宙が少女か、少女が宙か   作:銀ちゃんというもの

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書き書きしてたら4000文字を超したお話。
受験の問題で今回こそは暫く更新止まる……筈。



2.グレンとリサとアルベルト

 燦々と降り注ぐ日の下でキャッキャウフフと白い肌が惜しげも無く晒され、水着の色が砂浜に着色する。艶美なる女体の生み出す神性の世界は正しく芸術である。水飛沫が少女達の艶やかなな髪を濡らし、青髪の少女の放つビーチボールが男子生徒と砂を弾き飛ばす。ここはサイネリア島のビーチですか? いいえ天国(エデン)ですと下品に鼻血を垂らして男子生徒がサムズアップする程の光景。

 そんな神秘の織り成す空間を前にビーチパラソルの下で寝そべる着崩したシャツを着たいかにも引率の教師といわんばかりの黒髪の男が白いローブにシャツ、サスペンダー付きのズボンに銀縁の丸眼鏡の研究者といった風体の青髪の男と、それと手を繋ぐ薄い桃の髪をし、子供っぽい衣装に身を包んだ年端も行かない子と話をしていた。まあ実際は教師がグレン=レーダスで、後の二人は怪しまれないよう変装したアルベルト=フレイザーとリサ=カミハなのだが。

 

「……成る程。これがお前の守りたかった光景か、グレン」

「さあな」

 

 三人はグレンの担当する生徒達が年相応の笑みを見せてはしゃぐ様子を眺めている。

 

「確かに、この光景は掛け値無しに尊い。……今回ばかりは、お前に謝罪せねばなるまいな。すまなかった」

「はっ、どうした。気持ち悪ぃな。らしくねーぞ?」

「……ふん」

 

 嘗ての戦友どうし互いに守った物を眺めながらの、とても昨日命を賭け戦いをした後とは思えないゆったりとした空気が潮風と波の音に乗る。

 そんな中やっとリサが口を開くが。

 

「ええ、えへへ、尊い、よくわかってるなぁアルベルト殿。私は今、射影機を持っていないことを後悔してますぜぃ……ぐへへ、あの白肌や豊満な胸の谷間……うへへ、私の姿なら飛び込んでも許されっかなぁ……げへへ」

 

 雰囲気ぶち壊しである。鼻血を垂らし、瞳を全力で開いて見た光景を、白い肌を、少女達の胸を、可愛らしい少女の麗しい声を、脳裏に刻まんとするそれには尊敬の意すら覚える。アルベルトの尊いとリサの尊いは決定的に違っている事に気付いているのかいないのか。どちらであろうと、とりあえずは鼻血流してやりきったと言った表情で我が人生に一片の悔いなしと灰になっている様に見えるリサは放置するのが吉だろう。触らぬ神に祟りなしである。

 

「……」

「……」

「しかし……グレン。どう思う」

 

 リサの台詞に無視を決め込んだグレンとアルベルト。そして少し声のトーンを落としてグレンのアルベルトが問う。

 

「どう思うって……そりゃー、ルミアとか、テレサあたりの水着姿は、やっぱ最高だって思う。順調に成長してるし、今だから持ってる青い感じってのもいい。俺、年下にゃ興味ねーけど、何かに目覚めそうだ……あ、白猫はもういーや。あれは多分、将来性もゼロ──」

「誰 が 水 着 の 話 を し ろ と 言 っ た……ッ!?」

 

 訂正、グレンもリサの同類である。

 いつも通りの冷淡な声に近寄り難い何かを孕ませて、2人に指を向けたアルベルトがこう言った。

 

「いいだろう。貴様の【愚者の世界】と、俺の【ライトニング・ピアス】の二重響唱(ダブル・キャスト)……どちらが速いか試してみるか?」

「じょ、じょーくよぉ、ジョーク! アルちゃんジョークだってばぁ……あは、あはは……だ、だからその物騒な指を引っ込めて欲しいなぁ……」

「そっそうだですぜぃ、じょーくじょーく、アルちゃん、本気にしすぎだぜぃ……。再生能力者も痛覚はあるんですぜぃ……だから……そのぅ……天下の往来で、異能者に異能を使わせないでくれません……か?」

 

 グレンとリサは息がピッタリ。二人とも見たことがない程に顔を真っ青に。滝のように汗を流して許しを乞う。

 

「こ、今回の一件で例の組織と戦いに進展があるか、だろ? そんなのお前も本当はわかってんだろ? あの組織とあまり争ったことがないリサでも予想が着く。何も進展しねえよ。自信を持って断言してやる」

 

 チッ、と舌打ち一つしたアルベルトは指を静かに下ろした。

 

「私でもそんくらいわかる。第一団(ポータルス・)(オーダー)》クラスの青髪も、参入志願者(プロベイショナー)のクソ馬鹿も、あいつら如きが組織の深奥に繋がる情報があるわけねーだろうて」

「…………」

「あの程度の連中が持ってるくらいなら、組織との抗争が建国有史以来続くもんか。お前もそれがわかっているからバークスの野郎を始末したんだろ? 出てくるとすりゃ、世界征服を目論んでいるのと、正体不明の『禁忌経典(アカシックレコード)』とやらに対する執着くらいさ」

「私の両親がこの世を去って1ヶ月後から追ってる代物だぞ? それも長いらしい私んちの歴史の本の最初らへんに名前だけ載ってるくらいだからなぁ。んなもん帝国有志レベルくらいで辿り着かれてたまるかよ」

「……そうそう、こいつの家の歴史書の最初らへんに……って。お前、俺も初めて聞いたぞ、それ!?」

「…………」

「いやーだってよー。名前しか載ってねーんだぞ? 言う意味あったかい? 私んちはどんくらい古いかわかってないんだしな。最悪古代レベルだぞ?」

「……ともかく。わけわからん連中だよな……自分自身ですら『禁忌経典』とやらが、具体的になんなのかわかんねーのに、なんでそれを渇望するんだ?」

「呪いにも似た強烈なカリスマを励起させる暗示呪文かもしれん。組織の求心力を高め、外部の協力者を募り、それらを手駒にして操り易くするためのな」

 

 昨日と同じように置いてかれているアルベルトだったがまあ今回の会話は理解ができて仲間外れにはされていないようだった。

 

「なるほど。それで末端の構成員や外部協力者には肝心要な情報を教えず、いつでもトカゲの尻尾切りができるようにってか? ……やれやれ、考えれば考えるほど吐き気のする組織だぜ……」

 

 空を仰ぎみたグレンの顔はとてもうんざりとしていた。

 リサはリサで、はぁ、とため息を着くと手をにぎにぎしたり体をクルクル回したり久しぶりに自由に動かせる身体の感覚を謳歌しているようだ。

 そんな中、鋭い目で怖い顔をしたアルベルトはグレンにツッコミを入れられると、途端に穏やかな青少年の顔にころりと口調を変えた。

 

「ははは、中々有意義な時間でしたよ、グレンさん」

「……は?」

「貴方の術式解釈の切り口は斬新だ。また、いつか貴方と魔術議論ができる日を心待ちにしていますよ。それでは、私はこの辺で……。ほら、グレンさんにご挨拶をしなさい」

「グレンお兄ちゃんさようなら、また遊んでね!」

 

 紳士然とした口調でそう言い。突如、アルベルトがリサに会話を振ると何時もの不思議な口調は何処へやら、見た目相応の元気一杯と言った子供の声色で顔でそう言った。

 

「ほら、行きますよ」

「はーい、お父さん」

 

 そう、まるで本物の親子のように話しながら去っていく2人を見てポカンと首を傾げるグレンであった。

 

 

 

 島中に退避命令が入ったからか、島中の店は締まり、伽藍堂となったサイネリア島の、さらに元々人気の少ない公園で、アルベルトとリサの二人は話していた。

 

「突然、振ってくんなよ。どう答えるか迷う時間なくてなかなか完璧な演技できなかったじゃねーかお父さん」

「誰がお父さんだ。やはり撃たれたいのか?」

「おう、ちょい、やめーや。私を撃っても何の得もねーから」

 

 額に指を突きつけられ途端に慌てるリサを呆れるように見て、こいつには【ショック・ボルト】一つ撃つのも馬鹿らしいとばかりに指を下げる。

 リサはそれを見て安心したように周囲を見渡し。

 

「それにしても……こんな所に連れてきて何の用だい? ……ま、まさか。私を襲おうってんじゃ。くっ体は屈しても……ぶべっ」

「阿呆か」

 

 リサのボケは最後まで言い終わることなく、アルベルトに引っぱたかれ、とてもその見た目の女の子の出しては行けないような音に代わった。

 

「お前……本当にわかってるのか?」

「つててて、舌噛んじまったじゃねーかい。すぐなおっからいいけどよ……おう、わかってるわかってる。私が魅惑て……ひっすんません指向けんな、私の立場がヒジョーにめんどっちいつーことじゃろう?」

「俺の上司に炎の魔術が上手い奴がいる。そいつに脳髄焼いてもらえ、そうすればきっと頭が治る」

「ひでえ! それで死にはしねえけど、死ぬほどの苦痛がはしるじゃねーのかい!? ……んで、当たりなんか外れてんのか?」

「……当たりだ。貴様は今、非常に面倒臭い立場に立っている……グレンのお陰でお前が孤児で、常日頃から旅をしていて、グレンの担当する学級の生徒達と同年代な事が証明されている。それなだけにお前には家がない、だからと言っても孤児院に連れていきにくい」

「おう、そうだな。背も顔も胸も成長しないのか日頃悩んで旅を続けていたぜ」

 

 ボケたリサを無視してアルベルトは続ける。

 

「……しかし、アルフォネア氏と付き合いが有るともグレンから聞いている。だからお前をアルフォネア氏に預けることにした。それまでは俺と行動を共にしてもらう」

「ひゃー、どうしようー。明らかに私よりも強そうな男性と昼夜を共にするなんて……優しく……してくださいね」

「馬鹿か。で、わかったな」

「おう、わかったぜぃ」

 

 何時までも何処までも、巫山戯倒すリサに冷ややかな視線を浴びせながら確認をする。

 そう、このリサとい少女。九つの頃親を亡くし、天涯孤独の身になってから一族の本を持ち歩きつつ。日頃、旅に身を委ね、旅に住まっていたのだ。その道すがら出会ったのがセリカ=アルフォネアらしい。二人の出会いはグレンにさえよくわからないとか。

 

 一体全体、何時からもっていたのか、捕まっている最中はどうしていたのか、リサのカミハ一族しか読むことの出来ないという分厚い本を手に開いて。旅の最中に覚えたのか、何処かの民族の伝統舞踊の物らしき特徴のある鼻歌を口ずさむ。

 アルベルトが少し本を覗き込むと、見覚えのある文字が書いてあるはずなのに、いざ一文字一文字を理解しようとすると何故か理解することが出来ない不思議な代物。まあ魔導書の類にはよくある物だ、と吸い込まれそうになった思考を切り捨て、いつも通りの冷淡な表情でリサに出発する旨を伝えた。




次回があるといいね!!
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