ヴィラン名 『チェンソーマン』   作:ナメクジとカタツムリは絶対認めない

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買い出し

「ゆーえいたいいくさい?」

 

昼休み、保健室に惚けた声が響く。その惚けた声の持ち主、デンジは手に持っていたパンを口に詰め込みながら目の前に座っている二人、飯田と八百万を見つめる。その食欲に辟易しながらも飯田は頷き、説明を始めた。

 

「ああ。近々雄英体育祭が迫ってきている。その準備として、デンジ君には飾り付けと、その材料を買ってきて欲しい」

「ん〜、いいけど俺どこに何があるかとか分かんねえよ?」

「その点は心配いりませんわ。私がデンジさんと同行しますので」

「マジで!?やったあ!」

 

両手を上げてその顔を喜色に染めるデンジに八百万と飯田は顔を見合わせ、苦笑する。

所で、何故彼らはデンジと恐れることもなく話す事ができているのか。オールマイトがデンジを説明した後日、生徒らは自分たちからデンジと接するために日替わりで放課後、保健室に通うようになった。その行動により、A組の生徒は全員デンジと普通に会話ができるようになったのだった。

 

「では、今日の放課後に正門で集合で良いですわね?」

「おお!分かったぜ!」

 

その言葉を聞いて笑顔が止めようにも溢れ出てくるデンジ。それを見た八百万は、どこか胸があったかくなる気がした。自然と笑みも出てくる。飯田もそれを微笑ましい表情で眺める。すると、授業開始十分前の予鈴が校舎内に鳴り響く。

 

「それでは、デンジ君!仕事、頑張ってくれ!」

「まじめにやるんですのよ?」

 

そう言って保健室を出て行く二人にはーい、と言いながら手を振って見送る。すると突然、デンジはソファーの上で身悶えし始めた。

 

(ヤオヨロと買い物…!こ…これってデート…だよな……!)

 

顔を赤くして八百万との買い出しの場面を想像する。すると、胸の辺りが痛くなるのを感じた。

デンジは不遇な境遇で育っており、人に優しくされる事が無かった。そのため、少しでも優しくされるとその人を好意的に見てしまう。故に、八百万の事が気になるデンジなのであった。

 

 

「ぐにゃぐにゃして変な子だねぇ…。──さっさと校舎綺麗にしてきな!」

「いてェ!」

 

 

それを見たリカバリーガールに保健室から叩き出されるデンジ。その際に打った腰を抑えながら、しかし笑みを浮かべて校舎の掃除に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ!デンジ!遅かったな、お前が最後だぜ!」

 

 

「なぁ〜〜んでお前らが居んだよ〜〜〜!?」

 

 

意気揚々と正門にたどり着いたデンジを迎えたのは、切島、上鳴、緑谷、飯田、常闇、砂糖、八百万、耳郎、麗日、芦戸の十人であった。

それを見たデンジは顔をしかめて八百万に説明を求める。

 

「ヤオヨロだけじゃなかったの?」

「私『だけ』とは一言も言っておりませんわ」

「えぇ〜〜〜!?」

 

その得意げな表情に何も言えなくなるデンジ。それを見た切島は何故デンジが落ち込んでいるのか分からなかった。

 

「なあ、なんでアイツ落ち込んでんだ?」

「あー…。たぶん八百万さんと二人きりで一緒に行くって思ってたんじゃないのかな?」

「それだわ緑谷。デンジのやつ、見るからに俺らのこと睨んでんだもん」

 

 

上鳴がけらけらと笑う。それを聞いた芦戸はデンジの腕を抱きしめた。突然の事にデンジは目を丸くする。

 

「ま!良いじゃんか!大勢で行った方が楽だし楽しいしね!」

 

その柔らかな笑顔と腕にまとわりつく柔らかいモノにデンジは懐柔されて──。

 

 

「そうだよなぁ!そん方が楽しいからなぁ!」

 

 

腕の感触を楽しみながら先程の反応とは真逆の反応をする。それを見た面々は(ああ…いつも通りだ…)と、苦笑するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショッピングモールについた一同は、二手に分かれて買い物をする事を提案。デンジのグループは緑谷、飯田、八百万、麗日の五人で、主に画用紙などの材料を買うのが目的である。

すぐに目的の店へ着いた一同は、飯田の指示のもとに材料を購入するのだった。

 

「あ!見て見て!ヒーローグッズがあるよ!」

「ええッ!?どこォ!?」

 

その麗日が発した声に即座に反応した緑谷。芦戸が指を指す方向には、オールマイトをはじめとした数々のヒーローのグッズが並べられていた。それに目を輝かせる緑谷。

 

「わあ〜!やっぱりカッコいいなオールマイト!No. 1ヒーローの風格がぬいぐるみからも伝わってくる…!あ!飯田くん、これ!」

「ん?…おお……!これは…!」

 

緑谷が手に取ったグッズを見た飯田は驚きの声を上げる。その手に持たれていたヒーローは、彼の兄である、ターボヒーロー『インゲニウム』であった。

 

「やっぱりすごいね、お兄さん…!憧れるなあ…!」

「…ああ!俺の自慢の兄だ、これくらい当然さ!」

 

「あ!それって飯田くんのお兄さん!?」

「グッズ化もされてるんですのね…!」

 

飯田の周りにA組の生徒らが集まって行く。それに一瞬嬉しそうな顔をした飯田だったが、すぐに表情を引き締める。

 

「君たち!俺の兄を評価してくれるのは嬉しいが、ここは公共の場!一塊になり、他のお客の迷惑になるような真似はしないように!」

 

その態度の変わり様に苦笑する一同。一区切りついた所で、八百万がこれからの行動を決めようとする。

 

「何はともあれ、これで私達の役割は終わりましたわ。あちらのグループに連絡して、どこかで合流しましょう…。────あら?」

 

しかし、その言葉は八百万自らが首を傾げた事により発する事が出来なかった。それを不審に思った緑谷は八百万に問いかけた。

 

「八百万さん?どうしたの?」

 

 

 

 

「────デンジさんが、いないのですけれど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?ココどこだ?」

 

そのデンジは絶賛迷子中であった。緑谷達がヒーローグッズに気を取られている間、デンジはショッピングモールの出入口付近でアイスクリームが売っていることを発見。そしてアイスクリームを買って、近くのベンチに座ってそれを食べ終わったというのがいまのデンジの状態であった。流石に困った顔をするデンジ。

普段の彼はこんな事は気にも留めない。しかし、その体の横には先ほど購入した画用紙などがある。これをそのまま持って帰らない訳にも行かない。だが一人では帰り道が分からない。

うんうんと唸っていたデンジだが、そこである事に気づく。

 

 

(……ん?血の匂い?)

 

 

彼の超人的な嗅覚は、日常ではあまり嗅ぐことのない匂いを察知した。ベンチから腰を上げ、その匂いがしている方向に向かって歩いて行く。徐々に強くなって行く血の匂いと比例し、先ほどまでいたショッピングモールの様な賑やかな所ではなく、人気のない路地裏へと場所が移動していった。

恐れる事なくデンジは更に奥へと進んで行く。───そして、デンジはその匂いの元凶に遭遇した。

 

 

 

 

「ハアア〜〜〜…」

 

 

 

 

 

『そいつ』は、全てが異常であった。包帯状の血に塗れたマスクを着けており、赤のマフラーとバンダナを薄気味悪く揺らしていた。右手には血液で赤く濡れている刃こぼれした日本刀を力無く持っている。そのだらりと出された舌はブツブツとささくれていた。しかし、最大の異常は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事であった。

 

 

「醜い…」

 

 

そいつは、ゆっくりと、しかしどこか力のある声で呟く。

 

 

「──何故このような『贋作』が世に蔓延っている?間違った世界は間違ったヒーローを生み出す。───そうは思わないか?小僧」

 

 

そして振り返って、その質問をデンジに投げかけた。

 

 

「おまえは何故ここに来たのかは知らんが、逃げるならとっとと逃げろ…。おまえは『粛清対象』じゃない……」

 

そう言い、踵を返そうとする男。デンジは考えた。

 

 

 

 

(…あれ?こいつぜって〜悪い奴だよなあ〜?人お殺してんもんな〜?と、言うことはだ!こいつを捕まえたら、──ねじれちゃんに褒めてもらえる!)

 

 

 

 

その180度曲がった思考をおかしいとも思わずにデンジは男に向かって言葉を放つ。

 

 

「…おい待てよ、一応俺あヒーローだぜ?そうやすやすと見過ごす訳ねえだろ〜が!」

「…?お前、ヒーローなのか…?…ハア〜〜、ならば話は早いな」

「あ〜?」

 

 

男はデンジに向かって再度声を掛ける。それはまるでデンジを試しているかの様だった。

 

 

 

 

「おまえは、()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

その言葉に首を傾げたデンジは、先程の考えをそのまま目の前の男にぶつける。

 

 

「お前を捕まえたらさあ〜、俺の好きな人が褒めてくれんの!だから───!」

 

その言葉を最後まで発することは出来なかった。──何故なら、デンジが勢いよくしゃがんで声が発せなかったからだった。男は、デンジの頭部目掛けて投げたサバイバルナイフを横目で見ながら、日本刀を構える。 

 

 

「──そんな『下らない』事の為にヒーローになったのか…!」

 

 

 

男から底知れぬ重圧感がその場の空気を支配する。しかし、デンジはそんなものには少しも気にしてはいなかった。むしろ自分の考えを『下らない』扱いされて少しムッと来ていた。故に、デンジは自分の胸に生えているワイヤーを思い切り引っ張って────!

 

 

 

 

 

 

「充分だろ〜がよ〜!!」

 

 

 

 

「ああ…!充分『粛清対象』だ………!!」

 

 

 

 

 

 

 

名も無き路地裏で、チェンソーの異形と、『ヒーロー殺し』が、己の信念の為──ぶつかり合った。

 




デンジ君とA組の皆さんの面談はいつか書きます。
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