最近ダイジェスト感すごいのよね……リサを上手く原作に関わせる能力がないの……サンタさん私に物書き力をください。
「何が起こったんかいな、これ……」
「わからん……」
音も、色彩も何もかもが時を刻むのを止めた世界。
全てが灰色の空間でグレン達だけが色と音を有して停止した時間の流れから外れていた。
『……貴方達。こっちよ。早く来なさい』
不可解な出来事に困惑する彼らの背後から声が聞こえる。
「な──」
振り返った一同はさらに困惑することとなる。
どこか退廃的な雰囲気を漂わせる声の主はあの魔人と同様にとても人間とは言えなかった。
尽きているともしたくなるような暗さの白髪と赤目、そして背中から生えている異形の翼。一体どうすればそうなるのだろうか、そう考えるものは翼のことではない。深海魚を捻じ曲げて形成したかのような翼よりも何よりもだ、とリサは自分の見えてるそれが本物なのか幻視かを疑う。
己が狂ってしまったが故の者なのか、死の寸前に狂気に堕ちたというのか……否、リサはそれ程までには死を恐れていない。寧ろこれからいつ死ねるか分からない悠久の年月を送る事となるのなら死ぬ機会があるのなら死んでしまおうとさえ思っている。それ程までに永劫とは辛いものだ。身近な女性を見てそれを知っているが故に死への欲求は強い。
ならば、それは本物の確率が高い。
そうあっても疑いたくなるものがその声の主の少女にはあった。
「ね……ねぇ……貴女……なんなの……?」
システィーナがその場全員の代弁をしようとする。
リサだけでない、その疑いたくなるものは共通の疑問だ。
「貴女……どうして……? どうして、ルミアと同じ顔なのよ……ッ!?」
震える声で言い放ったその一言にリサはやはり私は正気だったと安心する。その場にいる全員が同じ
だから、システィーナの言葉が全員の気持ちの代弁だと言うのなら己も同じだ。
大丈夫、狂っていない。
今も尚、理解の及ばぬ状況に思案するグレンらを急かすように走らせたその少女をリサも追いながら、落ち着いたからか全く関係の無いことを考える。いつも通り、おちゃらけた内容を。
すなわち、この人外娘、おっぱいでけえなー……と。
闘技場から脱したグレン達は魔人からかなりの距離を離し、焦燥が少しの余裕へと変わった頃、例の少女は
隠す気のない偽名に嘆息をつくグレンは、気絶したセリカを背負いながら先導するナムルス後を追っていく。
時折背後を確認すると、何処か忙しなく視線を動かすリサと眠そうなリィエルが一応油断なく背後を警戒する様子が目に入った。
よく見てみるとリサの視線はルミアとナムルスの胸を交互していたが、それは見なかったことにした。
灰色の世界はいつの間にか色彩を取り戻している。
音は振動するように戻り、時間は正しい流れになっている。
リサは欲望と向き合いつつもまた別のところでここで起こった矛盾と違和感について考えていた。
別に胸の大きさに貴賎はないなんて考えていた訳では無い、断じてないのだ。
魔導第二法則により時間停止によるグレン達と世界に流れる時間の矛盾、それの帳尻合わせの為に今回の場合グレン達の時間が世界の時間と合うまで停止するはずなのだ。
そのはずが、いつの間にか時間は戻ったというのにリサ本人が停止した気配がない。
それが違和感の正体だ。
こんなことが出来るのはリサの知る限りセリカの
そして起動には、時の天使の名を冠する『ラ=ティリカの時計』と呼ばれる魔導器を必要とする
だと言うのに、目の前の異形の存在は事も無げにやってのけた。全く不思議でしょうがないと、しかしあの冒涜的な翼からしてまず人外なんだしまあ異常なこともあるもんなんだろうと納得する。リサ本人も再生能力に関しては異常だからだ。そう納得でもしないとやっていけない。
(そいや……
バックでグレンがナムルスを質問攻めにする様子を後目にそんなことを考えていた。
何やら、グレンの質問に答えないのは、言わないのではなく言えないとか。
その中に入っていた「知らないことが最良の結果を招くこともある」にはリサも同意する。
リサの家の例の本、あれをリサは必死で読み進めているが、読めば読むほど気持ち悪く悍ましい吐き気がするという感情に苛まれていくのを感じていた。内容は禁呪に近い気持ち悪いものはあるが、それではあそこまでの不快感は感じないだろうという程のものに見舞われるのだ。常人が読めば数ページで発狂待ったなしだろう。発狂するくらいなら知らない方がいいこともある。
そういうものだとリサは個人的に理解した。
どこか意味は違う気もしたが。
「……ったく、まったくわけのわからんぞ、この偽ルミアめ」
『そう。じゃあ、一つだけ教えてあげるわ。……この私について』
納得できなかったグレンへポツポツとつぶやき始める。
なんでも、今のナムルスは世界各地の遺跡に通う
まるで知りたいこと聞きたいことからかけ離れた答えに舌打ちをしたグレンをルミアが窘める。
「お礼がまだでしたね……どうもありがとうございます、ナムルスさん。私たちのこと助けてくれて。ナムルスさんがどうして私と同じ姿をしているのかわからないけど……同じ姿をしているからかもしれないけど……私、なんだか貴女が他人のような気がしないんです」
ひょっとしたら前世で姉妹だったのかもしれませんねと、ルミアが救ってくれたお礼を告げるとナムルスは敵意と憎悪を載せた視線を向けた。
『私はね……貴女のことが大嫌いよ、ルミア。姉妹だなんて反吐が出る。貴女だけ、さっき死ねば良かったのに……』
場に緊張が走る。ルミア以外全員が臨戦体制を整えた。
リサは札を構えすっとナムルスを見つめる。その時、ナムルスがリサの札を見て一瞬うかべた表情は驚愕、そしてなんとも言えない表情。言葉に表すなら嘘だろお前……だろうか。何となくリサは札を見て反応したナムルスはここらでは珍しい魔術を使うということだけで驚いているようには見えなかった。
『……大丈夫よ。彼女に危害を加えるつもりは無いわ。……ていうか、この
緊迫するグレン達へ投げやりに答えたあと、ナムルスはルミアに向き直った。
『今の貴女にこんなことを言うのは筋違いだって、私もわかっているわ。……でも、言わずにはいられない……貴女さえいなければ……ッ!』
本当に何かあったのか、それともルミアでは無いまたよく似た人物がやらかしたことなのか……ルミアと知り合って少ししか経っていないリサには優しい娘というイメージしかないために判断がつかない。
再び先導するように進み始めたナムルスを追う。
「貴女は……とても優しい人なんですね」
ルミアが投げかけた言葉にナムルスが反応するがリサは別の思考に至る。
(ルミア……こりゃ優しい娘とかそんなレベルじゃあない、学院のマドンナとか天使とか呼ばれてファンクラブとかできるレベルの天使やないかいこりゃ……学院入ったらファンクラブ探してみっかねぇ)
要約して聖人君子かよとルミアの異常性に内心ツッコミを入れる。
頭を冷やすと言って虚空に消えたナムルスもだけれど、気になる考察すべき点が増えたとリサは頭を抱えた。
この遺跡と魔人、そしてあのナムルスという少女そのものにリサの家の本を書いた御先祖の目的があるのではそう思えてしまうのだ。