牛木草、都心部。
牛木草市のすべての中心。地方屈指のオフィス街。
そこは、今日も多くの人々が行き交っている。
あたしはその中に紛れながら、目的地もなく彷徨っていた。
あたしは周りから拒絶され、家族以外とはあまり親しい人はいなかった。
だから、寂しいのは嫌だけど、ある意味孤独には慣れているといえた。
単独行動も、別に嫌いじゃあないのである。
むしろ、集団行動よりも気楽で自由に振る舞えるので、こっちの方が面白い。
でも、今はどうだろうか。一人でいるだけで、重荷を背負っているみたいに苦しい。
それは周りが、あたしより楽しそうに見えるから。
皆、笑顔なのだ。中には渋い顔してる人もいるけれど、すぐにそれはなりを潜め、町の賑やかさに溶け込んでいる。
そういうのを見てると、落ち込んでいるあたしだけがこの町において異質に思えてくる。
何だかあたしだけが取り残されたみたいで、酷く寂しい。
「ねえ、知ってる?最近大量の遺体が、警察庁の前にいつの間にか置かれてたって事件があったんだってー」
「え、こわ!犯人は?」
「まだ見つかってないっぽいよ。それにしても、こんなにいっぱい死体を置くなんて、気持ち悪いよね」
「うん。これじゃあ被害者の人達も可愛そ〜」
若い女性の二人組が、会話をしながら横を通り過ぎていく。
あたしはその話の内容から、入理乃は死体の処理を上手くやったんだな、と思った。
……ていうか、あんないっぱいあったのに、どうやって一変に運んだんだろうか。
まあ、入理乃の奴、意外と魔法でなんでもできていたし、知り合いに頼んだとか書いてあったから、その人の力でなんとかなったのかもしれない。
でも、知り合いって何者なのかしらねえ。
魔法少女だとは思うが、入理乃の知り合いの魔法少女って、キュゥべえが知っているなかでは限られてるんだっけ。
そして、その中であたしやサチを除外していくと、残る知り合いってのはミズハだけになるが……、普通に考えて裏切り者に死体の処理なんか頼むのか?
けど……、案外その可能性も捨て切れないんだよね。
ほぼ同じタイミングで、入理乃とミズハはいなくなっているのだし。
「……」
ふと、それが本当だったらサチはどう感じるのだろうか、と思った。
……多分、あたしがサチの立場だったら怒って絶交するだろう。家族の時と同じように。
でも、サチは違うだろう。彼女はああ見えて優しくて一途だ。きっと、どんなことがあっても彼女は入理乃を信じ続けている。
しかし、だからこそ、不用意に扱ったら、パリンって、その心が割れてしまいそうで。
……サチとどう接して良いか、正直なところあたしにはまったく分からなかった。
腕に巻いている時計が、もうすぐで三時半になろうか、という時だった。
あたしは歩くのも限界になって、高台にある公園のベンチで座り休憩をしていた。
とにかく暇だった。
何もやることがなかった。せっかく町に来たっていうのに、お金がないと何にもできない。分かってたことだけど、ホームレス生活ってきついことだらけだ。
途方に暮れて、何となく空を見上げる。
ふよふよと自由に流されていく雲が、何故だか恨めしい。
あたしは、はあ、と溜息をついた。
「おや、お嬢ちゃん。どうしてそんな暗い顔をしているんだい?」
「……誰?」
ボーとしているうちに座ってきたのだろう。
いつの間にか、浅黄色の服を着た老人があたしの隣にいた。
顔立ちは、バーテンダーにいるジェントルマンといった渋い感じだ。
年齢は恐らく、七十代から八十代だろう。しかし、それを感じさせない若々しさがあって、背もちゃんと伸びているし、杖も持っていない。
穏やかそうな顔をしているが、瞳には年寄り特有の、あの人生経験からくる明敏な輝きが浮かんでいた。
あたしは怖気付く。
こう言ってはなんだが、母方の祖父も、父方の祖父も小さい頃に亡くしているあたしにとって、この年代のおじいちゃんはあまり接したことのない人種だったのだ。
「そんなに怖がらなくても良いじゃないか。何も、とって食おうなんて思ってないんだから」
びびっているあたしに、朗らかに笑ってみせる老人。それだけで、とても良い人なんだろうということは伝わってきた。
だからこそ、ますます苦手に思えて嫌になってくる。優しくされるのが、一番きついから。
「僕はこの年になっても、散歩が日課でね。そして、散歩の終わりには必ずここに来て、景色を眺めるんだ」
何も聴いていないのに、彼は語り出す。
あたしはそれを真剣に聞くつもりもなかったが、暇でもあったので、一応耳を傾けていた。
「良い景色だろう?ここからだと、町を一望できる」
老人は、眼下に広がっている風景に視線を向けた。
立ち並ぶ、剣山の如き高層ビル。テレビ局がある電波塔。そして、少し外れにはマンションが密集し、更に端の方には緑がある。恐らく、都市開発が間に合わなかった地域だろう。
ここからだと、まるですべてが、模型のように見える。当然、人など見えもしない。……遠くから見れば、人間はその程度の存在なのだ。
「この牛木草も、随分と立派になったもんだ。……だが、知っているかい?どんなに大きくて立派な建物も、ここ十年ぐらいに立ったものなんだよ。牛木草は単なる田舎の都市に過ぎなかった。この公園の周りにある立派な住宅街だって、元々は田んぼだったんだ」
その話は小学生のころ何処かで、何となく聞いたことがある。
十年前、急速に発展した寝巣扉市には、一気にあらゆる企業が入り込んできた。
その企業に就職しようと集まった人達の受け皿になったのが、この牛木草であった。
こうして、市には住宅街や高層マンションが立ち並ぶこととなったのだ。
当然、それは田んぼなどや古い建物を壊して作られたものだ。批判も殺到し反対運動が行われたが、しかし若者の賛同者も多かったという。
そしてこの都市圏では、新しいものを作ろうという動きの方が活発だった。
古臭いものは忘れられて、次第に住宅街は受け入れられていったのである。
「その田んぼの畦道は、僕にとってはどうでも良いものだったが、しかし後に、死んだ娘にとっては子供時代の大切な思い出が詰まった場所だったとわかったんだ。……今思えば、反対運動に参加しておくべきだったね」
娘は死んでから、ようやく何を考えているのかはっきりと分かるようになった。その願いを叶えてやることは、もうできないというのに。
老人は物憂げに呟く。
その響きには、何処となく諦観が含まれている気がした。
「僕はね、長年後悔に取り憑かれているんだよ。それがどんなに苦しいことか、若い君にはまだ分からないだろうね。でも、だからこそ悩みは相談するべきだよ。君、何か悩みがあるんだろう?この老いぼれに少しでも良いから話してくれないかい?」
「悩みなんて、あたしには……」
「……じゃあどうして、君はどんなに暗く悲しい目をしているんだい?」
そう言われて、あたしは目を逸らす。
……反骨心からなのか、何も答えられなかった。
「……何で悩みなんかをアンタに話さなきゃいけないのよ。本当はあたしのことなんて、どうでも良いと思っているくせに。ていうか、さっきからあたしに話かけてきてうざいんだよ。どっか行って」
やがて迷った末に、わざとあたしは悪態をついた。
そうやってすれば、相手はあたしに関わってこないと思ったからだ。
でも、老人は臆することなくニコニコとするだけだ。
あたしはムッとして、さらに態度をでかくした。
「何でそんなヘラヘラ笑ってんの?もしかしてあたしを馬鹿にしてるわけ?」
「いいや、そんなことはないさ。君が突然、無理やり悪ぶってみせるから、ついおかしくなってしまってね」
老人は悪戯っぽく言った。
完全に見抜かれていた……。何で、さっきのだけで……。
「君は実に分かりやすいよ。思いっきり顔に出てたしね」
老人はあたしの真似をしてるのか、不自然に強ばった、むすっとした表情を作った。
やっぱり、この人苦手だ。全部心の内側を見られている気がして、落ち着かない。
よし、こうなったら……、
「……さっきは酷いこと言ってすいません。さようなら」
あたしは立ち上がると、その場からさっさと離れようとした。
老人がその場を退かないなら、自分から何処かに行こうとしたのだ。
「そうそう。僕、料理を作るのが趣味なんだ。丁度お昼時だし、君、何か僕の家で食べていかない?」
しかし老人は、あたしをマイペースに呼び止める。
その時、丁度答えるようにぐぅーとお腹がなった。
……朝から何も食べてなかったから、空腹がピークに到達していたのである。
恥ずかしさのあまり、赤面する。何かあたし今、物凄くかっこ悪いない?
「ほら、やっぱりお腹空いてるじゃないか。遠慮することはないんだよ、君」
彼も立ち上がって、あたしの元へゆっくり歩み寄る。あたしは相変わらず目を合わせられないまま、俯いてしまった。
「……で、でも、こんな見ず知らずのあたしを家に連れ込んだりして良いんですか?」
「ああ。僕も今日は寂しかったしね」
老人の笑みをちらりと横目で見る。
確かにそれは本人の言う通りの表情であり、居た堪れなさを感じさせるものでもあった。
……あたしは彼の誘いに乗るか少し悩んだ。
そして、首を縦に振った。
何かされたとしても魔法少女だから抵抗はできるし、それにお腹はさっきから空いている……。もう、限界だった。
「良かった。それじゃあ、案内しようか」
老人は柔和な顔を崩さず、背筋を伸ばしなら歩いていく。あたしはそれを、無言で大人しくついて行くのだった。
◆◇◆◇
案内された場所は、カフェらしき……いや、その外装だけ残っている建物だった。
当然看板だってないし、窓の内側はカーテンがあって見えない。
でも、雰囲気は良かったんだろうなぁっていうのが分かるデザインをしていて、それがより一層、寂れた雰囲気を強めさせていた。
にしてもここ、何か見たことある気がする。何処となく懐かしい気がするのだ。
そう思った時、脳内の記憶が一瞬弾けて消え、あたしははっとした。
そうだ、ここは──
「……もしかしてこの店って、モノトーンって名前じゃありませんでしたか?」
あたしは少し期待しながら、隣の老人に聞いた。すると、そうだけど、と、予想通りの返事が返ってきた。
「よく知ってたね。こんな十年も前に潰れた店のことなんて」
「……こういうのも何ですけど、あたしは夜見鳴子さんのファンなんです。だから、知ってました」
あれは、中学に入りたての頃だっただろうか。
あたしは既にクラスに馴染めずにいて、空気にような存在だった。
その時期に、あたしは本屋で夜見鳴子の作品集と出会った。
あれは一言で言えば、衝撃的だった。
孤独と絶望が捻じ曲がって混ざり合い、でも何処かもがこうと必死になってる……。まさに、そんな感情が作品として具現化していたのだ。
あたしは見ているだけで泣きそうになった。まるで、あたしの心の内を代弁してくれてるように感じたから。
それ以来、あたしは夜見鳴子にのめりにのめり込んだ。
我ながら、キモいオタクになったのである。
一時期、生活習慣やら服装やら何やら、夜見鳴子を真似てたしね。
それで、最終的に夜見鳴子の実家がカフェだって知って、はりきって来たのだけど……、これが潰れてたんだよね。
ショックだから、よく覚えているよ。
でもまさか、今になって入れるだなんて思ってもみなかった。
もう本当、めちゃくちゃ嬉しい。
だって、夜見鳴子の実家だよ?彼女の作品の源流がここにはあるんだ。
一ファンとしては、この上なくご褒美に決まっているじゃないか。
「そうか、嬉しいことを言ってくれるね。娘も喜んでいることだろう」
老人は少し影のある笑顔を浮かべた。
あたしはどうしてか、“僕は後悔に取り憑かれている”、という言葉を想起していた。
「……ん?……娘?まさか、鳴子さんのお父さんなんですか?」
「そうだよ」
「……大変失礼いたしました」
あたしは申し訳なくなって、頭を下げた。
まあ、この潰れたお店がモノトーンだって思い出した時点で、何となく予想はついてたけどさ、憧れの人の父親に向かって暴言吐いてたなんて、死にたくなるよ。
「ここが入り口だよ」
裏口に回って扉を開けると、すぐ目の前には緩やかな階段があった。
それを老人は、手摺りを使わず何なく上がっていった。むしろハイペースすぎて、ついていくのがやっとだった。
二階の居住スペースはそれほど広くなかったものの、古い洋風の家具、著名な画家が手がけた絵、それにフランス人形の置物など、アンティーク調になっていて、なかなかお洒落だった。
なるほど、確かに外国好きの夜見鳴子が好みそうなものばかりだ。
流石、彼女の実家だけある。見ているだけで、あたしにしては珍しくテンションが上がってた。
老人はあたしをリビングのテーブルの席に座らされると、台所から食材や調味料を出し、料理を始める。
だが、見ているだけというのも辛い。あたしは何かしようと、老人に呼びかけた。
「……あたし、何かお手伝いしましょうか?」
「良いよ良いよ。公園の時も言っただろう?遠慮しなくて良いって」
彼はあたしの方を見ていなくても、優しい声でそう返した。
「それより、名前を言っていなかったね。僕は夜見ミキオというんだ。君はなんていうんだい?」
「こゆり……。色梨こゆりです」
「こゆりちゃんか。良い名前だね」
「……ありがとうございます」
緊張のせいか、感謝の言葉が少し素っ気ない感じになってしまった。
公園の時もそうだけど、もうちょっと愛想よくしろよ、あたし……。
「こゆりちゃんは、不登校ってやつなのかい?」
「まあ……、そんな感じです」
本当は不登校どころか、家出なんだんだけどね。
「鳴子も不登校だった時期があったよ。あの子は変わり者だったからね。クラスに馴染めなかったんだよ」
──そして、夜見鳴子は大人になって、芸術家を始めてからも誰にも受け入れられなかった。
作品をたくさん作っても、批評家達からは陳腐だの、才能がないのだと罵られ、アルバイトや副業を掛け持ちしながら、精神的にも肉体的にも、何度も何度も病気になったという。
その期間、約三十年程。
そしてやっと、晩年になって評価がもらえるようになり、夜見鳴子は瞬く間に人気芸術家へとのし上がったのである。
だが、皮肉なことにそれが逆に夜見鳴子にストレスを与えてしまった。
売れるものを作らねばならないというプレッシャー。自由に過ごしていた時間を奪われ、悪質なファンからは誹謗中傷が付き纏うようになる。
半年を待たずして、夜見鳴子の精神はすっかり病んでしまい、彼女はある日ビルの屋上から飛び降りようとした。
自殺しようとしたのだ。
でも……、迷いがあったのだろう。ギリギリのところで彼女は踏みとどまった。
しかし、……ここからが、本当の悲劇であった。
何と、丁度その時、強風が吹いたのだ。
それは地上にいる人たちには何の問題にもならないものだったが、屋上にいた夜見鳴子だけは違った。
その風に煽られ夜見鳴子は転けてしまい──落ちて死んでしまった。
町を行き交う、多勢の人の目の前で。
それは完全なる事故死であったと、どの本にも記録されている。
だが、わざとだったんじゃないか、という声もあり、ファンの間でも自殺説がまことしやかに囁かれているほどだ。
……夜見鳴子の人生は、不幸そのものだったといえるだろう。
最初から最後まで誰からも理解されず、誰からも認めてもらえなかった。
彼女もあたしと同じように、家族だけが支えになっていたのかもしれない。
ただ一つ違うのは、あたしは家族に捨てられたこと。そして、家族を残して一人、逝ってしまったことだ。
「僕はね、今とても嬉しいんだよ。鳴子を好きだと言ってくれる人がいて。……そうだ、良かったら、鳴子に会っておくれよ」
「え……?」
あたしは驚いた。
もちろん、ここでいう“鳴子”は既に死人なので、きっと本人のお骨のことを言っているのだろう。
でも、仏壇に手を合わせることができるなんて……。
「頼むよ。あの子も久しぶりにファンに会いたいだろうし」
「は、はい!!ぜひ!!……あ」
嬉しくなったからだろうか。あたしは柄にもなく、大きな声を出してしまった。
また恥ずかしくなって、この大馬鹿な頭を抱え込みたくなる。
「君は本当に鳴子のことが好きなんだね」
ミキオさんが感心したように言う。
あたしは愛想笑いしか浮かべられず、何も言うことができなかった。
忙しなく動き、料理をする老人の背を見る。
トントントン、っていう包丁の音が何処か胸にきて、あたしは目を細めた。
……普通の人の日常がそこにはあって、そして今、あたしはその中に入り込んでいる気がした。
町を歩いているときに感じた疎外感がなくて、一種安らかな気持ちになっていく。
「ちょっと雑に作ってしまったんだけど、どうかな?」
しばらくしてテーブルに並べられたのは、肉じゃがやご飯、それに魚の煮物といった、シンプルなものだった。
食べてみると、じんわりと暖かくて柔らかな味が広がっていく。
それは久しぶりにまともに食べた、暖かい食事だった。
「……美味しいです、とっても」
あたしは、お母さんの手料理を思い出していた。
お母さんは料理が上手い人で、どんなに素朴なものでも美味しく作ってくれていた。
この料理は、その味付けととてもよく似ている。
……どうしようもなく懐かしくなってきてしまう。
双子の妹の死。入理乃の裏切り。両親の拒絶。遠く離れてしまった、あたしの心の拠り所。
失ったものの記憶が頭の中をフラッシュバックしては、切なくて、悔しくて、悲しい思いが駆け巡る。
「辛い時は、思いっきり我慢せず泣くと良い」
ミキオさんが、背中をさすってくれた。あたしの目頭が熱くなって、決壊する。
「はい……」
静かに目を閉じる。あたしは声も上げず、感情に身を任せて涙をそのまま流し続けた。
◆◇◆◇
私は、町の中をソウルジェムを持って歩いていく。
こうすることで、魔女の魔力を追って、探索しているのである。
でも、どんな原理でキュゥべえは私に、こんな魔力を捉えられるとかいう変な力を与えたんだろう。
考えれば考えるほど、ファンタジーに片足を突っ込んでいる。
うん。やっぱり、魔法少女は不思議。でも、それでこそ面白いなあ……。
「集中が途切れているよ。もっと神経を研ぎすますんだ」
そんな呑気なことを考えていると、肩に乗ったキュゥべえからお説教が飛んできた。
私はちょっとしつこいと思って、口答えをした。
「分かってるよ。もう、うるさいな……。そんなネチネチ言わなくても良いじゃん。これ以上言うと怒るよ?良いの?」
「そういうこと言うの、止めてくれないかい?ボクにはキミが本気で怒っているのか否か判別が難しくて、困るんだよ。なんせキミ、殆ど無表情なんだから」
私はよく、笑わないとか鉄面皮とか言われる。自分ではそんなつもりはないけど、多分他の人より表情筋に感情が出にくいんだろう。
キュゥべえも、私のことを分かりにくいと思っているようだった。
まあ、私からすればお互い様だけど。だって、キュゥべえこそ怒ったりしないし、ちょっかいを出しても慌てないもの。
「うーん……。殆ど感じられないなあ……」
キュゥべえに言われた通り、一応真面目に頑張ってはみるものの、殆ど魔女の反応が掴めない。
もしかしてもういないのかな?それとも、誰かが倒しちゃったとか?
なんか、考えれば考えるほど面倒臭くなってきた。足も疲れているし、正直辞めたい。
でも、もっと頑張れ私。
ここは気合だ。根性だ!!やればできる、やればできるよ!!うおおおおおおおお!!
「見つけた……!!」
再び意識を集中させると、ほんの小さな、しかしはっきりとした魔力反応を感じとることができた。
私はそこへ向けて走り出し、路地裏に回る。
……絶対にここだ。魔力反応も強いし、キュゥベえが何も言ってこないのも、正解ってことで良いんでしょ?
私はキュゥべえに教わった通り、魔力を使って、
すると、壁一面にスマホのを象った紋章が浮かび上がる。あの日見た、水平の魔法少女の前に現れた紋章とは違うが、概ね似た同じだ。
これが、結界の入り口なんだろう。
「……いよいよ、初めての魔女狩りだね。
「うん」
魔法少女に変身しながら、口元に笑みを浮かべる。
ああ、気分が高揚して、ゾクゾクする。この先に、私の日常にはない、知らない世界があるんだ。
「さあ、はりきって魔女狩りを──およ?」
結界へ入ろうとしたその時、紋章が由来で消えてしまった。同時に魔力反応がどんどん離れていく。
まさかこれは……、
「逃げられたね」
冷静にキュゥべえが分析する。
私は悔しくて悔しくて仕方がなかった。だって、せっかく楽しみにしてたのに、魔女狩り!!
「すぐに追いかけるんだ、柘榴」
「言われなくても」
私は再度変身を解除すると、魔女が逃げていった後を追う。
そうして、あの潰れたカフェの方角へと走っていったのだった。
江戸柘榴
牛木草出身の新人魔法少女。クールな顔立ちの美少女で、表情も常に無表情ではあるが、その中身は常にハイテンションで底抜けに大らかで明るい。座右の銘は気合と根性でなんとかなるで、衝動的かつ破天荒。また自己肯定感が高く、へこたれてもすぐにけろりと忘れてしまう。しかし、良くも悪くも夢見がちで理想を信じ続ける傾向にあり、時にその勇気は無自覚な傲慢となってしまう。
今後の小説の参考のために、アンケートを取ります。この小説で良かったところはどこですか?
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話のテンポの良さ
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文章