ナムルスが消えて、セリカが目を覚ました。
何時になく弱々しく力がない様子で、弱音を吐く。
何やら、魔人の魔刀は魂を喰らう類の代物だったらしい。セリカの
もう二度と、魔術を行使できなくなるかもしれないほどの損傷だそうだ。
それを聞いたグレンは否定する。しかしその顔に笑みは浮かばない。浮かべない。霊的な感覚を扱う魔術に於いて、霊魂の状態は大きく影響を及ぼす、少なくともこの場にいる全員が理解しているであろうことだ。だから決して笑うことが出来ない。
なにか話から妙な疑問が浮かぶリサだが、疑問が何か焦りで纏まらない。
ただ今はセリカの意識が戻ったことを喜びながらもあの魔人から逃げるしかないのだ。
カツカツと足音がやけに耳に響く。
珍しく自分も疲弊しているらしいとリサは思った。
斬れて再生した右腕はやけに絶好調だが、それ以外はだるい。そこで思い出す。リサ自身もセリカの言うあの魂喰らいの魔刀に切られたという事を。
そこで纏まらなかった疑惑の招待へ辿り着いた。
何故リサはここまで影響が少なく済んだのだと。
セリカはたった掠り傷であそこまでの目に合っている。疲弊している。なのに、腕を肩から斬り落とされた自分は何故平然とたっていられる。
気合い?
それでどうにかなるのは物語の主人公だけだろう。
それともあの魔刀の魂喰らいは斬る位置や型に何か条件が?
可能性がない訳では無いがそんな面倒くさい事を争いの最中にいちいちやる程の欠陥品など役に立たない。
じゃあ……正体不明の再生の異能が霊魂ごと……?
馬鹿らしい、それこそ最もありえないことだ。
そうしてリサは思考を切り捨てた。
あっれまーいつの間にかナムルス戻ってきてんなーと、いつものような楽観思考に切り替えた。
「……来たな」
グレンの一言の意味を既に一同は理解している。
重圧かつ濃厚な気配を発している者が背後から迫ってきている。
例の魔人だ。
距離はあろうと目的の場所へ辿り着くまでに向こうに追いつかれてしまう。そう無慈悲にナムルスが告げた。
「俺が、ここに残る。お前達はセリカを連れて、何とかこの地下迷宮から脱出しろ」
「だ、駄目です! 先生も一緒に……ッ!」
『そうよ。何を言っているの』
そんなやり取りの中、小声でリサにシスティーナが話しかける。
「ねぇ、リサ。『メルガリウスの魔法使い』……読んだことあるのよね?」
「えっ? ……いや、まああるっちゃあ、あるが……」
唐突なことに困惑するリサにシスティーナは続けた。
「色々と察しがいいリサなら、これで気付いてくれると思うの……魔煌刃将アール=カーンにあの魔人似てると思わない?」
「は? ははは、いやいや……えー……いやいや……アール=カーンといやぁ……左と右手に魔法を打ち消す魔刀に魂を喰らう魔刀……はは……えぇ……いやーえ……うん。
……言いたいこったわかったんよ、でもまさかそれに賭ける気かいな?」
「ええ、だから今から先生達に説明するの、補助してるかしら」
そうシスティーナは微笑み、顔に気合いを入れる。
自ら囮になると宣言するグレンを止めようと争うナムルス、そんなやり取りへ話しかける。
「……先生。
どうせ逃げられないなら……戦いましょう、皆で。あの魔人と。あの魔人を私達で打倒しましょう。全員が生き残るには……それしかありません」
どこか怯えながらも強く勇気を振り絞ったような顔で話しかけた。
「馬鹿か、お前は……ッ! 勝てるわけねーだろ!?」
あの魔人の強大さを知ってるがゆえに、余裕などないグレンはシスティーナに喰ってかかる。
勝算があるのなら全員で戦ってもいいがあの不死をどうしようもないと。
そしてナムルスすらグレンに同意する。
「お言葉ですが……あの魔人の不死性……恐らく、崩せます」
「……は?」
『えっ?』
しかしそれにシスティーナは反論した。
「私の推測が正しければ、ですが……あの魔人には恐らく弱点があります」
呆然と目を丸くするグレンとナムルス。
「あぁ、グレン……システィーナの言うことが正しけりゃ倒す方法はある。そしてこん提案私は正しいと思うてる……とても偶然たー思えんしな……まあ、最後まで聞いてやってくれよ」
「……あ、ああ、そうか」
そうしている間にも、システィーナは背嚢から取り出したその本。
『メルガリウスの魔法使い』をぱらぱらめくり出した。
一つの作品書いている途中に別の物書き始めたら自分は片方、乃至は両方をエタるタイプだなあと思いつつ書きました。でも書きたいものいっぱいあるのでネタをグツグツ釜で茹でて仕込んでおく。突如書きたい欲が暴発して両方エタるなんてことがないように頑張らなければならない。
なーんて考えてたら1750文字しか書けませんでした。