ヴィラン名 『チェンソーマン』   作:ナメクジとカタツムリは絶対認めない

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どっち?

「お前さ、結局本命は誰なの?」

「…あん?」

 

雄英高校の食堂。学生たちの声で賑わうその中に、上鳴のボリュームを潜めた声がかすかに発せられる。それを聞いたデンジはハンバーグを頬張りながら怪訝そうな顔をした。

 

「ほんめー…?」

「何言ってんだ上鳴?」

 

その疑問を含んだ呟きに、相席していた切島が賛同する。

 

「何って、恋バナだよ恋バナ!めっちゃ気になってんだ、俺ら。な?」

「あぁ…!オイラの手はお前を殺したくてうずうずしてるぜ…」

「何言ってんだコイツら?」

「な〜」

 

ますます意味がわからなくなる二人に、上鳴は期待を込めるような目で説明する。

 

「いやな?デンジは結局、八百万と耳郎どっちを選ぶんだって話」

「選ぶ?その二人がデンジと何か関係あるのかよ」

「まっじかお前!?あんだけ見てて気づかねえの?」

 

首を傾げた切島を見て、信じられないものを見るような眼をする上鳴と峰田。デンジはハンバーグに夢中だった。

 

「あ〜やだやだ、鈍感男は嫌ねぇ奥さん」

「ええ、ええ!ぶっ殺したくなりますわねぇ!」

「漢…?ありがとな!!」

「そうだ、こいつバカだった…」

 

急に口調が変わった友人にも爽やかな笑顔を見せた切島に、絶望しながら目を背ける二人。しかしそれも束の間、再びデンジに顔を向け直した。

 

「で、どうなんだ?」

「…選んでも良いんだったら俺ぁ…」

 

そう言ってデンジは少し考える。

八百万はいつも自分の面倒を見てくれている。今こそ仮免取得に向けねじれがデンジのメンタルケアをしているが、その前は学校というものに慣れてないデンジに良くしてくれていた。

更にその美貌とプロポーションは高校生のものとは思えない程で、デンジの目をいつも引いている。

それに比べれば耳郎の体型は恵まれたものではないが、彼女もまた花の女子高生。瑞々しく、ハリのある肌はデンジには眩しかった。

また八百万のように奥ゆかしく接してくるのではなく、同年代らしく気軽にデンジを想ってくれていた。デンジはその経験があまりないため、すこしむず痒い気持ちになっていたが、悪い感情はしなかった。

その点を踏まえて、デンジが出した結論は──。

 

 

「……どっちも!」

「「「えええ!?」」」

 

 

まさかの両方であった。その予想外の返答に驚愕する一同。

 

「嘘だろ!?オイ強欲すぎんぞ!」

「だってどっちも良いんだからしょうがねえだろ」

 

デンジはどこか開き直った様子で上鳴にドヤ顔で返す。唖然としていた峰田だが、すぐに目を剥いてデンジに掴みかかる。

 

「何でだよォォ!お前良い加減にしろよこのスケコマシィ!!それに選ぶんだったらヤオヨロにしろよ俺たちのヤオヨロッパイ同盟はどこ行ったんだデンジィィィィ!!」

「テメェ離せよ!シワついたらババアに怒られんだからさぁ!!」

「…でも確かに意外だったな。俺もデンジならヤオヨロかと思ってたわ。ここに入ってきたきっかけもヤオヨロだろ?」

「ん〜〜〜」

 

その上鳴の問いかけに、デンジは襟を正しながらぽつりと呟いた。

 

 

「…優しくしてもらってんのはみんなにだからな。最初はヤオヨロだけ好きだったけど、今は、まぁ…全員割と気に入ってるぜ」

 

 

「………デンジ!!俺や皆がいるからな!何かあればすぐ言えよ!俺たちが絶対守ってやっからな!!」

「ウェイになる!!俺がウェイになる!!」

「うおおおおおんデンジぃぃぃぃぃ!!」

 

 

その呟きに、切島は男泣きしながらデンジと肩を組み、上鳴は拳を握りながら涙を流し、峰田は涙と鼻水を垂らしながらデンジに抱き着いた。

デンジの絶叫が食堂に響いた。

 

 

 

 

「けどよ、お前もしヤオヨロに告られたりとかしたらオッケーするんだろ?」

「する」

 

正気に戻った三人は、周囲の人に平謝りして再び話題に戻る。迷う事なくその返事を返したデンジに、上鳴は深くため息を吐いた。

 

「迷いが無ぇー…」

「迷うこたぁねえからな!!」

「でも耳郎にも告られたら?」

「オッケー!」

「デンジ!それはダメだぜ漢らしくねえ!!」

 

ダン!と切島がテーブルを叩き、デンジを糾弾する。性根が真っ直ぐな彼は、デンジのその見境無しな思想を良しとしなかった。

 

「漢ってのは!ひとりの女を真っ直ぐ愛し続けるもんだろ!?」

「でも俺、多分ダメだぜ〜。俺ぁ俺ん事を好きになってくれる人が好きなタイプだからさぁ」

「一途じゃねえと!それこそその好いた女に嫌われっぞ!!」

「……マジでか!?」

 

それを聞いたデンジは焦燥の表情を浮かべる。そして、もし自分が八百万や耳郎に嫌われるという場面を頭の中で思い描く。

 

 

『信じてたのに…!最低ですわ!!二度と顔を見せないでください!!』

 

『あっそ。そういうことする奴だったんだね。──もういいよお前』

 

 

 

「イヤァァァぁ!!」

 

 

 

 

悲鳴を上げたデンジに周囲の生徒が驚くが、そんな事は彼にとって些細な事。今は想いを寄せる異性に嫌われてしまうかもしれないという心配で一杯であった。

 

「どどどどどうしよう!?俺どうしよう!?」

「落ち着けデンジ!まだ嫌われてるわけじゃない。ここから挽回してけば良いんだよ!」

「でもデンジは両方好きなんだろ?挽回も何も本人が変わらねえと意味無いじゃん」

 

その峰田の言葉に、また振り出しに戻るのかと切島とデンジが頭を悩ませた結果──。上鳴がぽん、と手を叩いて呟いた。

 

 

 

 

 

「じゃ、デートすればいんじゃね?確かめてこいよそれで」

 

 

 

 

 

 

「ヤオヨロ!ジロー!デートしよーぜ!!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぉあおうえええええ!!?」

「まあ」

 

帰りのホームルームが終わった一年A組に乗り込んだデンジの発言に、対照的な反応を示した二人。どちらがどっちかなど説明する必要もないだろう。

 

「な、何言ってんの!?」

「突然ですわね、何かありましたの?」

「ん〜、理由は言えねえんだけどさぁ…お願いします!!」

 

ぱん!と手を合わせて二人に頼み込むデンジ。

 

(な…なんで急にそんな事…!っ、ていうか時と場所とか考えろマジで!そういうのは、もうちょっと雰囲気が良い時に…。──ん?なんでヤオヨロも?え?)

 

その顔を赤くし、耳郎はぶちぶちと心の中で文句を垂れていると──。

 

「良いですわよ」

「えぇっ?」

「ヤッターー!!」

 

即決した友人に、耳郎は汗を垂らしながら八百万の肩を掴んだ。

 

「ヤオヨロ話聞いてた!?…でーと、だよ!?つか、ウチらのどっちかならともかく、どっちもなんて…」

「んー…デンジさんが何も無くそういう事を言う人とは思えませんし…。──それになにより、私こういうイベント憧れていましたの!!」

(あ、それか)

 

目をキラキラと輝かせた八百万を見て、自身の胸のようにすとんと腑に落ちた耳郎は、深くため息を吐いた。

こうなった時の八百万は止められない。それを踏まえて耳郎は、デンジを睨みつけながら口を開いた。

 

「……いつ」

「え?」

 

「いつデ…遊びに行くのかって聞いてんの」

「日曜日…。でも良いのかよ、お前はなんか嫌そうだけど…」

「ヤオヨロが心配なだけ。アンタと二人きりにしたら何があるか分かんないし。行こ、ヤオヨロ」

「あ…はい」

 

そう言った耳郎は鞄を肩に掛け、八百万を連れて教室のドアを開ける。…と、そこで動きを止め、少し体を震わせた。

何事かとデンジは眉を顰める。すると、真っ赤に変色した耳たぶのイヤホンをしきりに触りながら、耳郎は振り向いた。

 

 

 

「あと、…嫌じゃ、ないから」

 

 

 

そう言った耳郎は今度こそ八百万を引き連れて去って行った。デンジは少し固まっていたが、徐々に実感が湧いてきたのか──。

 

 

「──っよっっしゃああああ〜〜〜!!」

 

 

ガッツポーズをしながら教室を出て行った。残されたのはA組の少数。唖然としていた面々だったが、すぐに一部が黄色い声を上げた。

 

「──やばくない!?ラブコメの波動感じてる!」

「うわあ…!ええなあ、あんなん漫画でもあらへんよ…!」

「ねえ付いてっちゃダメかな?めっちゃ気になる!」

 

女子の声だけではなく、それは男子も同じく──。

 

「オイオイ、あんなことありかよ!」

「す、凄いねデンジくん…」

「青き春…」

 

「──やりすぎじゃね?焚きつけすぎた?」

「いや、でもあんくらいねえとあいつは分かんねえだろ…?」

「漢らしかったな!これで白黒はっきりつけれるぜ!!」

 

しばらくの間、クラスのざわめきは止まなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウォゥ、ウォウ、ウオウオーウ♪」

「ご機嫌だねデンジくん!何かあったの?」

「ああ!今度日曜にデート行くんだ!」

「───」

「……吐くならバケツあるからそこにしてくんねえかなぁ〜」




ミッドナイトは教師と言う立場なため彼女自身が自重すると思うので色恋沙汰には入れませんでした。ねじれちゃんはね。デンジ側がね。ゲロがね。
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