエルに抱きついて寝れたから美少女分補充できて元気いっぱいと心做しかお肌ツヤツヤのリサは野営地に設置された守護結界に非常時の戦闘員として待機班の仲間入りを果たしていた。

 

「─────♪」

 

 待機・連絡班のリンとセシルとテレサに奇怪な目で見られながら本を読んでいた。

 本といっても例の一族のあれではなく、セリカに貸してもらった『メルガリウスの魔法使い』。

 一頁一頁を噛み締め堪能する様にゆるりゆるりと読んでいる。

 

「あ、あのーリサさん?」

「……んー? ああ、馬車内でも言うたがどう呼んでも構わんぞい……つーか私はおまんらと同い年だかんなぁ。畏まる必要は皆無だい」

 

 そこに女顔の少年、セシルがリサを()()()()()話しかけた。

 

「じゃ、じゃあリサさん……えっと……その浮いているのはなんですか?」

 

 視線の先にはリサが寝そべる人の高さより上げた無数の人形(ひとがた)

 奇怪な視線の原因は十割これである。

 セシルを抜いた女子生徒2人も興味津々に会話を聞いていた。

 

「……ああ、これかい? こいつぁー私の眷属秘呪(シークレット)さね」

 

 人形の布団から顔を覗かせたリサは説明する。

 

「眷属秘呪……? それってなんだっけ……」

「確か、固有魔術(オリジナル)の一種ですね……魂の魔術特性(パーソナリティ)を術式に組み込む固有魔術と違って血液のマナ特性──魔力特性(スペシャリティ)を組み込む魔術でしたっけ……?」

「へぇ……テレサ、よく知ってるね!」

 

 首を傾げたセシルとリンにテレサが記憶を漁って出した解説にリサが付け足す。

 

「正解だよ……テレサちゃん、グレンもきちんと先生できてんのなぁ……はははっあいつがなぁ……。

 さあ、説明の続きだい……眷属秘呪は魔力特性を術式に組み込むだーけーに、先祖代々発展させられんだい。私ん家は旧古代中期頃からあるなーんて書物に残っちゃぁ、いるが本当かどうかは知りゃせん……そん頃からあんだってんなら、超魔法文明とやらの時期と重なってんよなぁ」

「なんか……すごいんだね」

「そ、その頃からあったのならそれ、古代魔術(エインシャント)なのでは無いですか……? 

「いんや、今は少なくともただの近代魔術(モダン)さね」

「それにしてもその位、大昔から残ってるなら、相当凄い、洗練された物になってるんですよね……?」

「……物が凄くたって……扱えにゃー意味が無いんだぜぃ……」

「え、えぇ……」

 

 哀愁漂う雰囲気で返された生徒らはどう返すべきか迷って答えが見つからず沈黙が訪れる。

 

「まあ、この眷属秘呪は東方の式神術を基礎に作られててんなぁ……外法に近いんだが、人形に降ろした霊魂の深層領域の完全支配、それどころか精神世界を術者の物に塗り替えるバケモン魔術でさぁ……魔力供給も霊魂が勝手にやってくれっから魔力容量(キャパシティ)がめちゃんこ少ねー私にも扱えるんよね。

 霊魂の意思は完全に奪うんし、偶に魔力を魂ごと使い潰して輪廻にも戻れん消滅って事になるんけんな……」

「え、それってだいぶ凄いんじゃ……深層領域の完全支配って暗示する為の詠唱なしで霊魂の心を操作すればいいって言うことだよね……? しかも術者本人は魔力消費なし……」

「はははっ、言ったんろ? 物が凄くても扱えにゃ意味ねぇんよ……私はあらかじめ人形に刻んだ術を1回起動させるのが限界さねぇ……ははは」

 

 乾いた笑いを零したリサに、どうすべきかまた迷った生徒達。

 再び訪れた沈黙にひゅぅと酷く虚しい風が吹く。

 遠くの歌声が聞こえるのではという程の静けさに耐えかねたのかリサが話を逸らす様に沈黙を破る。

 

「なぁ……お前さんら……。グレンは、ちゃんと学校でやっていけてるかいな?」

「……ええ、グレン先生はとてもいい授業をしていますよ。システィーナと毎日恒例のように喧嘩してるのが有名で「あれがないとなんだか不満」や「1日に1回は見ないと面白くない」などという人までいるんですよ……」

「わぁお、思ったよりイキイキしてやがんなぁ……」

 

 ふふふと笑うテレサとくくくと笑うリサのテンションに完全に置いていかれたセシルとリンはどうしようかと互いに顔を見合わせる。

 

「ああ、今度お前らの学校に編入すっかんな。よろしく」

「そうなのですか。よろしくお願いしますねリサさん」

「おう、よろしくなぁテレサちゃん」

「え、えと……よろしく、リサ……?」

「よろしくリサさん」

「よろしくな……リンちゃん、セシルちゃん」

「……って、セシル()()()!? 男ですよ……?」

 

 珍しく大人びた微笑みで返すリサの発言は最後の最後で悪戯顔に変わった。

 男だと言うのにちゃん付けされたセシルは驚き抗議する。

 

「ああ、セシルちゃん……セシルちゃん人間の存在の証明は認識だって聞いたことあるかい? なら、私からしたらセシルちゃんは女の子にしか見えんかんな、つまるとこセシルちゃんは女の子だい……! 異論は認めんぞい」

「なんでさっ」

「あら、セシル()()()……今度ドレスを着てみません……?」

「テレサ何言って……っ」

「う、うん……可愛いと思うよ?」

「……リンまで……」

 

 がくっと項垂れるセシルを笑うリサ。

 完全に打ち解けた三人とリサはグレン達が神殿から帰ってくるまで楽しく笑いあっていた。

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