小さな親切、大きな愛 [G編]   作:冬眠復帰

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難産でした…… もっと書きたいものを書けるようになりたい……


13,大人こそ悩みが増えて雁字搦め

出会いは突然に

準備は周到に

 

13,大人こそ悩みが増えて雁字搦め

 

 どうしてここにクリスちゃんがいるのか。このタイミングで接触持つのは良いのかわからないけど、どうしたら良いのか。私が突然の出会いに固まっていると

 

「あ? どうしたって…… お前は!?」

 

 なんか向こうも焦りだした。リアクション的には私のことを知っているのかな? フィーネから装者のプロフィールでも渡されていたのかな。とりあえず私が向こうの事を認識してるのはおかしいし、適当に誤魔化しておかなきゃ

 

「ごめんなさい、こんな店に君みたいな若い子がいると思わなくてね。んで、なんか驚いてるみたいだけどどうしたの?」

 

「い、いやなんでもねえ、驚かせてすまねえ」

 

 お互い怪しさ満点だけど、探られて痛い腹を持つ二人だ。ここらで有耶無耶にするのが良いだろう。

 

「そう、ごめんなさいね驚かせちゃって」

 

「こんな店はねえだろ、こんな店は。はいお嬢ちゃん。ナポリタンセットだよ」

 

 マスターがこちらに苦言を呈しながらクリスチャンの方に注文したのだろう真っ赤なナポリタンを配膳する。丁度いいきっかけだ。私達は再度軽くお互いに謝り席に戻る。私の席にはほとんど残っていないコーヒーカップしか残っていない。店を出るのにはいいタイミングけどこのままクリスちゃんを放置するのも後ろ髪を引かれるしもう少し居座るとしよう。

 

「マスター、コーヒーとチーズケーキお願い」

 

「良いけど、仕事戻らないでいいのか?」

 

「今日はもう少しサボりたい気分なのよ」

 

 私は入店後四杯目になるコーヒーを飲みながら隣のテーブルで口元を真っ赤にしながらナポリタンを食べているクリスちゃんの事を思う。彼女は今後敵に始まり頼もしい味方になってくれるはずの女の子だ。今のタイミングではフィーネに自分の願いを託し結託しているような状態だ。

 

(やっぱり、一回全部吐き出させないとダメだよね)

 

 本当ならこのまま彼女を追跡するなりしないといけないはずだけど、今彼女を敵と認識することも、司令が探している娘であるとも判断してはいけない。であればこのまま何もしないが正解だろう。

 

「ごちそうさま」

 

 どうやら隣では考え事してる間に食事を終えたようだ。まあ、このタイミングで声かけるの変だし今回は事故ということで置いておこう。クリスちゃんのことだ次に戦う時にリアクションくれそうだし、それを楽しみにしておきましょう。

そろそろ私もお仕事に帰るかーとか考えてると入れ口の方にあるレジの方で何やら騒いでる声が聞こえてくる。タイミング的にクリスちゃんだろうし、気になるので伝票を持って帰る振りしながら近づいてみよう。

 

「なんで端末決済使えねえんだよ!」

 

「いや、うち昔からのレジしかなくてね。現金は?」

 

「……今は持ってねえ……」

 

あれま、そうかここは今どき絶滅危惧種の様な現金しか使えない店だ。常連ならば常識だけどそうでないなら知るわけないね。クリスちゃん見た感じ手ぶらで来てた感じなのかな? しっかし、あの赤いドレス冷静に見ると年齢の割にセクシー過ぎない?フィーネの趣味なの?

 

「どしたの? お金ないの?」

 

「ちげーよ! 今時現金しか使えないこの店がわりーんだよ!」

 

「まあ、それは同意するわ。不便よね。マスターこの子の分も一緒にお願い」

 

 私から伝票を受け取ったマスターがレジに値段を打ち込んでいくが喫茶店で見る金額じゃなくて笑いが出てくる。

 

(そりゃ、四人分の食事代も入れればこうなるか)

 

 私とマスターが特に何も言わずに支払いを進めていると横からクリスちゃんが怒鳴り込んでくる!

 

「ちょっと待てよ! アタシは奢られる気はねえぞ!」

 

「そうなると食い逃げとして君を突き出す事になっちゃうけど? ここ客なんてまともに来ないし皿洗いで支払いなんて出来ないわよ? こんな可愛い子に副流煙吸わしちゃったしせめてこれぐらいわね?」

 

「うー……」

 

 クリスちゃんが可愛く唸ってるけど、この場はさっさと終わらしてしまおう。私はさっさと支払いを終え、クリスちゃんに軽く別れの挨拶をして店を出る。流石に昼休憩というのは長すぎるし言い訳でも考えながら本部に帰るかもしくはこのままサボってしまうかを割と真剣に考えていると後ろから呼び止められる。

 

「おい、私に施して何のつもりだ……」

 

 クリスちゃんがどうやら追いかけてきたようだ。この子も義理堅い性格だし一方的な奢りに納得できてないんだろう。

 

「何も無いわよ。さっき言ったでしょ、煙吸わしちゃったお詫びよお詫び。」

 

「アタシはこんなことでアンタに借りを作るなんてまっぴら御免なんだ!」

 

「どうしましょうかね、私としては別に奢りが一人分増えても特になにもないんだけど君が納得できないって感じよね?」

 

 私の発言にクリスちゃんはすごく不服そうな顔で首肯する。さてどうしましょうかね。こっちは向こうでこっちで認識の違いもあるしあんまり長く話し込むのもボロ出しそうで怖いしね。

 

「じゃあ、連絡先と名前教えてもらって今度返してもらうとか?」

 

「それは……ちょっと出来ねえ」

 

 それはそうなるか、ここで名前聞ければ今後ポロって名前呼んじゃっても大丈夫になるから妙案と思ったんだけど。名前の交換は響ちゃんに任せますか。

 

「じゃあ、電子決済は出来るのよね、近くのコンビニで缶コーヒーでも買ってもらいましょうか」

 

「……それで良いのかよ、子供に奢られるのがーとか言わないんだな」

 

「そりゃね、もちろん君みたいな子にお金を出させるのは好きじゃないけど、納得出来ないんでしょ? ならそれを我慢させるほうが残念でしょ? さ、コンビニはここからすぐよ。さっさと行きましょ」

 

「……それでいい」

 

私達は二人微妙な距離を開けながら歩いて行く。時間にしたら本当に三分もないような短い時間だけどお互い気まずくて会話なんてなく、体感時間はかなりに長くに感じる。さっき名前を聞いても拒否されたし会話話題も見つからないしさっさと終わらしてしまうのが良いでしょうね。

 

そのままコンビニに二人で入りクリスちゃんに缶コーヒーを買ってもらう。私も適当なジュースを買っておく。

 

「おら、これで貸し借りなしだ。金額は釣り合わないけどこれ以上はめんどくせえ事になりそうだ」

 

「はい、頂きました。ついでにここに缶ジュースが余ってるんだけど、缶コーヒー飲み切る間話し相手になってくれる対価とかどう?」

 

「はぁ? ああもう! その代わりこれで本当に最後だからな」

 

やっぱりこの子も優しい子だ。押し付けがましい優しさもちゃんと受け取ってくれる。こんな娘は毎日笑顔で過ごして欲しくなる。さっきの今で煙を吸わせるわけにも行かないので火をつけず咥えながらプルタブを開ける。

 

「改めて私は立浪紫香よろしくね」

 

そうう言いながら手を差し伸ばすけど、反応は返ってこない。

 

「ああ、名乗ってもらわなくても大丈夫よ、なにか事情があるんでしょ? ならせめて握手ぐらいしましょう?」

 

「それぐらいなら……」

 

というわけで二人で仲良く握手。クリスちゃんはすごく嫌そうな顔をしているけど。

 

「あの店に君みたいな子は珍しいけど、なにで知ったの?」

 

「別になんでもいいだろ、……腹が減ったから入っただけだよ」

 

「なにか好きなメニューでも有った? 機会があればオススメの店教えてあげるわよ?」

 

「もうアンタとは関わることは……関わる気はねえよ……」

 

「あれま、嫌われちゃったわね。、仕方ない。お互い飲み終わったみたいだしこれでさよならかな?」

 

「そうだな、もうこんな話をすることもないだろな」

 

 

 

 とりあえずは一人になったので改めて煙を撒き散らし始める。最近はコンビニの灰皿も減ってきてるのが辛いところよね。

残念ながらセカンドチャンスも特に会話を広げることが出来ずに解散となってしまった。せっかく降って湧いた仲良くなるチャンスだったのに。しかしあそこで本当に偶然出会ったなんて考えにくいし何らかの命令を受けていたと考える方が自然でしょうね。恐らくノイズも出ていないのに装者全員が出動したのが変に勘ぐられたかな? まあ、今回は予期せぬ出会いとして終わらせるのが良いでしょうね。問題はこれを司令に伝えるかどうか。司令からは雪音クリスを捜索しているとは聞いているけど、私が知っているのは昔の彼女だけだし分からなかったで通せばいいかな。このタイミングでクリスちゃん包囲網とか出来ると色々お互い動きにくくなるでしょうしね。

 

「もう15時近いけど一旦本部に顔を出しますか」

 

 

 

 

 

 本部に付いたのは15時半にもなろうかというタイミングだった。自分の部屋に入ると前がんばった分かなり少ない書類が残っているだけだった。今日は朝からあおいちゃんにもこちらの仕事は大丈夫と伝えているから他の人もおらず少し寒々しい空気の部屋になっていた。

 

「さてさて時間潰すためにもお仕事しましょうか」

 

ここに残っているということは重要でない仕事のはずだけど、まあどこかではやらないといけないわけで。

仕事の山を崩していけば時間はすぎるけど大きな問題は進みはしない。こんなものは現実逃避でしか無い。それでも私は責任を果たさなければいけない。

 

「はあ、もうやる気にもなんない」

 

 急ぎでも重要でもない仕事なんてやる気は出ないし、このままダラダラ続けても良いことは無いだろうし、こんな時は息抜きに限る。

 

 

 

 

 いつもの缶コーヒーを持っていつもの喫煙所に。もはやルーチンになっているような動きだけれど、考えずに出来る割には気分転換になる。ここでは他の装者を始めいつものメンバーはほとんど来ないので一人になりたい時には重宝する。

 

「どうした良いものかしらね。多分こんな事考えることすら意味はないのでしょうね」

 

 彼女たちはの仲間だ。だとしてもやっぱり子供なのだ。こんな事言うとまた奏ちゃんに怒られそうだけど、私が守らないといけないのだ。きっと彼女たちは私達のことなんか無視して一気に育っていくのだろう。それでも私が見守らなければいけないのだ。

私は大人だけれど、子どもたちをコントロール出来るんだんて思っちゃいけない。彼女たちは勝手に育って巣立っていくのだ。それを自分勝手に手助けするしか無いのだ。それがいい方向になると願いながら。

少なくとも雪音クリスは大人の事情に巻き込まれてしまった子供だ。それは大人が救わないといけないものだけれど、それこそ大人の傲慢じゃないのか。ただでさえ私は原作知識なんてものを行動の理由にしている。でもそんなものに惑わされて本当の彼女を見れていないのではないか。こんな考えがずっと頭の中を周回している。

 

 

 あー、ダメダメこのまま思考を回してもきっと意味はないでしう。こんな時は身体を動かすに限る。

 

 

 

「失礼します、司令今よろしいですか?」

 

「大丈夫だぞ、何か有ったのか?」

 

「いえ、ちょっと身体を動かしたいんですがご指導願えないかと」

 

 そこまで言うと、司令は楽しさを隠すことなく破顔し、軽やかに動き出す。

 

「いつもどおりの模擬戦で良いか?」

 

「いえ、今回は生身でお願いしたく、司令には退屈させてもしまうかもしれませんが」

 

 

 私は一応二課の中では三番目に生身での戦闘が出来る。もちろん上二人が飛び抜けて入るが一応そのすぐ下には位置している。事務方や諜報担当が多い中完全な戦闘担当で日常業務が少なく,時間の殆どを鍛錬に当てていたのだ、それぐらいはないと申し訳が立たない。逆に日常が多忙な司令と慎次くんに勝てないのはバグとしか思えない。

 

 

 

 

 

「それでは始めようか」

 

「お願いします」

 

 私と司令は訓練室で向かい合いお互いに構える。私は動きやすい服装に着替えているが司令はいつもの格好だ。もうこの人はこれが戦闘服と思ったほうが良いかもしれない。

 

 

 手合わせが始まりまずはお互い軽い牽制で始める。この時ですら私は全力で捌いていかないとKOされるので実力の違いを痛感させられる。

 

「紫香君、何かな悩んでいるのか?」

 

 司令が問いかけてくる。いつもは司令との訓練から逃げている私が申し込んだのだ。何かあると思われるのも当然だろう。今ぐらいのペースなら私も返事が出来るので今のうちに問答を進めてしまおう。

 

「最近大人として子どもたちにどう接すればいいかわからなくなりましって!」

 

 私の言葉尻に載せた一撃も軽くいなされる。

 

「また君は一人で抱え込んでいるのか、大人として正面から向き合っていけば良いんじゃい、っか!」

 

 司令の返しに私の体勢は崩れ、後ろに押し込まれる。追撃してこないのは言葉を待っているのだろう。

 

「そのつもりだったんですけど、それは大人の身勝手じゃないかと最近悩んでましてね。司令はその辺りどう決断してるんですか?」

 

「俺だっていつも悩んでいるし、後悔も反省もいつものことだ。だがそれを恐れて何もしないことこそ一番のダメな大人だと思っているのでな」

 

 言葉でも拳でもどんどん押し込まれる。だが司令の言葉に少しの光明を見つけることが出来た。私はいくら知識があろうと年を重ねていようと所詮一人の人間だ。完全な答えなど見つけれないのだろう。

 

「なら、自分の失敗で傷ついたり、何かを見失う人が出たらどうします……っか!」

 

「事前ににちゃんと準備してそれでも起こる失敗はその後で考えればいい!俺たちは常に全力を出すことしか出来ないんだ!」

 

 飛んでくる右ストレートを避けることも受けることも出来ずにまともにもらってしましダウンする。漫画ならなもう迷いも晴れ、スッキリした気分になるのかもしれないが残念ながら今の私の胸の中にはモヤモヤがまだ居座っている。

 

「ったあ…… せっかく一緒に考えてもらいましたけど残念ながら答えは出ないみたいです」

 

「当たり前だ、そんなに簡単に解決できるなら人間みんな苦労はしないさ。さて、そろそろ本腰を入れて行きたいのだがいいかな?」

 

「了解です。どこまで相手できるかわかりませんが、お願いします」

 

 そこからは無駄な言葉もなく肉体言語だけで語り合う。私はスッキリしない八つ当たりも込めて向っていくが当然のように気がつけば床に倒されている。なにかが解決したわけではないが私は今ここで一人の人間として生きている大人なのだ。どうにかして折り合いをつけていくしか無いのだろう。

 

 

 

 

 次の日、筋肉痛と訓練でもらってしまった痛みのダブルパンチで地獄のような一日だった。思い立ったが吉日とは言うけれど、装者としての訓練の前日にあんな事するべきじゃなかった……

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