疲れすぎて誤字修正ゼロ侍で御座る。
リサは帰りの馬車は爆睡していた。
それどころか天文神殿からの帰還後の記憶が曖昧であった。
これまでに無い事態に遭遇したからか、敵が天敵すぎたからか、
どちらにせよ辛うじて馬車に乗ったことまでで記憶が途絶え、次に認識したのが窓の外から小鳥の囀りが聴こえるセリカ邸の一室であったことにかわりない。
少し体にズレのような違和感が残るが、思考は冴え、体調も凡そ絶好調である。
欠伸を噛み殺してベットから這い出でると、服は寝巻きに代わっていることに気づく。自分で着替えた覚えがない為、おそらくセリカ辺りが着替えさせてくれたのだろう。
「あー……今何時だぁ……いや、何日経ったっつー質問が先かねぇ……」
取りも敢えずと家主に会いに行くことにしようとしたリサは、付近の机に服が畳まれて置かれていることに気づき目を擦りながら近づき、先に寝巻きを着替えることにした。
「あぁ……起きたのか? お前、全然起きなかったから
「んー、いんや言うほどじゃぁないさね……疲れも嘘みてーに消えてやがる。それにしてもなんだい? 私の事心配してくれたのか……?」
「は、え? うん? ば、馬鹿言え、あいつらが心配してたと……」
「誰もグレンが私を心配してたかなんて言ってないがなぁ……ぷくくく……そん反応……あれれぇ? グレンは私を心配してくれてたと見える」
「いや待て、ちょっと待て、着替えに出くわしたことにノータッチで煽り返されると俺が困る……! 服を切ろ服をっ! ……ってあれ……うん?」
下着まで用意されていたため、寝ぼけてからか順々に着替えればいいものを一旦一糸まとわぬ姿へとなっていたところで偶然にも扉を開けて入ってきてしまったグレン。そして思わず直ぐに目を閉じ、聞こえてくる煽りに困惑しつつも返答を返して……しかしそこで違和感にグレンが気づく。
そう、リサには一応、羞恥心がある。
それは積年の慣れ、幼い頃からたまに会っていたし、共に風呂にも入っていたというのもありグレンに裸体の背を見られても対して気にはしない……が、正面は流石に顔を赤くする。
揶揄って遊ぶキャラではあるが、羞恥心を隠しきれるレベルの人間ではない。着替え中に入られたら流石に慌てる。
では、どうしてここまで堂々としているのか……気になってしまったグレンがうっすら瞳を開くと……もう既にそこにはいなかった。
「……!?」
これはどう言う手品だと、
「くく、あー面白いぜ……答え合わせ、欲しいかい?」
リサの声である。
そして、未だに困惑するグレンをよそに、返答を待たずその『答え合わせ』とやらを始めた。
「私思ったんよねぇ……グレンって主人公気質っちゅーかなつーかそんなかんじだろね、こういう場面に出くわしそうな人種の人間じゃんかい? だから予め『場所』と『姿』と『声の位置』を散失……を中途半端に、部屋の中にいる程度の認識だけ残して扉の裏ら辺で着替えることにより、入ってきた瞬間に人は『私が着替え中、まだ裸』という事だけを認識して目を閉じる。
すると、そう認識して瞳を閉じたせいで目の前に居るものだと思い込んで部屋のどこから出ているか分からない『声の位置』が、前方からかと思い込んでしまうことになるって訳だぜぃ……あとは察せるよねん?
まぁ、これ、あまりに精緻な操作しすぎたせいで魔力つきかけたんけどにゃ……」
魔術起動の魔導器の変わりとなる今や数が減ってしまった
余談だが、リサの
グレンの反応を一通り楽しんで、満足したリサはとっとと服を纏って寝ていた間のことを問うことにした。
はーこいつは……と頭を抱える様子のグレンが、まだフェジテに帰ってきて一日しか経っていないことを伝え、てっきりもっと寝ていたと思い込んでいたリサは内心驚いた。
その後居間でセリカに出会い、礼を告げる。
そしてあの場所で、無理に魔術を使ったセリカは自分では魔術的に診ることが出来ないから肉体的には大丈夫なのはわかっているが一応医者に行くといいと言われて違和感も気の所為のような気もして、リサは朝食を貰って家へ帰ることにした。
セリカは居てもいいんだぞと言うが申し訳なさが先立って帰路に着く。
まだ朝早い街は、それでも人がちらほら居て、グレンもそろそろ魔術学院に行かないと白猫に怒られてしまうと準備をしていただけあってか、学院の生徒と思われる制服に身を包んだ若い少年少女が歩いていた。
「ふうむ、あんれ、私ってーいつ頃から通うんだったかい? まぁいっか、まだ少し先んことさねぇ……」
少し待ち遠しく感じるのは、あの生徒達とまた会えるからだろうか、と少し浮かれてそろそろ家が見えるという位置で立ち止まる。
リサの視界には見覚えのある青が映った。
長く、冷たい印象を覚える色で、それの持ち主はそう、アルベルトである。
だれか待ち人を待つようにそこに立って居て……。
「いや、あそこ家の前じゃんかい?」
リサに気づいたアルベルトが視線を向けてこちらへと歩み寄ってきた。
「おはよ、アルちゃんや……で、朝早くからどしたのかいな? 朝から彼女とデートでもあったのん? そ、れ、と、も、私と一緒に美少女観察散歩……あっいや待てストーップストップよ……指を額に向けるな指を……」
用事があるようなアルベルトを家にあげたリサはここぞとばかりに揶揄う。すると明らかに【ライトニング・ピアス】が
自業自得である。
「まあ、いい……それより、例の任務……王女の護衛の任についてだが、あのあの学院に入る日程が決まった」
「おお! そういやまだ決まってなかったんなぁ……さっき何時からだったか思い出そうしても道理で思い出せん訳だぜ」
素早く居間に案内し、椅子を引いて座るように促しながら話す。
「一週間後だ……学院の『社交舞踏会』も近いから早めに馴染んで護衛としてできることを増やして欲しい……とこのことだ」
「一週間後ったーまた早いんねぇ……まーりょーかいだ。ところで……今更なんけど、私まだナンバーを貰うどころか室長さんと大した顔会わせもしてないんけど任務貰っていいん?」
「そこはある細かな事情があるのだが……一番は特務分室連中としてなんのナンバーを与えるのか……そして『自分を推薦したイヴが舐める時は私も辞める』などという条件を元に入ったお前の扱いをどうするのかなどだな」
「まぁ……その件はほら……うん」
「因みに、候補には《正義》があがっている」
「にゃんでぇ!?」
「……というのは冗談だ」
「ア、アルちゃん冗談も言うのね……」
「《隠者》の翁にこういう時は冗談を言って和ます物だと言われたから試してみたが……」
「あーうんあのジジイの仕業でっか……」
と、そこで特に用事も無くなったアルベルトは立ち上がる。
「あれ、これ話すためだけんに来たのかいな? もうちょいゆっくりしてってもいーんだぜぃ?」
「いや、この後も任務があってな」
「あーうん、噂にゃ聞いてたが《星》様は大変だねぇ……これほとんど家にあげた意味もなかったが……あぁ、この菓子くらいは持ってけぇな。こっちが室長さんへでこっちがアルちゃんの分」
そういうと
「……ありがたく貰おう」
「そりゃあ良かった……気をつけてなぁ」
そうしてアルベルトを見送ったリサは散らばった陶器の破片と茶の残骸を目にして……過去の自分を精一杯に恨んだ。
実際ナンバーっておそらく今後合わせて空いてるのって《愚者》と《女帝》と《正義》と《塔》と《世界》しか思い浮かばないんですよね……。いや、イヴさんが辞めるタイミング考えると《太陽》と《剛毅》と《節制》と《月》と《運命の輪》も空席ですね……。
逆に埋まってて原作に出てないのは《殉教者》と《悪魔》でしたっけ……。
リサに向いてるのは……なぜかは言いませんが《死神》《悪魔》《月》《塔》《審判》《世界》でしょうか……。