コンクリートで出来た、丸みを帯びた天井
緑のスパンコールが敷き詰められて地面。そして無数の点在する木の梯子と、艶やかな女性の写真が貼られた看板。
そんな不可思議で不気味な空間──結界。
そこにいる主は、コウモリの翼にタコの触手を持つ異形だ。機動力はない代わりにその触手の一撃は強力で、当たればあっという間にぶっ飛ばされて一般人なら即死であろう。まあ負けることはないと思うが、それでも十分注意すべき魔女であるとあたしは思う。
が、しかし、それも四人いれば話は違ってくるのだった。
決して皆弱いわけではないので、あたし一人で追い詰められた魔女など、文字通りタコ殴りに出来る。
おかげで、あっという間にコウモリの魔女は消滅したのだった。
……しかし不思議なことに、あたしはその戦闘中に違和感を覚えた。
柘榴とサチが、なんだかお互いのことしか気にしてない動きをしていたのである。
そして歌羽も、いつもより何だか無鉄砲になっているような気がした。
まるで、少し性格が変わったのかように。
それは実に奇妙な現象だったといえるだろう。このまま続いたらどうしようと密かに不安になったほどだ。しかしその現象は結界が消失してすぐ、衝撃的な歌羽の行動によって終わるのだった。
◆◇◆◇
「おえええええええええ!!」
結界が消え、礼拝堂内部に戻る。そうして歌羽がサチと柘榴を寄せて何らかの言葉を交わし、あたしに一言謝ってから三人揃って(サチは歌羽に連れられて、柘榴は二人に自ら付いて行った)外に出た瞬間、突如として餌付く声が響き渡った。
「え……?な、何?何なの……!?」
いきなりのことで混乱し、あたしは数分硬直。その後、慌てて外に飛び出し、次の瞬間驚いて目を見開いた。
何とそこには、ぐったりとした様子で地べたに座る三人の姿があったのだ。
皆、具合が悪そうだ。サチはさっきから顔面を蒼白させているし、歌羽に至っては胃液を吐いたらしい。あまり見たくはないが、彼女の手には大きなビニール袋が握られており(恐らくサチのレプリカ精製の魔法で作られたものだ。多分これを作り出すためにサチを外に連れ出したのだろう)、それが妙に臭い匂いを漂わせていた。
一番マシなように見える柘榴でさえ、歌羽の背を摩りながらも俯いており、微妙に苦しそうな表情をしている。
あまりの変わりっぷりに、あたしは動揺して再度固まった。しかしそのままでもいられず、
「……だ、大丈夫?」
と心配しながら、あたしは三人に近寄って声をかける。
すると歌羽がゆっくりした動作でこちらを見て、苦笑いを浮かべた。
「……いきなりで驚いたよね。おまけにゲロったし。でも出来るだけ気にしないでもらえると、うた、色々と助かります……」
「え、ええ。分かったわ」
あたしは元気のない様子の彼女に相槌を打つ。そうしてあげないと、なんかちょっと可愛そうな気がしたのだ。
「無事で良かった……。どうなることかと思って心配したんだぞ」
「うん。本当に助けてくれてありがとう。……それでその、大丈夫なの?」
サチが続いて顔を上げ、こちらの身を案じてきてくれた。あたしは礼を言い、逆にサチの方を心配する。するとサチは、力なく首を振った。
「見ての通り大丈夫じゃねーよ……。最悪だわ」
サチは少し仏頂面になる。
声にはいちいちそんなの聞くな、という子供らしい不満が見え隠れしていて、そしてそんな感情に同意するかのように、柘榴もまた覇気のない様子で頷いた。
「そうだね。こればっかりは大丈夫じゃない。私の方も歌羽の方だって大分やばいもん……。こゆりも、体調悪くなってないの?」
「正気に戻ってすぐの頃は、ものすごく気持ち悪かったわ。歌羽みたいに吐いちゃったし。でも今はマシ」
あたしは安心させるようにそう答えた。
流石に全快……、とまではいってないが、大分気分は回復はしている。
普通に会話して動いても大丈夫だし、何なら普段通り戦えと言われたら戦えるだろう。
……それを見抜いて歌羽もグリーフシードを渡したんだろうし。
「……こゆり、ごめんね、あの時二人で話し込んでちゃって。本当はこゆりのとこ行かなきゃ行けなかったんだけど、あの時はその……、ちょっと色々あってサチ以外あまり目がいかなくってさ」
「そうだな……。しょうがなかったとはいえ、ちょっとねえ……」
「いやそれを言うならうたもだし。うたが二人をああなったのはうたの責任だから、うたも謝らなくちゃいけない。ごめん」
申し訳なさそうに謝る柘榴に、心なしかしゅんとしている顔になっているサチ。そして訳が分からないことを言って頭を下げる歌羽。三人のそれぞれの謝罪に対し、あたしはいやいやいやと首を振り、
「そこまで謝らなくて良いわよ。こうして今三人とも心配してくれてるんだし、その想いだけで充分嬉しいわ」
「……そう。だけど、本当に良かったぁ。生きていてくれて、とっても嬉しいよ」
赤髪の少女は、うっすらと笑みを浮かべた。
それは相変わらず分かりづらいものだったが、どうやら安堵の笑顔らしい。
彼女の目の奥は、暖かいものでいっぱいだ。
そしてまたサチや歌羽の方も無言だが、ほっとしたような表情をしてくれた。
何となく気恥ずかしいというか、居心地が悪いような気になってきた。
サチと柘榴と歌羽。三人に心配されて嬉しいのに、それを認めたくないという思いがあったからだ。
あたしは今更のように、“誰も信じてなんかない”んだって“あたしを操ってた奴”に自覚させられた。ずっとずっとずっと、愛されたいと願いながら、でも愛されるわけがないと諦めてきたんだって。
あたしはそんな矛盾を抱えた自分が醜く思えて、殺したいくらい憎たらしい。
だから、皆が必死で助けてくれたこの命も、いっそ助からない方が良かったのではないかと思ってしまう。
……こんな化け物のあたしに、価値なんてあるわけない。悪いけど、本気で心配しないで欲しい。
──これ以上そうされると、愛ってなんだか分からなくなる。
「まあ、そんなのどうでも良いわよ……」
あたしは余計な考えを首を振ることで断ち切る。
こんなことを今ぐだぐだ悩んでいても、キリが無い。
それよりも、
「……ねえ、ところで今ふと思ったのだけれど、もしかして、皆“あいつ”のプレッシャーの影響を受けちゃったの?」
「そうだよ」
思い浮かんだ可能性をそのまま問えば、すぐに歌羽が肯定してくれた。
やはり、皆あたしが吐いた時と同じような感じの状態になっているらしい。だってあたしと症状が似ているもの。
「歌羽、あたし分からないことだらけなの。何があったのか、説明してくれないかしら……?もちろん今じゃなくても良いから」
「……いや、今この場で話すよ。うた、割と楽になってきたし」
あたしは後でで良いから、色々と話すようにお願いする。
しかし歌羽は、とても快調したとは思えない顔ながら、説明すると言い出した。
もちろん無理をするなとあたしは即座に忠告する。
見たところ、どうやら歌羽がこの中では一番ダメージを負っている。
当たり前だ。奇襲に回っていて“あいつ”に存在を気づかれなかった他の二人と違い、歌羽は真正面から虚のプレッシャーを食らったのだから。
「他の時の機会でもいいでしょう?今無理やり話しても悪化するだけじゃない」
あたしが再度忠告すると、うんうんとサチと柘榴が同意する。二人もう歌羽にゆっくり休めと思ってくれているらしい。だが意外なことに強情なのか、すぐさま歌羽は首を振った。
「ううん。そういう訳にいかない。というか、うた、そうしたくない。皆で納得して決めたこととは言え、“それ”をこゆりに説明しないままなのは、なんかもやもやする。だから、うたの口から全部話すよ」
「……まあそこまで言うのなら、テメエの好きにするといいよ」
ふん、とそっぽを向くサチ。それに歌羽は困ったような笑みをし、何も言わず、尊重するような目で見る柘榴に視線を少し移してから、あたしの方へ顔を向ける。
「じゃあうた、色々と説明するけど、いいかな」
「ええ……。サチの言う通り、そこまで言うならアンタの好きにするといいわ」
あたしはある種、溜息をつきたくなるような感情を抱えたまま、肯首した。
歌羽の目にはこちらが思った強い光がある。どうもあたしじゃあ、それを変えられそうにない。
「うん。じゃあ一から話すよ。と、その前に一個だけ良い?うた、ちょっと知り合いに電話がしたいの。心配して待たせてあるから」
「……別にそれくらい良いけど」
「ありがとう」
歌羽は礼を軽く礼を言うと、スカートのポケットから携帯を取り出して番号を打ち込み、スマホを己の耳に当てる。そうして繋がった相手に具合の悪さを伝えないようにするためか、出来るだけ明るい声で話しかけた。
「もしもし、家主さん。調停役の歌羽です。こゆりを追いかけて、無事魔女を退治しました。……はい、……はい。……それでですね、無事倒したのは良いんですが、被害者の一般人が何人もいるんです。その中にはどうやら怪我人もいるので、家主さんが来てくれると嬉しいんですが……。……え?被害者の中にちっちゃい子のお母さんはいないかって?……、はい。その特徴の人なら、見かけました。……ええ、恐らくその子の母親で間違いないと思います。……。分かりました。応援をお願いしてくれるのは心強いです。ありがとうございます。ええ、またのち程」
しばらく話し込む歌羽。
そうして二分ぐらいしたのち、お互い伝えたいことは伝え終わったのか、歌羽はペコリと律儀にお礼をしてから電話を切る。
あたしは野暮だと思いつつも、興味本位から電話の相手が何者なのか尋ねた。
「一体誰と会話していたの?家主さん、とか言ってたけど」
「弦家角さん。うたと同じ魔法少女だよ。こゆりも一度会ってると思うよ?公衆トイレで」
「は……?」
一瞬意味が分からず、あたしはきょとんとする。しかしすぐにトイレという単語からある人物が思い浮かび、途端に微妙な顔をしてしまった。
「あのセーター着た人か……」
意外な繋がりがあったことに、びっくりである。
まさかこんな形であの人の存在がここに来て出てくるとは思いもしなかった。世の中、案外広いようでいて狭いのかもしれない。
「……って、何であの人が公衆トイレにいた事を知っているのよ。あたしがあの人とそこで会ったって本人から聞いたの?」
「うん。家主さんね、トイレで会った子──こゆりが魔女を追っかけてるって私達に連絡くれたんだよ。……まったく、一人で無茶して駄目じゃない。今頃私達が来なきゃ、天国行きだったんだからね、こゆり」
柘榴が何処か責めるような口調で話す。あたしはまたも微妙な顔をし続けた。
余計なことを、と思わずにはいられなかったからだ。
あたしは何もあの人に、助けてなんて頼んでない。そこまでしてもらおうとも考えてなかった。それなのに勝手に歌羽達を助けに出させて、お節介にも程がある。
……だが、あたしはそのおかげで命を救われたのだ。そのことには素直に感謝せねばなるまい。故に、複雑な気分でいっぱいである。
「あの人が呼んだってことは……、もしかしてアンタ達、あの人の仲間なの?」
「そうだよ。まあ厳密に言えばこの船花様はちょいと特殊だけど、歌羽達と色々あって仲良くなったから、行動を一緒にさせてもらった」
「…………、そう」
あたしは勤めて平静な態度で答える。
もちろん、サチと柘榴と歌羽が仲良くなっているという事実に、あたしは内心で動揺していた。
こっちはずっとサチの仲間を探そうと必死だったのに、肝心のサチは知らない間にあっさりと仲間を手に入れていたのだ。今までやってきたことは一体なんだったんだと、思わずにはいられない。
しかし同時に仕方がないと、何処か諦めてもいた。
だってあたし、自分が裏でやっていること、本当は良くないことだと知っているもの。
そしてその方法で仲間を見つけたのだとしても、きっとサチは喜ばないことも知っていた。
だけどあたしはムシャクシャしてたから、半ばヤケクソ気味にそのことを言い訳にして、色んな子に喧嘩をふっかけてたのだ。しかもあたし、自分はやっていること何もサチに行ってないし。
こんなの、知らない間に仲間を作られても何も文句言えないし、仕方がないでしょ。
……そう、これは仕方のないことだ。ズルイあたしへの罰に違いないんだ。
だから、平気……。あたしは平気だ。どうせどうせどうせどうせどうせ──
「──こゆり。貴女何考えてんの?」
──その時、何故か歌羽の目が鋭くなった。
あたしは思わずびくり、と肩を縮こまらせる。それだけの迫力を、彼女が纏っていたからだ。
サチと柘榴もこれにはビビリ上がり無言になっている。
「……うた、そういうの気に入らないんだよね」
「……」
静かに、だがはっきりと怒気が含まれた声。それにあたしは自分の頭の中が筒抜けになったような恐怖を感じ、さっと目を逸らした。
歌羽はあたしをじっと猛禽類のような目で見つめると、しばらくの間何か思案するような顔をし、
「まあ、話を戻そっか」
と、先ほどまで出していた怒りの表情を消して、普段どうりの何処かほわほわした雰囲気を再度身に纏った。
そのことが更に恐ろしくもあったが、あたしはとりあえずこの場は乗った方が良い気がして、ええと空返事を返した。
「それでさっきも会話の中にあった通り、うた達は家主さんに頼まれてね、こゆりの後を追ったんだ。
そうしてここに来たとき、すでに“あいつ”──いや、もうずっと“あいつ”じゃ不便だから、この際“
「……じゃあ、歌羽達は──」
「当然、気が狂うほどじゃないけど、具合は悪くなったよ。……動けなくなっちゃったんだ。そこで苦肉の策として、うたは自分の固有魔法である精神操作──“洗脳”を使ったの」
“洗脳”。
歌羽は、はっきりとした声でそう言った。
ようは歌羽は、サチと柘榴を操った、と告げたのだ。
当然、あたしは訝しがるしかない。
その言葉の意味は理解ができるが、それをどのように使ったのか皆目検討もつかなかったからだ。
それにその響きにも少し不快感があって、少々の抵抗感があった。故に、僅かに嫌な顔をしてしまう。
しかし歌羽の方もそれは同じだ。本人も洗脳という固有魔法が嫌いなのか、洗脳という単語を口にいただけで、顔を一瞬だけ思いっきり歪めた。
「作戦実行のために、無理やり暗示を自分たちにかけて、その役割を遂行できるようにしたんだよ。まずうたは、自分の中で“蛮勇”を増幅させて、プレッシャーを受け止められる役目を担うだけの抵抗力をつけさせた。そしてサチと柘榴には、“サチと柘榴で互いに協力し合おう”という意識を高めさせて、あの状況でも動けるようにしたんだ。
とまあ色々と言ったけど、ようは自分達はその役割を出来ると思い込ませて、プレッシャーに対する恐怖とかを無理やり麻痺らせてただけなんだよね……」
苦笑いを浮かべる歌羽。
その説明は色々と納得がいくものであり、同時に色んなことに対して疑問が一気にはれた。
初めに急に皆が具合が悪くなったことについてだが、これは魔法を解除したことによって、今頃になって一気にプレッシャーの影響が出始めたせいだろう。急に外に飛び出したのは、その魔法の効果時間が切れる
ことによるものか。
また彼女達が普段と違っていたのも、暗示にかかった状態だったからだ。
歌羽が若干無鉄砲だったのは、蛮勇が少し増幅されていたから。サチと柘榴が互いの動きしか気にしなかったのは、“互いに協力し合う”という意識が強すぎたためだ。これによって互いの存在がなによりも至上のものとなり、他の人のことが少し無頓着になっていたのだろう。
「本当はグリーフシードを渡した時に説明するべきだったんだろうけど、時間がなかったから、こんな形で話すことになってしまってごめんね。あともう一回、二人にも改めて謝っておくけど、柘榴とサチもあんな風にしてごめん。皆、嫌だったと思う……」
歌羽はバツが悪そうに謝罪する。
そんな彼女を見てあたし達は顔を見合わせるなりして、互いの意見を無言で交わし、柘榴が代表して、
「別に良いよ。状況が状況だったし」
「……うん、ありがとう」
歌羽はあたし達を見渡し、感謝の言葉を述べる。その何処か救われたような表情が、とても印象的だった。
「……ところで、何か他に質問はある?今ならなんでも答えるよ。なんか思ったより体調回復してきたし」
彼女はそう、若干自分の血色の良くなった顔をあたしに向ける。あたしは無理は良くない、と思ったのだが、本人が真摯に向き合おうとしてくれてることもまた事実なため、一つだけ気になっていた点を質問した。
「アンタ、調停役って名乗ってたけどさ、その調停役ってなんなの?」
「──牛木草の共同体、プライマリーカラーにおける役割の一つ。その地区ごとに配置されたリーダーみたいなもんだよ」
「それが歌羽……?ていうかプライマリーカラーって……」
……なんかその名前、聞き覚えがある。
確か助けた新人の子が、プライマリーカラーっていう組織があって、そこ入るか入らないか迷っているとか言ってたような……。
その時はふーん……、としか思ってなかったけれど、いざこうしてその名前が出てくると、なんか心の底がざわざわするというか。嫌な感じがする。
これ以上先を聞いてると、何か良からぬことが起こりそうな気がしてならないのだ。しかしそんなことで会話を中断できるわけもない。そうしたら、不審がられる。
「知らない?プライマリーカラーってのは、牛木草をまとめあげようとしてる共同体だよ」
歌羽はあたしの思っていることを見抜いているのか、見抜いていないのか。周りに構わずに話を続ける。
あたしは嫌な予感に何故か冷や汗を流しながら、それに耳を傾けていた。
「……プライマリーカラーは牛木草の魔法少女を統率して、争いを減らすための魔法少女の集まり。互助団体みたいなもんだと思ってくれて良いよ」
「……」
「プライマリーカラーはさっき言ってた調停役ってのを格地域において、そこの問題をその人に任せるって形で運営してる」
「……」
「うたもその問題解決のために動いてたりするんだよ。……例えば何処ぞの誰かさん──“風来坊”を探したりね」
「────」
ドク、とその瞬間、心臓が飛び跳ねた。
風来坊──それは新人の子を助ける時にカッコつけて名乗った名前。いつの間にか知れ渡たり、恥ずかしいことになんか異名みたいになってしまった渾名だ。
つまり“風来坊”=新人魔法少女を助ける魔法少女って図式が成り立つわけで。
そしてその名前を知って、今この場でそれを言ったということは──
「……、まさか──」
魔法少女達の目を見る。その視線はあたしに向けられており、特にサチの瞳の中には様々な感情が渦巻いているようだった。
「────」
あたしはその意味を自然と悟り、後退る。恐怖で体が震えた。いっそ頭でも抱えて、丸まっていたかった。
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で。
思考を埋め尽くすのはそんな言葉ばかり。だって秘密にしてたはずだ。サチは牛木草にいない。だから知るはずもない。それとも何か。歌羽達と繋がりができたことで、自然とあたしのことを知ったのか。いつ?いつの間に?どうやって?
嘘だろ嘘でしょ嘘だと言ってよどうしてこんな、悪いことだと思ってはいるわよ、いるけれども、何でバレるバレてしまうずっと隠しておきたかったのに、どうしてどうして何で──
動悸が激しくなる。目の前の視界がいつの間にかぐるぐる歪んでいく。当然、サチの顔を見ていられないし、その他の少女の顔でさえ見られない。どれもが歪で、ぐちゃぐちゃだ。
……しかし、これはあたしが見たくないと思っているからこその錯覚だろう。ただの現実逃避。
本当は皆の顔なんて見えてる。はっきりと。だからあたしに訴えるように、ただ一言そこに刻まれている言葉もよく分かる。
それは即ち──“どうしてそんなことをしたの”、だ。
皆は、あたしが何を思って新人魔法少女を助け、傷つけたかについて知りたがっているようだった。
……でも、それにあたしは答えられない。もうあたしでも良くわからないもん。分からないんだよ。
自分がおかしくなっているのかもしれない。“愛されたいのか愛して欲しいのか”結論が出せず、矛盾していて空っぽで、でも何処か愛を期待してしまい、何をしているのかすら実感ができない。すごく曖昧な気分。
だから何がしたかったのとか、そういう問いを投げかけられても困る。しかもそれをよりによってサチにどうしてされなくちゃいけない。
……考えたくない。考えたくない、考えたくない、考えたくない。
「……っ!!」
あたしは刹那耐えきれなくなり、脱兎の如く逃げ出した。
何も見たくなくて、何も感じたくなくて、すべてを捨て去りたいとも思ったから。
しかし──
「柘榴!!」
歌羽の合図が児玉する。
次の瞬間柘榴が石版を掲げ、その赤髪の少女の影の中から無数の黒い手腕が飛び出した。それはあたしを捕まえんと、手の平を開いて向かってくる。
あたしは突然のことに驚きつつも、咄嗟に身を捻ることで回避。そうして距離を取るために大きく跳び、そのまま逃走を図ろうとした時──突如一瞬だけ、意識の酩酊が起こった。
「!?」
体に力が抜ける。
そのせいで体勢が少し崩れ、前のめりに転けそうになる。瞬間、鎖の鳴る音が聞こえ、刹那両腕に痛みが走った。
見ると地面から三本の鎖が伸び、それがあたしの右腕と左腕をまとめて拘束している。動かそうにも、ギシギシいうだけでびくともしない。
「お前ェ……」
「一瞬だけ精神操作をさせてもらったよ。うた、こゆり強いからあんまり捕まえられるか自信なかったけど、動揺して簡単に引っかかってくれたから、すごくラッキーだったね」
具合が悪そうにしながらも、歌羽は自分を誇るように胸を張った。
そこには、普段のような自信のなさがまるで見られない。そうして彼女はふっと笑い、
「ごめんね。だけど、しばらくしたらどっか行っちゃうだろうし、貴女をここで逃すわけにもいかなかったから。──さあ、うた達とゆっくり話し合うとしようか」
今後の小説の参考のために、アンケートを取ります。この小説で良かったところはどこですか?
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キャラ
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設定
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展開
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話のテンポの良さ
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文章