宙が少女か、少女が宙か   作:銀ちゃんというもの

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Twitterから手を離せない不思議な現象に見舞われました


11.不思議な本

 遺跡の調査開始から三日ほど経過した。

 その間、リサは待機組として楽しく談笑したり、探索組として妖精や精霊が霊脈(レイライン)の影響で存在が変質し、狂化した狂霊(きょうれい)と呼ばれる者達を蹴散らしていた。

 

「つまり──宇宙からやってきた侵略者(エイリアン)の仕業だったんだよ!?」

「な、なんだってーッ!?」

 

 日中は遺跡内を調査しつつ最深部へ向かう、夜の帳が下りる頃に野営場へ戻り、星が砂のように広がる夜空の下、焚き木の橙の明かりが彼らを包む中、団欒をする。

 

「カッシュさん……そ、それは一体、どういうことですの……ッ!?」

「今日、第七霊廟の壁画を見て思ったね! あの不思議な怪物の意匠……古代人はきっと宇宙からの侵略者に支配されていたんだ!」

「まぁ……確かに古代人の星辰信仰ってんは家の歴史を見るとわかんだがな……どーやら、外宇宙の存在を崇めてたらしいっちゃらしんだが、その考えはなかったぜぃ。この星の外の存在が異形じゃないっつー確率のほーが低そうではあるんし、可能性としちゃでけえんじゃねーかい……?」

「だろ、リサちゃんもそう思うだろ……!」

 

 リサは例の本を元に、学会に出ていない情報まで知っている事もある。そんなリサは、古代文明を瞳を輝かせて語るシスティーナにちょくちょく口出ししては、裏付けする証拠を入れたり、矛盾点を指摘するものだから、大層気に入られた。

 そして、そのシスティーナの語る内容に絆されれしまった生徒達は毎晩毎晩、独自の説を展開して意見をぶつけ合う。

 その議論に律儀に、楽しそうに参加してはシスティーナに対する様に、口出ししては裏付けや補足説明を入れていく内に見た目も合わさり、皆の妹扱い。無論、リサが彼らと年が同じということを理解した上で始まった事なので、元々見た目より下の年齢に扱われる事に忌避感を感じないリサはその扱いを楽しそうに受けている。

 

 ちなみに、リサが、家の本に書いてある内容が正しければ……と付け足して話すことが多く。その『家の本』とやらを見せて欲しいとシスティーナが興味がままに迫ったが、読めるならと渡されてどうやろうとも読めない内容に頭痛を覚えて返したという出来事もあった。

 

 ゆっくり議論を重ねる間、料理上手のリンが夕餉の支度と配膳をして、リサがリンのオドオドした口調に可愛いなーと笑う。

 

「それにしても、リンちゃん可愛くて料理上手とか最強じゃねーかい……? 将来、いい嫁さんなるじゃろなぁ……くくく、気になる人はいるんか……?」

「っ……!? き、気になる……えっ、えっあ……えっ……あぅ……」

 

 リサの隣に腰を下ろしたリンはニヤニヤ顔のリサにからかわれ、顔を赤くする。

 

「いやぁ……女の子の恥ずかしがる顔はやっぱえーなー……射影機持ってくりゃぁ、良かったんに……なして忘れたんか私……」

「……前々から思ってたのですけど、どうしてリサはそんなに中年男性の様な思考回路なのですか……?」

「……え、ああ……どうしてだろーなぁ…………生まれた時から……? いや、あん時は普通にノーマルだった……旅に出てから……? もっと前か……親が死ぬ前……? いつからだ……あれ、ほんと私が男より女が好きになったんは何時からだい……!?」

 

 どこまでもおっさん思考のリサへ白い目を向ける生徒の中、誰もが気になっていたことを意を決して聞いた張本人、テレサは本当に分からないと言った様子のリサに困惑する。

 

「そういえば……リサの『家の本』とやらはどういうものなのですの……? 何時も、何処から取り出しているのかが分かりませんし……先程、システィーナに貸すのを見ましたが……」

 

 場の雰囲気を直そうと今度はウェンディが話題転換に乗り出す。

 

「……ん、ああ、こいつかい?」

 

 そう言って虚空から取り出した本を見やすい位置に持っていく。

 

 本の題名を読もうとした一同は、えも言われぬ違和感に眉をひそめた。

 

「え、ええっと……リサはこれが読めるの……?」

「読めっか読めんかで言われんなら、『読めん』」

「ならどうして……」

「ただおまんらとは読めんの意味が違うんよ。おまんらは『線が描かれているだけに見えて意味にどうしても繋がらない』、私は『文字だと認識しているが題名が知らない言語で読めない』つーことよ。私は歴史を勉強してん訳じゃないから元々読めん、【リード・ランゲージ】も使えんの。

 だかんな、最近……ったって今の言語が利用されてる範疇だが……その範囲の物のもんだけ読んでる訳なんよ」

「じゃあ、私達は……その、最近の物っていうのは……」

「読めんのごめんな……どーいう仕組みかーわからんけど、私んちのもん以外読めんようになってるらしいん」

「どういう仕組みか分からない……? まさかと思いますけどそれ、古代魔術(エインシャント)では……? 眷属秘呪(シークレット)そのものは近代魔術(モダン)になっていても、その本に付呪(エンチャント)された物は……」

「ああ、そうだぜぃ……この本に付呪された機能は家のもん以外読めん魔術と、当主の意思で現したり消したりできる魔術、頁数が明らかに見た目より多い魔術、絶対劣化しない魔術に、本そのものが異常な強度を誇って壊れると消失して当主の意思でまた取り出せる魔術……こいつ1冊に魔術師共が興味を示して狂喜乱舞する程の古代魔術(エインシャント)てんこ盛りなんよね……研究する気はねーがねぇ……。

 ははは、ぼくのかんがえたさいきょうの~~……かよ」

 

 自分で言いながらも頬を引き攣らせるリサに古代魔術の異常さを思い知らされた生徒達。中でも、本のジャケットが一体何で作られているか考えようとしてもすぐに意識を霧散させられる事に気付いた生徒はあまりの奇妙さに吐き気を覚え(正気が減って)、料理を作った本人の前で戻さないように必死で口を抑えている。

 

「と、まあ……ここまで話したんけど少し嘘が入ってる。

 正確には、んなに沢山魔術が付呪されてんじゃぁなくて、人口精霊(タルパ)って知ってっか? 一歩間違えりゃ廃人確定の禁呪法なんだがな、簡潔に説明すりゃ擬似霊素粒子(パラ・エテリオン)っつー粉を振りまいてそこに特殊な魔薬(ドラック)で空想上の存在を『そこにいる』って暗示認識させて投射させるつー、魔術則『等価対応の法則』を使って一人で神や悪魔を創造するもんなんだが……この本はな、どうやら家の当主の深層意識下に存在し続けて、常に当主がこの本をここに出したいと思考した時に『ここにある』と強制認識させてこの本に関する機能含めた情報全てを空気に投射するっつーまぁ……なんてんだ……聞いてるだけでイタタッってなりそうなもんを実現した代物っつーか、擬似容量(パラ・キャパシティ)はどうなってんだっつーか、魔術法則を何個か無視してそうな気もしなくもない代物っつーか…………ああ、もうっ、話してるだけで頭が痛あなってきたんよ……! だいたいこういうんは持ち主も最強設定もりもりの黒歴史の塊だろうに、なして私は役に立つのがあまりに特殊条件下で……くぅ……あっリィエルちゃん慰めてっ!」

 

 異常な情報量を投げるだけ投げてリィエルに頬擦りしている変態(リサ)を尻目に、世の中には理解できないものが沢山あると学ばされた生徒たちはリサの話を頭の外に出す様に議論を再開した。

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