ヴィラン名 『チェンソーマン』   作:ナメクジとカタツムリは絶対認めない

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ヴィラン名 『チェンソーマン』

ーーー辺りが寝静まる夜の十一時頃。街の一角にある廃墟に、無数の人影が見える。その人影の正体は、自分の『個性』を悪用する犯罪者、通称『(ヴィラン)』と呼ばれる者達であった。

何故こんなにも一箇所に敵が集まっているのだろうか。

 

「なあ、まだなのかよ?雄英高校襲撃作戦の説明は?」

 

そう。彼らは、自らの天敵である『ヒーロー』が育成される学校の中でもトップの、雄英高校を襲撃しようと画策していた。

この世の中の理不尽に潰され、止むを得ず敵になってしまった者たちがいる。そんな彼らを救ってくれた、恩人が今日ここに来るはずなのだがーーーー

 

「おいおい、俺たち騙されたんじゃないだろうな?」

「そんな訳ないだろう!?わざわざ俺は隣町から来たんだぞ!?」

「お前は馬鹿か?アッチ側が俺たちを騙して得るメリットはどこにも無いだろう」

「それにしては、遅すぎねーか?ほら、約束の十一時はとうに過ぎてるぜ」

 

彼らをここに集めた本人が来ない事に不安が募り、徐々に苛立つ敵たち。中には個性が体から溢れ出している者も居た。その中で、特に焦りもしていない、金髪の少年に一人の男が近寄って行く。

 

「ヘイ、少年」

「…あ?」

「随分と落ち着いてるね、君は不安じゃないのかい?」

 

急に話しかけられ不審がる少年に構わず、男は喋る。

 

(…んだこのチャラチャラした服着たオッサンは。アブねー人は無視無視……、嫌待てよ、このゆーえい?なんちゃらかんちゃらが始まるっつー事は、こいつは俺の仕事仲間…だよな?しかも歳上だ、上司の確率が高い。今のうちに媚び売っときゃいい事あるかもしんねー!)

 

純度100%の打算だった。…この場に居る全員が危ない人だとか、歳上だから上司になるわけではないとか、色々と間違っている所はあるが、少なくともこの場で悪い態度を取る事は危ない行為である。そこに本能的に気付いた(偶然かも知れないが)少年は、男に笑顔で返す事にした。

 

「全然平気っす!俺こういう所慣れてるんで!」

「そうかい、……しかし不思議だな。君のような好青年が何故こんな所に?そのルックスと性格なら、ここに来る事は無いだろうに」

 

男の目の前にいる少年の顔つきは悪くは無い。むしろ良い方だ。しかし、何故その様な少年がここに来たのか、男は疑問に思った。

 

「…親が、借金作って蒸発して、それでカネ作るために色んなことしてたんす。そしたらいつの間にか敵んなっちゃってて……」

 

その境遇を聞いた男は納得した。ここに来る者は、他人から何かを奪われた者が多い。男もその一人だ。他人より個性が『敵っぽい』という理由で、いじめに遭い、そして深く傷つけられた。自分と同じ社会に追い詰められた者に、親近感が湧いていたのだった。

 

「そうかい、それは辛いね。深く同情しよう。…しかし、もう心配ない。この雄英を襲えば世間からヒーローへの信頼は地に落ちる。そうなればもうこちらのものさ。一緒にこの世の中を壊そう、同士よ」

 

それじゃ、と手を振り、人混みに紛れて行く男。その背中をぼんやりと眺めていた少年は、自分の企みが上手く行った事に歓喜した。

 

(よっし!とりあえず仲良くなることには成功…。こっからだな!どんどん媚び売ってくぞ〜!)

 

それと同時に、前の方から黒い霧のようなものが発生してくる。それに驚いた周囲の敵たちはそこから距離を取る。個性を使用し、備えているものも居た。

そのまま数秒が経過し、黒霧の中から突如、無数の手を付けた青年が現れた。そして黒い霧も段々と形を変え、人型になって行く。

 

「ーーー今日は集まってくれてありがとう。俺と一緒に、平和の象徴ーーーー『オールマイト』を殺してこの腐った社会をぶっ壊そうじゃないか」

 

そう言った青年の邪悪な笑みにある不思議なカリスマに魅了された敵たちは歓声を上げる。その中で一人、金髪の少年ーーー『デンジ』はこの歓声に今ひとつついていけてなかった。

 

(…俺はそんな大層な目的望んじゃいねえ。そんなモンいらねーさ。俺ぁ金貰って普通に飯食って、普通に寝れればそれで良い。…あ!そうだ!女!女も欲しいな〜)

 

自分の未来の願望を妄想するも、先が長いことに気づき、落胆するデンジ。周りの歓声に包まれている中、大きくため息を吐いたのだった。

 

 

(あ〜〜〜、女抱きてえ………)

 

 

 

 

 

 

 

 

説明が終わった数週間後、デンジは自分の配置場所に着いていた。もちろん、他の敵たちも一緒である。

 

「ここゴツゴツしてんな〜。お前の『個性』相性悪いんじゃね?」

「ばっか、お前。俺たちが相手するのはただのヒーロー気取りのガキだぜ?しかも黒霧さんがそのガキ共を散り散りにしてここに呼ぶ。そんでもって俺らはやりたい放題…。完璧な作戦だろ」

 

その発言を聞いた敵たちは汚い笑みを浮かべる。自分たちとは違う、『選ばれた者』を今から蹂躙できるというのだ。昂りで体の震えが止められない敵たち。デンジもその一人だった。俯き、体を震わせ────

 

 

 

「漏れそーなんすけど、そこら辺でションベンしてきて良いっすか?」

 

 

 

自分の尿意を周囲に訴えるのであった。それを聞いたその場は一瞬静寂が走り──────

 

《ギャハハハハハハハハッ!!》

 

大爆笑の渦に巻き込まれた。未だ体を震わすデンジに敵たちは屈託のない笑みを浮かべた。

 

「あ、あの天下の雄英にションベンひっかけるとか!ク、ククッ、傑作だコリャ!」

「坊主、お前面白いな!」

「ああ、行ってこいよ!…なんなら、『大』の方もしてくるかぁ〜?」

 

その言葉にまたどっ、と湧く周囲。デンジはそれに苦笑いをし、そそくさと少し遠くの岩肌へ身を隠すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ!スッキリしたぜ!」

 

岩の影で致したデンジ。そこには清々しい顔の彼が居た。さあ、自分の持ち場に戻ろうと足を動かした瞬間───

 

 

 

バチバチバチバチバヂバヂバヂッッ!!!

 

 

 

突如、まるで辺りに超高圧電流が大量に流されたような音がデンジの耳を貫いた。

 

 

 

「ッギャアァア!?」

 

 

 

突然の大音量に聴覚が耐えられなくなったのか、耳を塞ぎながら地面を転がり、悶え苦しむデンジ。しばらくして、恐る恐る耳から手を離すと、少しずつ耳の感覚が戻っていった。

 

「な…、なんだぁー!?クソッ!耳…は大丈夫!聞こえんな!?」

 

自分の耳に問いかけるデンジ。そして完全に耳の機能が完治した事を確認し、次は何があったのかを確認するため岩肌から少しだけ頭を出す。するとそこには──

 

 

黒焦げた、(なかま)たちが無数に倒れていた。

 

 

 

「あ…あああア…?アああ……!」

 

 

声は震え、体が強張る。限界まで開いたその目で()()を見る。倒れている人たちではなく、三人。佇んでいる人影に目を奪われる。それは─────

 

 

 

 

「──うわっ!?ヤオモモ、超パンクな格好に…!」

「問題ありません、服ならまた作りますわ。それより、広場に向かいましょう!まだあの敵たちが居るはずですわ!少しでも先生方の援助を────!」

「ウ、ウェ〜イ……!」

 

 

 

 

 

 

      

 

 

 

 

 

───乳であった。それはもう立派な。

 

 

 

「あ、アアア?!」

 

 

それを直視したデンジは尻もちをついて呻くことしかできない。

あのたわわに実った二つの果実。揺れ動く肉感。溝に溜まった汗。そして、先端に陣取る桜色の──────

 

 

「オアあああああアアアアッ!!?」

 

 

今日ほど自分の眼球を恨んだ事はあるだろうか。何故そんなに視力が悪いんだ、と。

そして今日ほど神様に感謝した日はない。神様、この幸運をありがとう、と。

そして、ひと暴れした後に、デンジはゆっくりと立ち上がりある決意をする。

 

 

 

(あの乳、揉みてぇ!!)

 

 

 

デンジの目標は既に、『ヒーローの卵を潰す』から、『乳を揉む』ことにシフトチェンジしたのだった。もう彼は誰にも止められない。いつもは働かせない頭脳をフル回転させていく。

 

(あの乳揉むんだったら〜〜、近づかないといけねぇ……けど、どっか行ったな…?……広場!広場に行くっつってた!よし行こう!)

 

ターゲット()が交わしていた僅かな会話から目的地を割り出すデンジ。体に漲るやる気を秘め、彼は歩き出した。

 

 

 

 

「好き放題やらせて貰うぜ〜〜!なんせ俺ぁ『ヴィラン』だからなぁ〜〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう大丈夫、私が来た!!」

 

広場に憤怒の表情をしたオールマイトが登場し、生徒たちに希望の光が差す。敵たちの前に降り立ったオールマイトはまずボロボロになった相澤を助けた。それを見た八百万たちは安堵のため息を吐く。

 

「良かった…ひとまずこれで相澤先生は助かったね…」

 

横にいるクラスメイト、耳郎がそういった途端。オールマイトが動き出した。

敵のリーダー、死柄木弔に豪速で襲いかかる。それを見た死柄木は、そばに居る改人『脳無』に指示を出した。

 

「CAROLINA……!!」

「脳無」

 

 

死柄木の前に出て、オールマイトの攻撃に備える脳無。そして──

 

 

「SMASH!!」

 

 

両腕をクロスさせ、それを『ワン・フォー・オール』の超力で開くように相手に叩き込む、『CAROLINA SMASH』が脳無の顔面に決まった。…しかし、脳無は何事もなかったかのようにオールマイトに反撃の手を繰り出した。

 

 

「…ッ!マジで全っ然──効いてないな!!」

 

 

ならばと、オールマイトは脳無のボディに強烈な一撃を叩き込む。その衝撃により脳無は一歩後ずさるが、やはりダメージは無い様だ。

 

(あ!いたいた!俺の乳!)

 

山岳ゾーンの出入り口から出てきたのは、やはりというか、こんな緊迫した状態でも自分の欲望を優先するデンジだった。デンジは八百万たちの方へ向かう。気付かれない内に一揉みして帰ろうという算段だった。

 

 

 

(つーか…なんだアリャ!?さっきから地面揺れてんぞ!クッソ…近寄りにくい……!)

 

しかし、オールマイトと脳無の戦いの余波により、八百万に上手く近寄れない。それに苛つきが増す一方のデンジだった。

 

(あ"〜〜〜!ウゼェなオイ!騒ぐんなら他所でやれよ!!揉めんだろーが!)

 

心の中で悪態をつくデンジ。…まあ、このハイレベルな戦いを前に、()()()()()()()と考えている事が異常なのだが。

 

 

 

「攻撃が効かないのは『ショック吸収』だからさ、オールマイト。脳無にダメージを与えたいんだったら…ゆうっくりと肉を抉るとかが効果的だね…。それをさせてくれるかは別として」

 

 

死柄木はオールマイトに説明する。これも余裕の現れなのだろうか。不気味な手の装飾の向こうには邪悪な笑みが浮かんでいた。

 

 

「わざわざ説明センキュー!そういうことなら……!!」

 

 

それを聞いた途端、オールマイトが加速。脳無の背後に回り込み、胴体を抱え込む。そのまま敵を持ち上げて────

 

 

「やりやすいッ!!」

 

 

バックドロップ。まるで地雷が爆発した様なその威力に、周りの生徒たちは顔を腕で覆う。

 

「何でバックドロップが爆発みたいになるんだろうな…!やっぱダンチだぜオールマイト!」

 

 

相澤を安全な場所へ移動させながらオールマイトの破壊力に慄く峰田。しかし、それを見た緑谷の顔には焦燥の色が見える。

 

 

(でも知ってるんだ──!USJ(ここ)にオールマイトがいないって話の時に、13号先生が立てた三本指はきっと活動限界のことだ、きっと個性を使いすぎたとかの話だ)

 

 

憧れのヒーローが誰にも見せない、見せてはいけない弱点という活動限界。それが近づいている。

 

 

 

 

 

(僕だけが──僕だけが知っている、ヒーローの秘密(ピンチ)────!)

 

 

 

 

──優勢は、突如崩れた。

 

「オ、オイ!?見ろよあれ!」

 

それは、誰が放った言葉だっただろうか。その声の指し示す方に全員注意を向ける。そこには──

 

 

 

「オールマイトォ!!」

 

 

 

バックドロップを決められた筈の脳無が、地中からオールマイトの脇腹に指を突き刺している姿があった。

それに苦悶の表情を浮かべるオールマイトを見た生徒たちは悲鳴を上げる。

 

 

(な…何というパワー!あながち私以上ってのも間違っちゃいないかもな……!)

 

 

 

 

 

「オ、オールマイトが!?ヤバいってあれ!」

 

耳郎はその光景を見て、動揺と恐怖が押し寄せていくのを感じる。その横の八百万とアホ状態から戻った上鳴も汗を滲ませる。

 

「マズくね!?なあコレマズくね!?あのオールマイトがやられてんのかよ俺らここで死ぬのかよ嫌だよオイ!!」

「うっさい!!」

「ハイ!!」

 

騒ぐ二人を他所に八百万はそっと手を組み、祈る。この場を救える、ヒーローを信じて。

 

(誰か──。誰か私たちを助けて────!)

 

 

 

 

 

 

 

 

(よ、横乳凄ぇ……!)

 

一方その頃デンジは、目標であるその八百万の巨大な胸に見惚れていた。この男、最低である。しかし、激戦の余波が来るにも関わらず、彼は八百万の近くにまで近づいていた。

 

(…よし、近くまで来れた!も、揉める……!)

 

そしてついに、手を伸ばせば届く範囲まで来た。さあ揉もうと、固唾を飲みながら震える手でその胸に手を伸ばし──!

 

 

 

「お父様…お母様……!すみません、私はもう…!」

 

 

 

その涙に濡れた瞳を見て、動いていた手がぴたり、と止まった。そのままの状態で思案するデンジ。

 

(…人生初の胸揉むんが泣いた女の胸ってよ〜〜、満足できねー気がすんだよな。何か…遠慮しちまうってーか……)

 

そのまま硬直し、数秒沈黙する。そして、ある決断をすることに決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!」

 

 

「「「──ッ!」」」

 

 

なんと、大声で三人に話しかけたのだ。その声でその場にいる全員の注意がデンジに向く。三人はいつでも対応できる様に個性を使用する。

 

「オイオイオイオイ!まだ敵がいたのかよ!?」

「…でも、ウチたちやみんなでいけば楽に倒せるかも──」

 

 

 

「なあ。お前を泣かせたのはどいつだ?」

 

「………え?」

 

 

 

デンジは八百万を指差しながら問う。それに八百万は困惑の表情を浮かべた。

 

「だからぁ、お前は誰のせいで泣いてんだよ?あの筋肉ムキムキの奴が弱ぇからか?それとも脳みそ野郎が筋肉を痛めつけてるからか?」

 

その問いに、八百万は顔を俯かせ、震え始めた。そして──

 

 

「そんなのッ!貴方達敵に決まってるじゃありませんか!!」

 

怒りを吐き散らすようにデンジに当たる八百万。…しかし、デンジはその返答を聞き、満面の笑みを浮かべた。そのまま八百万の手首を握る。

 

「アイツ等が悪ぃんだな!?アイツ等がお前を泣かせたんだなぁ!?」

「えぇ、えぇそうですわ!!…絶対、私は貴方達を──!」

 

 

 

 

 

「そんならよぉ〜!俺があいつらぶっ殺すから、そん胸揉ませろ!!」

 

 

 

 

辺りは静まり返る。そして、各自各々の反応が返ってきた。

友人に何を言っているのかと憤慨する者。

自分たちを殺すなどと馬鹿な事をぬかしたと蔑む者。

血涙を流しながら頭のもぎもぎをぶん投げようとする者。

しかし、それらの視線を受けても、デンジはブレなかった。それどころか、更に八百万に詰め寄っていく。

 

「さあ!どうすんだ!?」

「わ、私は……」

 

戸惑う八百万に答えを求めるデンジ。それを見たある人物が声をかけた。

 

 

 

「八百万少女…っ!そいつの口車に乗せられるなぁッ…!」

 

そう、オールマイトだった。自分も苦しい筈であるのにまず他人の心配。やはりNo.1ヒーローの名は伊達では無かった。

血反吐を吐きつつも自分の心配をするオールマイトの姿に、感動する八百万。しかし、敵たちはその希望を無残にも打ち砕こうとする。

 

 

「…うーん……。まあいいや。後であいつも殺せばいいし。とりあえず黒霧、やれ」

 

 

鬱陶しそうに首元をガリガリ掻いた後、死柄木は黒霧に指示を出す。それを聞いた生徒たちは最悪の事態を想定する。

 

 

 

(オールマイトが…死ぬ)

 

 

 

長い間自分たちの心の支えであり憧れのヒーローが、自分たちの目の前で死んでしまう。それをいち早く察した八百万は、一つの覚悟を決めた。

 

 

「…貴方はあの敵たちを倒せる個性ですの?」

「ああ!胸があれば!」

「貴方は私たちに敵意は無いんですか!?」

「ああ!胸があれば!」

「それなら…っ、それなら──!」

 

 

 

 

「私たちを…助けて……!」

 

その言葉を聞いた瞬間、デンジの目が輝いた。

 

 

「そ、そんなら胸を──」

「はい!私の胸でこの場が切り抜けられると言うのであれば──!」

「ほ、本当だな!?後からやっぱなしとか無しだからな!?」

「えぇ!八百万家に誓いますわ!」

 

 

 

「よしきた!!」

 

 

 

そう叫んだと同時に、デンジは走り出した。それを見た死柄木はその無謀な姿を見て嘲笑う。

 

「黒霧、いいよ。俺がやるから」

 

ゆらり、とデンジの前に立ち塞がる死柄木。しかしデンジの走るスピードは変わらない。

 

「飼い主に逆らうって勇気は凄いと思うよ……。ま、結局殺すけど」

「やってみろよバ〜〜〜カ!!」

 

ベロを出し挑発するデンジに苛ついたのか、首を掻く死柄木。そして、手をゆっくりと肩の高さまで上げた後───。

 

 

 

「ッギャアアア!」

 

 

 

超高速で動き、デンジの左腕を掴んだ。その掴まれた腕は見る見るうちに崩れていき、そして徐々に彼の体の中心がひび割れていく。

それに悲鳴を上げるデンジ。しかし──!

 

 

「手癖悪ぃなこの手ヤローがァァ!」

 

 

ごきゃん。とその場に不可解な音が流れた。その音の発信源は死柄木の股間であった。なんと掴まれた筈のデンジがフルスイングで彼の分身を蹴り砕いたのだ。これにはその場にいた男たちもゾックリ。そして等の本人は──

 

 

「あ"あ"あ"ががあ"ァアあ"ァアーーーーーッ!!?!?」

 

 

ガクガクと痙攣し、口から泡を吐きながら崩れ落ちた。当然である。しかし、激痛に苛まれながらも黒霧に指示を出す。

 

「く、黒霧ィ!!コイツ飲み込め!!」

「しかし、それではオールマイトが──」

「いいから飲めェ!グチャグチャにしろ…!!絶対殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!」

 

子供の様に癇癪を起こした死柄木にため息を吐きながら黒霧は個性を展開する。その闇は、デンジの周りを包み込んで行く。

 

「君!そこから離れて!!そいつの個性は人や物体をワープさせる個性だ!囲まれた以上、何が起こるか───!!」

「忠告が少し遅かった様ですね。それでは、さようなら」

 

緑谷の叫びも無情に、黒霧によって切られる。そして、その深い闇から出てきたのは────

 

 

 

 

特大の炎だった。デンジは声を上げる暇も無く、炎の中に飲み込まれていく。そのショッキングな光景に生徒の中では口に手を当て、吐き気を抑えている者も居た。

 

「……貴っ様ァァァッ!!グアッ!?」

「オールマイト!」

 

簡単に人を殺す敵に激怒したオールマイト。しかし、立ち上がった途端、脳無に腹部を殴られて吹っ飛んでいく。

 

「アッハハハハハ!惨めだなぁオールマイト!教え子の目の前で人が死んでいく様子を見せた気分はどうだ!?最っ高だよなぁ!?」

 

 

「グ…うおおおおおおおおお!!」

 

歯を食いしばり、猛スピードで脳無との距離を詰め、拳を叩き込んでいく。だが、やはり脳無にはダメージが通っていない様子だった。

 

「…だからさぁ……効かないんだって…。はあ、もういいや。脳無、殺れ」

 

命令を受けた脳無がゆっくりと拳を振り上げる。それを見たオールマイトは構えるが──

 

 

突如、その体から白い蒸気が微かに放出され始めた。それを見たオールマイトと緑谷は同時に顔色が変わった。

 

 

(活動限界────!)

 

 

マッスルフォームの制限時間が迫ってきた事により密かに焦るオールマイト。しかし、ヒーローである彼は守る者たちを見捨てる訳には行かない。

 

(せめて、この子たちだけでも──!)

 

この絶対的窮地でも生徒たちは逃がす。そう思い、脳無の攻撃を防ごうとしたその時────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──ヴヴン、とまるで何かのエンジンを吹かしたような音が荒々しく響いた。

その音に反応し、動きを止めその音がした方を向く脳無。そこには──

 

 

「あ"〜〜〜〜〜!糞アチィィィィ!!」

 

 

 

 

 

 

 

燃え盛る炎に包まれ、黒い炭の塊となっていたデンジであった。しかし、その外見は奇妙なものになっていた。

両の指先から肘辺りまで、肉を貫通するかのように()()()()()()()が刺されていた。さらに、頭部もチェンソーまるでそのものな形になっている。裂けた口は凶悪な笑顔をしているかのようだ。そして胸からはワイヤーが飛び出ている。

 

 

「…はぁ?なんだよアレ…」

 

目を丸くする死柄木。生徒たちやオールマイトもそちらに注目している。

するとデンジはモーター音を響かせながらそのまま脳無に向かっていく。そして腕のチェンソーを振りかぶり──

 

 

 

脳無の肩を袈裟斬りにした。その切れ味と回転力で脳無の体は豆腐のようにスッパリと切断され、上半身が地面にぼとりと落ち、臓物が辺り一面にばら撒かれた。

 

 

「あ〜ん?糞弱えじゃね〜か、何してんだよヒーローサン」

「違うッ!そいつは『再生』持ちだッ!」

 

 

 

 

その瞬間、デンジの腕が巨大な物量によってへし折られた。脳無のパワーはオールマイトと同等、もしくはそれ以上。骨が皮膚を突き破り、血液が大量に流れ出る。

 

 

 

 

 

「痛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

それに堪らず振り返りながら横薙ぎにチェンソーを振るう…が脳無はそれを体を逸らして避け、さらにデンジの足を握り潰す。

 

「ギャアアアアああああ!!」

 

 

悲鳴を上げるデンジ。しかし胸から生えているワイヤーを引っ張ると、またエンジンがかかる音と共に、折れていた足や腕が一瞬にして治っていた。

 

 

「らア!!」

 

 

そしてまたチェンソーを振るう。脳無の両手首を切り落とし、よろけた脳無に蹴りを浴びせて距離を取る。…ちゃんとオールマイトを脇に抱えながら。

 

「オ、オールマイト!!大丈夫ですか!?」

「…ああ、心配無いよ!…時に八百万君、彼は一体……?」

 

生徒たちに笑いかけながら、八百万に問いかけるオールマイト。それに頷き、八百万は説明を初めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんというか…良い意味でも悪い意味でも素直なのだな……」

 

オールマイトはデンジの欲望への忠実さに苦笑いをする。そのデンジは未だ脳無と対峙している途中であった。

 

「オアッ!」

 

すれ違い様に脳無の右足を切り落とす。脳無はそれを無視してデンジに飛びかかり、右ストレートを繰り出す。…が、それも避けられ、またもや右手首を切り落とされた。

 

「…何でだ何でだ何でだ!?オマエ、何がしたいんだよ!?急に出てくんなよ、クソッ…!」

 

死柄木の叫びに飛びかかりながら応えるデンジ。

 

「テメー等全員ぶっ殺して、あん乳揉むんだ───!」

 

両の手のチェンソーを振りかぶり、脳無に叩き込む。

 

 

 

「よ!!」

 

 

 

ヴィィィィィィィン!!!

 

 

その一撃は脳無の左腕を切断し、さらに返す刃で残る一本の足をすっ飛ばした。首だけになった脳無は再生をする。しかし──

 

 

「させっかよ〜〜!」

 

 

デンジがそれを許さない。再生した所から切り飛ばしていく。再生、切断。再生、切断。再生切断再生切断…それを数回繰り返した時、脳無に変化が現れた。

 

「………?」

 

自分の再生速度が遅くなっているのに気づいた脳無。戸惑いの仕草を見せるがそれでデンジが待ってくれる訳でもなく──

 

 

「もうおしまいなのかぁ〜〜!?ケバブ削いでるみてーで面白かったのによ〜〜〜!」

 

 

その言葉と同時に止めを刺そうと頭に向けてチェンソーを振り下ろしたその時だった。

 

「──それ以上はさせませんよ!」

 

黒霧がワープゲートを展開する。今一番危険なデンジをどこかに飛ばそうとした黒霧。しかし、その魂胆は裏切られる。

 

「──ッグァアァアッ!」

 

突如、強烈な痛みが黒霧を襲う。一体何かと視線を向けると、そこにはチェンソーを滅多矢鱈に振り回すデンジが居た。

 

「てめ〜のそれ…!体を広げてんだろ〜〜?そんならよぉ〜、チェンソーぶんまわしゃこっちの勝ちじゃね〜か!なんせ的ぉ広げてんだからなぁ〜〜!」

 

 

デンジの作戦は偶然にも的を射ていた。黒霧の弱点は暗い靄に隠された実体の体。奇跡的に作戦が成功したデンジは舞い上がり、チェンソーを凶悪に唸らす。

 

「…!黒霧!もういい、戻れ!」

 

死柄木が叫ぶ。それを聞いた黒霧は彼の方へ戻っていった。

 

「しかし、脳無は……!」

「…駄目だろ、もう。ゲームオーバーだ」

 

徐々に黒い霧に包まれるふたり。そして死柄木はこちらを見ているデンジを睨む。

 

「お前、絶対殺すから……」

「だから言ってんだろ〜?やってみろって」

 

そうして完全に消えていったふたりを他所に、デンジは四肢がもげた脳無の所へ向かう。

 

「じゃあな」

 

 

 

 

 

そして、脳無の首を切り落とした。それから、脳無が再生することはもう無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんじゃあ、早速……!」

 

元の姿に戻ったデンジは八百万の前に立つ。その顔は興奮により赤く染まっていた。

 

「言っておくが、この後は大人しく縄についてもらうからね」

 

オールマイトがそう言うも、全く耳に入っていない様子のデンジ。もはや獣と化していた。

 

「は、早く終わらせてください……!は、恥ずかしいですから…!」

「ヘェ!」

 

その恥じらう姿に訳の分からない返事をしてしまう。そしてデンジは固唾を飲み、その豊満な胸に手を持っていき───!

 

 

 

突如、視界が揺らぐ。足元が覚束なく、重心がぐらついている。

 

 

 

(ヤバ……、血ィ、流しすぎた……!)

 

 

チェンソーを出す時には自分の皮膚を突き破らなくてはならない。そうすれば大量の血液が出る訳で────

 

 

 

(せめて…一揉みでも……!)

 

 

 

必死に手を伸ばすデンジ。しかし、よろよろと伸ばされた手は目標とは違う所へ行き──

 

 

 

「あっ…」

 

 

 

その横にいる、耳郎の胸へ接触した。耳郎は林檎のように真っ赤になり、声にならない声を漏らした。

 

 

 

 

「か、壁………………」

 

 

そう言い残し、デンジは倒れたのだった。

 

 

 




これ途中から性犯罪者書いてる気分でした。通報しないで。
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