魔法少女こゆり☆マギカ   作:鐘餅

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すべてのきっかけ

「……もう朝か……。たっる……」

 

 それはうた──古鐘歌羽が、いつも朝起きた時に発する一言だった。

 

 窓から差し込む目を焼かんばかりの眩しい太陽の光。この時期特有の、肌寒い外の空気。スマホから鳴り響く、けたたましいアラーム音。

 その全てが煩わしい。うたはそれらから逃げるように、寝ているベットの毛布で足の先から頭までをすっぽり覆う。

 ふわふわとした感触に包まれ、非常に気持ちが良い。

 一言で言えば、天国だ。この瞬間が、生きている中で一番幸せと言っても過言ではない。

 

 ……あ〜、もうこのまま、二度寝したいなぁ。

 学校たる過ぎて行きたくないもん。

 授業も勉強も何もかもがめんどくさい。やる気が起きないんですよ、本当。

 ていうか、こうして呼吸してるのでさえもめんどくさい。めんどくさいって考えてるのもめんどくさいし、めんどくさいって感じるのもめんどくさい。生きているのがめんどくさい。

 いっそのこと永眠できないかな……。何やってもどうせ無駄だし、どうせ何にもならないのだ。ならもう、このまま──

 

「歌羽!!いつまで寝てるの!!さっさと起きなさい!!」

 

 お母さんの怒鳴り声が一階から聞こえた。

 ……あれは間違いなく機嫌が悪い時のやつだな。また昨日、お父さんと喧嘩したのだろう。早く起きないと、八つ当たりの拳が飛んでくる。

 うたは仕方なく、のそのそと、まるで芋虫のような動きで毛布から出て、身を起こす。 

 ……ああ、なんて憂鬱な一日の始まりなんだろう。

 ああ、めんどくさい。

 

 

 

 

 

 

 

 うたはいつものように、今日もバイクで高校に登校する。

 そうして、またいつも通り授業を受けた。

 

 その時間は、つまらないことこの上ない。

 先生の話はまるでお経のように聞こえるし、教科書の文字は意味のない記号のように見える。

 授業中こっそりと寝たいとも思うが、しかしうたの席は残念なことに一番前なので、真面目にしているふりをしなければならない。

 たるくて、何もやりたくないってのに。

 

 だいたい勉強などに価値はあるのだろうか。

 必死に学んだり覚えたりしても、大半は無駄なものばかり。

 数学の定理を、生活のどこの場面で使う? 文豪の作品を知ったところで、頭などよくならない。

 それに、特に興味もないし。なんか、どうでも良い。何も楽しくない。

 

 一体何のために学校に来ているのか分からない。

 うたの母親と父親は言った。

 将来のために、せめて高校は通いなさいと。

 それで嫌々勉強させられて、それなりのところに入ったけど……、今思えば無理やりニートにでもなれば良かった。

 

 学生という身分は、良く考えればうたにとって苦痛でしかない。

 ……進路、というものを突きつけられるからだ。

 自分の未来について、自分で考える。自分の未来のために、自分で努力を積み重ねる。

 それがとんでもなくめんどくさい。

 出来れば、誰かが適当に決めてくれれば良いのにと思う。

 どうせどこに行ったって、つまらないに決まってるもの。……うたは、良い方に何も変われないから。

 

「……、いっつ……」

 

 憂鬱な気分になったせいか、ごぽりとお腹の中でガスが蠢く感触がした。

 それはゴロゴロと腸で暴れまわり、トイレに行きたくなるくらいの腹痛を発生させる。

 数日前から、何故か突然こういった症状が酷くなったのだ。おかげで、気分が悪くなってしょうがなくなる。特に授業中は最悪だ。

 我慢するしかないので痛みが延々と続き、吐き気さえこみあげる。

 ……早く、授業なんて終わってくれ。うたは教室にかけられた時計の針を見つつ、そう願うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「連絡は以上だー。来週小テストあるから、勉強しとけよー」

 

 担任の男性教師がそう言うと、教室から出て行く。

 これで放課後のホームルームは終わり。今日の学校での予定は終わる。しかし、めんどくさい時間はまだ続く。

 

「歌羽!!一緒に帰ろー!!」

 

 早速、友達が三人やってくる。

 うたは瞬間、ちょっとだけ苦笑いしそうになっだ。

 ……胸の内に、もやりとした気持ちが浮かんだのだ。

 

「え〜、どうしよっかな〜……」

 

 それでも、明るい表情をうたは崩さない。

 崩して仕舞えば、陰口を叩かれるというめんどくさいことが起きるからだ。

 そうでなくとも、気まずい空気が生まれてしまう。それもまた、めんどくさい。

 

「もー、そんなこと言わないでよ。意地悪だなあ。このこの」

 

 偽った甲斐もあってか、友達達はうたの気持ちに気づかずこちらをおちょくってくる。

 仕舞いにはそれがエスカレートして、こづかれもした。

 彼女達は明るく……、端的に言ってしまえばキャピキャピしているギャル集団で、かなりうるさい。

 故に距離感の詰めかたもちょっと強引だったりするのだ。

 

 それを苦手だ、とうたは思う。

 馴れ馴れしいのは煩わしく、そしてめんどくさい。

 じゃあ何でそんな相手と友達になっているのか、と言われたら……まあ、“数日前”はそのこと自体を気にしていなかったからだ。

 さらに言うなら、この子達はうたと行方不明になったエルが幼なじみだと知らないから、色々都合が良いのだ。

 

「……ん?」

 

 その時、バックに入れていたスマホからピロン、という音が鳴った。ラインの着信音である。

 どうやらマナーモードにするのを忘れていたらしい。

 友達に少し待ってもらって、うたはスマホをバックから取り出し、ラインの内容を確認する。

 

 表示されたのはただ一言、三階の空き教室に来てください。

 その送り主はこの前ラインに登録したばかりで、うたに話しかけてくるのはこれが初めてだった。

 

「……ごめん、一緒に帰れない。先輩が、用事があるから来いって」

「えー、楽しみにしてたのになあ」

 

 残念がる友達。少し申し訳なくなる。

 あの人に呼ばれたのを、ラッキーって感じている自分がいるからだ。

 

「ごめんね」

 

 謝ると、うたはバックを持って教室を出て行く。

 廊下を歩きながら、うたは何でこんなにも薄情なったのかということを考え続け、“契約”のことを思い出しては落ち込んだ。

 同時に、心の中でキュゥべえのことを散々罵る。

 もやもやした思いを、自分のせいだとは思いたくなかったのだ。

 それが悪いくせなのだと自覚はしている。でもやめられなかったし、止めるつもりもなかった。

 ……うたは自分のことに関しては何もかも諦めてる。努力もしたくない。だから、自分の性格を直すのもしない。

 

 

 

 

 

 三階の空き教室の扉を開けると、そこにうたを呼び出した人はいなかった。

 何かあって遅れているのだろうか。あの人結構顔が広いみたいだし、もしかしたら誰かに捕まっているのかもしれない。

 

 とりあえず中に入り、入り口近くの机の上にバックを置く。

 そうして換気でもしようと窓を開け放った。からりとした、しかし清涼な風が入り込む。

 

 うたは窓枠に手をかけ、外の景色を眺めた。

 水彩絵の具を一滴垂らしたような、綺麗な夕焼け。

 校庭を集団で走っているのは、男子野球部だろうか。白いユニフォームを赤く染め上げ、元気よく掛け声を上げている。

 

 何のためにあんなことをやっているのか、と思わず笑ってしまう。

 走るのとか、きついし、だるいし、疲れるだけだ。

 それって何が楽しいのだろう。……努力が報われるわけ無いのに。

 

「……、性格悪いなあ……、うたって」

 

 そこまで考えて、自嘲気味に笑った。自分は一体何様だ。

 こんなこと言って、馬鹿馬鹿しい。

 結局のところ、嫉妬しているだけじゃないか。

 うたは何をやっても達成感があまりなく、努力ができない。

 そんな自分をうたは嫌い、しかしやっぱり何も変えられないから悪態をついて、周りの人を見下しているのだ。

 

「でも、……どうせ努力しても認められない……。何かやったところで、それに見合った評価は誰もくれないじゃない……」

 

 ……それは、頭にこびりついて離れない言葉。“夜見鳴子の死”がうたにもたらした呪い。

 このせいで、うたは常に無力感に苛まれ続けている。

 だから、いつもたるい。面倒くさい。

 それに“契約”のせいで、ここ数日気分が最悪だ。楽しめていたはずのものが楽しめなくなって、好きなものも嫌いになってしまった。

 友達の時が良い例だ。うたはあの子達と共にいる時間が好きだったのに、色んなことが気になって今では苦痛になっている。

 そしてその度に自己嫌悪して、人のせいにして、また言い訳ばかりを繰り返してて……、なんかもう疲れて、何も考えたくないし、何もやりたくない。

 

 ……そう思うけど、うたはどうしようもなく矛盾した行動をとってしまう。

 自ら死ぬ勇気とかは全然なく、惰性で毎日を過ごしているくせに、命の危険がある魔法少女を続けている。

 ……エルのことも諦められず、ずっと探して。あんな薄情な“契約”したくせに、うたは彼女が戻ってくると信じてサチに変なことを聞いてしまった。

 

 うたは一体、なんなんだろう。何がしたいんだろう。自分で自分がわからない。

 また、無力感が襲ってくる。

 

「自分から呼んだのに、待たせてごめんなさい。向かっている時に先生に話かけられてしまって」

 

 佇んでいるのも飽きて、バックを置いた机の席に座って転寝をしていた最中だった。

 教室に、ようやくうたを呼び出した人がやってきた。

 

 ワインレッドの、セミロングまでの髪。おっとりとした、温和そうな顔立ち。

 ブレザーの制服はきっちりしているが、それがかえって胸部の大きな膨らむを主張しており、目のやり場に困る。

 彼女の名前は、恵比寿小豆(えびすあずき)。この学校の三年生で、うたの先輩。

 そして、入理乃とミズハの行方不明件のことを教え、気をつけるよう言ってくれた魔法少女だ。

 

 彼女はうたの元までやってくると、本当にすみません、とゆっくりとした動きで頭を下げた。

 相変わらず丁寧でおっとりしている人だ。そういう性格は嫌いじゃないから、失礼がないよううたは慌てて立ち上がると、いえいえと首をやんわり振った。

 

「……あの、歌羽ちゃん。大丈夫?」

「え……?」

「かなり疲れたような顔をしているなあって思って。……もしかしてエルちゃんのことを悩んでいたりとかしてました?この前言ってましたけど、二人は幼馴染なんですよね?」

 

 そう言われ、少し自分でも驚く。

 うたは、そんな感情が表に出ていたのか。いつもいつも、外面を取り繕っているのに。

 

「……確かに、エルのことは心配です。でも、きっと何処かで元気にやっているはずです。あの子、諦めが悪くて負けず嫌いなんで、しぶとく生きてますよ」

 

 何の根拠もない楽観的な考えを、うたは自分に言い聞かせるように答えた。

 ……それは、こゆりの受け売りのようなものだ。

 屁理屈も、信じ込みさえすれば本人にとって真実になる。……ようはエルを失った悲しみを誤魔化せるってことだ。

 うたはエルが死んだなど、認めたくない。……あの子はうたと違って、“呪い”に打ち勝っていたのに。

 

「そうですか……。でも何かあったら、いつでも相談してくださいね。これでも先輩ですから」

 

 胸をとん、と小豆さんは叩いてみせる。しかし、ありがたいとは思っても、彼女の言う通り相談しようとは思えなかった。

 ここでも、無力感が湧いてきたのだ。なるようになれば良い、と投げやりな気持ちになって、この悩みはどうしようもないと、うたは諦めた。

 

「あの、小豆さん。それで話って何かようですか?」

 

 会えば少し話す程度の仲だが、しかし彼女から呼び出されたのは滅多にない。

 何か重大な話に違いないと、うたは気を引き締めて聞いた。

 すると、小豆さんは神妙な顔をしてこう言った。

 

「私、牛木草の魔法少女の共同体を作ろうと思っているんです。どうか、歌羽ちゃんも入ってくれませんか?」

「共同体……?」

 

 うたは復唱し返す。それが何のためのコミニティなのか、よく分からなかったのだ。

 

「ええ。牛木草の魔法少女を統制し、管理するための共同体です。

 ……最近、新人魔法少女が増えている、というのは知っていますか?」

「いいえ……」

 

 首を振ると、そうですか、と小豆さんは落ち着いた様子で頷いた。

 

「なら、説明しましょう。この牛木草の──、いえ、今の寝巣扉都市圏の現状を」

 

 彼女は黒板の前に立ち、そこに向かってチョークで何かを書き始めた。

 それは寝巣扉都市圏に属する市の、大まかな位置関係を表す図だ。

 真ん中にある寝巣扉市を中心に、トメ井は真上、牛木草は寝巣扉市の真下に。そして左はいさ土、右に飛雄角が広がっていた。

 ちなみに図に書かれていない早島市は牛木草の右、飛雄角の真下に位置している。立地的にあまり色々恵まれない土地で、牛木草と飛雄角の経済成長の煽りを受けに受けまくっているらしい。

 

「現在寝巣扉都市圏は、急激に発展しています。特にここ最近の成長速度は異常です」

 

 小豆さんはそう話しながら、チョークで図そのものを指差す。

 うたは、やたらニュースで都市開発の話が流れていることを思い出した。

 

「……確かに、そんな話をよく耳にしますね。でもそれが、新人魔法少女が増えるのとどんな関係が?」

「じゃあ、魔法少女になる子はどんな子が多いと思います?」

「えーと、それは……」

 

 自分のケースを参考に考える。

 うたの願いは、簡単に言ってしまえば性格を変えることだった。その明るく能天気な思考が、嫌で嫌で仕方がなくなってしまったのだ。

 つまりうたは、自分に不満があったからこそ魔法少女になった。

 それはきっと、他の子も同じなはず。だいたい、願いの本質なんてどれも似たようなものである。

 

「精神的に満たされていない子、ですか?」

 

 出した結論を答える。

 小豆さんはその通り、と知的な笑みを返してくれた。

 

「ようは、何かを悩んでいる子が魔女少女になるということです。

 そして社会の発展による不安定さは、その悩みを発生させる温床となり得ます。

 また人々の負の感情は魔女を呼び寄せ、その管理のためにキュゥべえは魔法少女を増やさざる得ないんですね」

 

 寝巣扉都市圏の図の横に、小豆さんは魔女の図とキュゥべえを描く。

 ……こんな時に思うことではないが、案外絵が下手くそだった。魔女が怪物であるのはわかるからいいとして、キュゥベに至っては顔が胴体より三割以上大きく、尻尾が線になっている。

 

「これにより、寝巣扉都市圏全体の魔法少女の総数は増加しているわけです。新人である歌羽ちゃんも、その流れに巻き込まれたといっても過言じゃありません」

 

 ……なら、あのこゆりや柘榴も、同じ理由で巻き込まれたのだろうか。

 可能性としては充分にあり得る。そう考えると、なんとも複雑だ。

 

「ここで問題になってくるのが、縄張り争いについてです。

 魔法少女の増加により、魔女との数のバランスは崩れないでしょう。しかし、魔法少女の縄張りのバランスは崩壊します。

 何故ならその分、一人当たりの狩場が狭まるからです。

 また、新人が新たに縄張りを獲得するのは難しい。既に他の場所には古参の魔法少女がいますし、今に争いが起き始めてもおかしくはありません」

「……小豆さんはそれを防ぐために、共同体を作ろうと?」

「ええ。しかし、理由はそれだけではありません」

 

 そこで小豆さんは、寝巣扉都市圏の図……、正確には牛木草の部分をチョークで刺した。

 

「今、牛木草全体がまとまらないと、とんでもないことになりかねないからです」

「……?とんでもないこと、ですか?」

 

 無言で小豆さんは図に、三つ矢印を書き足した。

 いさ土と飛雄角から伸びる二つの矢印は、それぞれ牛木草に。そして牛木草からは、寝巣扉市に一直線に矢印が向いている。

 

「寝巣扉都市圏で現在最も不安定なのは、飛雄角といさ土です。

 観光業が盛んな飛雄角は多くのホテルが立ち並ぶ一方、昔ながらの旅館などが潰れ社会問題になっています。いさ土は海に面した工業地帯ですが、こちらも前からある工場が後からやってきた企業などによって潰れ、失業者が多く出ています。その他にも経済成長が遅れていたりと歪な部分が多くある。

 つまり、飛雄角といさ土は魔法少女が他の市より生まれやすい場所なんです。縄張り争いも激化し、そこから何人もの魔法少女が追い出されることでしょう。

 ……その魔法少女達の行き着く先は、ここ牛木草である可能性が高い」

「それは何故……?」

「簡単な話です。

 牛木草は治安が悪いとはいえ他の市より安定している。魔法少女の増加率は恐らく最も寝巣扉都市圏で低いでしょう。追い出された魔法少女が向かうには、それだけで十分な理由です」

 

 小豆さんがそう言いながら、顔を曇らせる。

 ここまで説明されたら、うたでもその原因が分かる。

 

「……そうなったら、今度は牛木草の縄張り争いが激化して……」

「また新たに追い出される人が増えるでしょうね。そしてきっと今度は、その人達は寝巣扉に向かう。牛木草から寝巣扉の学校に通う子も多いし、交通手段も整っているから、そっちの方に流れると思います。

 そして、際限なく争いが広がっていく」

 

 ……少しだけうたは、その光景を想像してみる。

 自分勝手に縄張りを主張し、別の魔法少女からグリーフシードを奪う魔法少女。逆に、過剰防衛を行なってしまう魔法少女。

 その暴力の輪がつながって、やがて大きな動乱となり、うたも巻き込まれる。

 

 ぞくりと背中に冷気が這い寄った。

 痛いのも、理不尽な目に合うのは嫌だ。うたは、そんなことにはあいたくない。

 無力感に苛まれても、命は大切だ。

 

「……それを食い止め、牛木草の魔法少女を守るためにも、共同体を作り上げなければならないんです。お願いです。歌羽ちゃんも、その共同体に入ってください」

「分かりました。うた、その共同体の一員になります」

 

 うたは即答した。

 引っ越しも簡単できず、他のところに魔女狩りに行っても、結局は逃げ道はどこにもない。なら、ここは素直により安全な方へ流れた方が良いと考えたのだ。

 

 小豆さんはうたの反応に、にこりと微笑んだ。どうやら満足して、気分を良くさせたらしい。

 

「ありがとうございます。

 ……あ、そうそう。良ければ、もし他に牛木草の魔法少女の知り合いがいたら教えてくれませんか?その子達にも、共同体の話をしなければならないので」

 

 そうと言われて、色梨こゆりと江戸柘榴の顔が思い浮かぶ。

 会ったのは一度きりだが、あの二人が縄張り争いに巻き込まれるのはなんとなく気分が悪い。

 うたはどうせだから、と、彼女達の名前を小豆さんに教えた。

 

「……あまりよく知りませんが、この前色梨こゆりと江戸柘榴という二人の魔法少女に会いました」

「聞いたことのない名前ですね。どんな子達でしたか……?」

「ぶっちゃけ、二人とも癖が強い性格だと思います」

 

 うたが感じた印象をそのままストレートに伝える。

 誤魔化そう、という気はさらさら起きない。こういうことに関しては、我ながらはっきりと言うタイプなのである。

 

「まずこゆりですが、かなり感情の起伏が激しくて不安定です。また人との関わりを避けようとしている感じがあって、共同体の話をしても煩わしいと感じるかもしれません。

 柘榴は悪い子ではないですが、非常にマイペースで何を考えているのか分からない部分があります」

「……成る程。それは確かに癖が強い性格ですね……」

 

 小豆さんはうたの話を聞いて、難しい顔をした。その気持ちは良く分かる。厄介なものは、それだけで億劫になる。

 

「後、こゆりにはまだ問題があって……、彼女、早島の船花サチという魔法少女と同盟を組んでいるんです。しかもサチは入理乃の元パートナーで、ミズハと知己だったらしく、共同体に引き込む際、そこが少々面倒かと……」

「そうですか……。にしても、奇妙なこともあるもんですねぇ……。まさか、歌羽ちゃんの知り合いの知り合いが、入理乃ちゃん達と繋がりがあるなんて」

 

 少し小豆さんは驚いたように言う。

 本当に、うたも変な縁だと思う。こんなドラマみたいな偶然が起こるなんて考えてもみなかった。

 だが、会うことはあっても、自分から積極的にこゆり達とは関わることはもうあまりないだろう。

 正直、苦手なのだ。こゆりはいまいち掴みどころがないし、柘榴のテンションはついていけない。

 だからこそ、一緒にチームをやるのも断ったのだし。面倒くさいのには関わらないのが一番だ。

 

「情報提供、助かりました。とても参考になりましたよ」

「……こちらも、少しでもお役に立てたようで良かったです。

 ところで、牛木草の共同体って何か名前とかあったりするんですか?」

 

 好奇心から聞くと、小豆さんは、はい、と頷いた。

 

「“プライマリーカラー”。意味は原色。かの有名な夜見鳴子のオブジェと同じ名前です」




恵比寿小豆
牛木草のベテラン魔法少女で、歌羽が通う高校の三年生。活動期間は約二年半。牛木草の魔法少女を守るべく、牛木草の共同体を作り上げようとしている。
性格は礼儀正しく穏やかでおっとりとしているが、根はせっかちなため行動に移るのは早い。また、自身の経験から守られる者は限りがあることを悟っており、現実主義者な面を持つ。
昔は引っ込み思案な人間だったが、現在では交友関係がとても広く、魔法少女の友人が数多くおり、情報通。

今後の小説の参考のために、アンケートを取ります。この小説で良かったところはどこですか?

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