自分の持てる重さを勘違いしていた。
一人で持っているものなど何もなかったのに
10,責任だけが増えていく
さて、響ちゃんとの楽しい女子会(聖遺物)を楽しんでいたら司令にお呼ばれして別室に移動となってしまった。最近はおとなしくしてたからお説教は無いと思うんだけど
「私、また何か怒られるような事しちゃってます?」
「自覚があるなら少しは大人しくしてくれ…… 今回はその手の話ではない。今回響君が合流したことによって装者も四人となりある程度組織だって動くことになる。その中で現場でも司令塔になる人間を立てようという話だ」
「何となく見えて来ましたけど私がそれにっていうことで良いですか?」
「そういうことだ。頼めるか?」
「問題ないですが、一応理由をお聞きしても? 年齢順です?」
「そんなところだ。他にも細かい理由はあるが今はいいだろう。よろしく頼む」
「立浪紫香、了解しました。……つかぬことをお聞きしますがお給料とかは上がります?」
「その辺りは増えた業務分は増えるだろうな。出撃時の報告書。装者たちの訓練や検査計画、それらを実行するための調整など諸々の分は上乗せする」
「結構真面目に管理職なんですね、それ現場に出ながらやるの結構しんどそうな気が」
「だからといって君を現場から離すわけにも行かないからな。装者の管理も一番近くで見ている人間が行うのがいいだろう」
「色々丸めて了解です」
ついに出世で中間管理職だわーい。これ仕事増えただけな気がするけど、お給料増えるならまあ頑張ろう。
そして私はいつまで前線に居続けるんだろう。体力的にはまだまだ行けるけどそろそろこのピチピチのボディスーツ精神的にきつくなってきてるんだよね……
さて、装者を管理する立場になってしまったので、少しはどうするかを考えておこう。今後起こり得る一番の問題は響ちゃんと翼ちゃんの喧嘩騒動だ。直接的な衝突は司令の拳でなんとかなるけどその後ギスギスが長引くのは嫌だしな……
てか、私管理職になっちゃたから私が止めないといけないのでは?流石に天の逆鱗を真正面から受けるのは嫌だな……
まあ、今回は奏ちゃんもいるしなんとかなるでしょ。でもそっかあれがないと響ちゃんが司令に弟子入りしない可能性もあるのか。それはそれで結構怖い未来も見えそうで悩みどころね。
今更若人の考えなんて想像できないし実際に聞くのが一番ね。
響ちゃんがどんな話をしてるかはわからないからその辺りも実際に聞いていくしか無いかな
久しぶりに装者四人が集まった昼下がり。丁度いいので私がみんなのまとめ役をしますよ-て伝えると三人とも好意的な反応をくれた。人望はすこしはあるようで良かった良かった。
「とりあえずは、色々みんなの話を聞きたいからこの後一人づつ部屋に来てもらうわ、その間他の二人は待ってもらうけどまあ、楽しくおしゃべりでもよろしくね」
出世したおかげで小さいけど個室もらえたしそこで話しましょう。最初はやっぱり響ちゃんからかな
「失礼します!よろしくおねがいします!」
「そんなに力まなくても大丈夫よ。まあ座って、ゆっくりお話しましょう」
響ちゃんは緊張しているのかガチガチになりながら入ってきた。響ちゃんに関しては昨日今日加入したみたいなレベルだし、特に難しいことは聞かずに雑談程度にしておきましょう。
「最近調子はどう?まだ実際に出動はしていないから、わからないことの方が多いと思うけど」
「そうですね~、いまのところ検査と訓練ばっかりなのでなんか実感わからない感じですね。でも訓練でも全然動けないし、アームドギアも出てこないしこのままで良いのか不安になっちゃいます……」
まあ、この段階でポンポンアームドギア出されたら困るし、そのままでも良い気もするけど、やる気がある状態で結果が出ないのはしんどいかもね。
「今はこの環境に慣れるのを優先してもらえばいいと思うわ、私達三人はこれでも何年も訓練と実践をこなしてきてるからね、いきなり追い抜かれたら悲しくなっちゃう」
私に関しては遠くない未来で追い抜かれるでしょうけどね。
「まあ、響ちゃんの訓練なんかに関しては今後の課題として、学校生活とかはどう?新しくリディアンに入ってばっかりだし大変なことも多いんじゃない?」
軽く話題を変えるつもりで学校生活の方に話を振ると、響ちゃんの表情が少し曇る
「訓練も有って少し大変なのもありますけど、親友に秘密にしないといけないのが辛くて……」
ああ、未来ちゃんのことか、こればっかりは仕方ないとはいえ装者のメンタルケアも考えないといけないのが大変だ。
「その辺り司令から説明があったと思うけど、響ちゃんは納得できているの?」
「司令やみんなが言ってることが正しいのはわかるんです…… でも未来に秘密にし続けるのが苦しくって……」
「そうなるわよね。この件に関しては私からも司令に相談しておくわ。もしかいたらシンフォギアの事を秘密にして私から話しても良いかもね」
「良いんですか!」
「響ちゃんが安心して戦えるようにするのも私達の仕事だからね」
司令に相談せずに約束しちゃったけど、これぐらいならいいでしょ。どうせ思いっきり巻き込まれるわけだし。
この後は花の女子高生との楽しいおしゃべりとなった。これから重いものを背負わされるんだ。今ぐらいは楽しく過ごして欲しい。
「失礼します」
「いらっしゃい。適当に座って頂戴」
次は翼ちゃん。今の所思いつめた表情もしてないし、ここからは雑談程度で終えれるかも。
「さて、面談とは言ってるけど基本的には楽しくおしゃべりできればOkだから気軽に行きましょう」
「いえ、これも必要な任務。全力で行きます」
あれー?思ってたより硬いリアクションが返ってきたぞ?
「いやいや、今回は私がまとめ役になったのと響ちゃんが加入して、丁度いい機会だから色んな話を聞きたいなーってレベルだよ?」
「いえ、私にも立花という後輩が出来て、今までの様に立浪さんや奏に引っ張られるだけでなく、模範になれるようにならなければいけないのです」
「もしかして、初めて後輩出来て張り切ってる?」
「い、いや、そんな即物的な理由ではなくてですね……」
この慌てようは正解だろう。そっかー翼ちゃんも後輩が出来て張り切るなんて可愛げを見せてくれるのか。考えてみれば最初はぶつかってたから見えなかっただけでクリスとかが加入すると先輩頑張ってたもんね。
私はもう我慢できなくなって立ち上がり翼ちゃんに近づいていく。
「立浪さん?急にどうしまし……てきゃっ!?」
「いやー、本当可愛いなー翼ちゃんは。そうだよね初めて後輩が出来たんだ。頑張りたくもなるもんね」
いやもう、この剣本当に可愛いな。このままお持ち帰りしたいぐらいだわ。
「いや、私は! 違うの!」
最近増えてきた防人語も出ないぐらいに焦っているのかもしれないけど、こうやって素の翼ちゃんを可愛がれるだけでも今回の話し合いの場を作った価値がある。だけどこのまま翼ちゃんを愛でているだけでは何も進めないので名残惜しいけど、話し合いに戻りましょう。
「さて、真面目な話に戻りましょうか。最近なにか変わったこととかある?」
「もう立浪さんも意地悪だ…… そうですね、最近奏がなにか考え込んでいることが増えた気もします。特に立花がシンフォギア装者になるのを決めてから特に多くなった気がします」
「へー、私は気づかなかったわ。ありがとう。それとなく奏ちゃんにも聞いてみるわ。他に何もなければ終わるけどどう?」
「では決意表明を。立浪さん。私は強くなります。見知らぬ誰かも、身近な誰をも守れるような剣として、防人として、私は強くなります」
真っ直ぐな良い瞳だ。この心の強さが翼ちゃんを形成する大きな一要素なのだろう。でも
「ありがとう、何かあったら守ってちょうだいね。でもね一人で強くなる必要は無いのよ。自分で言うのもあれだけど、私や奏ちゃんは命を顧みず絶唱を使おうとして、どうだった?その気持を他人に負わせるの辛いのは一番翼ちゃんが分かると思う」
「それは……そうですが、実際に絶唱を使った立浪さんがそれを言うのはどうかと思います」
「そりゃそうだ。私は汚い大人だからね。でも今度は誰かに頼るように気をつけるよ」
「本当にお願いします。もう大切な誰かが目の前で消えてしまうかもしれない、あんな思いはしたくないから……」
翼ちゃんとの話し合いは少し湿っぽく終わってしまった。私達が好き勝手してる分心配も多いのだろう。反省して自分のことを考え直さないと今回場を設けた意味もないし、今度じっくり考えてみよう。
「やっほー、姐さん遊びに来たぜー」
「奏ちゃん、一応はこれも業務だから真面目にね」
いつもどおりのテンションで奏ちゃんが入ってくるけど、さっきの翼ちゃんの話を聞くと空元気に見えないことも無いような?
「翼の話どうだった?後輩が出来たからって最近やけに張り切ってるよ」
「聞いたわ。初めての後輩にかっこいい所見せたいなんで可愛いと思うわ。そういう奏でからしたらまた可愛い後輩が出来たけど仲良くできそう?」
「響ってさなんかこう犬っぽくて可愛いよな。奏さん!翼さん!て着いてきたり、話しかけたりほんとかわいい後輩だよ。アタシの中では翼は年下だけど後輩じゃなくて相棒って感じだから私にしても初めての後輩になるのかもな」
ふん、響ちゃんに関しては概ね好印象と。まああの子を初対面で嫌いになることも珍しいかも。
「ありがと。じゃあ、ガングニールの装者の先輩としてはどう?」
私には腹芸なんて出来ないし、ややこしくなる前にさっさと聞くに限ると思うので直球を投げ込んで見る。結果奏ちゃんの雰囲気が少し落ち着いたものになる。
「……なあ姐さん。今からでも響を装者じゃなくするって出来ないのか?ダンナも言ってたけどアタシたち三人がいればそれで良いんじゃないか?」
「私としても進んでこの道に引き込みたいわけじゃないけど、力があって本人が望んでいる以上止める権利は無いんじゃないかな」
実際に言葉に出して箍が外れたのか奏ちゃんが立ち上がり、声を荒げる。
「あいつは!こんな命がけの世界に入って来なくてもよかったんだ!アタシの……アタシのせいで響をこっちに巻き込んじまった」
やっぱりそこが奏ちゃんの悩みどころか。自分が守りきれなかった人。そして自分のせい同じ血みどろの世界に巻き込んでしまった後悔。
「なあ。姐さんがアタシたちのリーダーになるなら響を前線から離してくれよ。ノイズ共はアタシが響の分までぶっ殺してやるからさ。あいつにはこれ以上辛い思いをして欲しくは無いんだ……」
「奏ちゃんは優しいわね…… でもそれは本当に響ちゃんのことを考えているのかな?」
「どういうことだよ」
「原因はどうであれ、本人が望んで選んだ道だ。それを仲間とはいえ他人が止めるのは果たして正しいことと言えるのかな」
「戦わなくてもいいならそれが良いに決まってるだろ! 姐さんは響が戦って大怪我するかもしれない、死ぬかもしれないことが正しいって言うのかよ!!」
「なら装者になった時の奏ちゃんが同じことを言われて納得出来た?」
これは昔司令から聞いた話だ。今では過去の話として流せるレベルになっているけど、当時は中々にひどい状態だったらしい。
「ぐっ…… それは卑怯だぞ……! このまま我慢しろって言うのかよ」
「そんな事言わないし、言った所で我慢できるような奏ちゃんじゃないでしょ。まあ。形だけでもまとめ役になった私に一旦預けて頂戴」
「……分かった。姐さんを信じてみる。でも!アタシが納得出来なかったらこっちでも動くからな!」
「それでいいわ。納得も出来ないことに無理やり従わせるような関係でも無いしね」
どうやら思っていた以上に奏ちゃんは響ちゃんの状況に思う所があったようだ。取り敢えず様子見して原作の翼ちゃんの役を奏ちゃんにしてどこかで爆発させるのも一つだと思うけど見えてる爆弾を放置するのも流石に気が引けるし。
「まあ、任せなさいな。奏ちゃんに教えてもらった私なりのやり方を」
「えーと、どうして私達四人訓練室に呼ばれたんですか?」
「立浪さん、今日は模擬戦の予定は無かったはずですが」
響ちゃんと翼ちゃんは頭にハテナマークの状態だ。奏ちゃんはなんとなく察しが付いたのだろう。目に決意が宿っている。
「いや、若人の悩みは殴り合って解決するのが一番!今から響ちゃんがシンフォギア装者を続けるかどうかを模擬戦で決めたいと思います!」
「なんでそうなるんですか!?」
「一体どういうことなの!?奏も言ってあげて!」
翼ちゃんに話を振られた奏ちゃんだがその返答は言葉ではなく、シンフォギアを纏い、響ちゃんに向けられたガングニール。それが答えだった。
「アタシが響を元の平和な世界に戻してやる!」
さて、けしかけた以上、ちゃんと最後まで見守ってあげないとね。