小さな親切、大きな愛 [G編]   作:冬眠復帰

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遅くなりました


28,後ろ向きをやめるために

ここが最初の分岐点

ここが最期の出発点

 

28,後ろ向きをやめるために

 

 

 何も出来ずに大人しく屋敷の地下で軟禁されていたら突如血まみれの了子さんが入ってきた。その光景を見て米国のフィーネとの決別とそこからの襲撃イベントを思い出す。気がつけばもうクライマックスが始まっていたようだ。

 

「どうしたんです? 流石に血化粧はファッションとしても残念すぎません?」

 

「ふんっ。何時まで立っても軽口が減らないものだな。なに世の中の理を知らない愚か者どもに教育をしてやっただけだ」

 

 やはり米国の突入が有ったのだろう。既にネフシュタンの融合も済んでいるらしく血まみれの割には普通に話している。

 

「それで、最初に来たっきりで全然ここに来なかった了子さんは何の御用で?」

 

「なに、私の計画も最終段階になったのでな。最後に顔でも見ておいてやろうと思ってな」

 

「……始まるんですね了子さん。いや、フィーネ」

 

 私が彼女の名を改めて呼べば人の悪い笑顔を見せてくる。

 

「お前もやっと観念したか」

 

「かもしれませんね。貴方は今から自分の全てを掛けた戦いに赴くのでしょう。なのであれば貴方の名前を呼ばなきゃダメでしょ」

 

 ここまでは意趣返しも兼ねて了子さん呼びをしていた。ほんの少し了子さんを居なかったことに出来ない私の弱さも有ったかもしれないけど。でも、もうそんな時間ではないんだ。これから一気に決着が着くまで止まれないし止まらない。だとすれば私自身の意識のためにも呼び方を変えるタイミングとしては丁度いいだろう。

 

「……貴様は真面目なのかふざけているか。まあいい、そういうことだこれから次に合えば私達は殺し合うだろう。それが決着というわけだ」

 

「そんなこと言って、私以外の装者の子たちに負けちゃいますよ」

 

「私があんな小娘どもに負けるはずがあるか。私の気がかりは通常のシンフォギアでは起こり得ないことを起こしたお前だけだ」

 

 何のことだ? 私のシンフォギアには何か隠された機能でも有るの? でもシンフォギアを作った本人であるフィーネが気にしているってことは想定外の何かが私のシンフォギアにあるということだろうか。そうなると考えられるのは響ちゃんが暴走した時のあれか。シンフォギアを纏っている状態からさらに胸の奥に歌が浮かんできた。二重シンフォギア? とでも言うのだろうか。確かにあの時はいつも以上に力が出ていたのは確かだ。

 

「諦めろ。私でもわからんことがお前にわかるわけがないだろうが」

 

「そんな簡単にわからないって言っちゃって良いんですか? 一応私達敵同士ですよ?」

 

「これでも科学者をしていてな。不用意な発言は嫌いなのだ。さて、雑談はもう良いだろう。ここに貴様のシンフォギアを外に置いておく。後は誰かがこの部屋を見つけるのを祈ることだな」

 

 イマイチ何を言われてるのか理解できないけど、フィーネは今から最後の戦いに向かう、シンフォギアは置いていってくれると、シンフォギアを使うためにはこの部屋を出ないといけないけど

 

「なんでこんな面倒くさいことするんですか? ここで私を始末するか、そうしないならシンフォギアもう返してくださいよ」

 

「なに、どうせ私の計画の成功は間違いないのだ。それまでに貴様が私に追いつけるかのゲームをしようかと思ってな。あれだけ啖呵を切ってみせたのだ。少しは私を楽しませてみろよ?」

 

 ……ラスボス特有の油断舐めプみたいですね……。変なことを言ってここで殺されるよりはマシだけど本当この人は……

 

「それでは少しのお出かけを楽しんできてください。すぐに追いついて後悔させてあげますから」

 

「ふっ、せいぜい期待しておくよ。それではな」

 

 フィーネが扉を出ていくのと同時にガチッと鍵がかかる後が聞こえる。言っていたとおりもうこの場には返ってこないだろう。しかし誰かに助けてもらえ言われても普通は困り果てるだけだろうけど

 

「でも、この後指令とクリスちゃんが来るの知ってるから割と安心できるんだよね」

 

 確か時系列的にはこの後クリスちゃんとほぼ一緒のタイミングで二課のメンバーが入ってくるからそのタイミングで気づいてもらえばいいか。

 もはやほとんど覚えて無いけど結構大きな爆発だった気がするし、気づいてもらえるかなー? 流石に敵の本部ぽい場所だししっかりと調べられるだろうし大丈夫……

 

「あれ、このタイミングでもうノイズの大量発生してたっけ? あれどうだったけ……。場合によっては私まずくない? ノイズの方に人員が割かれてここの調査後回しとかされたらほんとに間に合わないかも……?」

 

 自分の記憶力の弱さが恨めしい。言い訳がましいけど流石に30年ぐらい前のこととか細かいことなんて覚えてない……! 

 自分の記憶が急に怪しくなってなんとか部屋から脱出出来ないか、周りを見回すけど既に何日かを過ごした部屋でそんな都合のいいものがあれば既に見つけている。このままこの部屋で生き埋めになる未来が現実味を帯びだして冷や汗が出始める。

 せめてもの抵抗として家具を組み合わせて簡易のシェルターとまでは行かなくても天井が崩れた時の準備ぐらいしかできることが見つからないまま時間が過ぎていく。

 

 

 そうしてどれぐらい時間が経っただろうか突如上の方で爆発音が聞こえてくる。同時に立っていられないような振動が襲ってくる。なんとか自作のシェルターもどきに逃げ込む。時間としてはほんの少しで揺れも収まり特に怪我をするようなこともなく無事にやり過ごせた。

 

「しかし、特に被害がないということは……」

 

 案の定部屋の内部は壁もドアも天井もどこも壊れることもなくさっきまでと同じく私を閉じ込める。このパターンはあんまり予想してなかったので、さてどうしたものか

 

「おーーーい!! 誰かーーーー!!」

 

 聞こえる気はしないけどしないよりはマシだろうとできる限りの大声を出してみる。この爆発の原因が二課じゃなかったら最悪の手になっちゃうけどもうそんなこと考えている余裕もなく、とにかくこの部屋から出ることが最優先だ。

 それから何度か声を出してみるものの反応なんてなく、疲れて床にへたり込んでしまう。

 

「最悪じゃない…… もうどうにもならないの?」

 

 流れを知っていても動けなければどうしようもない。改めて自分の無力が嫌になる。少し前までの余裕を来いていた自分を殴りたくなる。

 何度目か分からない自己嫌悪に陥っていると小さく何かが聞こえてくる。何度目かのそれは小さく跡切れ跡切れだが

 

「……ーい……」

 

 なんだろう、ぼんやりと聞こえてきたのは誰かの声かな……、って声!?

 

「おーーい!! ここにいるわよー!!」

 

 できる限りの大声を返す。こんなに大声を出しながら動くなんて軍隊では考えにくいし、おそらくは二課の誰かな可能性が高いと思う!

 降って湧いた最後かもしれないチャンスに私も喉が痛いのを堪えて大声で答える。お願い! 向こうに届いて!

 希望虚しく呼びかけてくれた声はすぐに聞こえなくなる。上はもっとひどい状態だろうし、声も届かなかったのかな。

 そう思っていたら上の方から次は声でなく地鳴りのような、何かを砕くような。声ではない音が聞こえだした。時間をおかずに音はドンドン大きくなっていくついには

 

「トォオオオリャァアアアア!!!」

 

 突然天井から赤い熊が降って来きた……

 

「じゃない!? 指令!!」

 

「紫香君無事か!?」

 

 どうやら私の悪運はまだ尽きていないようだ。

 

「指令このドアの向こうに私のシンフォギアが有るはずです!」

 

「任せろ!」

 

 あ、どんな状態で置いてあるかわからないから吹き飛ばされたらまずい……、なんて思ってたら指令綺麗に鍵の部分だけを吹き飛ばしたよ……。何したらこんな事できるようになるのやら。

 ゆっくりとドアを開ければご丁寧に目の前に小箱が置いてある。明けてみれば予想通り私のシンフォギアが入っている。

 

「まあ、フィーネらしいというかなんというか」

 

「とりあえずは君が無事のようで安心した。どこか怪我などはないか?」

 

「心配をお掛けしました。この通りシンフォギア含めてピンピンしてます」

 

 簡単な私の状態の確認だけして、この場は倒壊の可能性があると指令に抱えられて地上まで送られる。普通に受け入れてて本当に今更だけど指令一人で良いんじゃないかなってなる。

 地上に出てみれば忙しそうに動き回る二課職員のみんなと気まずそうに端の方に立っているクリスちゃんが居た。こちらを見つけたようで笑顔で手を降ってみれば、こっちに走ってきてくれる。いやはやここまでクリスちゃんと信頼関係を築けていたとは。感激……。両手を広げ受け止める態勢になる

 

「こん……馬鹿野郎がーー!」

 

 飛び込んできたのは拳だし、飛び込む先は私のお顔でした……。

 

「なにするのよ!いったいじゃない!!」

 

「お前は、なんかもうこうあれだよ!」

 

 言語化出来ていないけどどうやら大層ご立腹らしい。

 

「クリス君は君の事を心配していたんだ。こんなところで見つかって感情のやり場が難しいんだろう。受け止めてやってくれ」

 

「てきーとなこと言ってんじゃねえぞオッサン!」

 

 どうやらクリスちゃんも仲良く二課に合流できているようで何より。しかし前にあんなにカッコつけて分かれた割にこんな微妙な再開になっちゃえばそうなるのも仕方ないかもね。

 

「でもあれね、シチュエーションだけ見れば囚われのお姫様を王子様のクリスちゃんが助けてくれたってなるわねそれなら結構ドラマチックじゃない」

 

「な、何いってんだよ! テメエは! それを言うなら助けたのはこのオッサンじゃねえか!」

 

「私、自分より年上はちょっと……」

 

「あー、君たちそれぐらいで良いだろうか? 恐らくもう時間は無いと思われる」

 

 流石にふざけすぎたか、指令よりストップがかかる。

 

「そうですね、了子さんというかフィーネも今から最終決戦に向かうって言って行きましたし」

 

 何気なくそう言うと指令もクリスちゃんも驚きに目を見開いている。あれ? この段階でもう把握してたんじゃなかったけ。

 

「どうしてそれを早く言わない! そうであるならここで時間を浪費するわけにいかんだろうが!」

 

 そっか、黒幕に目星はついているけどどう動くかは分からないって感じだったか。これは失敗失敗。

 そこから私とクリスちゃんそれぞれの持っている情報を交換し、現状の把握に努める。そうしている間に指令の端末に連絡が入る。

 

「街に大量のノイズが発生した! 二人とも直ちに現場に向かってくれ!」

 

 そう言い残して私達以外の人員は全員本部に向かうのだろうか車で行ってしまった。足に使えということだろうけど車一台残してくれたしここから足で向かうのも流石に遠いしさっさと向かいましょうか。

 

「じゃ、クリスちゃん途中まで送るからさっさと乗って」

 

「あ? 途中までってどういうことだよ」

 

「残念ながら私がノイズの方に向かってもあんまり活躍出来ないし、もっと私を有効活用できる場所がありそうだからね。そんなことよりはやくはやく」

 

 納得のいっていないクリスちゃんを半ば無理やり助手席に載せアクセルを踏み込む。この屋敷跡地から街まではそれなりに距離があるしベタ踏みでもどれぐらい時間がかかることやら。あの子達の頑張りの期待するしか無いか。

 私とクリスの間には当然の様に無言が流れている。クリスは居心地悪そうにこちらをチラチラ見てくるし、ここは年上らしく軽快なトークとでも行きましょうか。

 

「答えは出たかしら?」

 

「……これから出し行く所だ……」

 

 思った以上に湿っぽい話になってしまいそうだ。

 

「うちの指令馬鹿みたいに真面目な人でしょ。信頼しろまでは言わないからあの人の話を受け止めてあげてね。それに他にも貴方に懐きそうな子と貴方を可愛がりそうな子も居るし、これから退屈しないと思うわ」

 

「なんで、アタシがアンタらの仲間になる前提なんだよ。今更どんな顔してお天道様の下を歩けばいいだよ」

 

「胸を張って歩けばいいのよ。そんな立派なもの持ってるんだし張りがいもあるでしょ」

 

「なに変なこと言ってんだよ!」

 

 横目に見えるクリスちゃんは自分で自分を抱いて余計に強調されていることに気づかずに顔を真赤にしている。そうだよ。子供はこうじゃなきゃいけない。どうでもいいこと、しょうもないことを話して笑い合って明日を行きていけば良いんだ。間違っても世界を平和にするために銃を取るなんて追い込んで良いはずはない。

 

「楽しみにしてなさいな……」

 

 私の呟きは騒がしい車内に消えていった。

 

 

 街まで降りてきたところ車を停める。

 

「どうしたんだよ、まだ距離あるぞ?」

 

「ごめんね、私は行かないといけないんだ。ここからは走っていって」

 

 もしかしたらこれが最期になるかもしれない。そう考えると自然表情にも力が入る。ああ、そういえば奏ちゃんも翼ちゃんもに会ったのは何時だろう。響ちゃんと未来ちゃんはちゃんと仲直り出来てたのかな。

 

「……お前、何する気だ? 死にに行ったやつと同じ顔をしてるぞ」

 

「わかっちゃう? 死ぬ気は無いけど死ぬかもしれないのよね。まあ、私にことは気にせずに行ってらっしゃいな」

 

「……お前っ……!」

 

 優しい子だ。だからこそ守らなきゃいけない。さあ、行こう。

 

 クリスちゃんを押し出して私は二課本部へ向かう。

 向かおうとしたら無理やり運転席側のドアを明けれる。

 

「アタシは! アタシは雪音クリスだ! 次あったら名前を呼んでやる! だからどっか行くなんて許さねえからな!」

 

 泣きそうに怒るクリスの顔を見て我慢できずに抱きしめる。

 

「ありがとう、行ってくるねクリス」

 

 なんとなくもうちゃん付けは出来ないかなって。

 

 そうして一人車を飛ばして二課まで一直線に向かう。ナビから流れるラジオで急に情報を流さなくなったからみんなが戦っているのだろう。頑張れみんな

 

 そうしてリディアンの正門に車を付けて見ればそこには元気そうなフィーネの姿があった

 

「案外早い登場ね」

 

「お待たせしちゃいましたかね? これでも結構急いだつもりなんですけど」

 

 向こうも戦闘態勢の欠片も見えないし、胸ポケットからタバコ一本取り出し火を付ける。やっぱりタバコは屋外で数に限る。環境さんには悪いけど吐いた煙が空に混ざっていくのを見るとこの世界に生きている実感を得られる。

 

「待たせておいて、いきなり喫煙とは偉くなったものだな」

 

「まあまあ、最期の一服かもしれませんし、許してくださいよ」

 

 リディアンの敷地内に居て誰も来ないということは既にシステムは乗っ取られているんだろう。

 

 せめてもと時間を掛けて吸いきった一本を携帯灰皿に居れシンフォギアを取り出す。それを見て向こうも聖遺物を出し始める。

 

「ここまで待ってやったのだ。つまらない終わり方で落胆させてくれるなよ?」

 

「誠心誠意努力しますよ」

 

  

 胸の歌を歌い準備万端だ。さあ行こう

 

「貴方の恋心と私の愛!どちらが勝つか真っ向勝負! さあ始めましょう!!」

 

 

 

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