少し奏を幼くしすぎてるかな?て感じもありますが年長組を年上に甘えさせたいてのがスタートなのでこうなるものかなと
明日を頑張るために今日を頑張る
明日を駆け抜けるたの少しの足踏み
15,少しの安らぎ
安息の地であるはずの自宅に帰ってみれば鍵が開いていて襲撃を予想しての精神的疲労、その後顔面に扉でダイレクトアタックをもらい今日はもう散々だ。汗を流すことも着替えることもせずにソファーに倒れ込み、この額の痛みの実行犯である奏ちゃんに介抱されている。
「姐さんごめんって。さっきのは謝るからいい加減話を聞いてくれよ」
疲れと痛みで脳のキャパがギリギリなのだ。この状態でどう考えても厄介事を持ってきている奏ちゃんの話なんて聞きたくないけどそろそろ相手してあげないと。この子はいつもは自信満々な姉御肌なのだが自分が頼れると思った相手には結構年下気質になる。年上、同性、同じ装者とここまで条件が一致するのは少ないので私には一番そんな表情を見せてくれる。マリアと一緒になった時のリアクションが楽しみなところだ。
「で、今日断りもなしに泊まりに来た奏ちゃんはなにか言いたいことあるの?」
「泊まりじゃなくて同棲」
「宿泊客の奏ちゃんはどうしたの」
お互い一歩も譲らない。奏ちゃんと同棲なんて楽しそうではあるけどプライベートまで厄介事が増えるのは確実だ。多分楽しい厄介事になりそうだけど、一人になれる時間というのも必要なのだ。
「真面目な話するけど、姐さん今二課から怪しまれてるってわかってる?」
「いきなり何を言い出すのよ」
思い当たる節といえばライブのノイズ襲撃の時の行動から慎次くんの監視が付いていたことがあったけどそれも年単位で前の話だし今もう解除されている。
「弦十郎のダンナに聞いた。アタシたちのライブの時の行動が原因で監視対象になってたって。でこの前の会議で珍しく上の空だったし、その後の反応もおかしかった。姐さんが席を外した後スパイ疑惑が了子さんから出てきてな。その流れで昔の事も聞いた」
あー、フィーネの差し金か。なんか搦手多いけどちょっとイメージと違う気がするんだけどなあ……
取り敢えずいま最初にやらないといけないことは
「ふん!」
「いったい! 何すんだよ!」
割とキツめに拳骨を落とすと涙目で文句を言ってくるがここはちゃんと言わないといけない所だ。
「あのねえ、私にスパイ容疑が掛かってるならそれを本人に言っちゃ駄目でしょ。私本人がそうでなくても盗聴器とか監視されてる可能性も有るんだから。司令たちが隠している意味を考えないと駄目でしょ」
未来そういうことも起こるはずだし、本人が知らない所で情報を抜かれている可能性もあるのだ。調査をするのであれば内密に進めるのが絶対だ。
「……姐さんがそんなことするわけないって手っ取り早く証明したくって……」
ほんっとにこの子はこんな怒りにくくなるようなことばっかり言って……
このまま叩き出して帰すのも後味悪いし数日ぐらい付き合ってあげましょうか。
「はいはい、わかりました。仕方ないから数日のお泊りで終わりにしてね」
「任せろ、ちゃんと怪しいところがないって証明してやるさ!」
それって悪魔の証明になるからどう考えても数日で終わらないと思うんだけど…… 奏ちゃんが満足するまでは仕方ないか。
「お互いの予定が合わないときとかどうするつもり? 芸能活動の方だと遠出とかあったら結局バラバラになっちゃうし」
「ああ、大丈夫。姐さん私達ツヴァイウィングのマネージャーやってもらおうと思ってるから」
「えーと、司令か慎次くんか翼ちゃんか、誰に引き取ってもらうのが一番かな?」
割りかし本気で携帯を操作していると横から引ったくられる。また書類仕事増え始めてるのに勘弁して欲しい。
携帯を取り返そうとしても今の疲れきった状態では叶うわけも無く、これ以上汗をかきたくもないし諦めて浴室に向かう。今日はもうシャワーでいいかな? でもこんな時には湯船に浸かりたいんだけどな。
取り敢えず奏ちゃんも一人になれば少しはおとなしくなるでしょう。ひと声かけたら、ごゆっくり~、なんて声が返ってきて首を傾げながら入ってみれば湯船にお湯が張られ、準備万端なんて感じの状態だった。さっきの言葉はこの事かと感謝しながらゆっくりと体の疲れを癒やしていく。
久しぶりにお風呂を堪能して、気がつけば結構な時間が経っていた。もしかしたら乱入してくるかな? なんて考えてたけどそんなことも無く落ち着いた時間を過ごす事ができた。そのまま幸せ気分で上がると食卓にしっかりした夕食が準備されていた。
「今回はアタシが食材買ってきたけど、酒とつまみ以外殆ど入ってないって流石にどうかと思うぞ?」
「どうしよう、今奏ちゃんを追い出す気分が崩れ去っていってる……」
こんな幸せを体験させられたらもうこのまま同棲生活始めてもいいかな? て気分になってくる。私の気持ちを察したのか笑顔を見せてくれる奏ちゃんを見てると幸せな気分がこっちにも広がってくる。
奏ちゃんが用意してくれたのは見た目簡単な野菜炒めとお味噌汁、ご飯のシンプルなものだけどしっかり美味しいし誰かが自分のために作ってくれたご飯を誰かと食べてお腹以外も一杯にになった。
食後のお茶を飲みながら改めて今の状況を話し出す。
「真面目な話、これからどうするの? このまま本当にここにいるつもりなの?」
「アタシとしては姐さんの疑いが晴れるまでは続けるつもりだよ」
「じゃあ、どこまでやったら疑いが無くなるかは目処付いてるの?」
そこまで言うと言葉に詰まってしまった。実際有りもしない容疑を晴らすってどうしようも無いもんね。それでも私のために考えるまもなく行動してくれたと自惚れていいなら有り難くなる。
「明日司令と相談しましょうか。やっぱり私達も組織の一員だしね」
「うーー……」
いくら可愛く唸ってもダメなものはダメだ。これからは事態がどんどん動いていくのだ。やっぱり一人の時間は欲しいものだ。
「聞いて奏ちゃん。私は状況や条件によっては二課を裏切るかもしれない。でもねあなた達の絶対の味方でいるつもりだから私を信じて欲しいの」
「二課も私達も同じじゃん」
「言葉遊びみたいなものかもね。じゃあ私がみんなを大好きだってことで信用してくれる?」
「そんなん言われたら納得するしか無いじゃんか……」
言葉で誤魔化している気もするけれど一旦はこれで終わりだ。後は私が疑われていることを知ったことを司令に相談するかどうかが問題だ。そんなことまでいちいち言う必要がないかもだけど、こういう細かいことが後々致命的になったりするかもしれないし、報連相はしておいて損は無いでしょうし。
「後は明日司令を含めて相談しましょ。私はソファーで寝るからベッド使って頂戴」
これで話は終わりとかなり無理矢理だけど打ち切りを宣言し寝ることを提案する。ソファーで寝るのは身体痛くなるけど仕方ない。一緒にベッド寝ようなんて誘われたけどそういう事は若い子でだけでどうぞと言うしかなかった。
次の日、奏ちゃんを助手席に乗せて通勤路を走ると楽しそうにしてくれた。よくよく考えれば誰かを乗せたのは始めてかもしれない。その事を伝えると更に機嫌がよくなった。私の隣なんて何が楽しいんだか。
「何をやっているんだ君たちは……」
どうして私まで怒られているのか。疑惑の事をを司令にそのまま話すと予想通りの大きなため息が返ってきた。
「紫香君に疑いが掛かっていたのは過去の話だ。あの場では話の流れでそうなったが今の段階でまた監視などを行うつもりはない」
良かった良かった。とりあえずは無罪放免だ。奏ちゃんが押しかけてきたことも伝えると司令の顔の疲れが更に増したように感じる。
「そんな無鉄砲なことをするなんて奏君らしくもないな」
「アタシは昔からこんな感じだっただろ」
「確かに昔は少し向こう見ずな所も有ったが最近は落ち着いてきていると思うぞ」
「昔話はやめてくれよ。そんなことよりさ姐さんの家だけど酒とつまみしか置いてなかったんだけどそっちもどうにかしないとダメだと思わないか?」
どんな流れかいつの間にか悲惨の矛先がこちらに向いてきた。二人から健康だのなんだのとお小言を頂いているが申し訳ないが右から左だ。心配してくれるのは嬉しいがそこまで手が回らないし私が作るより惣菜なんかを買って帰るほうが何倍も楽で美味しくて安いのだ。
「そうだ! アタシが健康管理するから住み込みしてやろうか?」
そんないかにもイタズラを思い浮かべましたみたいな顔で言われても説得力がね、それよりも
「その前に翼ちゃんをどうにかしてあげなさい。まだあのまんまなんでしょ」
家事力防人レベルのラスボスの方をどうにかしてあげて欲しい。これは方便でもあるけど何より本心だ。本人がそう願うかはわからないけどもしいい人が見つかってなんて時に家事が全くできないのでは可哀想だ。
気がつけば翼ちゃんの女子力向上委員会となってしまっていたけど、これはこれで幸せな時間だ。どうせ悩むならこんな幸せなことで悩みたいものだ。
そんな幸せな気分で食堂でお昼を食べていた。何の気なにしに流れていたテレビに目を向ければこと座流星群が数日中に最接近するとのニュースが流れていた。
もう時間は待ってくれないようだ……