宙が少女か、少女が宙か   作:銀ちゃんというもの

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原作5巻の内容を2394文字で終わらせる作者がいるらしい……。


8.表の裏では

 木造家屋や小屋が疎らに配置され、針葉樹の雑木林や古代の碑石遺跡が所々に点在する風景はフェジテの市街地の高級住宅街が並ぶ地域とは大違い。

 緑の牧草地が穏やかな雰囲気を齎しすここはフェジテ東地区の市壁外。

 

 そんな郊外の風景に溶け込むように、その馬がいない豪華な馬車は佇んでいた。

 

「やっぱり、あれかいな」

「……そうですね。僕の結界に反応があります。あの馬車で間違えありません」

「……ふむ、確かに血の匂いが強くなって来たわい」

 

 そこに近づく4つの影があった。

 1人は、濃い青の長髪から冷淡そうな瞳が覗く男──《星》のアルベルト。

 1人は、軽くフェーブがかかった髪が特徴の、爽やかな雰囲気を醸す少年──《法皇》のクリストフ。

 1人は、やんちゃ坊主の様な雰囲気の筋肉隆々の老人──《隠者》のバーナード。

 1人は、これまた黄緑の瞳に悪ガキの様な笑みを浮かべる可愛らしい撫子色の髪を後ろの下で二つに束ねた少女──リサ。

 

 宮廷魔導士団特務分室のメンバーに紛れたリサを合わせずも、何も知らない人間からすれば一見なんとも凸凹な組み合わせの彼らは馬車の客車の戸の前へ着くと周囲に注意を払いながら、アルベルトが扉を開けた。

 

「……う」

 

 その途端、辺りに蔓延した濃厚な血の噎せ返る様な匂いにクリストフが顔を顰める。

 

「うっわぁ……まるまる悪夢の再来ってやっちゃな、こりゃあ」

 

 客室内の地獄の様な有様に、リサが肩をすくめる。

 

 それらは、生前の姿が判別困難な程、身体を崩壊させた遺体が血を流しながら転がっていた。

 派手に血を噴出したのか、床や壁、椅子、天井までもがどす黒く血液で染まっている。

 

「ほう……典型的な『天使の塵(エンジェル・ダスト)』切れの禁断症状で死んだ中毒者じゃのう」

 

 慣れた様子で観察し、死体の状態からそれほど『天使の塵(エンジェル・ダスト)』が投与されていなかったという事を事も無げに語るバーナードは髭を撫でる。

 

「噂には聞いていましたが……こんなに酷くなるものとは。リサさんは……そんなに気にしていないようですが、平気なんですか?」

「ん? クリストフ、お前、『天使の塵(エンジェル・ダスト)』に関わるんは、初めてかい? まあ、私もあの正義野郎がやらかした時に巻き込まれただけなんじゃがなぁ。あん時に、慣れたぜ」

「そ、そうなんですか……」

 

 ははは、と笑ってみせるリサに少し引いたのか、頬をひきつらせるクリストフは答える。

 

「……以前も、こういう事件があったんですよね? 当時の僕はまだ新人だったから、深くは関わっていませんが……」

「……安心しろい。私なんて関わったんは巻き込まれた所だけだい。それ以上は避けたんよ」

「今から1年余前の話になるな」

 

 くくく、とまた笑って見せたリサにアルベルトが補足説明した。

 

「あの一件で、随分と特務分室の仲間も減ったのう。リサちゃんが正義野郎と呼んだ物狂い1人のせいでな。……ところで、リサちゃん、何度も言うが、特務分室に入ってわしの……」

「いい加減枯れろ、ジジイ……その若い女の子がいいっつー思考にゃ賛成だがなぁ。そんなジジイに朗報だが、今回私が特務分室でもないのに参加したんは……」

「リサちゃんが学院に入るから、アル坊からの報告でこれはいい駒になるかもしれないわと笑っていたイブちゃんが、ルミアちゃんの護衛がリィエルちゃんだけでは少し不安だからと予定より早く特務分室に入れようとして、これはその試験かっこ仮かっこ閉じ、じゃったか? わし、知ってる」

「ちぇ、知ってたんかい。まあ、いい……そういうことだが……」

 

 突如、リサの言葉が途切れる。

 4人の間に先程までの穏やかな空気は消え去り、緊張が走った。

 

「おい、お前達、気付いておるかの?」

「ええ、わかっています、バーナードさん」

 

 その言葉を合図とするように、いつの間にかどこから集まったのか如何にも農民といった出で立ちの人間達が大勢で4人を遠巻きに取り囲んでいた。

 彼らはどこか機械的な動きで鋤や鍬や鎌などを構え、虚ろな瞳で視界に収めた4人に近寄ってくる。

 

「かぁ───ッ! この状況から察するに、あいつら、絶対『天使の塵(エンジェル・ダスト)』の中毒者じゃぞ!? ぐっは、面倒臭ッ!?」

 

 バーナードがうんざりした様に頭を抱える。

 

「あいつらって、やたらとしぶといから嫌なんじゃよなぁー」

「めっさ同意だぜぃジジィ……。正直、不死者共のがよっぽど楽」

「この馬車を調べてからの、この襲撃……僕達は案外、この事件の真相に近づいているのかもしれないですね」

「いやぁ、わからんぜぃ。クリストフ、あんなあ、意外とちかよってるう思うても実は事件はグレンの前で起こってた……なんてこったよくあらかんな」

「なんで、グレン先輩名指しなんですか……」

「そりゃあ……」

 

 そこで会話にアルベルトが割り込んだ。

 

「無駄口を叩くな、翁、クリストフ、リサ。詮索は後だ。今は切り抜けるぞ」

 

 静かに一喝されると同時に、中毒者達が一斉に、信じられない速度で迫ってくる。

 

「ち──」

 

 アルベルトが予唱呪文(ストック・スペル)時間差起動(ディレイ・ブート)、それを更に二反響唱(ダブル・キャスト)すると黒魔【ライトニング・ピアス】の閃光が二閃、空間を突き、中毒者二人の脳天を正確無比に射抜く。

 

「《高速結界展開(イミッド・ロード)》……──ッ!」

 

 クリストフの実家、フラウル家が誇る、宝玉式結界魔術が、中毒者達を焼き、重力場で押しつぶす。

 

「ぬんっ……!」

 

 ひらりと閃くバーナードの極細の鋼糸(ワイヤー)が、中毒者を絡め取り、血の花を咲かせる。

 

「《我に耳を傾けよ・心無き者は下僕に・傀儡共は糸を切る》……! テメーら、同士討ちしてろい!」

 

 奇妙な呪文を唱え、いつの間にやら手一杯に持った、宝石の様な石を割って、その粉を周囲に振りまくリサが出した命令に中毒者達が従う。

 

 表舞台の裏で行われていた狂気的な劇は、今、苛烈を極めていた……。




本編で解説出来なかったリサについてのコーナ 第1回!
その栄えある第1回の内容は……ダダダダ……タタンッ!!
リサについて……ヒューどんどんぱちぱちー!!

リサ=カミハ
性別:女
得意な魔術:固有魔術(オリジナル) 眷属秘呪(シークレット)
苦手な魔術:得意な魔術以外(1部例外あり)
好きな物:若い女の子
嫌いな物:百合に挟まる男
異能:再生能力?

10歳になる前から成長が止まっており、セリカ曰く、「リサも永遠者(イモータリスト)かもしれん」との事。
作者の書く女の子で、胸のサイズが特に言われていなかったら絶壁と思って頂いて結構です。というかそう思ってください。作者は胸が無い方が好きです。
薄桃色の長髪と、黄緑色の瞳を持つ。
あと、何よりおかし……特徴的な口調で話します。
人の呼び方は基本的に呼び捨てで、あとはその場のノリと勢いで変えたりする。バーナードだけはジジイ呼ばわり。
グレンの軍属時代の関わり合いとかはきっと後ほど書くと思うます。

それでは!
次回の解説コーナーでは何をやるのでしょう!
「知らねえよ」とツッコミが返ってきそうですが、さらばっ!ごきげんよう!!
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