小さな親切、大きな愛 [G編]   作:冬眠復帰

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気がつけば無印も大分後半まで来ました。
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27,会話できる喜び

言葉がなければ通じ合えない

言葉があっても通じ合えない

 

 

27,会話できる喜び

 

「知らない天井だ……、……いやほんとにここどこよ?」

 

 お約束のセリフを言ったと思えば本当に知らない天井が目に入ってきて意味がわからない。周りを見回してみてもいつもお世話になっている病院ではないし、そもそも雰囲気が明らかに現代日本ではない感じがする。

 わからない場所のことは諦めて次は自分の状態の確認だ。体は特に痛みもないし見た感じ傷なんかもない。服装は多様乱れてるけど脱げてはいなし暴漢に乱暴されたというわけでもなさそうだ。

 

「ん? ……あっ!?」

 

 とりあえずの身の安全を確認して少し気が抜けていた私はここで初めてシンフォギアが無いことに気づいた。

 

「まずい……! どこ!?」

 

 先程までの落ち着きも最悪シンフォギアを纏えばなんとなるという安心感から来ているものだ。よく考えれば当たり前だが奏者と狙って拉致したのであれば真っ先にシンフォギアを回収するだろう。そこまで考えが回れば私を狙った者がシンフォギアを知っているという結論にいたり、焦りは加速する。

 

「おまえが探しているのこれだろう?」

 

 声のする方向を見ればそこには恐らく私のシンフォギアを手に遊びながらこちらをニヤニヤと見ている怪しい女の姿があった。そこで意識を無くす前に聞こえた声を思い出し一気に点が線につながる。

 

「……どちら様でしょうかね?」

 

 ここで不用意なことを言えば私の安全は一瞬で無くなるだろう。どう考えても目の前に居るのはフィーネであり了子さんだけど今の私がそれを知っているのはおかしな筈だ。

 

「存外落ち着いているのだな。もう少し慌ててくれたほうが可愛げがあるというものだ」

 

「了子さん? イメチェンしたんですか?」

 

 いや、声を聞けば分かってしまうでしょ。元はアニメ的な表現だと思ったけどこの人声に関しては何にもしてないのね……流石に何年も日常的に会話してきた人の声を間違えるわけもない。

 

「ほう、どこでそれを知った?」

 

「いや……声一緒じゃないですか。もう、何の実験か知らないですけどこれはやりすぎだと思いますよ」

 

 冷静に、いつもどおりに。軽口を叩きながら思考を回せ。フィーネが居るということはここの場所にも見当もつく。おそらくはフィーネとしての拠点であるあの古城だ。

 

「賢しさを見せびらかすのもいいが、自らの置かれている立場を理解するのだな」

 

 そう言うと、私の周りにノイズが現れる。今の私は何も出来ない一般人だ。このまま襲われれば瞬く間に灰になるだろう、物理的に。

 しかし、ノイズは何をするわけでもなくただそこに居るだけだ。なんとなくそうかも知れないと思っていたけれどやはりフィーネは私を殺すつもりはないのだろう。少なくとも今この場では会話ができるのだろう。

 

「降参でーす」

 

 やる気のない声で両手を上げる。実際問題この状態で私の命は向こうに握られている。抵抗などできるわけも無い。いや? 最悪ノイズさえ居なければなんとかなるかも? まあ、大人しくしていよう。

 

「それで良いのだ。何も取って食う訳でもない。大人らしく会話と行こうじゃないか。自分の状態を見てみろ。何も拘束していないのが私の誠意と言うものだ」

 

 そんな悪人面100%で言われても説得力無いですよーだ。拘束も何もシンフォギアはない以上ノイズに対して無力なのだ。拘束など元より不要だろう。

 

「それで、何を話すんですか了子さん。こんなことして後で指令にどれだけどやされるか知りませんよ?」

 

「いい加減その名で呼ぶのやめろ。私はフィーネだ。櫻井了子の精神はもうこの世に存在しない」

 

 やっと名前を言ってくれたので、ここからはフィーネ呼びで良いだろう。そのまま自らの生い立ちとフォニックゲインに触れた何年も前からもうフィーネであっと伝えられる。

 

「てことは、この前一緒にランチに言ったのもフィーネさんだったてことですか。結構お茶目な性格してます?」

 

 せめてもの仕返しにと言葉で反撃すれば無言でノイズが距離を詰めてくる。どうやらこの話題はお気に召さなかったようだ。私はさっきより大げさに両手を上げ謝罪の空気を醸し出す。

 

「……お前はどうしてこの状況でそんな態度で入れるんだ。少しは焦るとかあるだろう。しかもなぜ私にさんをつける。私はお前の敵なのだぞ」

 

「だってフィーネさん話しやすいですし。私が今まで関わってきたのも貴方なら別にさんづけでもおかしくないかなって。それに貴方が敵かどうかは目的も何も聞いていないので判断できないです」

 

「ふん、貴様も大概変人だな。やっと本題に入れる。私の目的を教えてやろう」

 

 そこから続けられるフィーネの目的はやはり月を穿ちバラルの呪詛を解くというものだ。XVまで見た私からすればそれは彼女の想い人を裏切ることになると知っているのだがそれを伝えるわけにもいかず、精一杯の神妙な顔をつくるぐらいしか出来ない。

 

「なんというか、凡人の私にはイメージも出来ないようなスケールの話でけど、まあざっくりとはわかりました。それで私はどうなんるんですか?」

 

「貴様には私の下に付かせてやろう。最近使えない手駒を捨てたところでな。私一人でも問題ないが雑用をさせる人間が居たほうが何かと便利だろう」

 

 さっきの月を穿つなんて話よりも何倍もインパクトのある話だ。クリスちゃんが前に私を連れ帰ろうとしたときからもしかしたらと思っていたけど、本当に私はフィーネにスカウトされているようだ。

 

「理由を聞いても? 普通に考えれば私敵ですよ?」

 

「そうやって即座に否定しない所だ。貴様以外の装者の小娘共と違って利益を計算できる人間だ。それであればどちらに着くのが良いのか判断できるだろう」

 

 なるほど、確かに私以外の奏者であれば即座に断るだろう。響ちゃんは話を聞いて説得しようとするかな? そして私も何も知らなければここでフィーネに協力していたかも知れない。しかし、カラクリも知っているし、何よりそれを成してしまえば一番悲しむのがフィーネ本人であるかもしれない以上協力は出来ない。

 

「そうですね、とりあえずは消極的なお断りですかね。それが誰に迷惑を掛けないならともかく、そうでないなら協力は出来ません。何より貴方は可愛い私の妹分達を虐めてますからね、簡単に協力出来ませんよ」

 

「そうやって、理由付けるのが小賢しいというのだ。そもそも何なのだ消極的な断りとは。何が消極的なのだ」

 

「そこに関してはですね、さっきも言いましたけど誰もが悲しまないエンディングになるなら協力もやぶさかではないかなと。前にフィーネさんの恋心を聞いちゃってますからね。否定もしにくいというか」

 

 フィーネの恋心も見えにくい優しさも知ってしまった以上、にべもなく否定することは私には出来ない。前に考えてた以上に私は絆されているのかもしれない。これも作戦だとしたらなんて策士だ。

 急に返事が返ってこなくなったことに違和感を感じ、よく見てみればフィーネの両手が震えている。それも笑いを堪えているわけではなく、どちらかというと

 

「貴様……! 我が心を恋と! 小娘共と同じ感情と愚弄するか!?」

 

 どうやら知らぬ間に逆鱗を踏んでしまったようだ。衝動的に私への殺意が膨れ上がったせいかノイズが戦闘態勢に移行しているようにも見える。これ以上言葉を間違えれば死が待つのみだろう。それでもここは引いちゃいけない場面だろう。

 

「ええ何度でも言います。貴方のそれは恋心でしょ。愛と言うならば相手を案じて身を引いているはずだ。それでも貴方は納得出来ずこうしてもう一度会うために長い時間。私では想像も出来ないような時間を費やして会いに行こうとしている。これを恋と言わずに何というのですか?」

 

「黙れ! それ以上私の心を愚弄すれば殺す! 我が愛を恋なぞという低能なものと同一視するな!」

 

 ここが、分水嶺か。

 

「そもそも恋は愛の下位互換ではないでしょう。恋が愛に劣ると誰が言った!」

 

「なに……?」

 

「愛とは! 相手の事を思い、例え自分が涙を流そうと、身が焼かれようと相手の全てを尊重することでしょう。そうであれば相手が貴方から離れたのであればそれで終わっていたはず」

 

 呼吸を整え息を吸い込む。

 

「フィーネ! 貴方のそれはどこまで言っても恋心だ! 相手のことを愛し、離れることも許容できない。離れていったら追いかけてもう一度繋がりたい! 恋と愛はベクトルが違うだけで、その尊さは比較できるものじゃないでしょ!!」

 

 一気に言い放ち叩きつける。肩で呼吸しながらも視線は前から離さない。

 フィーネは一瞬ポカンとした顔した後大声で笑い出した。

 

「はは、あははははは! 貴様何を言うかと思えば! 今の自分の状況を分かっているのか? とんだ馬鹿だな!」

 

「馬鹿で結構! 貴方は恋に生きる。私は愛に生きる。それだけの話でしょ」

 

「ほう? 貴様の愛する相手は誰なんだ? 戯れに聞いてやろう」

 

「奏ちゃん、翼ちゃん、響ちゃん。それにもうクリスちゃんもね。二課のみんなも含めて私の人生を彩ってくれるみんなを私が愛してる」

 

「とんだロマンチストだな。その年で恥ずかしくないのか?」

 

「そんなこと言ったらフィーネさんなんてその年で恋に…… すいません。取り消しますからノイズ近づけないで!」

 

 こっわ~、やっぱりこの人年齢で弄られるのは止めておこう。

 

「ふん、愚か者が。まあいい、久しぶりに笑わせてもらった礼に殺すのは止めにしてやろう」

 

 そこまで言って、フィーネは部屋を出ていこうとする。えっちょっとまってこのまま放置プレイは困るんだけど!

 

「心配するな、食料はそこの棚に入れてある。殺さないと言った以上貴様は生かしておいてやる。シンフォギアがなければ貴様などこの部屋から出ることも出来んからな」

 

 こうなるともうお手上げだ。何ができるわけでもなくこの部屋に監禁されるしか無い。辺りを見回せば、机上にタバコと灰皿、それにマッチが置いてある。最初から殺すつもりはなかったはいえこれは流石に甘すぎでは? と思う。それでもいつもと同じことができるというのはそれだけで精神の安定につながる。

 窓も時計もない部屋で今が何日かもわからずただ無為に時間を過ごすのは焦りを生むが、今の私にできることは無いし救助を待つしか無い。

 

 

 

 そうして、何度目かの起床をしたところで、屋敷が騒がしいことに気づく。何が起こったのかわからないが、今なら逃げ出せるか? でももし失敗したら今度こそ殺されるかもしれない。それにこの騒ぎがどのようなものかわからない以上不用意に動くことも出来ない。

 

 そうして、少し時間がたち静かになった後扉から入ってきたのは血まみれの了子さんだった。

 

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