珍しいけど実際短い、毎回五千文字越せるように頑張るべきか……。
「ふんっ…………がぁっ!?」
右足に電流が駆け回るような感覚に意識が明滅しながらも立ち上がり、固有魔術を解き、リサはその青年を見た。
「かっ……はぁ、おいおい……どー私の一撃を防いだん…………なんて聞くんは野暮か、なーよくもまぁ面倒なことしよって……」
「いや……別に、こちらへ来なくてもよかったんだよ?面倒なら、あそこにいればよかったのに」
赤黒い髪の青年の周囲に近ずいた舞う落ち葉がパチンッと音を立てて紫電と共にが弾けるのを見るに、そういう結界の類いかとリサは納得した。
なるほど、確かに結界があればリサの固有魔術など関係なく、接敵を許さないだろう。
「そもそも、ボクの目的は君と争うことじゃないんだよ……だから大人しく屋根の上に帰ってボクの狙撃で苦しんでいてくれるとありがたいなって思うんだ」
「はは、御免こーむるよ……私にそんな趣味はねぇぜ。とっとと、任務に戻りたいからはよ捕まるかどうにかしてくれん?」
パチンッと指を弾いたリサは青年とリサを囲うように、木々の間に通ったワイヤーにかけられた認識阻害を解く。
ただお前を囲っているという威圧を見せるだけ、そうとしかいえない行動ではあるが、まだまだ罠がおると思わせ、相手の行動に制限がかかることを願いつつ到着と共に配置した罠に掛けた術を解いたのだ。
「ふむ、研究会と君との交戦記録を見たりしたけど……その固有魔術は本当に不思議だよね……強力すぎる。
君の能力……その式神にその異能……それらにピッタリと合っていたという以外で解説がつかないよ」
「そりゃ……お褒めに預かりドーモ。さて、そんな固有魔術が使える私を前にしたお前は大人しく投降する気は──」
「そっちこそ……ボクに捕まる気はないかな?」
「……は?」
なんの価値もない自分に何を……と言おうとしたところで留まる。
そうだ、最近、自分の異能の特異性が極端に現れたのだった。そう、魂の再生としか思えない現象である。
あれからリサは幾度か検証して、それが副作用にせよ本作用にせよ本当に起こっているという結果を得たのだ。
だが、それをこいつらは知らないはずである。
「バークス=ブラウモンが残した資料によると、『一切再現性のない異能』……いや、彼はそれでも抽出する手段を探していたようだけど」
そして思い出す。
いや、眼前の青年が思い出させるように、『リサを欲する理由』を説明する。
それはもう、わざとらしく、淡々と。
バークス=ブラウモン、この間、マヌケにも捕まって売られて、自分を異能研究の材料に使ってきた
そこまで思い出したリサは「あっ」と内心理解してしまう。そんな施設で長い間入れられていたというのにその資料とやらの結果で再現性なしと来た。
そう、納得出来る理由があるから尚更わざとらしさを指摘できない。
「そもそもあの結果から再現できるとは…………というのはいい、とにかく君の異能、大導師様の
「そりゃもう可愛い美少女が助けに来てくれるう言うんなら……ん?なんでそう、役に立てうん?…………あっ、いや、あぁクソッおめぇまさか、そうだ、争う気はないって言ってたな……で、長々話す意味は?答えは時間稼ぎ、チィ……まんまとはめてくれやがって……!!」
ふと湧いた疑問より、こいつの目的が先だと、時間稼ぎが目的なら、すぐに会場に戻るべきかと思案するも……。
「うんうん、ボクはあの人から、ちょっと時間稼ぎをしてくれとね、頼まれているんだよ……おっと安心しなよ、王女の命には関わらないさ」
それを見透かしたように意味深な言葉を吐く。
「はっ信じられっかい……そん『あの人』とやらも合わせて情報を吐きやがれ」
「うーん信じてくれなさそうだなぁ……そろそろ君、すぐにでも殺しにかかってきそうだし少し自己紹介……シャルン、天の智慧研究会
別に覚えられてもちっとも嬉しくなさそうな、どうでもよさげな表情で青年、シャルンが左手を構えて。
「さて……」
リサを見下すような。
無様な様を楽しむような。
檻に入っていることにも気付かない動物を見て愉しむような笑顔で──。
「帰ろっかな」
「───は?」
あまりにあっさり、撤退を宣言した。
……。
…………?
「──いや、イヤイヤイヤ、私がお前を逃がすと思ってるお気楽思考をお抱えになられてんなら今すぐ捨てな?」
「はは、追えると思ってる楽観主義者ならその思想、すぐに破棄することになるよ?」
そう言ってシャルンは後ろを振り向いて去ろうとして。
しかし、逃がすまいと右足を踏み出そうとしたリサは異変に気付く。
全く動かないのだ、数秒前まで機能していた右足が。危うく転びそうになる間にもシャルンはワイヤーを切って先に進もうとする。
「はぁ……ああ!じゃあ…………ふんっ!!」
「うん?」
その状況で冷静に、左足が動くかの確認をする。
動く、ならば……と、リサがとった手段は再生能力者としては常識的で……。
後ろで何が行われているのか気になったのか、それとも単純に右足の機能を失って転ぶリサを見て愉しもうとしたのか、シャルンが振り返った先で、リサは。
「はは、ははは。……強引すぎないかな?」
鮮血が舞う。
誰から?
リサから。
誰がやった?
リサが。
何をしたか?
簡単だ動かないなら一度切って再起動すればいい。
足が動かないなら、物理的に切って、一度状態をリセットすればいい。
見れば、この短い期間にもう足は再生しきっていて、靴を履いた切り落とされた足が地面に転がっている。
「あー邪魔だなぁこるぁ……」
片側に靴がないとバランスが不安定で面倒くさいからか、律儀に落ちた足から靴と靴下を脱がして履いてる。
だが、そんなリサの周囲には大量の紙吹雪が渦巻いてリサを守るように、シャルンを逃がさぬようにヒラヒラと舞い踊る。
「でー、撤退が……なんだっけぇ?」
その一言で、紙吹雪がシャルンに殺到する。
「チッ……」
軽く舌打ちしたシャルンは一節唱えて魔術を行使し、シャルンは電撃を自分を中心に巻いて、人型を弾く。
果たしてそれをする必要性は、結界の容量を超える物量だったのか、ただ咄嗟の判断か。
そんなことは気にはしていられない、リサは宝石のようなものを上へ弾くとそれを人型が包んで、包んで、弾けて、明らかに通常の威力の倍の火力の【ライトニング・ピアス】がシャルンへ発射される。
「《伝雷よ》!……《杭を桐に、桐を縫い針に》!」
しかし、一節、たったそれだけの詠唱で極太【ライトニング・ピアス】はシャルンを避けるように逸らされる。
そして、シャルンから、雷の球体による弾幕が放たれた。
「……何発放ちゃ、気が済むんだいてめぇはよ……」
あまりの物量にリサは思わず数歩下がって雷を避ける。
だが、頭に、腕に、足に次第に被弾の回数が増えていく。再生のゴリ押しも、疲弊しちゃ意味が無い……そういえば、よくよく考えてみればリサを引きつけるために足止めのためにこいつはいるわけで……。
「あんれぇ……私、のせられてんね?」
「……うん、思考回路が単純すぎて助かったよ」
本当に、と心底バカを笑うような憐れむような瞳でリサを見ていたシャルンは「でも、もうお終い」と呟くと……リサの手足が勝手に動き始めた。
「……は?おいおい効果は停止じゃなあくて支配と操作!?何を起点に……電撃、衝突部位に神経に微細な電流……でも、残る訳が……ああ、基盤が呪いかいな!?」
「いやぁ、どうしてこの数秒で真実に辿り着いたくせに、さっきまで誘導されていることに気付かなかったのか……どういう思考回路?」
「はは、さっきのお前の電撃の弾幕……私の頭に当たってたよな?それできっと無意識的に誘導……」
「いや、君、そのタイミングでボクの電撃が当たってたの足だけだったよね?」
暗に「ボクは操ってない君が阿呆なだけだ」と告げられたリサは少し涙がじわっと来ていた。
「少し泣きそうなんけど……?あ、待て、お前はさっきの弾幕で私の頭に当ててたのに思考を操ってない、あはは、頭は操れないかそれなりの準備がいると見れる!」
「うん、そうだね、でも、今回はもう……関係ない」
操作されたリサの両手が目をくり抜いて再生を阻害するように指を眼孔にはめ続ける。
リサには指から腕へ血潮が伝う感覚が嫌にはっきりと伝わってきた。
「はっ……くっそ……」
「目が見えなかったら、さすがに追えないでしょう?それにボクもそろそろ戻らないと、君のお仲間さんが来ちゃうから…………またねぇ」
「シャルン……覚えたかんな……次会ったときゃ……ってもう位置的に聞こえてねぇか……」
人型で逃亡したシャルンを追ったがすぐに撒かれて、その代わり彼が20メトラ程離れた頃、肉体の制御はリサに戻ってきた。
「……最低でも20メトラ圏内は操れるん……と次までに対抗策ねっとかんといかんねぇ」
面倒くさそうに、でも少し楽しそうに、リサは口にして血だらけになった全身を軽く見て、ため息を吐いた。
すると、突然、肩に手が乗ってきて。
「ひょぇ!?」
慌てて振り向くと見えたのは筋骨隆々の……。
「チッ……ジジイか……可愛い子が血だらけの私を心配して声をかけてきてくれたのかと……」
「ひどい……!わし、心配してやってきたというのに……。残念ながら、可愛い子に囲まれてるのは現在グレ坊だけじゃよ」
少し大袈裟に答えた老人は《隠者》のバーナードである。
「……ところでリサちゃん、事の発端はアル坊から聞いておるが現在は……」
「あージジイ……それよりグレンの方でなんかなかったか?アイツが言うには今回のは私を会場から逸らすため、時間稼ぎらしい……慌ててねぇってことは特に問題はねぇかい?」
「そうじゃのお…………ふむ、ともかくアル坊とクリ坊のとこ戻るか」
少し悩む仕草をしてバーナードは学院会館へと向けて歩き出し、リサもそれに続いた。
誰がとはいいませんが、昆虫は禁忌教典より魔王を崇拝しています。