私が居なくても、皆が居なくても明日来る
それでも皆で明日に生きたい
29,それでも明日は続いていく
フィーネとの戦いはいつかのクリスとの戦いと同じで防戦一方に押し込まれている。シンフォギアの特徴を考えるのであれば私はアタッカーではなくタンク。こうなるのは当然かもしれない。本来であれば他の誰かを待つべきなんだろうけど、これは意地の戦いだ。
「どうした! あれだけ威勢を張ってもその程度か!」
「お生憎様! 私はスロースターターでね、精々今のうちに頑張ってくださいよ!」
「このネフシュタンの効果を知らぬ訳ではなかろうに、いじらしいものだな」
その通りなんだけどね。向こうは体力無限の無限回復みたいなもんでしょ。なにをどうしたって長期戦で私に勝ち目はない。だからって今無茶な突撃をしても何にもならない。
(今は何かが変わるのを待つしか無い……!)
どれぐらい戦っただろうか。気持ち的には1時間は戦っているつもりだけど、実際はその半分も経っていないだろう。息も上がってきたし辛い。
「どうしてそこまで抗う事ができるのだ? もう貴様に勝ち目など無いことをなど分かっているだろうに」
フィーネがそんな事を言いながら攻撃の手を止めてくれる。何が目的かはわからないけどここは素直にお話しときましょう。もしかしたら久しぶりに素の自分で話せるのが楽しいなんて乙女な理由かもしれないし。
「言ったじゃないですか。恋と愛の戦いだって。ただそれだけですよ。私と貴方どちらも目指す夢があってそのために勝たなきゃいけない。それだけですよ」
「はっ、夢? 夢だと? いい年したセリフとは思えんな」
「誰かが言ってましたよ? 大人になって現実を知った後にこそ願う夢もあるらしいですよ? 流石にこの歳でお姫様に成りたいとか、素敵な王子様に迎えに来て欲しいなんて言えないけど、頑張ってる子供にせめて少しでもマシな世界を残すぐらいはしてあげたいので」
「……貴様は未来を見て生きているのだな」
「だからといって過去を思い返す生き方を否定はしませんよ。できれば前も一緒に見てもらえると嬉しいですけど」
フィーネは過去を見て生きている。それを悪いことなんで断言は出来ないけどそれでもせっかくの人生だ。少しは前を向いて生きていて欲しい。フィーネがなにか考え込んでいるみたいだし少しでも体力を回復したい。
「なるほどな。私と貴様は本当にわかり合えないのだな。わかってはいたがここまでとはな。これ以上は時間の無駄だだろう。そろそろ終わりと行こうか」
この辺りが限界みたいだね。さてとそろそろ私も覚悟を決めましょうか。きっと今なら前と同じ様に歌えるはずだ。
「pride valour achilles tron」
「やはり使えるか。いよいよ貴様も本気ということだな」
なんとかあの時と同じことをすることが出来た。特に姿が変わることはない、これは心を纏う歌。私に足りない最後の心を補ってくれる。
「行きましょう、生きましょう、逝きましょう。きっと私達の最後の戦い。決着を付けましょう」
「そうだな。決着をつけようか」
大地を蹴り駆け出す。私に有るのはこの盾と身体しか無い。近づかなければ始まらない。向こうもそれを分かっているのだろう、ムチのように武器を振り回し対抗してくる。身体に傷を付けるだけで近づくことが出来ない。
「どうした! 何も出来ないのか! ならばそのままそこで何も出来ずには倒れていけ!」
厳しい。本当に厳しい。どうやらフィーネは本気で来ているみたいだ。大ぶりの攻撃もなく、徹底的にこちらを妨害する動きだ。
「きっつい……。これはもう行くしか無いかな……!」
覚悟を決めよう。私の役割はここで終わりでいいのだろう。
「ッタアアアアア!!」
盾を掲げて致命傷になる部分だけをガードして一直線に突っ込んでいく。
「ヤケになったか! ならばこれで終わりだ!」
腕に足にネフシュタンの攻撃が集中する。大丈夫だ!今の私なら足が切り落とされでもしない限り進んでいける。
「あっぐ……!!」
足に攻撃が突き刺さる。痛い、痛い、血が抜けていく。意識が遠くなりそうになりそうだけど、おかげでかなり近づく事ができた。こうなればもう後は勢いだ。
「ファイト! いっぱぁぁつ!!」
最後の力を振り絞ってフィーネの顔面に右ストレートを叩き込む。ネフシュタンの鎧相手で中途半端な攻撃は無意味だ。一撃で意識を刈り取ることしか勝機は無い。この一撃は私のできる唯一で最良の選択のはずだ。その結果は……
「ガハッ……」
「……残念だったが、これで終わりだ」
私のお腹に毒々しい色が刺さっている。前を向けばどうやらネフシュタンのムチで顔をガードされたみたいだ……。
「貴様は天才ではなく、考える凡才だからな。戦闘の仕方も思考が透けて見える。大凡ネフシュタンの鎧を崩せない以上、私に直接ダメージをと考えたのだろう」
はぁー。どうやら全部読まれていたようだ。しっかしこのフィーネなんか油断しなさすぎじゃない? 確か元はもっと自分の事をペラペラ喋ったりしてなかったけ……?
「ああ……。私の負けか……」
「ああ、私の勝ちだ」
お腹と足から血を流しながら倒れ伏す私とそれを見下すフィーネ。勝者と敗者がはっきり分かれてしまった。シンフォギアのおかげだろうか、すぐに失血死とは行かないだろうけどこのまま放置されたら危ないだろう。
「そこで、この世の理が変わる瞬間を見ていくと良い。それではな」
そう言いながら二課本部にへと歩いていく。その背中を見ながら私はゆっくりと意識が遠くなっていく……
……ああ、なんだろう。歌が聞こえる。優しい歌だな……
…………から聞こ………この不快な…唄……!歌、だと…!?
……フィーネ、また怒ってるよ……。カルシウム足りないんじゃないかな……
「シンフォォォギアァァァァァァァァーーー!!」
「……ここは……?」
「立浪さん? 大丈夫ですか!?」
「未来ちゃ…… 小日向さん?」
目を覚ました私の横には未来ちゃんがいた。記憶が混乱してる今は何の時?
「大丈夫ですか!? ここはリディアンの地下シェルターです!」
「紫香君! 大丈夫か!?」
お腹に包帯を巻いた指令がこちらに向かってくる。私とお揃いじゃない……。
「……そうだ! フィーネは!? みんなは!?」
「響君たちは先程シンフォギア を変形させ、了子君が街に放ったノイズを対処している。君はリディアンで腹部に大怪我を追った状態で倒れていたのを我々が救助した」
「お手数をお掛けしました。しかし、指令も同じ様に大怪我してるように見えるんですが……」
「俺は鍛えているからな!」
いやもうそれで押し通すのはそろそろ厳しいですよ……
「指令、地上の了子さんが!」
あおいちゃんの声にそちらを見ればノートパソコンの小さな画面にフィーネが自らにソロモンの杖を突き刺している映像が流れている。そしてノイズを大量に放出し、出したそばから吸収していく。どうやら最終決戦仕様になるのも少し早いようだ。みんなが映像に集中している間に地上へ急ぐ。エアクスドライブにはしてもらえなかったけど多少の回復はしてくれたようだ。傷が痛むけどそれでもなんとか動くことができる程度にはましになっている。
急いで地上に出てみれば、そこには人の姿を捨て、赤き龍となったフィーネが居た。どう見ても人外の姿であるのにじっとこちらを見られている気がする。そしてそれは合っているだろう。
「やあやあ、その赤いドレスはちょっと派手すぎない?」
「どんな服であろうと着こなせる自信があるのでな。貴様こそあれだけ惨めに負けたのにまた私の前に出てくるとは感心してやってもいいぞ」
「そんな事言わずにアンコールに付き合ってくださいよ。そっちもそのつもりなんでしょ?」
「……まあ、そうだな」
そう、私がここに来たのはなんとなくそんな気がしたからだ。決着を付けないといけない。
「さあ、いきましょう」
「Disastrous psyche achilles tron
pride valour achilles tron」
一気に二重に聖詠を口にする。フィーネも顔……顔? の様な部分にエネルギーを貯めていく。あれを月ではなく、地上に向けて撃たれたら被害はどんな規模になるか考えたくもない。例え、ラスボスの野望を砕く事ができても守るべきもの守ることが出来なければ私達の負けと同義だ。そして
ここに居るのは都合よく守ることしか出来ないようなやつだ。
「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl
Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl」
絶唱を口ずさみ、命の一滴までを絞り切る。向こうも準備が終わったようで、こちらに向かってレーザーの様なものを発射する。
ここで急に私がいない方向に攻撃するなんてことがなくて良かった。
「っああああああ……!! うぁぁああああああああ!!」
[Absolute Affection]
熱い、痛い、苦しい。
盾で防いでいるとはいえ余波だけで私の全てが焼けただれていきそうだ。拮抗出来たのはほんの数秒。あの時暴走した響ちゃんのデュランダルの一撃を防ぐことが出来たはずの私の盾は今度はどうやらダメかもしれない。徐々に意識が遠くなりそうになるけどなんとか意識に勝つを入れて持ちこたえる。
いくら頑張っても、純粋な力の差はどうしようもなく、目の前で徐々に盾が融解し始める。端の部分からどんどんと溶け、なくなっていき私の身体が焼かれ始める。
「誇るが良い。月をも砕くこの一撃。貴様一人のために使ってやったのだ」
その心遣いはいらなかったなぁ……。でも私一人と街と住民を交換できたと思えば十分か。
「紫香さん!!!」
「姐さん!!!!」
そんな何時ぶりかの声を聞いたと思えば、突如私を致命に至らせんとしていた熱がなくなる。かろうじての意識でそちらを見ればフィーネに奏ちゃんと響ちゃんの二人がエクスドライブの攻撃を叩き込んでいた。流石の今のフィーネもガングニール姉妹の渾身の一撃を不意打ちで喰らえば攻撃し続けることできなかったようだ。
「立浪さん!! 大丈夫ですか!?」
「おい紫香!、生きてるのか!?」
翼ちゃんとクリスちゃんも来てくれたようだ。二人ともちゃんとエクスドライブになってるし、大怪我もしてなさそうで安心だ。
「大丈夫ですか!?」
奏ちゃんと響ちゃんもこちらに合流する。
「精々最後の別れを済ましておくことだな。それぐらいの時間はくれてやろう」
またまたお優しいこって……。でも全身大やけどの私を見ればもう長くないのも誰が見ても明らかだろう。
「姐さん……、紫香さん……。アタシ嫌だよ、こんな別れは嫌だよ……」
「今まで仲間だった人に、あんなに仲が良かった人にこんな事をするなんて……許せない……!」
口に出していない二人も含めて装者四人とも精神状態が不味そうだ。こんなものを見せられたらゆっくり眠ることすら出来ないじゃない。
「だ、だめじゃない……。いい? あなた達の振るうそれはそんな怒りや悲しみで使ってはいけないもの……。負の感情ではなく。自らの心を信じて前を向いて使うもの……」
彼女たちの本当の強さは力の強さではない。胸の奥から湧いてくる温かいものだ。
「安心しなさいな……。ちゃんと見てて上げるから。シャンとしなさい……」
「紫香さん!? ご無事ですか!?」
どこからともなく慎次くんが現れる。どうやら私はここで退場のようだ。これ以上なにか話すのもきついので最後にみんなに笑顔を渡して私はまた意識を失う。
……どうやらまだ生きてしまっているようだ。空を見上げれば星空に流星が輝いている。前の方で大きな泣き声が聞こえたと思えば、未来ちゃんが泣き崩れている。
「そうか……。結局私は全部あの子達の背負わしてちゃったのね」
胸のポケットから煙草を一本取り出し、なんとか火を付ける。こんな状況だ。元通りに装者みんな生きているなんて希望的観測をするなんて出来ない。せめてもの供養のつもりで天までとどけと紫煙を吐き出す。
「八千八声 啼いて血を吐く ホトトギス されども羽に 寄り添わん」
「ふっ……。どうやら私に文学の才能は無さそうね……」
あの最終決戦からすでに一ヶ月経とうとしている。結局装者の誰もが帰還することはなく私だけが生き残ってしまった。私は腹部の貫通した傷と顔に火傷が残る結果になってしまったけど生きている。生きてしまっている。
「あっちに行くのは年の順て決まってるのあの子達は分かってなかったようね。私もあっちに言ったらしっかり説教してあげないと」
「そんな事言わないでください。紫香さんが生きているだけでみんなどれだけ喜んだか」
今私は、車椅子を慎次くんに押されながら仮設の二課本部へと向かっている。重度の火傷は治るのにも相応の時間が必要で一ヶ月経った今でもまともに自力で動くことができない。それでもやっとICUからの開放と、短時間であれば外出も許可されたのであの時から初めて仮設本部に向かている。お迎えとして慎次くんが来てくれたけど、彼もツヴァイウィングがいなくなって時間を持て余しているのかもね。
そうして会話もなく車椅子を押してもらいなら仮設本部を移動していく。当たり前だけど、私が知らないあ間に出来た場所だからどこに連れて行かれるか想像も出来ない。
「到着しました。この扉の向こうが目的地です」
ついに到着したのは、両開きの少し大きめの扉だ。感じ的に体育館とか大きめの会議室みたいなものかな?
「それでは今から中に入りますが、心を強く持ってくださいね」
なんか急に不吉なことを言われたんだけど……。止めてよね、中に皆の写真と祭壇なんてあったら私心が壊れちゃう……!
「ちょ、ちょっとまっ……」
「では行きます」
私の静止は無下にされ進むと同時に扉が開き始める。ええい! こうなりゃヤケだ! 何でも持ってこい!」
「立浪さん!!」
「「紫香(さん)!!」」
「姐さん!!」
「「「「おかえりなさい!!!!」」」」
そこに有るのは私が想像していた重苦しい空気ではなく、カラフルに飾り付けられた部屋と笑顔な二課のみんな。そしてクラッカーを使ったままのポーズで私を出迎えてくれた装者のみんな。
そこに至って私は担がれていたのだと理解できた。振り返れば慎次くんも申し訳無さ一割、楽しさ九割みたいな顔をしている。
こんなに驚かされたのだ。こうなったら徹底的にやり返してやると慎次くんを急かす。
頬を流れる涙も気にせずは私はきっと今まで一番満開であると見なくてもわかる笑顔答える。
「ただいま…… みんな! ただいま!!!」
シンフォギア 小さな親切、大きな愛
完
最終決戦で役に立たないオリ主が居るらしい……
勢いで完て付けちゃったけどまだまだ続く予定です。