ヴィラン名 『チェンソーマン』   作:ナメクジとカタツムリは絶対認めない

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雄英体育祭 その5

「ええー!?カワイイーー!!」

 

昼飯を食べ終わったデンジを待っていたのはなぜかチア衣装に身を包んだA組の女子達であった。思わず声を上げるデンジ。

 

「上鳴くんと峰田くんがね…」

「ナイス!」

 

緑谷の困ったような説明を聞いたデンジは二人に親指を立てる。それに、白目をむきながら応じる2人。その顔を見て、デンジは眉を顰めた。

 

「なあ、何であいつら白目なの?」

「チア衣装を着させられたことに、耳郎さんが怒って…」

「あ〜、ジローか。たしかにあいつうるせえもんなぁ」

「──だぁれがうるさいって?」

「っヒィ!!」

 

背後からずぼ、とデンジの耳に耳たぶのコードを入れる耳郎。まだそこから音は流れていない。デンジは恐怖する。

 

 

(ジ…ジローにマジでやられる…。な、なんとかしてくれイズク!)

(無理無理無理!だってそこからじゃ見えないから分かんないと思うけどすっごい不機嫌そうな顔してる!見たことないくらい!ごめん!)

 

 

その間わずか二秒であった。

デンジの今の状況はいわば拳銃を向けられているようなもの。下手な真似をすれば弾丸(心音)が発射されてしまう。

 

「あんたも音流されたいの?物好きだね」

「んなわけねえだろこの壁おん──アああ!?」

 

つい心の声を口走ってしまった瞬間、とくん、とくん、という一定のリズムの心音が徐々に大きくなっていく。まずい。このままではまずい。

どうにかして回避しなければ──そう思案していると、塞がれた耳越しに声が聞こえる。

 

 

「あ〜あ、いいよねみんなは。あんなにスタイル良くて。どーせウチなんか男っぽい服しか似合いませんよーだ」

「あー…」

 

 

そのデンジの生返事に耳郎は眉を吊り上げ、そして悲しげに目を伏せた。

 

(…分かってたけどさあ…そんなどうでも良いみたいな反応はないわー…マジで──)

 

耳郎響香は女の子である。それこそ服装や趣味はロックなもので、どちらかといえば男向けのものが多い。しかし、その精神はまだ幼気な少女。同年代の異性から意識されないというのは、すこし心に来るものがあった。

目を伏せた耳郎。その時、彼女の個性『イヤホンジャック』がある音を感知する。

 

 

 

“どくん!どくん!どくん!どくん!”

 

 

 

(──え?これって……)

 

 

イヤホンジャックは、プラグを挿した場所の微弱な音を捉える事ができる。耳郎が今プラグを挿している場所は、デンジの耳。つまり──、

 

 

(──こいつ…ウチにドキドキしてる…?じ、じゃあなんで気にして無い感じで──!)

 

 

少し頬を赤らめながら思案する耳郎。そして、一つの結論に辿り着く。それは──。

 

 

 

(緊張しすぎて、他のことを気にする暇もなかった──?)

 

 

 

その通りである。デンジは最初こそ鼓膜への攻撃に恐怖していたが、今や密着している間に、耳郎の匂いや耳たぶの暖かさに興奮していた。生返事だったのも、その感触を集中して感じたかったからだった。

 

 

「〜〜〜〜ッ!」

 

 

耳郎は顔を赤らめ、そして何かを決意した表情でデンジの背中に体を寄せた。

 

「お…い?ジロー…?」

「生返事すんな。で?アンタもそう思うわけ?」

「そうって…」

「ウチは可愛くないって、そう思うわけかって聞いてんだけど」

 

プラグを挿しているのでデンジは周囲の声が聞こえない。普段とは違う、イタズラっぽい声色で質問する耳郎に興奮と違和感を覚える。

 

「お、俺ぁ最初から言ってんだろ〜が、カワイイって…」

「ふ〜ん、どうだか」

「お…おい、もう良いだろ、耳がムズムズしてくすぐって〜んだよ!」

「離していいの?ほんとに?」

「まだちょっとお願いしまぁす!」

 

秒で折れたデンジ。それを聞いて嬉しそうに笑う耳郎。そしてそれを熱い目で見つめるクラスメイト。

 

「………ん?」

 

耳郎は忘れていた。ここにはクラスメイトが居たことを。周囲を見渡せばキラキラした目で見つめる女子友達。そして血走った目でデンジを見つめる男子共。徐々に冷静になっていく頭で、それを理解した。そして──。

 

 

「ッキャアアアアアアアアッ!!」

「ッギャアアアアアアアアッ!?」

 

 

女の子らしい悲鳴をあげて、デンジから勢いよく離れた。デンジは絶叫を耳にダイレクトに送られ、苦痛の悲鳴をあげて、勢いよく倒れていったのだった。

 

 

 

 

 

 

「いや、違う!ウチは──!」

「女になったねえ…耳郎さんや」

「ケロ。密着してる時の耳郎ちゃん、いつもより色っぽかったわ」

「色ッ!?〜ッ違くて!」

「耳郎さん、ずるいですわ!私には、『無闇に近づくのはやめたほうがいい』なんておっしゃっていましたのに、貴女だけ…!」

「あーーもーーー!!」

 

 

 

 

 

 

「青春だなあ…」

「ああ、青春だ……」

「上鳴君、峰田君…。血涙出てるよ、拭こう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うう…ハァッ!?」

 

少し魘され、デンジは目を覚ます。自分に何が起こったのだろうか。記憶が無い。

 

(あれぇ〜?飯食って、皆かわいくて…アレェ〜?──痛っ!耳イタ!?なんでだぁ〜?)

 

少し頭を抱えるが、すぐに気にしないことにした。

 

(ま!そう思い出せねえって事ぁあんま思い出さなくて良い事だな!)

 

そう納得し、デンジは周囲を見回す。A組の面々が居ない。どこに行ったのだろうか…。その時、ミッドナイトの声が聞こえてきた。

 

 

 

 

「それではこれより!表彰式に移ります!!」

 

 

 

 

 

「……はァ?」

 

 

 

 

デンジの時が止まる。

 

(ヒョーショーシキ?アレ?あいつらなんで全員集まってんだ?次の競技は?あれぇ?)

 

それを考えている間に、オールマイトが表彰台に立っている三人にメダルを渡していく。そして何故か締めっぽい言葉を放っていく。

嫌な予感がするデンジ。

 

「ちょ…ち、ちょちょちょ…!」

「それではみなさんご唱和下さい!せーの!!」

 

 

「お疲れ様でした!!」『プルスウルト…えっ!?』

 

 

「そこはプルスウルトラでしょオールマイトぉ!」

「ああいや、疲れちゃってるだろうなって…」

 

 

周囲の人は仕方ないと言う風に笑っている。しかし、デンジは絶望した表情で、頭を抱えた。

 

 

 

 

 

 

「体育祭、終わったのォォ〜〜〜〜!?」

 

 

 

 

当初の目的である、『戦い方を学ぶ』ことが出来ず、慟哭するデンジであった。

 

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