仮面ライダーデュオル   作:マフ30

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皆様お久しぶりです。
三月になって一時的にですがリアルの時間に余裕ができたので本当に久しぶりですがデュオル本編更新することが出来ました。
こんなぐだぐだな作者ですがどうか今後ともよろしくお願い致します。


第15話 スクールハザード/不可視の思惑

 

 五月のある土曜日。

 城南学園高等部の敷地内では部活動に励む学生たちで賑わっていた。

 小中高と大学部までが概ね一カ所に集まっている都合、広大な敷地面積を誇る学内には体育館も複数棟建てられている。その中の一つで行われている女子バスケの練習試合の中に赤いユニフォームを着たカナタの姿もあった。

 

「天風さん、頼んだ!」

「OK! それッ!」

 

 大混戦のコート内で仲間からパスを受け取ったカナタは普段の涼しげな雰囲気とは別人のようなアグレッシブな勢いと素早いドリブルで相手選手たちをすり抜けるとレイアップシュートでゴールを決めた。

 

「カナタさん、ナイスー! でも、かなり相手さんたちとぶつかるぐらい競り合ってたけど大丈夫?」

「ハハッ、助っ人で呼ばれたんだもの……点とらなきゃだからね。無問題かな?」

 

 大粒の汗を拭いながら勝ち気な微笑みを見せるカナタに闘志を刺激されたチームメイトたちの猛攻を加わり、この試合を城南学園高等部のバスケ部は勝利することが出来た。

 帰宅部のカナタではあるがこんな風にクラスメートや顔見知りの頼みに応じて部活の助っ人に参戦するのは入学当初からよくあることだった。

 

「ありがとね、カナタさん! 公式戦前でどうしても勝ってチームの士気上げたかったら快勝できて先輩たちも喜んでたよ」

「どういたしまして。私も無事にお役目達成できて肩の荷が下りたよ」

「ウチのチームはお昼からもう一戦あるけど、かなり時間が空くからしっかり休んでおいてよ」

「りょーかい。お言葉に甘えてちょっと飲み物買ってくるよ」

「いってら~!」

 

 バスケ部のクラスメートから今後の予定を聞いたカナタは持参していたコインケースを持ってこの場を離れて、お気に入りの飲み物が売っている自販機が置かれた第一体育館までストレッチをしながら移動する。

 

「キエエエィイイイ!!」

「小手ェエエ!面ェエエンンンアアアアァ!!」

 

 少し歩いて校舎の近くにある第一体育館に到着するとこちらでは剣道部が試合をしているのか同じ女子高生が発しているのか信じられないぐらい熱い雄叫びが木霊していた。

 

「すごい気合いだね。ムゲンもここまで激しいシャウトは滅多に出さないんじゃないかな?」

 

 真剣勝負の鬨の声と竹刀がぶつかり合う激しい音が合わさって轟く熱狂の音にカナタが感心している時であった。

 

「忍野ォ!! あんた絶対に勝ちなさいよ! 負けたら校舎裏だからね!!」

「ファーーーイトォオオ! 忍野、負けたらもう二度と数学のノート見せてあげないんだから分かってるでしょうね! 勝てええ!!」

「……あれぇ?」

 

 応援の声の中になんだか自分の知り合いの名前が混じっていたような気がして、カナタは好奇心も手伝ってじっくりと試合の様子を覗き込んだ。

 

「くぉおおおああああああ!!」

 

 館内に一歩踏み込んだ瞬間にカナタはビリビリと肌を震わせるような剣道試合の気迫に思わず圧倒された。高校生同士の部活動だと正直少し軽く見ていたというのが直前のカナタの本音だったのだがそれは目の前で相手と切り結ぶ白の道着と白袴の剣士の戦いぶりに覆された。

 

「やぁあああああ! 胴ォオオオオオオオ!!」

 

 その白い剣士は同時進行で行われている他の試合中の生徒たちと比べても飛び抜けた実力者だというのが素人目でも分かった。

 裂帛の気合。そして、面を打つために僅かに上がった相手の両腕の隙を見逃さずに間髪入れずに振り抜かれた逆胴は真剣なのではと錯覚するような鋭さで防具を捉えて、瞬く間に勝敗を決していた。

 

「よくやった! 後は任せない!」

「一年、ちゃんと先輩の動き見て覚えるように気合入れなさいよ!!」

 

 白い剣士はどうやら団体戦の中堅だったようでその後、副将と大将戦が行われてその学校の剣道部――竜胆女学院剣道部は崖っぷちから逆転勝利を収めることに成功したようだった。そして、いつの間にか本気で観戦していたカナタが予想した通り冴えた剣碗を見せていた謎の白い剣士の正体はというと――。

 

「ふいー! 応援ってか味方に脅迫されて試合するとかナシでしょ先輩!?」

「あんた強いのにタマに変な技とか構えやって負けるからでしょ!」

「だってウチ部員じゃないしー!!」

 

 汗でしっとり濡れた漆のような黒髪を元気よく振り回しながらユノは先輩の部員と押し問答を繰り広げていた。後で聞いた話だがこの日、竜胆女学院剣道部は先鋒・次蜂を経験の浅い一年生に担当させていたという。

 なんでも負けてもいいので試合の場数を踏ませるのが目的らしい。そこからが中堅を務めるユノの大仕事で彼女を筆頭に副部長、部長の三人が一本を確実に取り、逆転勝ちで次に進むという恐ろしく力任せな作戦が遂行されていたのだという。

 

「へー……カッコいいじゃん、オッシー」

 

 

 

 

 その頃、いつもなら大忙しの午前の時間だが本日はシスターの野暮用によりカフェ・メリッサは臨時休業というわけで入口にがCLOSEDのプレートが掛けられていた。

 だが、店舗の二階にあるクーの住居を兼ねたスタッフの休憩室では家主のクーに特に休日に予定が無かったハルカとムゲンが加わってTVゲームに盛り上がっていた。

 

「おおい! デカい牛きてんぞ! 避けろって!」

「まだです。この敵、初撃のモーション遅いので……ウリャっと! ほら怯んだ!」

「クーさん、どもです。いくぜ、部位破壊」

 

 遊んでいるのは戦国死にゲーと呼ばれる難易度高めのアクションRPG。

 後ろから自分のことのように興奮して口を出してくるムゲンの声を流してクーとハルカは余裕の表情とコントローラー捌きで大型液晶画面の中で暴れ回る牛頭の妖怪を攻撃している。

 クーが操作する二刀流の女武芸者とハルカの持ちキャラである大鎌使いの武者が見事な連携で敵キャラクターの体力ゲージをゴリゴリと削っていく。

 一番熱くなっているのは二人の後ろであぐら組んで観戦しているムゲンなぐらいにクーたちはこのゲームをやり込んでいる様子だった。特にクーの腕前は素人目に見てもすぐに分かる程に卓越していた。

 

「にしても、まさかクーさんがこんなにゲーム得意だったとは驚いたな」

「それな。たぶん、いまオレたちの誰よりも上手いぞ」

「うぇっへへ♪ 照れますなぁー! このままマルチのイベントクエストで伝説作っちゃいますか?」

 

 褒められて満面の笑みを浮かべながらクーの指先は精密機械のようにコントローラーを操作して、画面の向こうでは二刀流から得物を大木槌に持ち替えた女武芸者が情け容赦なく大型妖怪を殴打して完全に討ち果たしていた。

 

「負けフラグにしか聞こえないすごい自信だ」

「これで普通にクリアするからヤバいんだよなクーさん」

 

 発明家気質のギギの民だからこそ成せる技なのか思わぬ才能を開花させたクーにムゲンとハルカは呆れるほどに感心していた。

 

「ところで、カナタさんはご学友の部活?とやらの助っ人に行ってるんですよね」

「ええ。今日はバスケの練習試合だったかな」

「気になってたんですけど、お二人は応援とか行かなくていいんですか?」

 

 以前、簡単に作れるアウトドア料理教室をやったときも別行動を取っていたカナタとムゲン、ハルカたちが気になったクーは何の気なしにそんなことを話題に出した。

 

「あー……前は行ってましたよ、俺もハルカも。でもな」

「オレがいくとギャラリーが試合を真面目に観なくなるから来るなって言われてそれっきりです」

「モテ男税だな。ちなみに俺は普通に理由も告げられず出禁にされました。世知辛いもんです」

 

 言葉とは裏腹にムゲンはソファーに寝転がってリラックスしてハルカに続いてクーの疑問に答えた。すると画面から目を逸らさずにハルカが苦笑しながらムゲン出禁の真相を説明し始める。

 

「そんな課税あってたまるか。というか、ムゲンの場合は応援するときガチトーンで物騒な単語叫ぶから周りが怖がって集中できないからって聞いたぞ?」

「やれとか、いけやら、沈めろとか言ってるだけだぞ?」

「ムゲンさん、残念ですがたぶん周囲には殺れとか逝けって聞こえているものかと」

「心外だな。俺は本気でうちの学校の勝ちを願って応援していたのに世間は偏見と誤解に満ちてるぜ」

 

 そんなことを気落ちした声で言うムゲンだが途中で明らかに笑ってしまっており、どうやら自覚はあったようだ。

 

「さて、そんなこと言っている間にこのクエストはクリアしちゃいましたけど、ムゲンさんホントに交代しなくていいんですか?」

「俺ねえ、こういう動きの激しいゲームやると酔うんですよね」

「おや、意外」

「ポ○モンとかもうちょっとゆったりしたのは出来るんですけど。それにコイツはクーさんとハルカのプレイを観戦している方が面白そうなんで後ろからエールやら野次やら飛ばさせてもらいますよ」

「野次は飛ばさんでいいって」

「ではでは♪ お言葉に甘えてコントローラーを独占させていただきましょう! お昼からは三人でポケ○ンのレイドでもやりましょうよ。わたしのタスキ装備のミ○ッキュちゃんの強さを見せてあげます」

「この魔術師、現代文化を満喫しすぎでは!?」

 

 ギラギラした眼差しでほくそ笑むクーのあまりにもこの世界への適応力とエンジョイ度に普段はクールなハルカも驚きを隠せなかった。

 

「いや、俺のラプ○スの方が強いぞ、クーさん」

「ムゲンは顔に似合わず可愛いやつ使ってるのな?」

「可愛くても強いからいいじゃねえか!」

「ダメとは言ってねえから! あと、オレのオー○ンゲこそが最強だから震えて昼を待つんだな」

 

 くだらない会話を交わしながら三人はまったりと休日を満喫していた。

 出会ったばかりの頃は心の底で警戒して境界線を張っていたこともあった面々だったが様々な戦いや出来事を共に乗り越えてきたことで自然にいまではこんな気楽な関係が築かれていたのだ。

 

 

 

 

「あちー……こんなに陽気が良くなるなら扇子か団扇でも持ってくるんだったぁ」

「おつかれ。サムライガール」

「冷ってぇえ!? ぬおっ!?カナっちじゃん! 奇遇だねえ、あんたも部活かい?」

 

 体育館の手洗い場でユノが季節外れの暑さにうだりながら顔を洗っていると忍び寄ってきたカナタが氷のように冷えた缶ジュースを無防備な首筋にくっつけた。

 水飛沫を上げて飛び上がったユノは最初は剣道部の先輩か同級生の仕業と思って怒りの表情を浮かべていたが振り向いた視線の先にいる悪戯っぽく微笑むカナタをみると明るくにこやかな調子で話しかける。

 

「私は助っ人だけどね。さっきの試合すごかったよ、はいこれ陣中見舞いというやつです」

「サンキュ! だはー生き返る!!」

「シスターの目に曇りなしだったね。素人の私がみてもオッシーの動きだけ桁違いにキレがあって見惚れちゃったかな」

 

 二人はどこかで座って話そうと適当な場所を探すために歩きながら会話を続けた。

我慢できずにもらったオレンジの炭酸飲料を一気に半分ほど飲み干して、幸せそうにふやけているユノにカナタは先程の気迫みなぎる彼女の侍然とした剣道の腕前に対する感想を率直に伝えてみた。

 

「にへへ……褒めてもなんもでないよ? ま、剣道(こいつ)だけは唯一真面目にずっとやってきたことだし、褒めてくれるのは素直に嬉しいよ」

「剣道、大好きなんだね」

「んー……そだね。じいちゃんの付き合いで時代劇見たのが切っ掛けで気付いたらここまできて――痛ってえッ!?」

「オ、オッシー!? どうしたの?」

 

 しみじみと自分と剣道の出会いや想いを静かに熱く語っていたユノだったが突然片足を上げた格好で大声を出しながら飛び跳ねた。

 

「なんか踏んじゃった……超痛いんだけど!?」

「うわっ。オッシー、画鋲踏んでるよ。あそこの張り紙を留めてたのが風で外れちゃってたのか、災難だね」

 

 一本足で着地して、引きつった顔でカナタにしがみついて慌てるユノ。予防接種に興奮する子犬のように騒がしい彼女を宥めながらカナタがその足裏を確認すると土踏まずの真ん中に壁から不慮に落ちて転がってしまった画鋲が深々と刺さっていた。

 

「マジかよ!? どこのどいつだ画鋲使いやがったのは! フツー、セロハンテープとかじゃん!」

「裸足でぺたぺた歩いてるオッシーも落ち度はあるんだけどね。ここで抜いても血がたくさん出るとマズイし、校舎が近いから保健室で手当てしよう。当直で誰かいるから鍵も借りれるだろうしね」

「いいの? ありがとなカナっち」

 

 青ざめた顔で怒るユノに少々正論を説きつつも、カナタは放ってもおけないと彼女を抱き上げて高等部校舎を目指すことにした。自分からユノに深い意味もなく話しかけに行ったことに始まり、ここまでの行動も全てかつての天風カナタという少女では考えられなかったことだろう。多くの出会いや完璧だと思っていた自分に芽生えた迷いや疑問と向き合って自然と変わり始めた賜物といえる歩み寄りだった。

 

「な、なあカナっち……ありがたいんだけど、お姫さま抱っこで移動ってのはどうよ?」

「あー! 忍野さんが城南の美人さんに抱かれて運ばれてますよ、先輩!」

 

 だが、そこは清涼快活な佇まいの奥に結構な腹黒い一面を潜ませているカナタである。演劇部の花形のような凛々しい振舞いでユノを抱えて、颯爽と通路を歩くものだから自然と注目を浴びることになる。見た目だけなら白袴を纏う凛とした勇ましい黒髪の剣術小町なユノと赤いノースリーブのバスケユニフォーム姿のカナタなので良く映えるというのが罪なところでもあった。

 

「なんですって!? 忍野ォ! アンタ今度は何やったのよ!?」

「いいなー! この際性別は関係なしにあんな顔の良い人に抱っこされてー!」

「くそぅ……ユノのくせに生意気だぞぉ!! サイドテールの美人さん、あとであたしも抱いて下さーい!!」

「ほらー女子高特有のひやかしキタよ」

「ちょっと足を怪我してしまったみたいで。忍野さんとは知り合いでして、保健室で手当てしてきますのでお借りしますね」

 

 またユノが何か騒ぎを起こしたと思って殺到して、容姿端麗なカナタを目の前に何名か我欲に負けて脱線する竜胆の剣道部の面々を慣れたようにあしらって二人は静かな校舎の中へと消えていった。

 

「なあ、ちょい……やっぱり、これウチが見せ物みたいで無理だぁ。おんぶにしてくれ!」

「えーいいじゃん。それとも、やっぱりこういうのもはじめてはムゲンにやってもらいたかったとか? クス、意外と乙女だねオッシー?」

「はじめてって!? き、気軽にそんなこというんじゃないよ! あれか、えっちか! カナっちはえっちか!?」

「こらこら、人のことをそんなイケないお姉さんみたいに言うんじゃありませんよ♪」

 

 人気のない廊下には赤面してうろたえるユノの騒がしい声とそんな彼女をからかって遊んでいるカナタの嬉しそうな声が不思議な二重奏を響かせていた。

 

 

 

 

 無事に当直の教師から鍵を借りることが出来たカナタは静まり返った学園の、これまた落ち着かないぐらい無音の保健室でユノの足の手当てをしていた。

 

「はい。これでよしっと。次からはちゃんと試合終わったら体育館シューズか何か履いて移動しなよ?」

「わ、分かったよ。あんがとな、カナっち」

 

 幸いにも画鋲が刺さったユノの足の裏は出血も少なく消毒と絆創膏、患部の場所が場所のため軽くテーピングを巻くぐらいの処置で済んだ。カナタのちょっとしたお説教に冷や汗を浮かべながらユノは平謝りである。

 何となくぎこちない空気の妙な沈黙の間が流れる。正確にはカナタはいくらでも話そうと思えば話せるのだがどうもユノが何かを言いたいらしく、ずっと黙った状態で器用に表情だけをころころと変えては落ち着きなくしているのだ。

 

「――あのさ! カナっちはその……ウチのことあんまり嫌ってないってことでいいのかい?」

「へ……なんで?」

 

 どうしても大事な用件ならユノの気性的にこの場で口にするだろうと思ったカナタは敢えて自分からは何も問わずに片付けをしていたが意を決して開かれたユノの口から出た言葉が余りにも素っ頓狂だったことで思わず珍しく間の抜けた声で聞き返してしまった。

 

「いや、だってさ……カナっちとハルっちからしたらウチってよく考えたらいきなり押しかけてムーさん分捕ろうとしている泥棒ネコ的な存在じゃん? やっぱり、面白くはないんじゃねえのかなって思ったわけさ」

 

 普段の威勢の良さは何処へやら。

 ユノはムゲン太鼓判の黒髪を指でくるくる弄りながら、しおらしい物腰でそんなカナタ達三人への気遣いを見せてきたのである。あまりにも突然で呆れてしまうほど律義というかおかしな人情味のある発言にカナタは思わずお腹を抱えて大笑いしてしまった。

 

「オッシーってば、もっとヤンキー一直線かと思ってたのにホントに硬派というか真面目ちゃんだね」

「笑うこたねえじゃん! ウチはウチなりに聞くかどうか悩んだし、気合入れたんだぞ!? 思いついたのはついさっきだったけど」

「気にしてないよ。オッシーだから、私とハルくんもゴーサイン出したんだから。自信持っていいかな?」

「ホントか!?」

 

 どうやら一筋縄ではいかない繊細な人間関係が結ばれていることをこれまでのムゲンたち三人のやり取りを見てなんとなく察していたからこそ、勇気を振り絞って尋ねたユノであったが返ってきたのがビックリするほど気優しいものだったもので拍子抜けであった。

 

「折角だから私も逆に質問するけど、ムゲンのどこを好きになったのかな?」

「顔! メガネ外してる時とかマジで好みなんだわ。ゾクゾクするね」

「それは知ってる。ほ、他には……ない、もしかして?」

「……これ、ウチが勝手に思ってるだけかもしれないやつだけどさ、ムーさんは他人の良いところや綺麗なところを見つけて褒めてくれるよなって、そこは良いと思った。あと、丈夫で元気なのも」

 

 本当に小学生どころか保育園児レベルの好意の理由を躊躇い無く主張するユノに思わずカナタも苦笑いだった。けれど、念を押して問われたことでユノがよく考えてから自分に聞かせてくれたムゲンに惹かれたポイントはカナタの胸を強く響かせるものであった。

 

「そういえば……あの日もそうだったっけ」

 

 ユノの言葉にハッとなったカナタは嬉しそうにほんの少し昔を思い返していた。確かに彼女の言葉の通り、知り合ったばかりの頃に意地悪く値踏みをするためにムゲンの目の前で実の弟であるハルカとキスをして見せた。

 自分たち姉弟にとってはごく普通の愛情表現で絆を確かめ合う形だが世間一般的には偏愛の領域のスキンシップもムゲンは愛が深いのは良いことだと受け止めてくれていた。

 そんな風にムゲンは他人の美点を見つけ出すのが結構得意なのだ。それが幼い頃から人間の悪意や心根の醜さを見てきたことで発生した反動であったのなら心苦しいものなのだが。

 

「オッシーって、本当に予想外の女の子だね」

「なんだよそれぇ? アウトってやつか? カナっち怒りの鬼の姑モードってのかい?」

「失敬な。私なりに褒めて応援してあげてるんだよ」

 

 どこか皮肉っぽく聞こえるがそれは間違いなくカナタなりのユノへの感心の証だった。まだ完全には認めたくはないが彼女にならいつかの将来にムゲンを任せてもいいだろうという気持ちだった。

 

「にへへっ……なら、ありがたいね!」

「さて、そろそろ戻るとしようかな? オッシーお昼はどうするの?」

「弁当持ってきてる。先約ないならせっかくだし一緒にどうよ? 自慢じゃないけど実家が総菜屋だからおかずは美味いぞ!」

 

 ベッドの上に胡坐をかいてけたけた笑いながら思わぬプロフィールを明らかにするユノにカナタは一拍の間を置いて目を丸くした。

 

「そうなの!? たはは……本当にギャップの塊だ――っ!?」

「あん? どうかしたか、カナっち?」

「なんだか、校庭の方が変に騒がしいかなって……これは不味い気がするかな」

 

 女二人の腹を割った会話のお陰で一気に距離感が近くなり始めたカナタとユノ。

 つい最近まで他人から学んだり、影響を受けることなんて稀にしかないと冷めた考え方を持っていただけに得難い時間を楽しんでいたのも束の間。カナタは微かに聞こえる悲鳴のような騒音と肩が重くなるような妙な雰囲気を外の方から感じて、表情を険しくさせた。

 

 

 

 

 ほんの数分前。

 高等部校舎前の運動場でも多くの生徒たちが部活動に励んでいた。

 明らかに部外者と思われる浪人生風の男がそんなグラウンドのほぼ真ん中に忽然と現れたのはそんな時だった。

 

「……ここでいいか」

「あの、何かご用ですか? すみませんけど、俺たち部活の練習中で悪いんですけどそこどいてもらえないですか? あぶないっすよ」

 

 立ち尽くして動かない男に戸惑いながら生徒たちが遠慮がちに声を掛けた。刃物のような危険物は持っていないようだったから、十数人ほど集まって行った選択だった。勇気を出して声を掛けた生徒たちの問いかけに男は暫く沈黙を続けたがゆっくりと口角を吊り上げて口を開いた。

 

「ここを実験場とします。君たちはモルモットです」

 

 無意識に寒気を覚えるようなノイズ混じりの声を出す男の体が極彩色の光を放ち、あっという間におぞましい異形の姿へと変わっていく。

 青黒く爛れた外皮を持つ大柄で両肩が不自然など肥大しているグロテスクな怪人だった。さらに嫌悪感を掻き立てるようにブクブクに膨れ上がった肩にはそれぞれで大きさや虹彩の違う目玉が埋め込まれてギョロギョロと動いていた。そして、粘土を丸めたような飾り気のない頭部にはあるべきはずの双眸は無く、イソギンチャクのような触手が蠢く大きな口だけが生えた形容し難いものだった。

 

『実験開始を宣言する。私の洗礼を甘んじて受けなさい』

 

 人間が怪物に変貌した光景に一瞬でパニックになって逃げ惑う生徒たちに青カビの怪人モルドメタローは理知的だがどこか猟奇的な感情を孕んだ声で淡々と告げて、全身から色濃い青い霧のようなカビを容赦なく散布した。

 特殊な青カビはとめどなくグラウンドの一部分に濃密に広がり、逃げ遅れて吸い込んでしまった者たちはバタバタと倒れていく。

 

『有効範囲、効果発生時間――予想範囲内。第二段階への移行時間の計測を……おや?』

 

 無機質な機械のように青霧のようなカビの中で倒れた者たちを観察していたモルドメタローだったが次のステップとなる症状が予想外に早く現れてきたことに嬉しさを感じてか両肩の単眼を細めていた。

 恐ろしいことにカビを吸って倒れた者たちは皮膚が青黒くなって、ゾンビのように理性を失い目に入った正常な第三者の人間を襲うカビ人間と変質してしまったのだ。

 カビ人間は焦点の定まっていない眼差しで手当たり次第に正常な人間を標的に襲い掛かって行く。その光景はまさにバイオハザードと言える地獄絵図のようなものだった。

 

『即効性は予想外に良好。善哉』

「おめでとう。素晴らしい能力を持つ怪人体を手に入れることができたようだねえ」

『貴方か……ご覧の通り、計画は順調なのだがなにか?』

「相変わらずメタローの諸君はボクが嫌いのようで悲しいよ。手筈通りに手伝ってあげるのだから邪険にしないで欲しいなあ」

 

 自らが有する青カビの性能が上々なことにそこはかとなく機嫌のよいモルドメタローの背後でわざとらしい拍手が鳴る。無貌故に全身でどこか白けたような所作を見せて肩の眼球で手の鳴る方を見ると森のような緑髪赤眼の美しき人影が何食わぬ顔でそこにいた。

 

 

 

 

 カフェ・メリッサでだらだらとゲーム三昧の午前を過ごしていたクーたち。

 何の気なしに時計を見たムゲンはおもむろに立ち上がってリラックスモードの二人に声をかける。

 

「もう昼飯時だな。二人ともなんか作るけどリクエストあるか?」

「おいしいやつをお頼みします!」

「ムゲンが楽に出来るやつ」

「おー、んじゃオムライス辺り適当に作るわ。クーさん、ご飯炊いてます? 冷や飯でも可ぁ」

「ありますともー」

 

 雑なオーダーに雑に答えながら下の階へと降りたムゲンは冷蔵庫から食材を取り出して手際よく準備を済ませ、いざ包丁を握ろうとした時だった。店の固定電話が鳴り響いた。

 

「はい。カフェ・メリッサです。申し訳ございません、本日当店は臨時休業でして――」

【カナタから伝言だよ! 誰でもいいから聞いてくれ!!】

「――は?」

 

 受話器から聞き覚えのある声がなにやら鬼気迫った様子で叫んでくるのでムゲンは首を傾げつつも耳を傾けた。

 

【高校にメタローが出た! 変なカビみたいなものをバラ撒いて吸った連中を操ってる。まるでゾンビ映画だよ。大急ぎで来てくれ、カナタが危ない!! 聞こえたな、頼んだよ!!】

「なんだそりゃ!? おい、ちょっ……いまの声って。ハルカ、クーさん! ヤバいことになった!!」

 

 捲し立てるような謎の救援メッセージに戸惑いながらもムゲンはメタローのワードに瞬時に気持ちを切り替える。そして、大声で二階の二人にも緊急事態を知らせた。慌てて下に降りてきた二人にムゲンは先程の電話の内容を伝えた。

 

「またお三方の学校にメタロー……しかも、今度は白昼堂々とは」

「記憶リセットされるとは言えカナねえが代理人に連絡させたってことは一刻を争う状況ってことだ。ムゲン、急いでくれるか?」

「任せろ! 二人もここからフォロー頼むぞ!!」

 

 阿吽の呼吸で役割分担とカナタの置かれた状況を予測した三人。

ムゲンは即行で店を飛び出してビッグストライダーで弾丸のように学園に向かい、ハルカとクーは特別な改装を施した店の事務室へと入った。

 

「ここを本格的に使うのは初めてだけど、上手くいってくれよな」

「ご安心を! シスターとハルカさんとわたしで弄繰り回した自信作です! ほら、いい感じに稼働してますよぉ♪」

 

 一般的だった事務室は三人によって少しずつデュオルのサポート用にリフォームされていた。いまではマルチモニターが設置された他に、シスターの屋敷の工房によって一部が使用可能になったクーのアーティファクトなども組み込まれてスパイ映画に登場するような作戦司令室のように変貌を遂げていた。

 

「ムゲン聞こえるか? こっちは飛ばしたドローンゴーレムってアーティファクトで後ろからモニタリングしてる。いまから先行させて最短ルートをナビするから付いてきてくれ」

【頼んだ。それにしてもこのインカムもなんだよこの性能、これ特許取れるだろ? 魔術師すごいな!】

 

 マルチモニターには街の監視カメラをクーが特別な技術でジャックした映像などと一緒に走行中のムゲンを追尾する空中映像が映し出されていた。

 

「ムゲンさん、わたしはもう一基のドローンゴーレムを学校の方へ飛ばして様子見しますので、何か分かりましたらお伝えします」

【お願いします! 出来たらカナタがどこにいるのか見つけてくれるとありがたい】

「ええ、やってみますとも!」

 

 現代の技術に異世界の魔術の力を組み込んで完成させたクー特製のアーティファクトを新たに導入して、カフェ・メリッサの一同はバックアップを充実させてメタローとの戦いに挑むように進歩を始めていた。

 

 

 

 

 ドローンゴーレムの先導を受けながら学園へ急ぐムゲンのビッグストライダーをビルの上から密かに観察する怪しい影があった。

 

「いっておいで、デミリザード」

 

 人影は不気味な液体が入った二本の試験管を投げ落とすといやらしくほくそ笑みながら事の成り行きをどこから持参したのかクリームパンを頬張って見物を始めていた。

 地上に落下した試験官は当然ながら砕け散り、中身が混じり合うと液体が泡立ちやがてそこからは新たな異形の怪物が生まれ落ちる。

 

「GAAAAA!」

「おわ!? なんなんだよ、おい!!」

 

 狂ったような鳴き声が聞こえたかと思うと謎の異形は走行中のムゲンを横から飛び掛かって襲撃した。車体から投げ出されたムゲンは咄嗟に自分に組み付いてきた謎の存在をクッションにしたことで衝撃を和らげたが完全な不意打ちにあっという間にマウントを取られて地面に押さえつけられてしまった。

 

「邪魔だこの野郎!」

「GAA!?」

 

 だが、簡単にやられ放題になるムゲンではない。青緑色をした異形の首にどうにか腕を回すとネックロックの要領で一気に締め上げる。呼吸を封じられたことで動きが鈍り、謎の襲撃者はムゲンからの蹴りもあり引き剥がされてしまった。

 

【大丈夫かムゲン!? メタローか!】

「なんとかな。で、だ……俺の目の前にいるやつだがよ、トカゲだな!」

「GaAAAAAA!!」

 

 インカム越しに心配するハルカに応じながらムゲンは目の前の相手に戦意を向けた。そこにいて、自分を威嚇してくる相手の姿はまさに二足歩行をする人型に近い大きなトカゲだった。これこそがデミリザード。

 

「なんか見覚えのある雰囲気するんだよなこのトカゲ。それもすげえムカつく思い出のやつ」

【強そうか?】

「やってみないと分かんないな。全く……この忙しい時になんてこった」

 

 ただでさえカナタの安否が分からずに慌てているのに嫌がらせのように現れた正体不明の怪物に苛立ちを募らせるムゲン。カフェ・メリッサで状況を見つめていたハルカは脳内で冷静に状況を整理しつつ、ここで思い切った作戦を打ち立てた。

 

【……ムゲン、コイツはオレが引き受ける。魔法使えるデュオルになってオレをそこに転移させてくれ】

「その手があったか! 頼むぜハルカ!」

 

 手短にまとめたハルカの言葉で作戦の全貌を理解したムゲンは一転、明るい調子に盛り返してドライバーを装着。先手を打って生身のままデミリザードを喧嘩キックで蹴り飛ばして隙を作ると改めて二枚のメモリアをベルトに装填した。 

 

【ストロンガー!×ウィザード! ユニゾンアップ!】

「変身――!!」

【エレクトロキャスター! GO! GO! LET’S GO!!】

 

 ベルトの双つの風車が回り、紫電を迸らせて変身完了したデュオル・エレクトロキャスターは腰のマントを翻しながら魔法陣を展開してその中に自分の腕を突っ込んだ。

 

『よし、来てくれ……ハルカ!』

【コネクト! プリーズ】

 

 誰かの手を掴む感触を得て、デュオルは右手のキャスターリングを輝かせながら思いっきり引っ張ると魔法陣を経由してハルカが戦場となっている人気のない街の一角に瞬間移動を果たした。

 

「成功! 物は試しだな」

『ハルカ、じゃあよろしく任せたぞ!』

「ああ。カナねえをよろしくな」

 

 選手交代とばかりにハイタッチをして、この場を離脱するデュオルを見送ってハルカは横転したままのビッグストライダーに駆け寄ると牡牛のエンブレムを力強くタップした。

 

「GET READY! アステリオスモード!」

 

 ハルカと融合したビッグストライダーは緑色の輝きを放ち巨獣の咆哮のような轟きを上げて変形を開始する。

 変形中の状態を狙ってデミリザードは爪を突き立てて襲ってくるが分厚い鋼鉄の拳が弾丸のように発射されてそれを殴り返す。

 

【FORM UP! ビッグダイン・ゴー!!】

 

 有線式のロケットパンチを巻き取って、人型となった猛き牡牛は力強く構えた。

 黒鋼に翠の稲妻模様が迸るビッグダインの姿となったハルカは獰猛にこちらに敵意を向けてくるデミリザードと静かに対峙した。

 

「GRAAAAAAA!!」

『いくぞ――ビッグダイン・エンゲージ!!』

 

 トカゲを思わせる足音も立てない素早い身のこなしで接近するデミリザードを五指から連射するタウ・バルカンで迎え撃つビッグダインだが相手は被弾するのも気にせずに突っ込んできて噛みついてくる。

 

『クッ……美味くもないだろ。離れろ、タウ・カノン!』

「ガバッ!? シイイイイヤ!!」

『やるな。怪人って言うよりは本当にデカい獣だ。いや、爬虫類か』

 

 鋼鉄のボディにお構いなしに牙を突き立ててくるデミリザードの腹部にビッグダインは左腕を変形させた大口径の銃口を押し付けてエネルギー弾を叩き込む。煙を上げて吹き飛ぶデミリザードだがただではやられまいと鞭のようにしならせた尻尾の一撃を浴びせてビッグダインにもダメージを与える。

 

『なら、こっちは人間らしく技に頼ろうか』

「GRAAAAA!!」

『シャッ! ハッ!』

 

 両の拳を握り締めて、堅牢な装甲に覆われた巨体に似合わない軽快なステップを刻み始めたビッグダインは野性的な荒々しい動きを武器に突っ込んできたデミリザードをキックボクシングを思わせる闘法で迎え撃つ。爪の切り裂き攻撃を片腕でガードすると左のローキックで姿勢を崩し、顔面にジャブを打ち込む。

 

「ギャウウゥ……GAAAA!」

『シャアアッ! これもオマケだ!』

 

 鼻っ面を押さえて悶絶するデミリザードに今度はビッグダインの側から畳み掛けに出た。

 バルカンで牽制しながら懐に入り込むと重い右フックをぶつける。更に自分の喉笛に目掛けて迫る反撃の爪を最小限の拳の動きで叩き落して逸らすとそのまま裏拳を力強く振り抜く。鋼の巨腕の直撃を受けたデミリザードは独楽のように回転しながら建物の壁にぶつかった。

 

「フゥー! フウゥー!! GRAAAAAAAAA!!」

『甘い。 タウ・カノン!』

 

 殺意を燃え上がらせて、這うような低姿勢で肉薄してきたデミリザード。

 足を潰して一気に仕留めるつもりのようであったが咄嗟に敵の思惑を呼んだビッグダインはデミリザードが到達する前に自分の足元の地面を砲撃。

 強烈な爆風によってデミリザードは枯れ葉のように上空に吹き飛んだ。落ちてくる相手をビッグダインは両腕でガッチリと捕まえると大技を仕掛けにいく。

 

「ギッァアアアア!?」

『トドメだ! タウロホーン・ブラスター!!』

 

 両脚からアスファルトの地面にアンカーを打ち込んで機体を固定。

 ビッグダインは頭部の双角から翠色に輝く大出力のエネルギー波をゼロ距離でデミリザードに浴びせた。

 

「ギャアッガアア……アアア――――ッ!?」

 

 大瀑布のような極太のエネルギーの奔流の直撃を受けて、デミリザードは跡形もなく消し飛んで撃破された。

 周囲に他の敵が隠れていないかを確認してからビックダインはハルカと分離してバイク形態へと戻った。

 

「戦闘終了っと。オレもそこそこやれるじゃないか」

 

 まだそこまで慣れていない戦闘をそつなくこなしたハルカはビッグストライダーにもたれて照れ臭そうに一人で苦笑した。たった一人で最前線で奮闘するムゲンにはまだまだ及ばないものの、少しはその負担を肩代わりできるだけの力を手に入れたことが彼には密かに嬉しかったのだ。

 

「けど、足の要がビッグストライダーしかないって言うのは今後の課題だな」

 

 ムゲンの後を追いかけようと休む間もなくハルカは車体に跨りながら少し渋い顔を浮かべていた。デュオルのマシンであるビッグストライダーが同時にハルカが非常時に使う戦力であるということは取り回しが複雑かつ面倒ということでもあった。

 

「この辺は近いうちにクーさんやシスターに相談だな」

 

 今日のようにエレクトロキャスターで呼び出すという手段もあるがそれも手間のかかる話である。仮面ライダーに変身出来なくとも共に戦いデュオルを支える戦力を整えてきたカフェ・メリッサの一同ではあるがまだまだ改善の余地があることを痛感しながらハルカは愛する姉と親友を追いかけて城南学園へとビッグストライダーで走り出した。 

 

 

 

「確かあの個体はハルカとかいう名前だったね」

 

 ハルカが走り去っていってから暫くして、デミリザードを急襲させた人物が愉快そうな笑みを浮かべてビルの上から浮遊して降りてきた。

 

「彼、面白そうだね。取るに足らない虫と思っていたけど、手間暇をかければボクの良い玩具になりそうだねえ」

 

 そう言って、観察者ニューは傲岸不遜が滲み出るような微笑みを浮かべていた。

 一度は退けた強敵ネオ生命体ニューではあったが彼もまたこうして表舞台へと再登壇を果たして自らの愉悦を満たすために暗躍を開始する。

 

 モルドメタローの放出するカビによってゾンビのようなおぞましい姿に変えられた生徒たちによって阿鼻叫喚となった学園。安否が分からないままのカナタと水面下で独自に策謀を巡らすニュー。

 一刻の猶予を争う緊迫の状況の中でデュオルは蒸気機関車の如き勢いでビルとアスファルトの峡谷を駆け抜けて青黒いカビで煙る学園へと急ぐ。

 

 

 

 

 

 





少し言い訳になってしまうのですがVSレイダーにつきましては少し休止かつ外伝という立ち位置に分けることにしました。本編が進んだか必ずこちらも更新しますのでどうかご了承ください。

それではご意見・ご感想をお待ちしております。
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