ヴィラン名 『チェンソーマン』 作:ナメクジとカタツムリは絶対認めない
ウマ娘やってました(正直に言えばなんでも許されると思ってる愚か者)
デンジは項垂れていた。第二種目である騎馬戦が始まっているにも関わらず、それには微塵も興味を向けることなく、ただ下を向いていた。
(う、うう…、レ、レゼ…!レゼと一緒に見たかったあ…!)
未練タラタラであった。当初の目的である、『個性を使った戦い方を学ぶ』というものなどとうの昔に忘れていた。今彼の胸の内にあるのは魅力的な女性が立ち去ったという虚無感のみ。
[タイムアーーーーーップ!!]
そんなことをしている間に第二種目も終わりを告げた。昼休憩を挟むため、昼食を取るために立ち上がる者もちらほらと出てきた。
デンジもそれに倣い、足取り重く再び屋台へと歩き出すのであった。
「はあぁ〜〜あ、レゼ…──コレ美味」
とぼとぼと下を向いて歩くデンジ。その手に唐揚げ棒を持って屋台を歩いていると、周囲の声が耳に入ってくる。
「第一種目の一位の子は凄かったなあ…あの子の工夫とガッツはヒーロー向きだろう」
「いーや、俺はエンデヴァーの息子さんが良いと思うね。あの「強個性』!それに、No.2ヒーローの息子を事務所に配属すれば話題をかっさらえるぞ!」
「おい、お前なあ…」
その会話を聞いたデンジははっとする。
(そ〜だった…俺ぁヒーローの戦い方勉強しに来たんだった…)
レゼに振られたショックで忘れていたが、本来の目的はヒーローの(卵とはいえ)観察である。
ヒーロー殺しと相対するには今の戦い方では無理だ。それに、自分が成長しないと八百万やねじれなどの身近な女性が危険な目に遭うかも知れない。それは嫌だ。
途端に、デンジのやる気に火が点く。レゼのことなど今は考えなくていい。今やれることをやるだけだ。そう思うと、沈んでいた気分も徐々に浮上して行くのを感じた。
「よお〜〜っし、やってやんぞヒーロー!」
声高々に宣言するデンジ。すると、今さっき会話していたヒーロー二人が突然声を上げた金髪の少年を驚きながらも見つめる。
「おいおい、こんな所にも生徒が…、──っお前は」
「あ〜?」
デンジは気怠そうにそちらに目を向けた。するとその二人は敵意を隠さぬ様子でデンジに近寄っていく。
「その金髪…目つきの悪さ…お前、雄英の職に就いたイカサマ野郎か!」
「はあ〜?」
男のひとりはデンジを睨みつけた。しかしそれを向けられたデンジはどういう事なのか分からない。さらに男は続ける。
「しらばっくれても無駄だ。──雄英高校は今まで数々の名だたるヒーローを進出してきた。そのため、選ばれた生徒には多大な期待が寄せられる。
「この雄英高校に職を置くことというのは世間からの注目を浴びるということ。それにより我らのヒーロー活動はより一層充実する!その恩恵を得るために我々はここで働けるはずだった!…だが!」
そして男はデンジに指を突きつける。
「お前だ。ヒーロー活動経験もない、なんならヒーローでもない、ただの凡人が俺たちの邪魔をしたから俺たちはここで働けなかったんだ!!」
「どーせコネとかがあったんだろ。正々堂々と試験を受ければ不合格になるからな。本当に反吐がでる」
侮蔑の視線を向けるヒーロー。彼らの捲し立てるような言葉の羅列に戸惑っていたデンジだが、ぽん、と手を叩き、合点がいったという表情で口を開いた。
「…あ〜そーいう事か!てめーらここ落ちたから、働いてる俺に嫉妬してんのか!」
ぴしり、とその場の空気が凍る。そして、一呼吸置いた後、デンジに罵声が降り注いだ。
「〜〜ッ貴様ァッ!!俺たちをコケにすんのも大概にしとけよ…!ブチ殺すぞォ!!」
「やれやれ、ここまで阿呆だとは…──覚悟はできてんだろうな、クソガキ」
「そーいうところなんじゃねーの?オチた理由。少なくとも、あのおっさんたちは俺ん事バカにしたりはしてなかったけどなあ〜〜!」
一触即発。ヒーローが構えを取りデンジを睨み、デンジは馬鹿にしたような態度でヒーローを見据える。
しかし、デンジのその顔には、冷や汗が流れていた。
(やべぇ…。俺何にもできねえ……)
デンジの頭に、波動ねじれとの『約束』がよぎる。
(いち、先生やプロヒーローの言うことは聞く。──コレはいいや、ヒーローはここにゃ居ねえ。…に、『個性』を勝手に使わないこと。──コレだ。あいつら普通に俺ん事ヤろうとしてるじゃん…でも個性使ったらねじれちゃんに怒られちゃう…!さん、困ってる人がいたら助けること。俺が助けてほしいくらいだぜ)
ねじれとの約束──それは、デンジにとっての縛りとなっていた。
「その人を舐め腐った態度、このプロヒーロー『バレットナイフ』が矯正してやる!行くぞテラキネシス!」
「ああ!」
「『撃込 弾』『寺島 操』」
その時、腹の底に響くような声が聞こえた。綺麗な音色で、聴いたものを震えさせるような冷たい声であった。
「私たちのことは忘れて、ここから去りなさい」
「はい」
「はい」
その時、あんなに激怒していたヒーロー二人が、嘘のようにしん、と静まり返った。
ん?と訝しむデンジをよそに、虚な目をしたヒーローたちは、デンジのそばを通り過ぎて行った。
「きみ。大丈夫?」
背後から先程の声が聞こえる。ゆっくりと振り返ると、そこには女が立っていた。赤茶色の髪の、スタイルの良い美人が立っていた。
それを見たデンジは目を輝かせ────、
「え?」
無意識のうちに、その汗でびしょ濡れになった手で、胸元のスターターを引いた。