小さな親切、大きな愛 [G編]   作:冬眠復帰

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こんな話ほど書きやすいのは何故なのか


1.3仕上げはお姉さん

 楽しいパーティも過去の話。気がつけば退院し明日から通常業務になってしまった。今日は明日への活力と今日から一緒に住むクリスの歓迎会も兼ねてパーッと外食の予定だ。

「でクリスは何が食べたいとかある?」

「なんだよ、自分から誘っておいて決めてねえのかよ」

 

 前に迷子の兄妹を連れた歩いた街を今日は二人だけで並んで歩く。クリスは約束通りあのときに渡した服を持ってきてくれた。二課に缶詰になっていたはずなのにどうやったのかクリーニングされて返ってきた。この辺りは本当にマメな子ね。

 

「……なあ、何でもいいのか?」

 

「ええ、今日の主役はクリスだし。私にできることならなんだって。最悪私に出来なくても権力を使ってちょちょいとね」

 

 司令におねだりすればそれなりの無茶でも通るだろう。長年の宿題なんて言っていたとおりクリスことは大分気にしているみたいだし。

 

「……なら、家であんたが作った飯が食べたい……」

 

「へ……?」

 

 予想外の発言に足も頭も止まってしまう。家で私の作ったご飯が食べたい?

 

「別にいいけど、そこまで期待しないでね?」

 

「家でさ……、誰かと誰かが作った飯を食ってみたくなってな……」

 

 ……やっばい。公共の場だからなんとか我慢したけどそうじゃなかったら十分ぐらい抱きしめて撫で回してた自信がある。それはさておき誰かのご飯か。フィーネは自炊しそうには見えないしその前の環境ではね……。クリスにとって家庭の食卓は遠い思い出なのかもしれない。

 

「……そうね、じゃあ一緒に作りましょうか。わかりやすいしハンバーグにしましょう」

 

 決まってしまえば向かう場所はあまり使った記憶のないスーパーへと向かう。

 

「しかし、随分素直になったわね、一週間奏ちゃんと翼ちゃんに絞られたの?」

 

「そんなわけねえだろ。ただ、誰かと食う飯はうまかったよ」

 

 やっぱり短い間とはいえ二人に預けたのは正解だったみたい。こんな短期間でここまでこの子を丸くしてくれるなんてね。私だけじゃ出来なかっただろうし、若い子に任せるのが一番なのかもね。

 

 

 

 

「……お前、料理出来たんだな……」

 

「真顔でそれはひどくない?」

 

 二人で協力してハンバーグをメインにサラダに簡単なスープとそれなりの夕食が並んでいた。一人のときは基本割引惣菜と職場の食堂頼りな日々だけどやろうと思えばこれぐらいはね? ここ数日クリスを迎えるために大急ぎで整理してよかった。棚の奥に眠っていたあの怪しいものを見られていたらただでさえ少ない私の威厳が消えきってしまう。

 

 二人仲良くいただきますをして自分たちで作った夕食を食べ進めていく。いきなりは無理だろうけど少しずつ食べ散らかしを直していこうと思っていたけど、前より大分大人しくなっていた。誰かに言われたか自覚したのか。とにかくこれなら編入するまでには間に合うでしょう。

 私達二人なら食事をしながら大騒ぎするなんてことはなく、それでも寂しくない程度にはおしゃべりをしながら箸を進めればいつの間にか綺麗サッパリごちそうさまだ。

 

「さて美味しいご飯の後で申し訳ないんだけど渡すものが有るんだ」

 

「自分で美味しいとか言うなよ……。んで、何をくれるんだ?」

 

 促され私は準備していた袋を取り出しそのまま渡す。

 

「なんだこれ? 開けていいのか?」

 

「もちろん」

 

 包装も凝ったものではなくすぐに小さめの箱が出てくる。小箱を開ければ中にはチョーカーが。

 

「贈り物のチョイスとしてはあれだけど、良さそうなもんだな。なんかの記念か?」

 

「そ、クリスの居候祝。GPSと盗聴器入りの特製チョーカー」

 

「は?」

 

 なんでも無いように言ってしまうが、一瞬でクリスの顔が不思議なものを見る目に、そうしてこちらを睨むような表情になる。

 

「仲良しこよしなんて言っておいて、怪しいやつには首輪ってか? 嬉しすぎて涙が出そうだ」

 

「概ねそんな感じね。でお願いなんだけど私から話有るまでは当面ここと二課の往復。話す内容にも気をつけて欲しいの」

 

「へえへえ、わかりましたよ。お尋ね者は言われたとおりにしてやるよ」

 

 軽口を言うクリスの顔を暗く寂しいものだ。これだけ聞けば私が裏切ったようにしか見えないだろう。

 

「それはあなたが身につけたら自動で動き出す。だからその前にこれだけは聞いておいて。私がそんなのすぐに外せるようにしてあげるから少しの間だけ我慢して。そしてこんな事してごめんなさい」

 

 頭を下げる。理由があり必要なことであってもこんなことをさせるなんて何より私の良心が耐えられない。それでも今は我慢してでもしなければいけないのだ。

 

「……あんたがそこまで言うなら信じてやるよ。さっさと外させろよな?」

 

「もちろん。私の全力を尽くすわ」

 

 不穏な流れも合ったけど最後はまた穏やかな空気で終わることができた。この後は二人仲良く就寝だ。ベッドはクリスに渡して私はソファでお休みだ。割と慣れて朝も寝苦しさで起こしてくれる便利な寝床だ。

 

 

 

「立浪紫香です。失礼します」

 

 次の日クリスを連れて出勤してあおいちゃんと奏ちゃんにクリスを任せて私はそのままの足で司令の部屋に向かう。

 

「ご苦労、病み上がりに呼びつけても悪いな」

 

「久しぶりだな、また入院していたと見たが大丈夫なのか」

 

 司令はまあいいんだけど翼パパはまだ慣れないんだよなあ……。事前に連絡もらってたから驚きはしないけどそれでも心臓の代わりに胃が痛くなる。

 

「ご心配おかけしています。もう問題ないので大丈夫です」

 

「良し、では揃ったので雪音クリスの身柄について話し合いたいと思う」

 

 そう、わざわざ翼パパまで呼んで二課の首脳陣が雁首揃えたのはこの後始末だ。二課内部だけで見ればクリスの扱いはおそらく問題ないと思う。だけど事件を書類上の数字でしか見ない人間からすれば話は別だ。

 

「上からはクリス君の身柄をここではない聖遺物の研究施設に送るような動きが見える」

 

「海の向こうからも非公式に身柄の引き渡し要求が来ている。もちろん突き返してはいるが彼女の後ろ盾もない現状政治のカードにされてしまう可能性も有る」

 

 すぐこれだ。何が嬉しくて可愛い新しい妹をモノ扱いされないといけなのだ。これ以上汚い大人の陰謀に巻き込んでたまるか。

 

「当然ですが、どちらもありえませんね」

 

 そこで二人の表情を見ればもちろん同意を得られる。ここまでは問題ないとして。

 

「後は内外それぞぞれをどう納得させるかですね」

 

「それが問題だな。国内の方は俺と兄貴でなんとかなるだろうが海外に関してどのような動きを見せるかわからん」

 

「特に米国の動きがきな臭い。フィーネとの繋がりの事もあるし直接的な動きに出るかもしれん」

 

 さらっと言ってるけど国内は抑え込めるって相当やばいよね? 多分あの糞爺の権力も有るんだろうな。吐き気がする。それでもあの子が守れるなら好き嫌いなんてできるわけもない。

 

「海外の方に関しては代わりに渡せるような物は無いんですか?」

 

「我々が保管している聖遺物に関しても永田町は外交の札としか見ていない人間も多い。今回の騒動で多少は変わるだろうがそれでも大きくは変わらんだろう。であれば人数も増えてきた装者を差し出そうとする輩もいるかもしれん」

 

 ほっっんとにクソね。綺麗事を言える立場じゃないけどそれでも虫酸が走る。

 さて海外に渡しても問題なくて、それでいて向こうが首を縦に振るような何かね……。そんな都合のいいもの有るのかしら。

 

「……ああ、こんなのどうです? 私のDNAか何か各国にばら撒きます?」

 

「君のか?」

 

「ええ。これでも原因不明の聖遺物反応を示す怪しい人間なので。多少は食いつきそうじゃないでしょうか」

 

「……しかし、それは……」

 

「ああ、響ちゃんは駄目です。彼女体内に聖遺物を取り込んでますから、それが広がれば人体実験される可能性ありますし」

 

 私としては何でも無いんだけど司令はいつものようにしかめっ面だ。私のDNAとかで解決するなら万々歳何だけどね。最悪腕の一本でも渡してもお釣りが来るとは思ってる。

 

「……それで調整してみよう。しかし実行すれば君の情報が各国の表裏を問わずに広がることになるだろう。本当にいいのか?」

 

「それであの子達が笑えるならお釣りで新車でも買えそうです」

 

「そうか……。済まない、君の案で進めさせてもらう」

 

「兄貴……、それしか無いのか?」

 

「読めない部分がある以上、こちらから札を切ることも有効だろう。では、私は早速交渉にはいる。必要な情報は送っておいてくれ」

 

「……了解した。外は頼む」

 

 そいういって翼パパは忙しそうに退室いていった。あの風鳴の筋肉を全部頭に回したようなスーパー銃後マンだ。多分大丈夫だろう。なら次は

 

「さて、国内の抑えは俺たちで動く必要がある。俺も明日には外で交渉に入る。数日はかかると思うからその間ここを頼む」

 

「了解です。お気をつけて」

 

 

 

 

 なんて司令を送り出したのにどうして私は会議室で偉そうな人に囲まれているのかか……

 

「さて、風鳴司令が不在なのは残念だが、時間は有限でね。打ち合わせを始めたい」

 

「よろしくおねがいします」

 

 顔色声色変えずに返事できた自分を褒めてあげたいよ。どうせ司令がいないタイミングを狙ったんでしょうが。

 

「私達としては今回保護された適合者に処遇に関してはここではない別の研究所が適切かと考えている」

 

「こちらでは駄目なのでしょうか」

 

「装者もすでに四人在籍し十分ではないのかね? であれば別視点の研究を進めるべきだと」

 

「お言葉ですが、ここ以上に研究を進められる場所は無いかと考えます。国内の機関であれば櫻井理論も開示されいるかとは思いますがなにか成果等はあるのでしょうか」

 

「それを出すために装者を配置しようというのだよ」

 

「装者は彼女を入れて合計五人。うち一人は投薬が必要であり、その数にも限りがある以上ノイズからの防衛の観点からも研究機関付きは厳しいかと考えます」

 

「では君は聖遺物の研究に協力する気は無いと?」

 

「もちろん研究には協力させていただきます。必要であれば共同研究など有るでしょうが、候補の名前など教えていただいても?」

 

「それは……」

 

 まあ言えないでしょうね。あんたのご主人はハクトウワシだもんね。事前にも調べ見たらここに居る人間だけでも何カ国の手先が居ることやら

 

「お忘れのようでしたら、後日教えていただければ確認させていただきます」

 

 純度100%、混ぜものなしの営業スマイルで返せば唸るだけで黙ってしまう。こんな小娘に論破されるような人間しかよこしてこないのは油断なのかな何なのか。

 

「その話は置いておいて、危険ではないのか。拘束、隔離したほうがいいのではないか」

 

 次は身柄だけでもということか。

 

「そちらに関しても複数回のヒアリングで問題ないとの結果が出ています。また現在シンフォギア装者による24時間監視、GPSとマイクを取り付け全て記録していますが問題はないかと。そちらのデータに関しては皆様にお送りしていますので確認して頂ければと思います」

 

「……確認させてもらう」

 

 はー、その苦虫を噛み潰したような顔を見れただけでも多少はスカッとするわ。

 その後も追求されては反論してこの場で言質を取られるようなことはなかった。これで後は司令に任せておけば大丈夫でしょう。

 

 

 

 クソを煮込んだような会議も終わり私はクリスを探して本部を歩いている。ストレスが態度に出ているのだろうすれ違う人が端に寄っていくのは楽でいいけど複雑な気分だ。

 

「クリス!」

 

「うおぁ!? 何だよ急に」

 

「紫香さん? どうしたんですか?」

 

 居場所を聞いて出向いてみれば未来ちゃんもいるようだ。確か二人はまとめて色んな説明受けてたんだっけ

 

「クリス! チョーカー貸して!」

 

「お、おう……」

 

 挙動不安所著不安定の私に怯えながらこの前渡したチョーカーを差し出してくれる。それを受け取って。

 

「Disastrous! psyche! achilles tron!!」

 

 シンフォギアを使って引きちぎる。急いでいたから肩で息しながら急にシンフォギア使ってチョーカー引きちぎる私は大分と不審者でしょうね。

 

「クリス! 未来ちゃん! ふらわー行くわよ! 今日はやけ食いよ!!」

 

 未だに状況がつかめてなくて唖然としている二人を引きずって車に向かう。説明できないのは申し訳ないけどガス抜きしないとやってられない!

 

 

 ふらわーで二人と楽しく食事できたし、クリスの事もなんとかなりそうだし最終的に良かったのだろう。翌日司令に施設内で無許可のシンフォギア起動で怒られたけどいい日だったはずなんだから!

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