ヴィラン名 『チェンソーマン』 作:ナメクジとカタツムリは絶対認めない
「ワシはここじゃー!」
我先にと布団の場所を決めてはしゃぐパワーを傍観しながらデンジは虚空を見上げる。
(──普段いつもこんな感じだから忘れてた…!こいつ…こんなんだけど、女だった……!!)
いつも破天荒な行動や言動をしているパワー。その普段の印象からデンジはパワーには女性としての魅力を感じることはなかった。しかし、今。狭い部屋の中に二人きりという状況で、否応無しにパワーを意識してしまっていた。
「──にしてもあいつはなんなんじゃ〜、天才たるワシにひどいことばっかりして!」
早速寝転び、ごろごろとしていたパワーは膨れっ面をしながらぼやく。その言葉にデンジは、はっ、として気を取りなおす。
「あ…ああ〜、あいつなぁ!おう!ヒデーなあ!」
「急にワシを殺そうとするわ、本当にアイツはヒーローなのか!?こんな可憐な美女が居たら普通は守りたいはずなんじゃがのう!」
「はあ?可憐?美女?どういうこと?」
「はあ〜〜、これだからバカは困る!可憐は、綺麗とかかわいい!美女は、美しい女という意味じゃ!」
「いやいや、意味は習ったけどさあ、使い道間違えてね?なんで今その言葉出てくんだよ」
「ん?」
「あ?」
「オイ、風呂空いたぞ入れ」
デンジとパワーがお互いに首を傾げ合っていると、シャツにジャージのズボンといったラフな格好をした岸辺が、ドアを開けた。その言葉にデンジは自分が風呂に入っていなかったことを思い出す。
「じゃあ俺入ってくるわ」
「おう」
スタスタと風呂場に向かう途中、デンジは一つの疑問を抱く。
(…いっつも『ワシが一番』とか言ってたパワーが譲ったぁ?雨でも降んのかよ〜。ま、いいか、俺ぁ気持ちよく入れるし)
少し引っかかる所はあったが、もともとデンジはそんなに気にするタイプでは無いので、すぐに割り切り、風呂場のドアを開けた。
「上がったぜー」
「おう、よかったの」
そのそっけない態度に目を丸くするデンジ。
「お前入らねえのぉ?汗クセーぞ」
けらけらと笑いながら指摘するデンジ。確かにパワーからは汗と血の臭いが漂っていた。岸辺を潰そうと躍起になり、その都度血みどろになりながら転がされていたのだ。臭いが出るのは当然のことであろう。現にデンジは、自分から臭う異臭を気にしていた。一人ならまだしも、今は女性と認識したパワーが居る。少し身だしなみには気をつけようとしていたのだ。
パワーも年頃の女性。自分の臭いに気づいていないのかと珍しく気を回したデンジは、それを指摘したのだ。しかし───、
「いや、ワシは入らんぞ?」
「は?」
デンジは耳を疑った。そしてその言葉の意味をよく噛み砕いて、ようやく──、
「きったねえ〜〜〜!!」
思いっきりのけぞりながらパワーを見る。その視線に気付いたパワーはムッと頬を膨らませてデンジを睨んだ。
「なんじゃ?文句でもあるのか?」
「文句とかそーいう問題じゃね〜だろ!?汚ねえしクセェんだよテメー!風呂入れ!」
一瞬で気を使うのをやめ、ストレートに指摘する。しかし、パワーはそれに反抗しながら胸を張る。
「ワシは小さい頃から風呂なんぞに入る習慣はつけてないんじゃ!三日に一回水で流せば良いと思っとる!」
「きったねえ!マジで汚ねえ!!お前もう布団入んなよ!!」
「学校ではイツカが煩く言ってきたから洗わざるを得なかったが、今は誰もワシを止められる者はおらん!ワシは自由じゃ!!」
そう言ってゴロゴロと布団に転がるパワー。それにまたデンジは顔を引き攣らせる。何故自分はこいつを一瞬でも女として認識してしまったのか。その後悔ももう遅い。
「ナシナシ!もうナシ!いろいろ無しだああアああ!!」