小さな親切、大きな愛 [G編]   作:冬眠復帰

23 / 50
話が進まない……

最近他の方の作品読んでて自分に足りない所がどんどん見えてきたので改めて精進していきたいです


22,優しい夜明け

終わらない夜はない

沈まぬ太陽もない

 

22,優しい夜明け

 

 

 目が覚めれば最近見覚えしか無い病室の天井だ。入院期間はともかく入院回数は周りでもトップではないのだろうか。そろそろ私専用の病室を準備してもらえそうだ。

 なれた手付きで先生を呼んで色々確認を済ましていく。今回もどうやらいつもの疲労だそうで、検査入院だそうだ。問題なければこのまま検査後退院でいいらしい。

 取り敢えず前回の反省も踏まえて二課からの連絡がないかを確認して緊急の物はなそうだしさっさと検査を終わらしてしまおう。そう話せばこのまま検査に移ってもらえるらしい。

 

 

 検査が終わり異常もなく手続きをして退院の準備を進める。気を失う前の戦闘ではいつもと違う感じがあったしなにか引っかかるかもと思っていたけど通常の検査では見つからないものか私の気の所為だったのか。気にはなるところだが今はもうゆっくりしている時間は無い。

 考え事をしている間に準備は余すことなく終わってしまった。元々気を失っている間に運ばれただけだし、荷物も何もない。着替えて忘れ物がないかの確認程度で終わってしまう。最後にもう一度端末に来ている連絡を見ていけば奏ちゃんから翼ちゃんの意識が戻っているとの連絡があった。連絡の後には無茶したことへのお叱りが有ったし次あった時には覚悟しておこう。

 受付で翼ちゃんの病室を聞いて向かおうと思ったけど手ぶらは寂しい。しかし今から何処か外に買いに行くのも時間が掛かりそうだし、売店でなにか買っていこうかしら。大分手抜きになっちゃうけど本命は退院祝いの時ということで勘弁してもらおう。

 

 売店で簡単なお菓子の詰め合わせを買って病室まで歩いていく。翼ちゃんとは話すのも結構久しぶりね。クリスちゃんの自爆めいた絶唱を使って以来だから色々起きてるし大丈夫そうならその辺りも話したほうが良いのか、それとも今は身体を治すことに専念させるほうが良いのか。

 どう考えても後者でしょうね。病み上がりの人間に仕事の話して良いことないでしょうし、私が司令に怒られちゃう。

 

「翼ちゃん。私、立浪紫香よ開けてくれる?」

 

 親しき仲にも礼儀あり。というよりも花の女子高生の部屋に勝手に入るのは流石に同性であったとしても無いのでちゃんしないと。在室でなおかつ起きていたようで直ぐに入室を促すように返事が返ってくる。声の感じからしても多少は元気がありそうで一安心。

 

「久ぶりね、体調は……」

 

「どうしたんですか? 中に入ってください」

 

 翼ちゃんの散らかし癖を甘く見ていたようだ…… 奏ちゃんからの連絡だと一般病棟に戻ったのも最近みたいだし、入院中であれば散らかりようが無いとは思っていたんだけど。

 

「ここまで散らかせるなら元気そうね。まずは掃除からかしら」

 

「あっ……」

 

 私と部屋を見比べて顔を赤くしながら小さくなっていく翼ちゃんはいつもどおりかわいいものだ。しかし退院直後の最初の仕事が他人の部屋の掃除になるとはね。これぐらいの苦労ならいくらでも良いけど、翼ちゃんの将来が心配になってくる。

 

 部屋を片付けていけばでるわでるわでどうやったら短期間でこんなにものが散らかるのかを真面目に調べてみたくなるレベルだった。一旦ものをベッドの上にまとめてそこから掃除と整理整頓を始めたけど顔を赤らめながら三角座りで小さくなる翼ちゃんを見てると苦笑が口から漏れてしまう。文句を言おうとするけど何も言えなくなる翼ちゃんは動画に撮っておけばよかったと思う。横になれなくても良いのかと聞いても

 

「大丈夫です! だから片付けも手伝います」

 

なんて言われても、翼ちゃんの加勢は-1.5人分なんだよなー。流石にそれはハッキリ言えないし、そもそも点滴外せてない人を動かせるわけ無いでしょ。

 

 取り敢えず散らばったものをまとめて簡単に人を呼べる程度の部屋に出来たところで一旦終わりとしましょう。残りはそのうち慎次君に任せてしましましょう。

 

(あれ? 響ちゃんがかたづけるんだっけ?)

 

 最早記憶が曖昧になり始めてる原作知識を必死に掘り起こす。そういえば部屋の惨状を見ることで響ちゃんと翼ちゃんの距離が縮まったような気もする。もしそうなら余計なお節介しっちゃったかな? 今の二人は既にそれなりに仲もいいし大丈夫だと信じよう。

 

「さて改めて、久しぶりに話せるわね。元気してる?」

 

「点滴も外せず部屋の片付けもできない程度にはダメですね」

 

 少し拗ねたような口調で突っ返される。苦笑いしながら謝ってもなんとか許してもらう。やっぱり可愛い素直な翼ちゃんが私は大好きだな。

 

「立浪さん、私が寝ている間に事態が動いている聞いています。立浪さんも入院していたそうですし」

 

「ダメダメ。今日はお仕事の話は無しよ。下の売店で簡単で申し訳ないけど甘いの買ってきたから一緒に食べましょ」

 

 翼ちゃんの質問には返答せずに、有るであろうお茶のセットを探す。個室なのだ、それなりのものがあると思うんだけどなぁ。

 

「今はそんな事をしている場合じゃないでしょ! 襲撃されてサクリストDも奪われた。私がちゃんとしていれば……」

 

「今はこんな事をしている場合なのよ。翼ちゃん自分で答え言ってるじゃない。みんなが万全なら問題ないって。だから今は外のことは忘れて元気になるのが優先よ」

 

 お、有ったあった。急須に湯呑にインスタントのお茶っ葉まで。ポットは備え付けであるしこれで問題なしね。と思ったら水がない。大体こういう部屋にそれ様に飲料水があると思ったんだけど。翼ちゃんに聞こうとしたらベッドのサイドテーブルにはほとんど残っていないミネラルウォーターのペットボトルが。喉が乾いてたのなら仕方ない。

 

「ちょっと水買ってくるから、一回自分のしないといけないことを整理しておきなさい」

 

 そう伝えて病室を出る。この階に自販機あれば楽で助かるんだけどなー

 そうしてウロウロしていればお目当ての自販機は簡単に見つかり目的の水を買って部屋へと戻る。その途中ふと窓から外を見ればそこにはトラックを走っている響ちゃんと未来ちゃんが。

 

(元気だね、やることが見つかってきてるのかな)

 

 響ちゃんも聖遺物の暴走を含めてかなり無茶をしたはずだ。それが私はやっと退院。向こうは既にトレーニング。これが若さなのかな…… 自分で言ってて悲しくなるからこの話題はお終い。それより気になるのは

 

「コーナーが90度のトラックてなんなのかしら……」

 

 

 翼ちゃんの病室に戻りお茶の準備をして二人でお茶とお菓子をいただく準備が完了した。自分で買ってきたものを食べるのはどうかと思うけど一人で食べさせるのも気を使わせそうだしこれぐらいは見逃して欲しい。

 

「さっきそこで響ちゃんが走ってるのを見たわ。相変わらず元気ね」

 

「立花は元気と明るさの塊のような子ですからね。私も見習いたいところです」

 

「元気よねーほんと。そうそうこの前奏ちゃんと響ちゃんオススメのお好み焼きや行ってきたんだけど美味しかったわ。いい店探す才能もありそうね」

 

「私がいない時に二人でなんて…… 次は私も一緒に行きますからね」

 

「退院祝いに似合わないかもしれないけど、みんなで行きましょう。奏ちゃんと響ちゃんどっちが多く食べるか見ものね」

 

「もう、あの二人をなんだと思ってるんですか」

 

 ありがとう響ちゃん。君のおかげで戦いのことを忘れて楽しくお喋りができてるわ。

 それから趣味の話や行ってみたいお店の話なんかで会話に花が咲く。気がつけばそろそろ出ないと行けない時間だ。

 

「さて、そろそろ私はお暇するけど、最後に少しだけお仕事の話をしてもいいかしら。さっきはこっちからダメって言っておいて申し訳ないけどね」

 

「なんでしょうか」

 

「翼ちゃんはどうしてあの時自分の身を顧みず絶唱を使ったの? あなたが一番それで守られる辛さを知っているはずなのに」

 

「だからだと思います。奏や立浪さんが絶唱を使った時二人が死んでしまうかもしれない恐怖、何も出来ない自分の不甲斐なさに打ちひしがれました。でもあの時私は自然にみんなを守るために歌いました。とても自然にそうすることが一番だと思いましたし、今でも思っています」

 

「そう、私も無茶して心配かける方だからこれ以上は言わないけど、それでも自分の事を大切にしてね。何かあったら多分私は立ち直れないかもしれないから」

 

「ご安心を、剣たるこの風鳴翼が守ってみせましょう」

 

 違う、そうじゃないんだよ。今のそれはあなたの心からの思いに見えないんだ。でもそんな事を言う権利は私にはないし見守るしか無いんだろう。

 

「お互い自分を大事に精一杯やりましょう」

 

「はい!」

 

 気持ちの良い返事を聞きながらこの子が曇らないようにしないと、なんて決意を新たにする。私のことなんて放っといてドンドン進んでいくんでしょうけどそれでも助けたいと思うぐらいは許して欲しい。

 

 今度こそ私は病院を後にして家へと戻る。二課に連絡をしても今日は休めと言われさっき翼ちゃんに偉そうに説教してきた手前従わざる終えず大人しく家に帰る。半額になる前の惣菜を買って家に帰ればただいまの声に返事が無いことに寂しさを覚えてしまう。少し前までは当たり前だったのに人間変わるものだなと。またみんなが元気になって今の騒動が落ち着いたらお泊り会かそれか旅行なんてのも良いかもしれない。そうやって未来を考えながら過ごす一人の時間は寂しくても楽しいものだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。