ヴィラン名 『チェンソーマン』 作:ナメクジとカタツムリは絶対認めない
「オギャア!」
岸辺は突っ込んできたデンジの首をへし折り、手に持ったナイフをパワーの脳天に投擲する。
「甘い!!」
しかし、何回も相方を死なせた結果、どのように岸辺が動くのか理解したパワーは血の塊を凝固させた盾でナイフを防ぐ。しかし、一瞬岸辺を見逃してしまう。岸辺はその隙をついてデンジと同じようにパワーの首をへし折った。
「ぐごご…が」
「うーん」
岸辺は首をこき、と鳴らして評価をつける。
「パワー、お前よくなったな。ちゃんと敵がどう出るか予測してる。それをどんどん深めていけよ」
「ぐ…が!」
首が変な方向に曲がっているパワーはうめき声をあげる。
「デンジ。お前はアレだ。行動するタイプのやつだから、とにかく動きのキレを磨け。そしたら味方も策を考えやすくなるし、敵も殺しやすくなる」
「あぁあ〜い…」
ギリギリデンジは返事を出すことができた。それを見届けた岸辺は、酒を煽りながらその場を後にしようとする。
「今日はもう終わりだ」
その言葉に、デンジは安堵する。
(このクソみたいな時間が終わった…!)
のそのそと這いつくばり、パワーを揺らす。
「おい、おいパワー。終わったぞ…」
「え、えんじ…ほんろか?」
ああ、と頷こうとした瞬間、岸辺が立ち去った方向からナイフが飛んできた。そのナイフはデンジの後頭部に刺さり、大量の血液が出た。
驚くパワーと意識が朦朧とするデンジ。
「獣が狩人の言葉を信じるな」
デンジは思った。このジジイいつか殺してやると。
「勝てねえ…」
「勝ってやってないだけじゃけどな」
デンジとパワーは向かい合い、先程の反省をする。
「今のままガムシャラにやってもダメだ。なんか無えのか?」
「ワシがトドメをさす。デンジはアイツを撹乱しろ!」
「それさっきとおんなじヤツだぜ〜、動きのキレ良くしても無理だと思うけどなァ〜、岸辺強いもん」
「デンジが無理ならワシも無理じゃ!」
「う〜ん」
二人して頭を抱える。すると、デンジの視線に雑に放り投げられた少年誌が目に入る。それを見ていたデンジの目が徐々に開き始めた。そして──、
「パワー、俺結構バトル系のマンガとか見るんだけどさぁ〜、力がない主人公ってだいたい頭能戦に持ち込むんだよ」
「おう」
「俺らは力がねえ。つまりはだ?」
「──オヌシにしては名案じゃのう、デンジ」
「しかもアイツぁ酒ぇ飲んでるからよ、頭バカになってる」
「頭脳でアイツ殺すか!!」
「なーんか俺スゲェ頭良くなってきた気がすんぜ〜!」
高IQコンビ、爆誕。
コンビニから帰った岸辺を待っていたのは、ナイフを持ったデンジと、不敵な笑みを浮かべたパワーだった。
「ただいま」
靴を脱ぎ、ハンガーにコートをかける。壁は一面、血液で赤く染められている。おそらくパワーのものだろう。
「──」
そんな風に考えていたその時、デンジがテーブルを蹴り上げた。岸辺はそれを受け止める。
「備品なんだから雑に扱うなよ」
「ウオリャア!!」
すると次に、パワーが血で作り出した手斧で岸辺の首を狙う。しかし難なくこれを防がれてしまい、逆に一発ナイフで首元を刺されてしまう。
それを見たデンジは焦りながら岸辺へと走っていく。
(喉刺して終わりだな)
デンジが斬りかかるが、それをいなして喉元にナイフを突き立て──。
「──!」
「お?」
──れなかった。デンジはわざと手のひらでナイフを受け、固定し、岸辺を壁に押し付ける。そして──、
「いふぇぷぁふぁー!!」
がぱりと口を開ける。その口内には大量の血液がなみなみと蠢いていた。岸辺は目を見開く。
(そーいや、デンジは口を開いてなかったな…)
それを見ていたパワーは、渾身の力を振り絞り、叫んだ。
「ブラッドスピアーッ!!」
その言葉と同時に、デンジの口内に溜められていた血液が槍の形に変化、そして凝固する。その槍が向けられた方向は岸辺の脳天であった。
伸びた血槍は岸辺に向かっていき──。
どす、という音が響いた。
「やったか!?」
デンジに問いかけるパワー。しかし、帰ってきた返事は。
「いや…やっふぇねぇぇ!!」
「いまの一番良かったぞ、マジで」
吹き飛ばされるデンジ。パワーが受け止めようとするが、個性を使いすぎた反動か、貧血を起こしてしまい、二人で倒れ込んだ。
岸辺は頬に通った赤い筋に指を添えながら二人に話しかけた。
「お前らにしては頭使ったな」
「まあな」
「壁の血はブラフか。そんで本命は口ん中と。──うん、おっけー」
レジ袋を持ち、自室へと戻る岸辺。
「今日は頭使ったからもうなし。部屋綺麗にしとけよ」
その言葉とともに、岸辺はナイフを投げた。
「うら!」
しかし、デンジはそれを警戒していた。ナイフを弾き飛ばして、岸辺への警戒を強めていく。その動作を見た岸辺は、レジ袋を床に置いてデンジらへと向き合った。
「合格」
その言葉を聞いた瞬間、今度こそデンジとパワーは意識を落とすのだった。