小さな親切、大きな愛 [G編]   作:冬眠復帰

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今回からは主人公視点の一人称視点で進める予定です。

プロローグからお気に入りと誤字の指摘ありがとうございます。そのままやる気に変換してます。


1,アキレウスの(少)女

自分は選ばれたんだと思った。これから華やかな活躍があると思っていた。

世界はそこまで優しくはなかったみたいだ。

 

 

1、アキレウスの(少)女

 

 

 

どうしてこうなったんだろうな。本当に色々わからなかった。

未だに自分が転生とやらをした事実から目を背けたくなる。

 

これでも前世?では割とどっぷりのオタクやってたので転生とやらのジャンルは知ってたけどどうして自分が巻き込まれたのか。

 

しかも、その転生先がモブに厳しいことで有名なシンフォギアの世界という現実。

まあ、アニメは5期まで完走してるし、LIVEも現地には行けなかったけど円盤は揃えてる程度には好きな作品だしまあ許せる。

 

そして、作品の性質上仕方ないのか女で転生したのも10億歩譲っていいとしよう。

 

 

 

許せないのはどうして主人公より一回り年上で転生させたんだ……!!

 

これじゃ、キャッキャウフフの学園生活ができないじゃないか!!!

 

 

 

1,アキレウスの(少)女

 

~ノイズによるツヴァイウィングLIVE襲撃の数時間前

 

 

 

 

 

「答えが出ないままここまで来てしまった……」

 

立浪紫香(たつなみしこう)、中身は男だったはずのアラサーウーマンは、絶賛悩み中だ。自分の好きな作品に転生できて喜んでたら原作開始10年前の段階ですでに高校生になっていることに絶望していたのも今は昔。 特に何もできずに原作開始が来てしまった。

 

 

「どうするのがいいのか、本当にわからないわね……」

 

 

この後の行われるツヴァイウィングのライブ、私が何もしなければきっと最高のスタートを切り最悪の結末で終わるだろう。私にはそれが正しいとか判断ができないでいる。

 

 

「ここで響ちゃんがガングニールと融合してくれないと完全に詰むからなぁ…… でもXD基準で考えればそんな感じの並行世界てこともできるのかなあ」

 

 

 

何も知らなければ響ちゃんが平和な生活に留まれるようにするべきなのはわかってる。でもこれからのことを考えると響ちゃんには装者になってもらわないと困る。

 

 

でも原作をなぞるということは同時に奏ちゃんが死ぬこととほぼ同義になるし、死ななかったとしてもそれは今後の予測がどうなるかわからなくなる。

 

 

「っす--、はー」

 

 

口から紫煙を吐き出しても悩みは吐き出すどころか、積もり積もっていく。

 

 

「本当にどうしてこうなるんだろうね。いっそのこと何の力もない学生だったら自分を誤魔化すことができたのかな」

 

 

今の自分の首には力の結晶がある。これを使えばきっと今この時だけはなんとかできるかもしれない。そうすることが今の大人のである自分にとってやるべきことなんだろう。理性ではわかっている。それでもこの自分の判断が世界を滅亡に導くかもと考えるとどうしても二の足を踏んでしまう。

 

 

「紫香さん、またタバコですか……、 あなたも装者の一人なんですから喉のことを大事にしてください」

 

 

未だに煮え切らない自分をごまかすために喫煙所にこもっている自分にスーツの青年が声をかけてくる。

 

 

「慎次くんじゃん。どうしたのこんなところに?」

 

 

マナーとして煙が相手に流れないように吐き出しながら目の前のイケメンに返答する。

 

 

しかしまあ、自分がアニメのキャラと会話するのはすでに慣れきったとはいえなんとも面映い。今では当たり前のようにキャラクターではなく生きてる人間として認識だが最初はひどかったよな……

 

 

「どうしたではないですよ。翼さんも奏さんもあなたに近くで見て欲しいと思ってるんですから、今からでも関係者席に来ていただけませんか?」

 

 

そうなんだよね。こんなにもみんなの事を思って真剣な慎次くんも視聴者からは最後まで黒幕とか言われたのも、実際に話してないから何でしょうね。まあ最後の方は定番のネタとしてだと思うけど。

 

ほんとこんなイケメンで周りのために常に行動して、非の打ちどころもないような完璧人間とか裏があると勘ぐっちゃうか。

 

 

「紫香さん?大丈夫ですか?」

 

 

「いや大丈夫だよ。ちょっと考え事が続いててね。ごめんね」

 

 

今だって目の前で話しかけた相手からリアクションがなくても気を悪くするのではなく心配できるのは本当にいい人だと思う。

 

 

「まあ、私は奏ちゃんにも翼ちゃんにもなんにもできてないからね。そんな私が関係者席でふんぞり返るのはちょっとね。そのために訓練サボってまでこのチケット取ったわけだし」

 

 

そう言って私は胸ポケットに入れてある一般のチケットを棚引かせる。そこにあるのは一般B席、後ろの方でおそらくは肉眼では二人をしっかり見れるか怪しいような席番号が書かれていた。

 

 

「一般席で見るにしても此方からもう少しいい席を準備しましたのに、せっかくの二人の晴れ舞台なんです。どうせなら近くで見てあげてくださいよ」

 

 

そう言いながら慎次くんはこちらに近づき小声で続ける。

 

 

「それだけではなく、今回は完全聖遺物の起動実験もあります。不測の事態に備えて装者である紫香さんには近くに待機しておいて欲しいのですが」

 

 

「いや~、そういうのがめんどくさくて逃げたいってのも理由なんだけどね」

 

 

そうなのだ。いくら綺麗事を並べようと本当の目的はこれだ。私だけが知っている未来。ネフシュタンの起動実験はフィーネの横槍で確実に失敗する。その中であの司令すら大怪我を負うような現場にいて私ははたして生き残れるだろうか。確かあの場で死者も出ているはずだ。それならば端の方の席に陣取り逃げ惑う観客から離れておけばシンフォギアを纏うことのできる私はほぼ確実に生き残ることができるだろう。そんなせせこましい保身がこのチケットなのだ。

 

 

「……はあ、紫香さんがそうするべきだと言うのならきっと何か大きな理由があるのでしょう。でしたらこれ以上僕からは何も言いませんが、ライブ後に翼さんと奏さんから問い詰められても自力でなんとかしてくださいね?」

 

 

おや?その受け取られ方はまずくないか?このままでは私は起動実験が妨害されることによる事故を事前に知っているのにそれを周知せず自分だけ逃げたクソ野郎扱いまっしぐらでは? いやそれだけならいい。起動実験妨害の一味だと思われスパイ扱いが一番まずい。何もしてないとはいえ探られれば痛い腹なのだ。

 

「慎次くんは真面目だね-。私はただサボりたいだけだよ。あんな専門家が雁首揃えて真剣な空気出されたら私は十分で限界迎えちゃうね」 

 

「言えないということならこれ以上は追求しません。僕もそろそろ時間なので戻りますがお二人のライブはしっかり聞いてあげてくださいね」

 

 

「大丈夫だよ。そこは間違えない」

 

 

「それを聞いて安心しました。それではまた後ほど」

 

慎次くんが準備に戻ったということはもう時間はないのだろう。そろそろ決断をしないと行けないのだろう。原作をなぞるというのならここで奏ちゃんを見殺しにして響ちゃんから平穏を奪うのが正解だろう。でもその判断がこの直前になってもできない心の弱い自分が嫌いだ。

 

「アニメだけだと1話と回想だけの奏ちゃんだけど、今となっては姐さんと慕ってくれる可愛い後輩なんだよな。そんな子を見逃すなんて私の心では耐えきれない」

 

であるならば、ここで自分が介入すれば奏ちゃんは助かるだろう。響ちゃんがどうなるかはその場のアドリブになるかもしれないけれど死んでしまう可能性は私が頑張れば低くすることができるだろう。

 

でもそうしたら自分の知っている未来が読めなくなり、暗闇の中を進んでいく必要がある。それが怖い……

 

「本当にどうすればいいんだろうね。その場になれば体が勝手に動いてくれればいいのに」

 

まあ、いつまでもここで煙を吐き出していても何も変わるわけもないし、とりあえず移動しますか。

いつまでもここで現実逃避したい気持ちをぐっと堪えて喫煙所を出て会場の周りと歩いていく。考え事に集中していて上の空だったからか、誰かとぶつかり、相手をこかしてしまった。

 

「あっ、ごめんなさいね。考え事を……」

 

私は最後まで謝罪の言葉を続ける事ができなかった。なぜかって?

 

「私の方こそごめんなさい! 怪我もないし、平気、へっちゃらです!」

 

そこにいたのはこれから私が平穏を奪うべきか悩んでいる女の子、立花響ちゃんがそこに転びながらも笑顔をこちらに向けていた。

 

 

 

 

 

「響ちゃんっていうのね。見たところ一人みたいだけど大丈夫なの?」

 

こちらの不注意でころばしてしまったのと、こんなところに小さな女の子が一人でいるの見ればたとえ理由を知っていいてもそのままになんてできるわけもなく。まだ少し時間もあったのでベンチで二人ジュースを飲んでいた。

 

「本当は未来…友達と一緒に見る予定だったんですけど、その友達が急用で来れなくなっちゃって…… その友達がツヴァイウィングの大ファンで誘われて見に来たんですけど一人になっちゃったからどうしようかなって……」

 

こんなところから原作と離れ始めている…… 本来であれば響ちゃんは一人でもライブを見ようとしていたはず。でも目の前のこの子は帰ることも選択肢に入れている。

 

……どうして神様がいるとしたら私に選択を求めてくるのか。ここで私が響ちゃんと出会わずに、響ちゃんが帰っていれば私は何の迷いもなく奏ちゃんを助けることができただろう。響ちゃんがいないなら仕方ない、と自分に言い訳をすることもできたはずだ。

 

でも目の前の響ちゃんは私に答えを求めているように見える。やっぱり純粋ないい子なのだろう。初めて会った私を信用してくれているようだ。

 

「そうなのね、災難ね。確かに君みたいな年齢の子が一人で見るのは少し危ないかもしれないわね」

 

「やっぱりそうですよね。せっかくのチケットもったいないですけど帰ったほうがいいかも」

 

考えがまとまらずに適当に返答を続けていたら気づけば響ちゃんは帰る方に気持ちが動いている。確かにこの方がいいのかもしれない。もしかしたらここは響ちゃんがいなくてもなんとかなる平行世界かもしれない。どうしようもないときは誰かが助けに来てくれるのかもしれない。

 

でもこの時私の口から出た言葉は

 

「でもね響ちゃん、きっとツヴァイウィングのライブを君は大好きになってくれると思う。席の場所が遠いから一緒には見れないけど電話番号を教えておくから何かあれば私が駆けつけるから見ていかない?」

 

目の前の少女に辛い道を進ませる言葉だった。

 

 

「そうなんですか!ならライブ楽しんできます!」

 

「……そうだね。私の連絡先を渡しておくから何かあれば連絡をちょうだい」

 

「ありがとうございます!じゃあ、行ってきますね!」

 

こちらを何度も振り返り笑顔で列に並びに行く響ちゃんを見送りなら自分は何をしたか実感が湧いてくる。

 

(ああ、私は今一人の女の子を戦いの道に叩き込んでしまったのね)

 

どうして自分があんなことを行ったのかわからない。選択肢の一つとしては確かにあったがあんなにも迷いなく言える状態ではなかったはずだ。

 

(響ちゃんがいないことによる未来の確定的な破滅を恐れたのかしら。でも響ちゃんを装者にするためには奏ちゃんは限界まで追い込まればいけない。それこそ絶唱を歌うところまで)

 

「おねえーさーん!」

 

考え事を続けるうちに向こうから列に並びに行ったはずの響ちゃんが返ってきた。

 

「あらあらどうしたの。忘れ物でもした?」

 

「はい!おねえさんの名前聞いてなかったから!」

 

「そういえばそうね、立浪紫香。呼び方はおまかせで改めてよろしくね」

 

「しこうさんですね。よろしくおねがいします!」

 

それだけを伝えに来たのか、響ちゃんはまた元気に入場列の方に小走りで向かっていく。

 

 

(そうね、今後ともよろしくでしょうね)

 

 

きっと後から思えば、この時の響ちゃんの笑顔と会話が背中を押したのかもしれない。でもそれに気づくのはもっと後のことでした。

 

 

「ま、いろいろ諦めてとりあえず席に向かいますかね」

 

 

 

 

目の前では可愛い妹分二人がお揃いの衣装で歌っている。その顔は何の気負いもなくただ目の前の一曲にすべてをかけ楽しんでいるようだった。きっと彼女らに大人の企みなど何の関係もないのだろう。子供は大人に守られ、道を示されている。それでも一瞬一瞬を全力に必死に生きれるのはある種子供の義務であり特権なのかもしれない。

 

(あの血を吐きながら敵を倒すことだけが生きる意味と言い切った奏ちゃんがあんな笑顔を見せてくれるようになるなんて。きっと翼ちゃんを始め周りに恵まれた結果なんでしょううね)

 

私というマイナスがいてもきっと差し引きプラスな人間関係ができているのでしょう。

 

(私はあんなにもいい顔している奏ちゃんを助けることに自信を持てないでいる。こんな自己保身しかないような自分が何より嫌になる)

 

自己嫌悪をしている間に一曲目が終わり二曲目には移ろうとしている。もはや迷う時間は残されていない。

 

(響ちゃんを苦難の道に追いやってしまったんだ。奏ちゃんだけを助けるわけにも行かないよね……)

 

 

 

 

 

そうしてついにわかっていても来なければいいと望んだ時間が来てしまう。

 

 

 

 

 

 

ノイズだ!!   早く逃げろ!!

 

   邪魔だ!!お前早くどけ!!

 

 子供だけでも!キャッ!

 

 

文字情報ではなく現実としてみればそれはあまりにひどい光景だった。私は予め避難経路から離れ人の波に巻き込まれないようにしていたとはい死の匂いが充満しすぎている。

ノイズに殺されたのであれば灰しか残らないはずだ。しかしここには血の匂いとそこに残る死体が確かにあった。

 

「こんな光景見せられれば、生存者に対するパッシングも少しわかってしまうかもね」

 

 

私未だ目の前の光景を飲み込めていないのかもしれない。情報として知ってもそこに感情が乗ってしまえば一気に受け止めきれなくなる。

 

 

「ああ、もうそんなタイミングなのね…… 」

目の前では響ちゃんが観客席の崩落に巻き込まれて奏ちゃんの背後に倒れ込んでしまった。念の為に私はそちらに近づきながら観察する。

私はそちらに近づきながら観察する・

 

(きっとこれが最後の選ぶチャンス。響ちゃんにはガングニールの破片と絶唱を受け止めてもらえればきっと原作からの乖離は最小限になり、私も生き残れるはず。それ以上に世界が滅ぶことも防げるはず)

 

きっとそれが一番安全な道。ギャラルホルンとか言うトンデモなせいでこの世界の行く末が他の並行世界に影響が出るかもしれない以上、無茶はできない。

 

 

「おい!?死ぬな! 生きるのを諦めるな!」

 

 

遠くで奏ちゃんのあのセリフが聞こえてくる。流石にもう原作の名シーンだ!と喜べるほど薄い付き合いでもなく、目の前では可愛い後輩か未来の後輩の命が消えようとしているところだった。

 

しかし、そんな原作の始まりを見て私の心に浮かんだのは全く違う考えだった。

 

 

(そうか、私は主人公じゃないんだ。転生なんかしたから、この世界には私がいなければとおかしなことを考えてしまっていたんだ)

 

そうだ原作のイベント初めて体験したけど、それは私の為のものではなく、みんなが必死に生きようとした結果でしかないのだ。

 

気がついてしまえば、なんてことはないどこまでもシンプルな問題でしかなかった。

 

(いつだってそうだろう?シンフォギアのオトナたちは自分のことを省みず子供のために命をかけるのだ)

 

私はそうしていつものように胸のペンダントを握る。

 

使うつもりはなかったけど隠し持っておいたリンカーを自らに使う

 

目の前ではもう奏の命が尽きる直前だ。

 

 

「さあ、行こう。今日が俺の命日で

 

   私の誕生日だ」

 

 

「Disastrous psyche achilles tron」

 

「歌が聞こえる……」

 

何度も画面越しに見てきた。この世界に来てからは何度も体験してきた変身だ。

 

いつか見るであろう切歌ちゃんに似た、でもそれよりは淡い緑のシンフォギアを身にまとう。

 

そのまま奏ちゃんとノイズの大群の前に降り立つ

 

(ああ結局はバカが無駄に考えていただけだったんだ。失っていい命なんて私の一つだけだったんだ。全力で生きている可愛い妹分が生きられるなら、見えない未来なんて私が背負ってやる!)

 

「姐さん!? なんで!?」

 

「ちょっと色々迷っててね。でも安心してもう決めたから」

 

安心して奏ちゃん。もう迷わないから。私が全部持っていくから。

 

私の心に応えてくれたのか、絶唱の歌詞は何の迷いもなく心に浮かんでくる。

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl

 

 

 

 Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl」

 

 

私を原点に世界を光と轟音を包む。体中の血管が破裂し、すべての筋肉がずたずたに切り裂かれていくような気分だ。おそらく程度の差はあれど間違いではないだろう。

 

(それでもいいんだ。こんなところで命を落とさせるわけには行かない…!)

 

 

そして、光が晴れればそこにいたのは三人の少女と倒れ伏した私だけだった。

 

奏ちゃんと翼ちゃんが近づいてきて声をかけてきてくれる。さっきまで見捨てるかどうかを悩んでいた私にはもったいない後輩だ。

 

「こらこら……もうひとり重体人がいるんだ…、 早く救助を呼んでくれ」

 

ここまでやったんだ。響ちゃんが失血死なんて許されない。

 

それだけを伝えて私の意識は闇に沈んでいく。




1話あたりの長さの加減が難しい……
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